仇
「塞がれていた道のどれかかと……そういうことですね」
「多分ね。プックルもそう思うだろ?」
「がう」
地下に広がる洞窟の中には、時折どこからか魔物の咆哮が響く。ゴンズとの戦いを経て、リュカたちは体力も魔力も大幅に削られていたが、まだ終わっていない。洞窟内に潜む魔物の気配を感じ、避けつつも前に進まなければならないと、遠くに見える洞窟内を照らす燭台の明かりを目印に着実に歩みを進めていた。交わす言葉は少ない。それは敵の魔物に気付かれないようにと注意している面も当然あるが、それよりも疲労と緊張のために必然的に言葉が少なくなっているのが現実だった。
遠くに見えていた明かりが徐々に近づいてくる。それは既に目にしている明かりだった。リュカたちが初めにこの階層に足を踏み入れた際に到着した広い空洞で、そこには大層な四角の石柱の上に赤々と火が燃えている。空間が赤く染まっているのは、火の明かりが自然とは異なる赤に染まっているためだ。洞窟内を照らしてくれるありがたい明かりだというのに、その赤には不安を感じることしかできない。
魔物の気配があり、リュカたちは静かに戦闘態勢に入る。敵も気づいているに違いないが、リュカたちに向かってくるどころか、慌てて逃げて行く気配があった。その気配にリュカは怯えて逃げる魔物の後を追うことを決める。
追い詰めた場所は一つの通路の先だった。この洞窟は巨大な一つの建造物のように、規則正しい形をもって造られている。しかし行った先で地下水が流れ出している場所もあり、素直に通路を進むことができない場所もある。リュカたちが逃げる魔物を追い詰めた先がそのような状況だった。
予想はしていたが、逃げていた魔物は先ほどのゴンズとの戦闘中に逃げ出したグレンデルだった。魔物らの頭として君臨していたであろうゴンズを打ち負かしたリュカたち一行に、グレンデルらは完全に気持ちで負けていた。疲弊しているリュカたちを見ても、人間と魔物の奇妙な一行はあのゴンズを負かしてしまったのだから敵うわけがないと、地下水の溜まる手前で足止めを食らいながらその巨体を恐怖に震わせている。
「この洞窟にはあのゴンズの親玉がいるんだろう。そいつの場所を教えて欲しい」
リュカの問いかけにグレンデル三体が互いに目を見合わせる。ゴンズは言葉を話すことができたが、同じ種族であるグレンデルは自由に言葉を話すことができないようだ。ただ獣同士の会話を控えめにするだけで、リュカには細かな内容までは分からない。ただその仕草だけでおおよそを理解した。嘘をつけるほどの頭を持たない三体のグレンデルらの視線は地下水に遮られたその奥へと向けられた。リュカもプックルも初めに嫌悪感をその身に感じた暗闇だ。その感覚に間違いはなかったのだと、リュカは奥に続く洞窟の暗闇に視線を向ける。
暗闇の中から、リュカを見つめ返す視線があった。しかしその視線に生き物の感じを受けない。確かに二つの視線があるが、それは非常に無機質だった。視線は一切の瞬きをせず、揺れることもなく、暗闇の洞窟の中で自ずと光る二つの青緑の目をリュカたちに向けている。
グレンデルらがリュカたちの脇をすり抜けるようにして走り始める。無遠慮に巨体を揺らして走る魔物は洞窟内に大きな音を響かせる。その異常を認めたように、洞窟の奥深くで光る無機質な目が瞬きもしないままリュカたちの方へと向かってくるのが分かった。決して移動が速いわけではないが、近づいてくる何かは動く度に金属が触れあう耳障りな音を響かせている。
「あの大きな魔物たち、逃げちゃったよ」
「私たちも逃げた方がいいのかな、お父さん」
