2022/08/09

取り戻した家族の形

 

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地上の大神殿の祭壇上に、煌めく光が舞い降りていた。散りばめられた金色の小さな無数の光が、その聖なる力をもって彼女の石の呪いを解いていく。煌めく光は眩しいものではなく、暖かく柔らかなものだ。それは彼女自身の光なのではないかと、リュカはまだ遠くに見えるその光景を息をするのも忘れて見入っていた。
彼女が色を取り戻していく。灰色一色に塗りつぶされていたような彼女の姿が、水色に肌色に金色にと、この世界に戻ってくる。ゆったりとした水色の夜着には、あの時の戦いの痕が残っている。双子の赤ん坊を生みまだ間もない頃だったと言うのに、彼女は勇ましくもジャミの前に立ちはだかったのだ。そんな彼女の姿を思い出せば、やはり彼女は紛れもなく勇者の子孫なのだと思わざるを得なかった。
ぼんやりとした彼女の視線は、遥か遠くに向けられている。その目に先ず映ったものは、一体なんだろう。リュカはかつて石の呪いを受けても尚、視界に映る世界を閉ざすことはできなかった。離れていくビアンカの姿をした石像を、その目に見ていた。競売に賭けられ、売られて行った先でも、富豪の生活を目の端に見ていた。成長する我が子ではなく、富豪の子供の姿を見ていた。魔物に攫われた富豪の子供を見て、我が子の安否を思い、気がおかしくなりそうだった。何度、自らの命を絶ちたいと思ったか知れない。しかしそれすらもできなかった。
彼女の視線がゆっくりと移って行く。綺麗な瞳だと、リュカは相変わらずそう思う。命の源をその瞳に湛えるような、美しい水の色。しかし一方で、色味を取り戻せない唇が微かに動く。大神殿のこの高地にあっては、寒さに晒され温度を奪われ、肌に温かな色味が戻らない。
小さく呟いたようだが、その声はリュカには届かない。近づかなければならないと、リュカはすぐ脇に二人の子供たちがついてくるのを確かめながら、妻の元へと歩き近づいて行く。
近づく彼女の目が仲間たちを順に捉えていく。魔物の仲間たちは呪いから解放された彼女を呆然と見るばかりだ。まだ彼女の周りにはきらきらとした光が粒子となって舞っている。それが彼女の存在を神々しく見せ、まるで女神の一人がこの場所に降り立ったかのような厳かささえ漂っているのだ。
プックルとピエールの間を、リュカは通り過ぎた。ティミーとポピーの二人は初めて母をその目にしても、現実とは思えないような朧な表情で、ただ石の呪いから解放された一人の女性を見つめていると言った状況だ。父が進むから、その背を追うのが今するべきことなのだと、二人はどこか緊張した面持ちさえ見せながら歩いている。
彼女の前に立つ。先ほどまで、彼女は石の呪いの中にあった。灰色の石の中で、辛うじて生きていた。しかし今は金色の豊かな髪を冷たい風になびかせ、ゆったりとした水色の夜着にも冷たい風を孕み、そして水色の瞳が間近に立つリュカをようやく捉えた。今は彼女の瞳の小さな動きも分かるほど、近くにいる。揺れる水色の瞳が、リュカの二つの目を交互に見つめる。
「リュカ……」
彼女の声を聞いた。生きた声だ。変わっていない。
二年だ。二年、彼女を探し続けていた。父パパスが母マーサを探し続けた時間を考えれば、まだそれほどのものかと思えても、本心ではそうは思えない。
二年の間に幾度、彼女との思い出が蘇ったか知れない。彼女と共に訪れた地に行けば、必ず彼女の楽しそうな笑顔が脳裏に蘇った。表情豊かな彼女だが、思い出すのはいつでも笑顔だった。彼女はいつでもリュカの太陽だった。この二年の間、リュカの傍には命に代えても守らねばならない二つの宝物と、かけがえのない大事な仲間たちがいたが、自身を照らす強く優しい太陽の光が失われていた。
「……ビアンカ」
ただ名前を呼んだだけで、リュカの声は震えた。潤む綺麗な水色の瞳を見ているだけで、たまらず彼女の身体を抱きしめた。石の冷たさなどない。強い呪いにより、触れることさえ敵わない事態も今は去った。ただ、柔らかく温かい。人間は、生き物はこうして触れ合うことで互いに語らずとも、安心を得ることができるのだ。それは本能的であり、大事なことで、必要なことだ。
身動ぎするビアンカから少し離れると、彼女の両手が自身の両頬を包んだ。言葉はないが、その表情には仄かに笑顔が浮かんでいる。離れていた二年の間、何度も脳裏に蘇った彼女の笑顔を見れば、この二年の悲しみや寂しさを忘れられるような気がした。忘れないでくれてありがとう、戻ってきてくれてありがとう、生きていてくれてありがとうと、感謝の言葉が様々頭の中に浮かぶ。そして自分は今も、前と変わらず、離れていただけ前以上に、恋焦がれているのだという思いが胸の内から噴き出し、その想いのままに彼女に口付けた。
もう一度顔を見合わせれば、彼女の瞳からは涙が零れていた。強く勇ましい面を表に出すような彼女だが、それは弱い自分を他人に見られたくないからだ。そしていつでも、守りたい者があるからだ。
幼い頃は、子供でありながらも育ての親である両親を守るために気を張っていた。親とどこも似ていないじゃないかと言われても、強気に言い返す気概があった。それと言うのも、育ててくれた親に対する感謝があり、そんな親を誇りに思っていたからに違いない。
