子供の話に思うこと⑥「学校の給食」
あらゆる物価が高騰する中で、学校で日々、子供たちに給食を提供してもらっていることは大変ありがたいことだと感じています。しっかりと栄養士さんが献立を考え、材料を揃え、調理してくださり、後片付けまでをも全てお願いできることは、世の親としては本当に感謝するところです。手間も省け、栄養バランスも考えられ、量にも問題ない食事が提供されることのありがたみを、この物価高騰の世の中で更に深く感じられます。
しかし、親である私がこのように考えるのと、実際に給食を提供される生徒である子供たちとの間では、考え方にどうしても乖離があります。住む地域によっても様々、状況は異なるのでしょうが、あくまでも私が息子から聞いた話を元に考えたところを下記に書いてみたいと思います。
第一に、私が子供だった頃の給食と大いに異なる点が、給食をいくら残しても良いということ。これを聞いた瞬間に、「そんなバチ当たりなことがあってたまるか!」と憤りを感じるのはどうしようもありませんでした。
一応、前提として息子の学校でも、なるべく残さずに食べましょうという目標はあるようですが、それはもはや形骸化しているようなもので、子供が残すと決めれば、それはほぼそのまま受け入れられてしまうと……なんと、もったいないことよ。
当然のことですが、私が子供の頃の小学校では、給食を残す事は許されませんでした。たとえその日に嫌いなものが出ていても、残してはならないというルールの中、私も苦手なもの(と言うか、口に入れるだけで吐き気が込み上げてしまう、とある野菜)を必死に、涙ながらに食べていた記憶があります。そもそも、食べるのが遅かったので、昼休み、掃除の時間にかかって頑張って食べていました。今、思い出しても辛い……。
何もそこまでしろとは言わないですが、嫌いなものでも食べる努力はしてほしいと思います。幸いにも、私の息子は今のところ好き嫌いもなく(どうしてそうなったのかは分からない(謎))、給食も残さず、寧ろ足りないようでお代わりをして食べているようなので、その点については非常に安心しています。少し前までは苦手だった野菜をも、今では、いつの間にか食べるようになり、より好き嫌いはなくなってきたようです。
学校の給食は、栄養士さんが献立を考えているために、家での食事よりも栄養価としては優れている面もあるのではと、さほど料理が好きではない私としてはそう思ってしまいます(汗) そして、小学生なんて成長期真っ盛り、栄養バランスのとれたものを口にするのが良いに決まっているので、彼らの成長のためにもなるべく給食は残さず食べてほしいところです。栄養士さん、給食を作ってくださる方々、大元には農家さんの手によって作られた食材があるわけですから、そのような方々に感謝の気持ちを持つことが出来れば、苦手意識も薄れるのではとも思います。それと、やはり実際に自分の手で作ってみたりという、農業体験があるだけでも、苦手な食材に対する感覚が多かれ少なかれ変わるのではないかと思うんですが、どうでしょうか。
ところで、子供の話を聞けば、私が子供の頃とは異なり、学校の給食にはパン食よりも圧倒的にご飯食が多く献立に上がっているようではないですか。初めにこれに気付いた時、私は衝撃を受けました。ご飯食が多いから、学校では箸も使っていると。ほほう、私の時はあの有名な先割れスプーンが主な得物だったんだが。
献立にあるご飯ものにもバリエーションが様々で、なんとまあ、美味しそうな給食が出されていることか。羨ましい限りです。戦後、学校給食にパンが多くなったのは、アメリカの力が働いていたから、という話もありますが、とりあえずその話はここでは置いておいて。
そのご飯食も、このご時世では今後も安定的に提供されるかどうかも怪しい状況があります。米不足……。ここで少し、喫緊の話題である、米不足に関して少し触れておきたいなと思います。
備蓄米、備蓄米と、連日話題になっているような気もしますが、その話題を見る度に、本質はそこじゃないだろと毎度突っ込みたくなってしまいます。本質は「どうして米不足なんかになっちゃったのか」ということ。
そもそもの話として、日本人の主食である米、これは常に余剰生産していないとマズいものかと思います。余らせておくのが正しい。備蓄米があることが正しい。これをビジネスビジネスな頭で考えてしまうと、おかしな話になっちゃう。
自然の中で育てる農作物ですから、当然、天候不順などの影響で取れ高が減ってしまうこともあるでしょう。それこそ、遥か昔から米を作り続けている民族なんですから、それくらいのことは農業に携わる方々だけではなく、私たちも当然知っていなきゃダメなことです。学校の社会科でも学習しましたもんね、日本には何度も飢饉があったと。
その飢饉を避けるという意味でも、備蓄米は常にあって当然、ないとおかしい、と言えるものですね。その備蓄米を今回放出しているわけですよね。何だかメディアでは軽々と「ビチクマイ」と言っている雰囲気を感じますが、そんな軽々と放出して良いものではないはず。
しかも今回、備蓄米を放出した理由が、高騰する米の価格を抑えるためだと。これで本当に抑えられるんでしょうか。物の価格が決まる要素って、需要と供給のバランスですよね。需要の力が強ければ、物の値段は上がり、供給の力が強ければ、物の値段は下がる。