洞窟の奥深くからリュカたちに近づいてくる何者かの気配に、敵の強さを推し量ることができない。通常であれば魔物の気配を感じれば、その生物が醸す空気にその強さを感じることもあるが、今はそれが一切感じられない。ただこの場から逃げ出した三体のグレンデルの姿は既に広い通路の先を抜け、角を曲がり、その姿は早くも見えなくなっていた。巨体の割に逃げ足だけは速いようだ。
進むべき方向は近づいてくる青緑の光る目のその奥だと、リュカは向かってくる敵を倒して進むことを考えた時、暗闇に光る青緑の目が増えた。近づく二つの目の奥に、更に四つ、無機質な光が見えた。三体の金属音が合わさり、洞窟の通路内にガシャンガシャンと響き渡る。
「リュカ王、明かりを灯した方がよろしいでしょうか」
サーラに明かりを灯してもらえば、向かってくる敵と戦うことができる。しかしサーラの魔力を無駄に使わせることは避けたかった。
「一度あっちまで戻った方がいいんじゃねえの? あの広いところなら明るいから、リュカたちにも敵の姿が見えるだろうぜ」
アンクルの影が指し示すのは、リュカたちが通り過ぎてきた四つの明かりが灯る広い空間だ。今も赤の不気味な明かりがリュカたちの後ろで怪しく光り続けている。見えない敵と戦うことはできないと、リュカは明かりの届くところまで一度戻ることを決めた。
先ほどいち早く逃げて行ったグレンデルたちの姿はない。プックルが左側に伸びる通路に顔を向けて、一度軽く鼻息を吐き出した所を見ると、そちらに逃げた魔物らの気配を感じているようだった。既に頭と崇めていたゴンズを失った魔物らは心の拠り所を失った状態で、意気消沈したまま暗闇に身を潜めているだけだ。ただ下手に近づいて、自棄を起こされて戦う羽目になっても上手くない。リュカは唯一足を踏み入れていない右側に伸びる通路に目をやり、そちらへと仲間を誘導した。
しばらく通路の影に身を潜ませ、先ほど目にしていた青緑の目の敵が現れるのを待っていたが、一向にその姿は現れない。しかし確かにリュカたちを警戒しているように、洞窟の暗闇に目を向ければはるか遠くにその青緑の目を小さく見ることができる。警戒はしているが深追いはして来ない敵は、完全にその道を塞いでしまっていた。
「お父さん、こっちの道にも行ってみようよ。ほら、遠くに明かりが見えるよ。何かあるんだよ、きっと」
ティミーが指し示す先、広い通路が続く遥か先、ごく小さな点に見える明かりを目にすることができる。洞窟内を照らす赤の明かりに安心を感じることはないが、それでも真っ暗闇の視界の利かない場所を進み続けるのは、人間であるリュカや子供たちにとって大きな精神的負担になる。明かりがあるということはそこには何かがあるのだろうと、リュカは先を急ぎそうになる自身の心を鎮め、遠くに揺れる小さな明かりを見つめた。
「この洞窟は広いようですから、もしかしたら道は他にもあるかも知れません」
そう言うピエールは小さな明かりの灯る通路の更に奥から湿った風が微かに吹いてくるのを感じていた。風が通ると言うことは少なくとも、明かりの見える場所が行き止まりではないことが分かる。これまでの旅もほとんどが行き当たりばったりの状況の中、仲間たちとの協力の中で進んで来られたのだという妙な自信の下、リュカはまだ足を踏み入れたことのない通路へ進み始めた。
広い通路の中には一つの明かりも灯らず暗いが、長い通路を挟んだ向こう側の広間に灯る明かりを目印に、リュカたちは静かに通路を進んでいく。洞窟内の様々なところに湧き出る地下水が足元にまで及ぶ場所もあり、なるべく万全の態勢で前に進みたいリュカたちは慎重に水場を避けて歩いて行った。