いじめられていたプックルを助けるのにも、真っ先に声を上げた。後先など考えていなかったのかも知れない。しかし彼女は内に眠っているばかりではない正義の心に素直に従い、プックルを助けるのだと、当時の少年たちに喧嘩を売った。黙って事の成り行きを見ていることなど、彼女にはできなかった。
二つ年下のリュカを守るのにも躊躇はなかった。強い者が弱い者を守るのは当然だと言わんばかりに、本当はお化けが怖かったはずなのに、彼女は必死にあのお化けの城でリュカを守ろうとした。
全ては彼女がそうありたい、人には強く見られたいという思いがあったからだ。
しかしリュカは、彼女の伴侶として、その全てを支えることができる。強いだけが彼女ではない。夫である自分には弱い所を見せても良い。その代わりに自分も妻であるビアンカに支えてもらうからと、それが夫婦というものだろうと、リュカはふらつく彼女の身体を支える。
「ビアンカ、僕につかまって」
反論の余地など与えず、リュカはひょいと妻の身体を横抱きに抱き上げた。思っていたよりも軽い。石の呪いの中で彼女の身体が痩せてしまったのだろうかと思うほどに、軽く感じた。しかしそんな事態は起こっていないはずだ。だとすれば、この二年の間に自身の力が強くなっただけなのだろう。二年の間に、様々なところへ旅に出た。時には子供の身体を抱えて逃げなければならない局面があったりもした。必死に生きている内に、知らず成長していたのかも知れない。
首に回される彼女の腕の細さに、これほどまでに細かっただろうかと辿る記憶の中の彼女と異なる状況にリュカは戸惑う。二年の時が経つ間に、自身の記憶の中で彼女は大分逞しくなっていたようだ。双子を産んだ母として、身体を張って子供たちを守った母として、これほど華奢なはずがないと、勝手に思い込んでいたらしい。
ビアンカを抱き上げたまま後ろを振り返れば、仲間たちが静かに状況を見守ってくれていた。すぐ傍には、目に涙を溜めたまま立ち尽くすティミーとポピーがいる。生まれて間もなく引き離され、二人にとっては初めて目にするも等しい母の姿だ。リュカにも経験のない母との対面の場に、リュカ自身も束の間戸惑いを感じたが、子供たちには先ず何よりも安心を与えなければならない。
「ティミー、ポピー。大丈夫かい?」
リュカは抱き上げるビアンカを無言で見つめる二人に、そう声をかけた。この人が君たちのお母さんだと、ようやく母と子を会わせられる実感が徐々に胸の内に湧き上がってくる。自分は二年、待った。しかし子供たちからすれば、生まれてから十年もの間、母との時間を奪われていた。ようやく母と対面させてあげることができた喜びが沸き起これば、それが父パパスが自身に成し遂げたいと思い続けていた父としての意志だったのだと、同時に悔しささえ込み上げた。
腕に抱えるビアンカが子供たちを見ているのが分かる。しかし言葉は出ない。二人の子供たちもまた、母ビアンカを見上げている。しかしやはり、言葉は出ない。代わりに静かに鼻をすする音だけが聞こえている。言葉を交わさずとも、母は子を、子は母を、認め慕う様子がリュカには感じられた。本当ならば、母と子で抱き合い、その身に互いの温もりを感じたいだろう。しかし石の呪いから解かれたばかりのビアンカはまだ立つこともままならない。
その内に、抱えるビアンカがリュカの胸に頭を預けるように静かに脱力する。リュカと同様の石の呪いを受けていたビアンカだが、彼女はその上イブールによって更に強い呪いをかけられていた。彼女の身体を蝕む力がまだ残っているのだろうかと、リュカは間近に妻の様子を窺うが、同時にポピーが控えめに言葉をかける。
「……とても、眠そう」
その言葉の通り、ビアンカは今にも目を閉じてしまいそうなほどに虚ろな表情をしていた。そしてこの場所はあまりにも寒く、身体を休めていられるような場所ではない。
「がう……」
「そうだね。こんなところでのんびりしている場合じゃないんだ。一度、みんなでグランバニアに戻ろう」
「国の人々に、王妃様がお戻りになったと早くお伝えしなければなりません」
震えるピエールの声をリュカは初めて聞いたような気がした。必死に隠しているようだが、表情豊かな緑スライムはピエールの感動を如実に語っていた。
「ッキッキー!」
そうと決まればすぐに行動と、メッキーがすぐさま移動呪文ルーラを唱えようとするが、ベホズンが跳ねてメッキーに軽く体当たりをしてそれを止める。大神殿の内部でルーラを唱えても、天上に皆で頭をぶつけてもんどりうつのが目に見えている。
「神殿の外に出れば、ルーラだって平気だろー。早く王妃サマを連れて帰らなくちゃなー」
「ビアンカ、サムソウ。ハヤク、アッタカイトコロニ」
「ピィピィ」
魔物の仲間たちが先導して大神殿の外へ向かう中、リュカは隣を歩くティミーが未だ一言も発していないことに不安を感じていた。彼はリュカの腕の中で今にも眠ってしまいそうな母をただ大人しく見つめるだけで、いつもの元気を見せていない。その瞳は今もまだ、不安に揺れている。
大神殿の外に出れば、外には夕日が落ちかけ、セントベレスの山を橙色に染め上げていた。この万年雪が積もるような高所にあって、過去の記憶からも解き放たれていないリュカが、初めてこの地で暖かさを感じた夕日の色だった。この大神殿の主とも呼べるイブールの存在が失せた今、大神殿自体にまとわりついていた強大な魔力も失せていた。メッキーが威勢よくルーラの呪文を唱えれば、仲間たちを包み込む呪文の力はいつも通り発動し、夕日から遠ざかるように彼らは一塊となって東へと飛び去って行った。