今回の米の高騰の本質は、単にこの需給バランスが崩れた結果であって、米を作る農家さんが減りに減ってしまったからというところに大きな要因があるのは間違いないですよね。外国からの観光客が増えてインバウンドがーということも小さな理由の一つなのかも知れないですが、違う違う。需要が増えたから米が高騰しているんではなくて、供給が減ったから米が高騰しているという、より深刻な事態に陥っているのが現状です。
いや、この安い備蓄米放出によって、隠れている米が出てくるから、それで価格が抑えられるなどという話も耳にしましたが、いやいや、もしそれがあったとしてもですよ。それすらも小さな話であって、本質はやはり、米農家さんの減少に歯止めがかからないどころか、今でも減反政策を推し進めているような現状がある、ということ。このことに気付いてきた方も増えてきているのではないでしょうか。
先日、私の母と話をしていた時に、母が「減反政策って合ってたの?」と聞いてきたことがありました。私は率直に、「間違っていた」と答えました。米が余っているから、作る米の量を減らせばいいという考え方をすること自体が間違っているんですよね。今や、災害に備えて各ご家庭でも食糧を蓄えたりすることも多くなっているのではと思います。各家庭でやっていることを、国、政府はもっと大きくやらないと行けないでしょうと考えれば、簡単に考えられそうな気がします。備えなければならない相手は、日本国民全員なんですから。
世の中には様々な”モノ”が流通していて、それらのほとんどが需要と供給のバランスで価格が決まり、それぞれ人の手に渡ります。しかしその”モノ”を全て同じように考えることはできませんよね。
人にとって必需品の衣食住を考える時も、この中でさえも優先順位をつけるとしたら、一番欠かせないのが”食”ですよね。服がないのも、住むところがないのも全くもって困りますけど、食べ物がなければ、それだけで私たちは死んでしまいます。
つい最近、息子が社会科の教科書の音読で、憲法第25条を読んでいました。今の日本を覆っている問題は全てここに繋がるとも思えます。
憲法第25条
1.すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
2.国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。
減反政策そのものが、もはやこれに違反している状況になったのでは、と思います。
私たちにとって、生きることにそのまま直結する”食”は、常に余剰生産でなければならないくらいのものです。特に米は主食なんですから、一番守らなきゃならない食であることは間違いないでしょう。
でも余剰に作ってしまったら、米の価格が暴落してしまうと、通常の需給バランスの中に、日本人の主食である米を見てしまうこと自体が間違っているのだと、米不足となった今はそう考えざるを得ない状況です。それならば、米の価格が暴落しないように、国が国民を守るという意味の中に、国が米を、米農家さんたちを守らなければならないと考える方が普通ではないでしょうか。
米農家さんは言わば、公務員にも等しい立場なのではないかと、今の米不足の日本にそう考えざるを得ません。兎にも角にも、日本の”食”は守らなければならないと思うのは、日本人として当然のことだと思います。食べるものがなくなれば、飢えて死ぬだけなんですから。
国内で取れる”食”が不足した時には、海外から融通してもらえばいいじゃない、と簡単に口にする方がいるかも知れませんが、世の中そんなに甘くないってことは、2022年から起こった戦争で小麦の価格が高騰した時に少しは分かったはずです。小麦を扱うお店の方々などはもっと深刻に理解しておられたと思います。
”食”は外に頼っちゃダメなんですよね。自力でどうにかしないと。最終的に頼れるのは仲間や家族や自分であり、友達ではないんじゃない?と思っています。だって、友達には友達の事情ってものがありますからね。
兎に角、こんなバカげた減反政策を、ただ惰性で続けてきた今の政権には、この夏の選挙で責任を取ってもらいたいと思っています。本当にね、食だけではなく、色々と知り、色々と考えるだけで、腹が立って仕方がないんですよねぇ。
ただ、私自身もその一端を担ってきてしまったのは間違いのないところです。農協を悪く思っていたことも間違っていたのだと、最近になって理解しました。農協は悪くない。きっと農協を悪く言っている方は、正確に農協と言う組織やその歩みを知らないか、若しくは意図的に悪く言っているのかどちらかだと思われます。
何においても、人のうわさ話程度のものを信じるのは危険過ぎますね。何かの情報に当たったら、その情報にすぐに乗っかるのではなく、一度冷静にその情報が確かなものなのかを調べないと。面倒だけど。
ひと昔前はネット環境などなく、新聞やテレビの言うことを鵜呑みにしてしまう環境がありましたが、今は違いますもんね。後はどれだけの人々が冷静に情報を見つめることができるか。日本人は元来、かなり冷静かつ穏やかな民族だと信じています。なので、より多くの人たちが目を覚ましてくれることを祈ります。で、一度目が覚めたら、もう寝ている場合じゃないと気づくのでは、と思います……。このままでは本当に子供たちの未来が不安で不安で仕方がない。