「戦」TELL-ALL BOOK を読んで

 

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最近、青山繫晴さんの著書を数冊読んできましたが、今回は新しく出版されたこちらの本を読んでみました。

こちらの本は過去作「ぼくらの哲学」に書き下ろしの新章を加えて新書化されたものです。

青山さんは元々ジャーナリストとして世界を飛び回っていた方で(今も非常にお忙しくしていらっしゃいますが)、現地での取材などで得た知識や経験は豊富で、それらを基にお話を書かれるので、読み手としてもその本の内容には常にリアリティを感じます。

人に何かを理解してもらおうとする時、大事なものの一つとして、その人がそれまでに体験、経験してきた積み重ねがあると思います。経験豊かな人には、それだけで説得力が備わるのは誰もが感じるところではないでしょうか。

それに加え大事なことは、その人が確かで正しい意志を持っているかどうか。私個人の感想ですが、青山さんはとても正しい意志を持っている方ではなかろうかと思っています。正しいと決めつけてしまうのは危険なので、とても正しいという言い方に留めておくのが正しいかと思います。ややこしくてすみません。

その正しさをどこに見たかと言うと、まず謙虚な姿勢。常にご自身を外から見ているし、誰に対しても礼儀正しさを忘れない行動を取れるのは、人としてとても正しいことなのではないかと、そう思う度に私も反省の念を抱くに至ります。

そして何と言っても、青山さんご自身の造語「脱私即的」の言葉に表される思いですね。意味は「わたくしを脱して、本来の目的に即(つ)く」。

言葉の持つ力の大きさを知っているが故にこうして自ら思いを込めた造語を作り、事あるごとにこの言葉に立ち返って、自らを省みることを忘れないということを実践されている方だと思われます。本当に正直に、嘘偽りなく、信念を持って行動される方だと感じると共に、そういう思いに至ったのはそれまでの数々の経験や、その経験に対して深く熟考する姿勢から生じるものなのでしょうね。

思いもあり、行動力もある方だからこそ、様々な人が呼応するように動くのではないかなと。そこに金銭の問題が一切発生しないことが、青山さんへの信頼を厚くします。

こちらの本で主に語られているのは、沖縄の事について。本の副題についている「TELL-ALL BOOK」という英語は日本語に訳せば「暴露本」。いわゆる、そういうことです。読んでみれば、改めて私たちが学生の頃に全く知らされていない日本の歴史の一端を深く知ることができます。しかも青山さんご自身が記者時代に経験してきたことがそのまま書かれているので、遠い昔のことでもなく、たった今目の前で起こっていることのような感覚で読むことができると思います。

私なんかは本当に、本当に申し訳ないくらいに色々なことを知らずに育ってしまったので、戦時中にどのようなことがあったのかと同時に、戦後にどのような経緯があったのかを知ると、その度に目の前が開ける思いがします。今までどれだけ狭い世界の中を生きて来たのかと、しばし脱力するような感覚に陥ります。

沖縄戦がとても酷いものだったというのは聞いていましたが、それを根っこにして戦後、日本国内で対立があり、その対立を大きくする要因がまた別にあると、根っこは複雑に絡み合っている状態であることを知らされました。日本がたとえば一本の大きな大きな木だとすると、地中に潜った根っこは解きほぐすことができないほどに絡み合っているような状態だと想像してしまいます。沖縄のことだけではなく、様々な問題が地中で、見えないところで絡み合っているような状況なのかなと想像してしまいます。そのせいで地上に出ている木も、どうにも元気がない・・・そんな感じがします。

この絡みを少しずつ解きほぐしていければ、今は何だかやたらと弱ってしまった日本という木も少しずつ、元気を取り戻していけると信じたいと思いました。信じたいと思えるのも、こうした青山さんのような地道な行動を続けて下さっている方がいらっしゃるからです。そこに信念があるからです。ただ目の前の事、お金の事、自分の周囲だけのことに目を向けるような方であれば、それは信用には値しないですよね。人間とはそういうものです。今は何だか、そういう人が多くなってしまったような気がします。時代と言えば時代なのかも知れませんが、そんな単純な理由で終わらせてしまっては、地中で絡みに絡んだ根っこはそのまま腐ってしまいかねないでしょう。

本には沖縄のことだけではなく、最近の世界情勢のことについても触れています。それもまた、青山さんご自身がただ知見を述べるに留まらず、確かな経験や、実際に起こした行動を基に書かれているので、今の今、私は歴史の中に生きているんだなと実感できます。歴史って、当然ですけど、過去のものだけではなくて今現在も進行中で、これからもどんどん歴史になっていくんですよね。そんな歴史を、教科書のようなただ客観視したようなものではなく、「こんな歴史の中で日本はどうあるべきか」という思いを基に書いておられますので、読み手側にも状況が迫ってくるように感じられます。他人事じゃないんだと。ちゃんと日本人の一人として、知って、考えるのが大事なんだと。

誰か一人に心酔してしまうのは危険だと分かっているので、盲目的に青山さんを推すことはできませんが、いくつかの本を拝読するに、信用できる方だと私は思っています。そんなこの方の「戦」、少しでもご興味ある方は読んでみることをお勧めします。本と言うのは安価な価格で、非常に多くの知識や感動や思考の深まりや変更を起こしてくれたりします。読んで損をすることは先ず、ないと思いますよ。

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