静かな夜の森が月明かりに照らされ、青く浮かび上がって見えた。暗い森の海の中に、絶えず明かりを灯し続けるグランバニアの国がある。人々の眠るこの真夜中でも、城の外には明かりがあり、そこに人々の生活があるのを目にすることができる。
リュカはビアンカを抱えたまま、ルーラの着地点であるグランバニア城の屋上庭園に静かに降り立った。ティミーもポピーも、仲間たちもほぼ同時に降り立った屋上庭園には、一年を通して様々な花が咲いている。月明かりに照らされる白い花を目にしたビアンカは、ゆっくりと頭の中の記憶が整理されて行くのを感じていた。
人々はとっくに寝静まるような真夜中の時間、本来ならば屋上庭園に人影などないはずだった。しかしそこには、庭園での思い出に浸っている一人の女性がいた。
「ドリス、こんな時間に起きてたの」
リュカが声をかけても、ドリスはその場に立ち尽くしたままだ。彼女の瞳は当然のように、リュカが抱えている思い出の人に向けられている。
「ダメだよ、一人でこんなところにいたら。さあ、早く部屋に戻らないと」
「な……何言ってんのよ、リュカ。そんな……それどころじゃ……」
「詳しい話は明日、ちゃんとみんなにするからさ。今は、ごめん、ちょっと休ませて欲しいんだ」
リュカが抱え直すビアンカの姿を見ながら、ドリスは彼女の意識がまだはっきりとしていないのだと理解した。半分閉じられたような目は眠気を堪えるようで、まだかつての溌溂とした美しい王妃の姿は望めないのだと、何度も頷いて見せた。
「わ、分かったよ! あたしはオヤジやサンチョに知らせておくよ」
「でももうこんな遅い時間だし、朝になってからでも……」
「何言ってんの! こんな、こんなこと、朝まで待てるわけないでしょ! どれだけあたしたちが待ち望んでたと思ってんのさ!」
思いを言葉にしている内にみるみる目を潤ませたドリスは、夜の鳥の泣き声だけが森に響く静かなグランバニアの中で、思わず叫んでいた。しかしその声も涙に震え、最後には掠れてしまう。一流の武闘家としての鍛えた手で両目に浮かぶ涙を何度も拭うが、次から次へと涙が溢れてどうしようもない。
「みんなを起こしたくはないから、なるべく静かにね」
「本当なら国中のみんなを叩き起こしたいくらいだけど、我慢するよ」
リュカと会話をしながらも、ドリスはまるで子供のように泣きじゃくりながら言葉を返していた。そんなドリスの姿を、ティミーとポピーは無言で見つめる。二人の知らない母とドリスの時間が間違いなくあったのだと思うと、二人の心の中に得も言われぬ羨ましさが生まれる。
「リュカ」
「何?」
「ありがとう。本当に……ありがとう、リュカ」
そう言いながらドリスはビアンカを抱えているリュカに深く頭を下げた。いつも勝ち気で、どこか尊大な態度を取ることもあるドリスだが、彼女の心根は非常に柔らかく、礼儀正しい。
「お礼を言いたいのはこっちだよ。みんなのお陰なんだ。みんなが待っていてくれたし、協力してくれなきゃ、こうして助け出すことなんてできなかった」
そう言ってリュカはドリスに微笑むと、ドリスも釣られるように微笑んだ。涙は相変わらず止まらないが、長年の希望であった王妃の帰還を目の当たりにすれば、流れる涙が止まらないことなどどうでも良かった。
リュカの腕の中で眠そうな表情をしているビアンカに、ドリスは声をかけようとして口を開くが、口から出る言葉に戸惑いが生じる。自然と出るはずの言葉のどれもこれもが、喉の奥に仕えて出てこない。一体どのような言葉をかけるのが正しいのかと考え始めると、最も適した言葉が思い浮かばない。
躊躇するドリスに、ゆったりとした声がかかる。
「……ドリス?」
十年ぶりに耳にする王妃の声は、寂しくも薄れていた過去の記憶を一気に蘇らせる。ドリスは泣き顔のままビアンカの眠そうな表情を凝視すると、王妃は笑みを浮かべながら言葉を続けた。
「綺麗になったわね」
ドリスが十年前の記憶を辿るのと同様、ビアンカもまた十年前のドリスの姿を思い出していた。まだ少女の域を出ない、元気過ぎるほどの娘だった。それが背も伸びて、今では立ち並べばビアンカとさほど変わらないほどの背丈になっている。身体つきも女性らしくなり、しかし根っからの武闘好きの彼女は女性にしては身体の線がしっかりとしている。リュカと同じ黒髪は前と変わらず肩口で切り揃えられ、それが娘と同じだということにビアンカはこの時気が付いた。
「……王妃様の足元にも及ばないよ」
ドリスの言葉にいつもの溌溂としたビアンカならばすぐにでも言葉を返しただろうが、今はまだその元気も戻らない。ただ眠そうに微笑むビアンカを見て、ドリスは今はとにかく王妃様を休ませなくてはならないのだと、いくらでも話したい欲求を抑えて身を引く。
「じゃああたしはオヤジたちのところに行ってくるから! 王妃様を頼んだよ、リュカ!」
「うん、ありがとう、ドリス」
礼を述べるリュカの両脇に立つ子供たちの様子を、ドリスはちらと窺う。初めて目にする母の姿に、双子はまだ戸惑っているのかもしれないと、どことなく距離を感じる二人の様子にドリスは安心させるように声をかける。
「これからゆっくり、家族で色々と話したらいいよ。良かったね、二人とも」