相変わらず洞窟内を照らす魔の明かりは目に痛いほどの赤だった。その明かりをじっと見ているだけで気分が悪くなるほどだ。リュカたちはなるべく大きな燭台に自ずと灯る赤い火を直視しないように、開けた空間を通路の影に身を潜めたまま隈なく見渡した。
一つの大きな燭台の明かりが照らす空間には広く地下水が染み出し、床が水で覆われていた。ただの水溜りのようにも見えるが、もしかしたら大穴を開けた床に深く水が溜まっている可能性もあり、迂闊に水場に踏み入ることはできない。そしてその地下水が流れ落ちる先、さらに地下へと下る暗い穴が大きく開いているのをリュカたちは目にした。
「……リュカ王が追い求める敵は、竜か何かですか?」
サーラがそう問いかけた直後、地下に開く暗い穴の奥から、まさしく竜の咆哮が聞こえた。まるで近くにまで来たリュカたちを見つけたかのように、その重々しい足音がはっきりと地下から近づいてくる。
「おい、リュカ、行くか戻るかだけ早く決めろよ。道は先に続いてるぜ」
アンクルに言われる前に、リュカも通路が先に続いているのが見えていた。この広い空間を抜けた右手に、暗い通路が弱い風の音を響かせながらリュカたちを待ち構えている。
「続いてるなら、行くしかない」
「よし来た。おい、サーラ、行くぞ」
「分かっています」
アンクルとサーラが互いに顔を見合わせ、素早く行動に移る。アンクルはリュカとプックルを両肩に抱え上げ、その太い首の上にはピエールが飛び乗る。サーラは両脇にティミーとポピーを抱え、その隆々とした肩にはスラりんが飛び乗る。二体の仲間の魔物は翼をはためかせ、宙に飛び上がると、広く口を開ける暗い穴を飛び越えて先の床に降り立った。その直後、リュカたちのいる広い空間に熱風が吹き荒んだ。
リュカたちが振り返った場所には赤の火の明かりを受けて不気味に赤黒く浮かび上がる竜の頭が見えた。地面から生れ出たかのような竜の頭は、その首をぐるりと回してリュカたちの姿を宙に捉えると、まるで普通の呼吸をするようにその大きな口から炎を吐いた。アンクルの足の毛に炎が届き、アンクルは慌てて近くの水場に足を突っ込んで火を消した。
地下から現れ出たブラックドラゴンを見て、リュカは敵が一体ならば戦い倒して進むこともできると感じたが、敵は群れを成していた。続いて地下から姿を現した二体の黒竜が同じように広い空間を見渡すように目を向けるのを見て、リュカはすぐさま逃げることを決断した。
進む通路は広い。この地下空間はやはり魔物のために作られた場所なのかもしれないと、後ろから追ってくるブラックドラゴンの巨体を見ながらそう思う。背中には立派な黒の翼があるが、飛ぶことはあまり得意ではないのか、それとも宙を飛ぶにはさすがに通路が狭いのか、逃げて行くリュカたちを走って追いかけて来る。三体の黒竜が後ろを追ってくる気配に、リュカは宙を飛んで逃げるアンクルの肩にしがみつきながら、その差がまるで広がらないことに嫌でも気づく。特別足が速いというわけではないのだろうが、巨体故に一歩が大きい。アンクルよりも大きな身体だが、通路の天井は高く幅は広く、ブラックドラゴンの行く手をまるで阻んでくれない。
背後から熱風が迫ると、アンクルの身体が強張り、力を振り絞るように飛ぶ速度を強める。振り落とされそうになるピエールの手を掴み、リュカは追ってくる黒竜が吐き出す炎の明かりの中に通路の先の景色を見る。魔物の仲間たちには既に見えていたのだろうが、通路の先にはまたしても開けた空間が広がっているようだった。ただそこには明かりもなく、ただの暗闇があるだけだ。
