「世界少年少女文学全集 第2巻 中世編」(創元社)を読んで

 

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年に何度か主人の実家にお邪魔していますが、その際に気になった本をいただいてくることがあります。義父自身幼い頃からお話を読むのが好きだったようで、その当時の本が残されていることも珍しくなく、以前にいただいた一冊が題名の本でした。見た目からしていかにも「古書」で、少しでも雑に扱えばページが切れてしまいかねないほどに古びた本です。だけど、これがまたいいじゃないですか。すっかり茶色くなった頁に、赤い本の外装は少しぼろついて、でも中を読むには全く問題ないこの本を、今回読んでみました。

中に収められているお話は、どれも有名なものです。「アーサー王物語」、「ローランの歌」、「ニーベルンゲン物語」、「イエス・キリスト物語」の四つ。頂いてきた本は、昭和29年12月20日発行のもの。そりゃあ茶色く色褪せたり、うっかりするとページが切れたり離れたりするわけです。

「アーサー王物語」、非常に有名なお話ですよね。舞台はイギリス。登場人物の名前を見るだけでも、ああ、どこかで見た覚えが……という名前ばかり。ユーサー・ペンドラゴンという王の名はハウルの動く城で、魔法を良く心得たマーリンという賢い家来、アーサーはドラクエ2のサマルトリアの王子の名前の一つだったし、エクスカリバーという剣だったり、ランスロットという湖の騎士だったり、聖杯だったり、モードレッドという円卓の騎士の一人だったりと、見るだけでワクワクするようなものばかりで、こういう昔話が今にも通じる様々なお話の元になっているんだなぁと、改めて過去から現在、未来への繋がりに感動を覚えます。

お話の内容は、王と騎士たちが中心となる話で、誇りがある一方で妬みがあり、信頼がある一方で裏切りがありと、とても人間臭い物語なんだと読後に感じました。王であるアーサーも預けられたサー・エクターという立派な騎士の下で育てられたために、彼自身も立派な騎士となり、ランスロットもまた立派な騎士であり、自ら立派であろうとするその行動は騎士道に基づくものと感じられます。

じゃあ、そんな立派な騎士ばかりがいるのだったら何も問題は起こらないかと言えばもちろんそんなことはなく、一人一人が違う人間であるように、一口に「騎士」と言っても、その個性は様々。たとえ円卓の騎士であっても、嫉妬し、欲望を抱く者もいる。モードレッドという騎士が、それを代表するような人物でした。

この物語を読むと、大きなことの始まりというのは実に些細な人の嫉妬だったりするのだということを教えられます。特に、力を持つ者の嫉妬や欲望というのは本当に恐ろしいもので、容赦なく周りを巻き込んで、戦争を起こすことにも繋がるのだなと、架空のお話ながらに、架空のお話だからこそ教えられるのだと思います。だって、「事実は小説よりも奇なり」であって、架空のお話の方がまだ優しくて、冷静に捉えられるものでもあるでしょう。(アーサー王が実在したかどうかは今も議論されている、のかな?)

それと、この「アーサー王物語」は、人として一度は読んでおかねばならないお話の一つなんだろうなとも思いました。岩に刺さった剣を抜く者が~のくだりを読んでおけば、ヨシヒコの話もまた「分かる」視点で見ることができます(笑) このような古典は、今でも色々なところで生かされていたりするんですよね~。やはり「元」を知っておくと、今に生まれているお話に対する認識が深まったり、楽しみ方にも深みが出たりするんじゃないでしょうかね。

いや~、基本を知るって本当に大事だなぁと、こんな年になってから知っていることに後悔しています。やれやれ……。小さい頃からこういうものに触れる環境に育っていたら、また違った自分が出来ていたんでしょうなぁ。環境って、本当に大事ですね。……ここまで育ててくれた親には感謝しかありませんけどね、もちろん。まあ、私はもうここまで来てしまったので、代わりに息子に読んでもらおうかなと思います。しかし息子はどうやらお話系はあまり興味がなさそうなんだよなぁ……なんでだろ、面白いのに。

他のお話についてはまた別に感想を書いてみたいと思います。

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