そう言ってティミーとポピーの頭を順に撫でると、ドリスは身を翻して屋上庭園から走り去ってしまった。夜着のゆったりとしたドレスを着ているとは思えないような軽々とした身のこなしに、ドリスの武闘家としての身体能力を見てリュカは思わず笑みを浮かべる。
「リュカ殿、我々も仲間たちや城の兵士たちに知らせておきたいと思います」
そう言いながらピエールが見ているのは、見張り塔に立つ兵士の姿だ。
「今夜はとにかくゆっくりとお休みになってください」
屋上庭園から城の中へと通じる扉の外にも当然、見張りの兵士が二人立つ。彼らはこの真夜中の時分に国王らが空を飛んで帰還したことを当然知っている。そして自身の持ち場を離れないままに、庭園に佇む国王たちの動向を見守っている。しかしまだ、王妃が十年ぶりに戻ったことには気づいていない。
「ビアンカが帰って来たから、明日はパーティーかー?」
「ッキッキー!」
「……うーん、それはちょっとできないかな。でもみんなにも必ず公の場所で知らせるよ」
この二年の間、リュカは王妃であるビアンカを救い出す目的で世界のあちこちを旅して回っていた。国民の多くは、リュカが亡き先代の王パパスの遺志を継ぐかのように、王妃ビアンカ、そして先代の王妃であるマーサを救出することを悲願としていた。しかし全国民が快くリュカの行動を認めていたわけではない。当然、一国の王が自ら世界を自由に旅して、妻と母の奪還を求めることに異を唱える人々もいた。国の兵士に任せればよいのだと口にする者もいた。むしろ、そちらの考えの方が余程現実的で、国王代理を務めるオジロンもまた内心ではリュカの命懸けの旅を快く思っていない節があった。いつ兄のパパスと同じ轍を踏むことになるのかと、常に彼の心の中には不安が満ちていたに違いない。
しかしようやく二つの悲願の内の一つ、ビアンカの救出に成功したとなれば、オジロンも手放しで喜んでくれるに違いない。そしてこの成就は、暗くなりがちだった国民にも明るい希望を取り戻させることができるだろう。
「ピィ、ピィ」
「……うん、寝ちゃったみたいだね」
王妃帰還のパーティーを催すにしても、当の王妃の身体の状態がまだよく分からないような状況だ。今も抱えるリュカの腕の中で、疲れか呪いの後遺症か、静かに眠り始めてしまった。今日の明日で、彼女が国民の前に立つことは、返って国民の不安を生じさせかねないだろうと、リュカは呪いから解かれたばかりの彼女の身体を慮る。
「ビアンカ、リュカ、ティミー、ポピー、ミンナ、ツカレタヨ」
人の心配をしながらも大きな一つ目をしょぼしょぼとさせ、毛むくじゃらの腕で目を擦るガンドフを見て、彼もまたつい先ほどまで共に戦ってくれたのだと、リュカは労いの心を持ちながら笑みを見せる。ベホズンも大きな身体を揺らし、リュカが抱えるビアンカを覗き込んでいるが、その目は今にも閉じかけている。皆が皆、今は疲労困憊で、直ちに休息が必要な状況なのだ。
「ガンドフもね。みんなも本当にお疲れ様。また明日からよろしくね」
「がうがう」
魔物の仲間たちが皆、彼らが休める場所へと向かおうとする中、プックルだけはリュカの傍をぴたりとついて離れなかった。その青い瞳は常にビアンカの様子を窺い、眠ってしまった彼女を心配そうに見つめている。もう二度と彼女の傍を離れるものかと言わんばかりに、眠るビアンカにまるで子猫のようににゃうにゃうとごく小さな鳴き声で呼びかけている。
「プックルって本当に……大好きなのね」
そう言ってポピーはプックルの大きな身体に寄り添った。かつて幼い頃の母がまだ小さなプックルを助けるために、夜中のお化け城へ冒険をしたことを彼女は父リュカから聞いている。まだ見ぬ母の話を、ポピーもティミーも父から色々と聞いている。母の幼い頃を知るサンチョも、幼い頃の母はとてもお転婆だったと楽し気に話していたことがあった。皆から愛される母の存在を、双子はその話の中に夢見て、既に尊敬している。
「お父さん、プックルも一緒に部屋に連れて行こうよ」
久しぶりにティミーの声を聞いた気がした。しかしその声にも、いつもの元気で快活な彼の様子は戻らない。息子の顔を見てみても、まだ彼は夢の中にいるようなぼうっとした表情をしている。生まれてから育ち十年、このグランバニアの景色を見てきたはずの彼だが、今初めてこの地に立っているかのような、よそよそしさがそこにある。
「いいよ。プックルもおいで」
「がうっ」
ティミーの表情には暗さがあるわけではない。しかし初めて会ったに等しい母を見て、そしてまだ一人で立つこともままならないほどに弱々しい母を見て、間違いなく不安を抱いている。彼の不安を和らげるためにも、生まれた時から共に過ごすプックルが傍にいてくれるのは大いなる助けとなるだろうと、リュカはプックルも共に国王私室へ向かうことを勧めた。
目を丸くして現実を受け止めきれないような兵士に一言二言話をして、リュカはようやくそろった家族と共に自室へと向かった。その間、真夜中と言う時分もあり、ティミーもポピーも静かに押し黙ったまま歩いていた。ポピーがさほど躊躇なく母の姿を見る一方で、ティミーはプックルを心の拠り所とするように、赤いたてがみに捕まるようにして隣を歩いていた。リュカはそんな二人の違いを見ながらも、これからはずっと母子共にいられるのだという安堵と達成感と共に、眠る妻の身体を抱き上げ直した。



