グランバニアと北の塔(DQ5)
前回書いた「ロザリーヒルとエルヘブン」のように、DQ4とDQ5の世界を比べると、他にもいろいろと気になる場所があります。その中で今回は、DQ5の「グランバニアと北の塔」について、思っていたことをここに書いて行こうと思います。
前回に書きましたように、DQ4とDQ5の世界は続きの世界とは言え、あまりにも地形が変わっていて、地殻変動でもあったかしらと思った上でこの二つの世界を眺めています。その上で、DQ5のグランバニアは、DQ4の世界でのソレッタがあった場所だと、私は考えていました。
DQ4のソレッタという国、王様まで鍬を持って畑に出るような国で、国としては貧しい様子が描かれていたと思います。ゲームをしながら、どうやら王様らしいぞ?と思うキャラが畑にいる映像を見て、初めは「?」となったのを記憶しています。しかしあの姿を見るだけで、このソレッタという国の在り方が感じられるのは、やはり堀井さんの見せ方は秀逸だなと思わずにはいられません。
あのソレッタの王様、決して国民にだけ働かせるのではなく、国が困っているのだから、王であろうが何だろうが自分も鍬を手に取って働くという、その意識……私はこの意識も何となく二つの世界を繋いでいるような気がしています。ソレッタの王様、とてもアクティブですよね。働き者の王様、特に当時のファミコンで見るその姿は、とても微笑ましいものでした。そのアクティブの要素……継いだんじゃないかなぁと。
ソレッタのお城はとても貧相な造りだったように思いますが、時代は移り変わりDQ5の世界、グランバニアの国のお城は非常に堅牢な造りをしています。国ごとお城の中に収めてしまうという、現実に考えるとちょっと無理なんじゃない?と思わせる造りをしています。第一、こうなると日照が圧倒的に足りないでしょうから、城の中に暮らす国民はとても貧弱になってしまいそう……。ソレッタの国では多く見られた畑の景色がないので、私としてはグランバニアの城の外に畑地があるという設定で、お話を書いているつもりでした。畑で作物を育てるのに、お日様の力がないと無理ですからね。
さて、グランバニアは何故、国を丸ごと城の中に収めてしまような造りにしてしまったかと言うと、周囲の魔物の脅威から国民を守るために、国ごと鎧の中に包んでしまったというところですよね。それだけ魔物の脅威があったということ。
グランバニアは確かに深い森に囲まれ、それほどの森があれば魔物が棲みつくには良い環境が整うのかなとも想像します。しかしそれだけではないと考えるのは、グランバニアから北にあるあの塔の存在です。
デモンズタワーと呼ばれる、あの忌まわしき塔は、魔物の拠点の一つとなる場所。しかし何故、あの場所にデモンズタワーなどという魔物の拠点ができたのか。かつて貧しい国だったソレッタという国に脅威を感じて、あの場所に魔物が塔を建てた、とは思えませんでした。そこでもう一度、DQ4とDQ5の世界地図を見比べてみる……。
DQ4の世界樹……。
DQ5の世界には、世界樹がありません。これって考えてみると、とんでもない話です。私はDQ11をプレイしたことはないのですが、どうやらDQ11では命の大樹という、世界樹と似たものがあるらしいですね。そして、命の大樹は一度、魔物の手によって滅ぼされてしまう、とか……。
DQの世界観って時々、とんでもなく冷酷です。私としてはこのDQ4の世界樹は魔物の手によって滅ぼされ、そこにまるで“魔物側の勝利”を刻み付けるかのように、あの“デモンズタワー”が建てられたのではと、勝手に考えています。
世界樹を滅ぼすなどと言う大悪行を、魔物側もそう易々と行動に移さないのは、魔物としても世界樹に対する畏怖の念があるからだと想像します。これは滅ぼしてはならない、流石にやりすぎだ、もし滅ぼそうとしようものなら天から罰が下ると、魔物としても天からの裁きは怖いという感覚があるのかと思っています。
しかし、DQ5の世界では、天空城もまた、湖底に沈んでいるという有様……。この状況は、神の威厳が地に落ちたという、見た通りの印象が魔物側にも伝わったのではないでしょうか。天空城が地に落ちたのと、世界樹が滅ぼされてしまったのと、どちらが先かということは分かりませんが、二つの事象は通じているものと思われます。
DQ5の世界では、妖精には出会えますが、エルフには出会えません。DQ4の世界樹の下には、エルフたちが集落を作って住んでいましたよね。DQの世界観を冷酷なものと考えると、あの集落に住んでいたエルフたちは、世界樹の崩壊と共に……ということも考えられないこともない。
ただ、DQ5の世界で唯一、エルフの名を見ることができるものがあります。それは“エルフのおまもり”という道具。私も長編小説の終盤で、このアイテムを登場させました。エルフのおまもりが売られているのは、到底エルフは暮らしていないであろう魔界の町、ジャハンナ。その町でエルフの名がつく道具が売られていることにも何か意味があるに違いないと考えると、一つ、行き当ることがありました。
世界樹の下に暮らしていたエルフとは別に一人、他の場所でひっそりと暮らしていたエルフがいました。ロザリーヒル。そこに一人だけ、いましたね。そしてきっとその血を継いでいるであろう女性が一人、魔界に連れ去られ、あのジャハンナという町を作ってしまった。
私はあのエルフのおまもりは、マーサがその手で作ったのではないかと思っています。魔物を人間の姿に変えてしまうような力の持ち主です。彼女の力は、エルフのおまもりを作ることもできたのではと、妄想しています。そしてそのおまもりを、私はお話の中で彼女の二人の孫にプレゼントすることにしました。おばあちゃんの強い加護をもらい、魔界の王へ挑んだのは、二人の勇者という、そんな構図です。
DQ5の世界では既に絶えてしまった世界樹……と思わせておいて、しっかりと“望み”は残されているのもまた、DQという世界です。天空城にて、“世界樹の苗木”が残されていたり、妖精が管理する世界樹の葉からは世界樹の雫が抽出されたりと、決して“世界樹”という命の源を象徴する存在が絶えてしまったわけではないんですよね。そのような見せ方もまた、堀井さんの温かみある演出だなぁと、思わずため息が漏れてしまうような場面です。
この、DQ4とDQ5の世界の間に起こった出来事を想像する余地、これがまたDQの楽しいところです。異なるゲームの世界が繋がっているところに気付けば、それだけで胸が高鳴るのは、一人の人間として歴史の繋がりにロマンを感じるからなのでしょうかね。
色々と勝手に書いてきましたが、これはあくまでも私個人の勝手な想像の産物です。DQを遊ぶ方一人一人に、楽しい想像の世界があるものと思います。その中の一つの想像として、捉えていただけましたら幸いです。
……今、ふと思ったのですが、DQ4での世界樹の周りは砂漠と険しい山とに囲まれており、世界樹以外は荒廃したような景色が広がっているものと思われます。そう言えば、DQ2においても、世界樹が立つ小島の景色は似たような荒廃したものだったかと。……世界樹ってもしかして、周りの命を吸い取って、自らの命を長らえている? だとすると、魔物が世界樹を滅ぼさなくとも、地から吸い取る命が無くなり、世界樹は自ら自壊したかもしれない、なーんて想像も働いしまうから、DQの考察というのは止められませんね。