「李登輝の箴言」を読んで

 

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私が学生時代の時はもうかれこれ二十年以上も前のことですが(三十年以上?)、当時はただ学校の授業を受けて、その知識に勉強をして、それだけである意味満足していたように思います。目指すところが、とりあえずの受験だったんでしょうね。その先にある将来の夢なるものももちろん持っていましたが、それもフラフラするもので、定まりはしなかったです。

幼稚園の頃は母を見て看護婦さんになりたい、小学生の頃は漫画家になりたい、中学生の時に少し英語に目覚め始め、高校の時に一度長編小説を書いて投稿してみて、大学は英文科に進み、でも就職時は氷河期真っ最中で職を選べる状況でもなく、ただ目の前の契約社員の職に就き、それも合わないと間もなく辞め、また異なる職に就き、ちまちまと奨学金を返済し……のような、振り返ってみても、まあ、流される人生を送っているなぁと感じます。特別、後悔はしていませんが、でももっとやりようもあったんじゃないかとも思いますね、本心では。

こんなフラフラとした状況になるというのも、自分の中に「芯」がないからなのかなと、今になってそう思います。しかし人が拠り所にする「芯」ってどうやったらできるものなのか。一切の疑いを持たずに信じられる何かがあれば、これほどフラフラすることもなかったんじゃないかと思うわけです。どうして自分の人生の中で、そうした「芯」に出会えなかったのか。それがあれば、もう少し色々と自分に自信も持てたんじゃなかろうか。

思えば、小さい頃からもっともっと、先人の生き方を学べばよかったんじゃなかろうかと。いくらでも世に残された本があるわけです。そういう本を読んで、先に生きた偉人などの生き方や思いや行動を見て行けば或いは私ももう少しフラフラせずに生きて来られたんじゃないかなと。小さい頃なんか、いくらでも時間があったと思うんですけどねえ。何をしていたのかな……あ、ゲームや漫画に明け暮れていたのか(苦笑) いや、笑えないわ。

そんな思いもあり、今の私は親として、息子にこれからの時代(きっと荒れた時代になる……)を生きるためにも、少しでも力になれたらと本を読み聞かせていたりします。

その一つとして、今回は「李登輝の箴言(りとうきのしんげん)」を一冊、時間はかかりましたが読み聞かせで一緒に読みました。

李登輝(りとうき)という名を聞いたことはあるでしょうか。私は……すみません、本当に無知極まりなく、存じませんでした。まだ若い頃に、友人と台湾に旅行に行ったことがあるにも関わらずです。本当に、自分の人生、一体お前は何をしてきたのだと責めてやりたいくらいです。

李登輝……たった一人で台湾を民主化に導いたと言われる、元台湾の総統に就いていた方です。この方一人が成し遂げた事、お人柄などが、「李登輝の箴言」という一冊の本に詰まっています。

しかし私たち現代に生きる日本人は先ず、台湾をあまり知らないのではないでしょうか。これって歴史的に考えると、本当にとんでもない話なんです。私は今をもってまだ進撃の巨人に嵌っているのですが、それこそ私たち自身が記憶を消された壁内の人間たちみたいなもの、と譬えることができるんじゃないかと思っています。あの漫画は本当に、風刺の強い内容だなと、まだまだ熱冷めやらずである意味困っています(笑) あ~、ベルさんの話を書きたい。

かつて台湾が日本だった歴史から、まだ百年も経っていないんです。私が無知のまま台湾旅行に行った際に驚いたのが、現地の方が普通に日本語で話しかけてきたことでした。とても親し気に。通じるんです、日本語が。どうして? とその時は驚きと、無知ゆえの恐怖で、そそくさとその場を離れてしまったのですが、今では本当に申し訳ないことをしたと思っています。今思い返してみると、この本を読んだ後と言うこともあって、涙が出てきます。無知と言うのは本当に罪深いと、改めて感じています。

学生の頃にもちろん、歴史の授業を受けると思いますが、当然のように近代のことについてはさらりと表面だけを滑るように終わらせていくのではないかと思います。近現代のことって恐らく最も知っておかねばならないことなのでしょうが、私の記憶では三学期の最も短い期間に一気に進めていたように思います。一番記録も残っていて、内容も濃いのに。

そもそも、日本は世界でも最も歴史の古い国で、学ぶ歴史は数知れず、ということもあるでしょうね。でも肝心なのは、歴史を学ぶことではなくて、歴史に学ぶこと、でしょう。そんなの、大人だったら分かっているはず。だって年を重ねれば重ねるほど、失敗経験も積んで、その失敗に学んで、今度は失敗しないって、そういう人生を送るように自然と思うものです。誰だって、失敗や後悔はしたくないんだから。だから自分の子供にもなるべく失敗しないようにと、前もって注意をしたり叱ったり、それってとても普通のことだと思うんです。本能的と言ってもいいかも知れないですね。

後悔や失敗をしない人生を送らない人はいないのかも知れないけど、避けられるものなら避けておいた方が良いもの。止むを得ずそちらの道に行かねばならない場合でも、できるだけ後悔も失敗も小さなものに留められればその方が良い。その為に何が必要かと言えば、知識に経験に、それと「芯」となるものだと思います。こちらの本を読むことで、それら全てを積み重ね、得ることができるのではないかと思います。

李登輝さんの何が素晴らしいところかと言うと、そのお人柄。一般的に政治家と言うと、何やら嫌なイメージがありませんかね、皆さんの中にも。まあ、今の世の中を見ていると溜め息が出てきてしまうことが多くあるのが現実です。

しかし李登輝さんにあっては、それらがない。清潔な政治家には力がない、力がある政治家は清潔さに欠ける、と、相容れない関係があるように思えるものですが、李登輝さんは力も清潔も、二つのものを兼ね備えた稀な政治家、という位置にある方です。これはもう、お手本にすべき偉人と言っても良いんじゃないでしょうか。

何故そんな人物がいるのか、と疑問に思うところではありますが、それはこの方がしっかりとした理想を掲げていたから。曲がらない理想や理念があれば、それと合わせて知識や教養にも長けていれば、いわゆる金や異性の問題に引きずり込まれることもないという、お手本の方です。

そういう李登輝さんご自身は、日本の教育を受けた方の一人です。むしろ、日本の影響を多く受け、それを基に偉業を成し遂げられたという部分もあります。当然ですが、この方にも「芯」が築かれる人生の過程があったわけです。そこに、日本という国があったと。

台湾を知るにも、また日本を知るにも、こちらの本はお勧めできるものです。私たち戦後に生きる日本人はおよそ自国についてあまりにも知らないまま。それって本当は世界的に考えても、恥ずかしいことなんですよね……。日本のことをどんどん知って行くことだけできっと、日本人は日本人の誇りを持てるんじゃないかな。伊達に二千年以上も続いている国じゃないんだもんね。

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