「そう……。私ったら十年も石にされてたのね……」
グランバニアの国王私室に、窓からの明るい日差しが入り込む。朝の時間はとうに過ぎ、間もなく昼を迎えようとする頃に、ビアンカは広いベッドの上に身を起こした状態で座っている。既に身ぎれいにしている彼女だが、まだ身体の感覚が元に戻らないようで、身支度をするにもかなりの時間を要した。侍女の手伝いがなければ、まだ彼女一人では服の着脱も難しい様子だ。
ベッドの傍にはリュカと二人の子供たち、プックルもベッドの縁に顔を乗せる勢いでビアンカの様子を窺っていた。その他二人の侍女が控え、いつでもビアンカの助けができるようにと王妃の様子に目を向けている。その内の一人は事あるごとに目尻を拭っており、感極まる状態から抜け出せないようだった。
既に朝の内に、グランバニア王妃の十年ぶりの帰還の出来事が、国中に知らされていた。城下町の一角にある教会で、オジロン及びサンチョが祭壇に立ち、国民に念願叶ったと知らしめていた。国民は歓喜に沸いていたと、後にリュカは二人から聞いた。当然、オジロンもサンチョも、この部屋を訪れ、ビアンカの姿を目にしている。その時のサンチョの感動の度合いに比べれば、まだ国民の感動は落ち着いたものだろうとリュカは勝手に想像していた。
ビアンカが目覚めた時から、時は忙しなく動いていた。昨夜は眠る彼女をこのベッドで一人寝かせ、リュカは床で、旅に出ている時によくするようにプックルにもたれかかりながら眠っていた。ティミーとポピーには母の隣で眠っても良いのだと声をかけたが、親子三人で寝てもまだ余るほどの大きなベッドに、彼らは行かなかった。ポピーは母の眠りの妨げにはなりたくないと、リュカの隣で、リュカと同じようにプックルにもたれかかるようにして眠っていた。ティミーは無言のまま眠る母をしばし見つめ、そしてポピーと同じようにプックルの背にもたれて眠っていた。しかしいつもの健やかな寝息がなかなか聞こえなかったのを思い出せば、彼があまり眠れていなかったのだとリュカは知っていた。
「十年……十年か。なんだか、あんまり分からないわね」
リュカと共に石の呪いを受けた彼女だが、その状況はリュカとは異なるものだった。リュカも八年の間、石の呪いの中に閉じ込められたままだったが、彼の視界は閉ざされないまま否が応でも移り行く景色を目にしていた。しかしビアンカの記憶はあの大神殿に移動して間もなく、途切れてしまっていた。視界は暗闇に覆われ、時間の感覚も分からなくなり、時折暗闇の中で意識を取り戻したような状態になっても、それがどれほどの時間だったのかも分からず、そして突然光に晒され、この世界に戻って来たのだという。
その話を聞いて、リュカは安堵していた。あの場所でもし、リュカが受けた呪いのように視界を閉ざされず、時間の経過も感じつつ過ごすことを強要されれば、彼女は奴隷たちの酷い状況を目の当たりにしていただろう。正義感の強い彼女が、救いの手を伸ばしたいようなその状況の前に為す術もなく立ち尽くすのみとなれば、心に受ける傷は計り知れないものになったに違いない。
ビアンカにはまだ、この世界に再び命を取り戻した感覚が薄いようで、ものの感覚を無意識に確かめるように、腰近くまでかけられている薄い上掛けを両手で軽く握ったり擦ったりしている。そうすることで、彼女は自分の手がものに触れていることを実感している。
「リュカ、助けてくれてどうもありがとう」
そう言いながら微笑むビアンカを見て、リュカは顔を歪めながら首を横に振る。
「お礼なんて言われる筋合いじゃないよ。全ては僕の……」
「そういうの、良くないわよ、リュカ」
「え?」
「あなたが自分を責めれば、私も自分を責めるわ。だって私だってあの時、他にやりようがあったかも知れないもの」
後から考えれば様々な方法が思い浮かぶ。大声を上げて助けを呼ぶべきだったかも知れないし、初めから大人しく魔物に捕まりその後に隙を窺うべきだったかも知れない。自らの命を絶てば、下手にリュカたちが北の塔に近づくことを避けることもできた。最善の対応ができたかどうかなど、ビアンカにも一つも自信がないのが事実だ。
「反省することはいいことだけど、後悔してばかりじゃ前に進めないわ」
彼女が強い言葉を口にすれば、周りは必然的に元気づけられる。そしてその実、彼女は自身の心を元気づけているのだ。今、恐らく最も不安に駆られているのは、間違いなく彼女だ。十年の時が自分の知らぬうちに流れ、ベッドの傍にはあれから十年の月日を過ごし、成長した二人の子供がいる。眠りにつき、目を覚ましたら、赤ん坊だった我が子が立派な少年少女に成長している現実など、母として向き合うには非常に過酷なことだろう。
しかしそんな強い後悔の念に蓋をして、ビアンカは母として子供たちに接しなければならないと、必死に自分を強く保とうとしている。そしてひと度、二人の我が子の顔を見れば、彼女の表情は自然と母親としてのものになるのだから、リュカはそんな彼女の表情に母と子の絆の強さを否応にも感じる。
プックルがビアンカの傍を離れない。大きな頭を近づけるプックルの赤いたてがみを、ビアンカはまるで子猫に接するように優しく撫でている。その姿を、ティミーとポピーがじっと見つめている。
「前に、進まないとね」
「……うん、そうだね」
ビアンカの言葉に、リュカは同調する。生きている限りは、前に進むことしかできないのが生き物の定めだ。時間を戻すことができないことは、リュカ自身心底理解している。たとえ時間を戻し過去をやり直せたとしても、それをするべきではないとリュカに伝えたのは、過去のサンタローズで出会った父パパスだ。
プックルの頭に乗せるビアンカの手に、リュカも手を重ねる。その手を握れば、ビアンカもリュカの手に合わせて握り返してくれる。温かな彼女の手に触れることで、彼女が戻ってきてくれたのだという実感が新たに沸く。そうしてもう何度目になるか分からない嬉しさが込み上げてくる。
「それから」
それだけを言って、ビアンカは視線をゆっくりと移した。彼女が見つめるのは、十歳と言う年齢にまで成長した双子の子供たち。
「ティミー、ポピー……」
まだ生まれて間もない赤ん坊の二人を腕に抱きながら、ビアンカは十年前に何度も二人の名を呼んでいた。泣くか乳を飲むか眠るかしかないような小さな小さな赤ん坊の名を、ビアンカは大事に大事に呼んでいた。この名があなたたちの名前なのだと教えるように、この子たちは私たちの掛け替えのない子供たちなのだと自身の胸に深く沁み込ませるように、呼ぶ度に得も言われぬ感動があったのをつい昨日のことのように覚えている。
母に名を呼ばれた二人は、初めて母に名を呼ばれたような感動に包まれた。二人には当然、赤ん坊の頃の記憶などない。赤ん坊の頃に母に幾度も名を呼ばれたことなど、他人事のように想像できるだけだ。しかし母を捜し続ける旅をする中で、二人は無意識にも母に名を呼ばれることを夢見ていた。今、現実に名を呼ばれた二人だが、まだ夢見心地のような様子で、ただ母ビアンカの美しい顔を見つめている。
ビアンカが両足にかけてあった上掛けを静かに取り払う。まだ身体の使い方がぎこちない彼女だが、ゆっくりとベッドの上を移動し、縁から両足を下ろした。リュカは彼女の背を支えるが、ビアンカは「大丈夫」とリュカの腕を擦って背から外させた。少々ふらつきながらもベッドの脇に立ち、ビアンカは自分から目を離さない二人の愛しい子供たちを見つめる。
「今までほっておいて本当にごめんね」
堪えようとしていた彼女だが、声は既に涙声だった。母として、子供たちの傍にいられなかった悔やんでも悔やんでも悔やみきれない激しい後悔が、彼女の心を竜巻が襲うように湧き上がっていた。前に進まねばならないという、先ほど自身が口にした強い思いも間違いなく心にある。しかし今は、成長した我が子を正面に見た今は、子供たちの傍にいられなかったという思いだけが、ビアンカの胸中を占めていた。
「もうこんなに大きくなっちゃったけど……」
そう言いながら、ビアンカは隠すこともなく涙を手で拭う。
「抱っこさせてもらえる?」
母が両手を広げている姿を目にしたティミーとポピーは、同時にくしゃりと顔を歪めた。記憶もない赤ん坊の頃に、その腕の中に抱かれていたのだと、想像だけではない温もりを感じたようだった。そして今になって、その温もりをこの身に感じることができるのだと、ポピーが一歩を踏み出し、ティミーも一歩を前に踏み出した。
「お母さーん!」
母の腕に飛び込むティミーとポピーの姿に、リュカはようやく一つ成し遂げたのだと、頷きながら目の奥を熱くしていた。十年の月日の間に、ティミーもポピーもすくすくと成長した。しかし彼らの人生の中には、長い間父も母もいなかった。
いつでも彼らは元気だった。落ち込んだ姿など、ほとんど見たことがなかった。しかしやはり、彼らの心の中にある大きな柱はずっと、失われていたのだ。その大きな柱をようやく取り戻すことができた。
二人が常に強くあり続けられた理由の一つに、母ビアンカの強さがあるのだとリュカは思っている。子供の成長を知らなくとも、母の温もりを覚えていなくとも、血を分けた母と子の間には何にも邪魔されない継承があるに違いない。母が強い言葉を口にして、自ら強くあろうとするその意志は、恐らく特別ティミーに強く受け継がれているのではないだろうか。そしてその血がきっと、勇者として覚醒した。
しかし強くあろうとする者も、常に強くいられるわけではない。どれほど強い者でも、一人ではいずれ潰れてしまう。強くあろうとすればするほど、強い支えが必要なのだ。
常に元気で明るく、皆を活気づける役目を買って出るようなティミーが、今は母ビアンカにしがみつくようにして泣きじゃくっている。大声を上げて泣いている。赤ん坊の頃にきっと、母の腕の中で泣き足りなかった分を今、存分に泣いて泣いて甘えているのだと思うと、リュカは今までどれほどティミーに我慢をさせてきたのだろうかと、胸が締め付けられるようだった。
「お母さん……」
ティミーの頭を左腕に抱き、ビアンカはその癖の強い金髪を愛おし気に何度も撫でる。勇者として生まれ、世界を平和に導く運命を背負い、逃げたくとも逃げられないその宿命の中に生きるティミーが心の底から甘えることのできる存在が、母ビアンカなのだと、リュカは感じていた。そしてビアンカもまた、勇者である息子を限りなく甘えさせることのできる唯一の存在なのだと言わんばかりに、母と子の間に距離などあるものかと癖毛の髪に顔を埋めている。
ポピーも同じように母に抱きついて泣き声を上げていたが、間もなくその様子は落ち着いた。そして母の顔を間近に見つめれば、ビアンカもまた娘の顔を見つめ返し、微笑む。その状況を見ながらリュカは、やはりこの母と娘はよく似ていると、鼻をくっつけて微笑み合う二人を見てそう思った。
リュカの視線を感じてか、ポピーが泣き顔のままリュカを見上げる。潤む目のまま、ポピーは母の肩に頭を乗せて、どこかいたずらっぽい表情でリュカに言う。
「お母さんがこんなに綺麗な人だったなんて……。お父さんも結構スミに置けないわね」
「えぇっ?」
「まあ……!」
父と母が同時に驚く様子に、ポピーは可笑しそうに笑い、再び母の胸に飛び込んだ。娘の肩口で切り揃えられた金髪を撫でながらビアンカはリュカを見上げ、「スミに置けない人なんですって」と揶揄うように言って笑う。リュカは困ったように笑いながらも、明るい家族の時間が始まっているのをじわじわと感じ始めていた。
ベッドの脇に立っていたビアンカだが、立ち続けられるほどにはまだ体力が戻っていない。その内ベッドの縁に腰かけながらも、まるで二人の赤ん坊を腕に抱くようにティミーとポピーの頭をずっと撫で続けている。彼女の足にはプックルも寄り添っている。プックルはその大きな身体で、双子の子供とビアンカとを丸く囲み抱くように、床に寝そべっている。
その時、部屋の扉を叩く音が小さく響いた。侍女の一人が扉に向かえば、扉の外では一人の兵士が何事かを侍女に告げている。「国王に……」と言葉が聞こえたリュカは、扉の内側で対応している侍女の戸惑う様子を助けるように、自らも扉へと向かう。
「リュカ王。恐れ入りますがオジロン様がお呼びです」
伝える兵士も今この場で呼び出すのは気が引けると言った様子だが、彼はグランバニアを守る兵士であり、彼には彼の役割がある。リュカはこの国の王として、兵士の役割を正確に認めなくてはならない。
「うん、分かった。でも……もう少し待ってくれるかな」
「はい、承知しております」
リュカの言葉を聞かずとも状況を理解している兵は、一度大人しく扉の外へと引き下がった。リュカにとっては二年ぶりの、ましてや子供たちにとっては生まれて初めての対面に等しい母との再会だ。かけがえのない親子の再会を無駄に邪魔するほど、グランバニア兵も野暮ではない。
リュカが部屋に戻る途中、「リュカ」と彼の名を呼ぶビアンカの声が聞こえた。
「気にせず行ってきてもいいわよ」
ベッドの縁に、ビアンカを中心として二人の子供たちが同じように腰かけていた。大きくなった二人の子供たちの肩を抱き、自分の身体に寄りかからせているビアンカの姿は、まさしく母の姿だとリュカにはそう見えた。泣きじゃくっていたティミーも今は少し落ち着きを取り戻し、目を赤く腫らしながらも部屋に戻ったリュカを見つめている。それに比べ、ポピーは同じように目を赤くしながらも、少し余裕のある表情でリュカを見て小首を傾げている。
「本当はもう少し傍にいたいけど……」
「大丈夫よ。だって……」
そう言ってビアンカは子供たちの肩に乗せる手で、二人の肩をポン、ポンと軽く叩く。その一定のリズムは彼女が赤ん坊だった二人を胸に抱いている時に無意識に現れていた愛情の動作だ。
「だってこれからはずっと一緒にいられるもんね」
彼女の未来に続く言葉が、リュカの心をこれ以上なく明るく照らす。今まではどこか無理をしながら、子供たちの手前弱いところなど見せられず、リュカは前を向き続けてきたつもりだ。しかしこれからは、共に背中を支え合いながら歩める妻がいてくれる。彼女が希望に満ちる言葉を口にすれば、それはそのままリュカの希望となる。
「愛してるよ、リュカ」
子供たちがいても、侍女たちがいても、彼女は恥じらいなく素直に夫に愛の言葉を伝える。今のこの時を逃してはならないと、これまでの取り戻せない十年を取り戻すように、ビアンカはにこやかにリュカを見つめている。そんな彼女の姿を見れば、必然とリュカの胸の中にも妻への愛情が堪らず込み上げた。
ベッドの縁に腰かける彼女に近づく。足元にいるプックルの上から、彼女の方へと身を乗り出す。子供たちが間近に見上げるのにも構わず、リュカは妻の両頬を両手に包むと、そのまま口付けた。
「僕も愛してるよ、ビアンカ」
そう言ってもう一度口付け、見つめ合い、互いに微笑みを交わし、リュカは母の両側に座る子供たちの頭を優しく撫でた。父の母への深い愛情を目にしたティミーとポピーは、まるで自分に向けられた愛情を感じたかのように嬉しそうに笑った。そして名残惜しそうに妻の頭を一度撫でると、リュカは部屋の扉へと再び向かい歩き出した。

Comment

  1. ともこ より:

    bibiさま
    お忙しい中、更新お疲れ様です
    ありがとうございます、待っていました(涙)

    前回もホロリと涙しながら読み終えましたが、今回はボロボロと涙流して読んでました…もう何周も。

    梅雨明け→猛暑→また雨、豪雨と不安定なお天気、bibiさまの地域は大丈夫でしょうか
    お身体にも気をつけてくださいませ
    次回の更新もゆっくり気長にお待ちしてます
    どうかご無理のないようにお願いします
    (夏休みも、もうすぐですからお子様達と夏の思い出もたくさん作ってくださいね)

    • bibi より:

      ともこ 様

      コメントをどうもありがとうございます。
      この辺りの場面はどうやっても涙なしには語れない、と言ったところでしょうか。それだけに書くのにプレッシャーがありましたが(汗) 何周もしていただけるなんて、有難いことです。

      不安定な天候が続きますね。6月末の猛暑には一度参りかけました・・・。何せ、暑さに弱いもので。油断するとすぐにプチ熱中症になるんですよね。気を付けなくては・・・。ともこさんも身体には十分にお気を付けくださいませ。

      ぼちぼち子供の夏休みに入るので、またのんびり更新になるかと思います。主人の仕事も少し手伝う予定なので・・・本当にのんびり更新をお待ちくださいm(_ _)m

  2. ケアル より:

    bibi様。
    更新を心からおまちしていましたよ。

    子供たちとビアンカの初対面、ゲームでは短い話をbibiワールドでここまで詳しく描写してくださると、読者はもう涙うるうるであります(涙涙)
    感情輸入していた時に、ポピーのあの有名な台詞、思わず泣き笑いしちゃいましたよ(涙笑)
    bibi様がどのあたりであのポピーの有名な台詞を描写してくれるかと思っていたら、いやぁbibi様にやられました(笑み)
    bibi様、執筆ありがとうございました!

    次回はオジロンと命のリングの話、マーサの話、魔界の話になりますか?
    パーティにビアンカ加入、これからの編成が気になりますしビアンカの装備が気になります。
    たしか、ビアンカは呪文がザラキまで習得してましたよね、残りはベギラゴンとメラゾーマ、リュカはメガザル、ティミーはギガデインとミナデイン、ポピーはイオナズン、それぞれ気になります!
    次話お待ちしていますね。

    • bibi より:

      ケアル 様

      コメントをどうもありがとうございます。
      こういう場面はどうしてもじっくりと書いておきたいんですよね。ドラクエ5の醍醐味、ですから。
      ポピーのあのセリフは絶対に入れようと思っていました。おませで可愛いですよね。小さい頃のビアンカがいかにも言いそうなセリフで(笑)

      次回はその辺りのお話になりそうですね。ただ私がばらまいた話が色々と散らばっているので、その辺りもちょくちょく書いて行ければと思います。
      呪文や装備も、これからまた彼らの成長と共に書いて行ければと思います。いよいよ仕上げ・・・という感じになりそうですね。

  3. やゆよ より:

    bibiさま

    お疲れ様でした。一家がついに揃いました。泣けました!ビアンカファンの、やゆよがコメントするだろうって思いました?笑 もちろんさせて頂きます!笑 ドラクエ5のなかでも、特に名シーンですが、より感動的に描いてくれており、感服致しました。リュカとビアンカはもちろん、子供達もたくさん甘えていちゃついて欲しいですね泣!

    あ、そろそろ、ダンカンに会いに行って欲しいなぁなんて思ってます笑 ビアンカ救った後は、一家で里帰りのシーンなんかを見てみたいですね!ゲームでも、ビアンカ復帰後は、特別な会話が用意されてましたし!笑

    • bibi より:

      やゆよ 様

      コメントをどうもありがとうございます。
      ようやく一家そろいました。ビアンカファンのやゆよさんに喜んでいただけたようで何よりです。ここまで頑張って書いて良かった^^
      ドラクエ5は名シーンが多くて、色々と書くのに緊張します(笑) これでいいのか、もうちょっと書き方があるんじゃないかと、書き直しを始めればキリがなくなるので、どこかで妥協する感じでこうしてアップしています。他にも色々とパターンを考えていた中の一つ、というところです。

      ダンカンさん、もちろんこの後、どこかのタイミングで会う予定です。ちゃんと無事に戻りましたと報告をしに行かないとね。この後は色々と、まだあちらの世界へ行く前にやらねばならないことが盛りだくさんです。と言うか、私がやりたいことがまだまだあるという・・・。でもなるべく早めにあちらの世界へ向かえればとも思っております。恐らく私が一番、このお話の完結を見たい、と思っているので(笑)

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