飛んで突き進む先から、金属音が鳴り響いた。突然、前を飛んでいたサーラが速度を緩め、それに釣られてアンクルもやむなく速度を落とす。後ろからはすぐそこまでブラックドラゴンが迫ってきている。いくら広い通路とは言え、この場所で三体の黒竜が同時に炎を吐いてきたら、逃げ場もないために呪文で応戦するしかない。
「リュカ王! 戦う覚悟を!」
サーラがリュカに判断を仰ぐことはなかった。とにかくこの通路を抜けなければならないと、サーラは双子とスラりんを連れたまま、再び一気に速度を上げて通路を抜けることを目指す。高い位置に吐かれた竜の炎を搔い潜るように避けながら、アンクルも必死になってサーラの後を追う。リュカたち宙を飛ぶことのできない者は、とにかくサーラとアンクルにしがみついて落とされないことに必死だった。
暗闇だが、通路を抜けたことを開けた空気に感じる。下で鳴り響いていた金属音が一度激しくぶつかる音を響かせたと思ったら、次の瞬間には間近に迫っていた。ブラックドラゴンが吐き出す炎が広い空間を照らし、リュカは間近に迫る金属の竜の無機質な青緑の目と目が合った。目の前で銀色に光るメタルドラゴンが大口を開けて、リュカの頭に噛みつこうとしていた。
アンクルの肩から飛び出したプックルが横から襲いかかり、リュカを襲おうとしていたメタルドラゴンの横っ面に前足で蹴り込んだ。金属が激しくぶつかり合う音を響かせ、メタルドラゴンが吹っ飛ばされるが、金属製の翼をはためかせて宙で体勢を整えてしまった。
「サーラさん、明かりを!」
とにかくすぐ間近にいる敵の状態を把握しなくてはならないとリュカがそう叫ぶと同時に、サーラが真っ暗闇の中に炎を灯す。橙色の炎の中に浮かび上がる敵は六体。リュカたちを追ってきたブラックドラゴンが三体と、たった今リュカに襲いかかってきたメタルドラゴンが三体。サーラもアンクルも仲間たちを抱えたままでは戦えないと、止む無く皆を床に下ろす。広い四角の空間をざっと見渡せば、四方に通路が伸びているのが即座に見て取れたが、その内の二つを塞ぐようにメタルドラゴン二体が待ち構えている。
「先ほど、我々を追いかけてきた者たちではないでしょうか」
ピエールの言葉にリュカもメタルドラゴンの青緑の目に、その正体を今知った気分だった。サーラの灯す火に照らされたその姿は、胴も首も翼もどこもかしこも金属製で、唯一その命を感じるような青緑色に光る目もまた無機質で、敵の動きがまるで読めない。強い魔力が宿る金属竜は、その重々しい身体をものともせずに翼をはためかせて宙を飛ぶことができる。洞窟の上方を飛んで逃げるという手段も通じないような相手だ。
リュカが束の間逡巡している間に、後ろを追ってきた黒竜が再び口から火炎の息を吐いてくる。竜が吐き出す火炎は呼吸の延長のようなもので、魔力を必要としないことは仲間のマッドを見てリュカたちは知っている。生きている限り、口から吐き出すことができる竜の火炎は敵にすれば脅威だった。広間の中に悠々と立つブラックドラゴンの姿は、その色がもし金色の神々しいものであればその存在を神と見紛うほどに立派なものだ。
六体の竜を相手に、リュカが剣を構えれば、それを戦う意思表示と見たティミーとスラりんがすかさず防御呪文スクルトを唱える。まだ洞窟の奥にはゴンズを片腕にしていたような強敵が待ち構えているのをリュカは知っている。しかし自在に底なしに火炎の息を吐く黒竜と、打撃を受け付けないような金属竜を相手に魔力を下手に温存することは良策ではない。
防御呪文を味方につければ、プックルはすぐにでも果敢になれる。矢のように飛んで行った先には、リュカたちを見下ろす黒竜が悠然と立っている。その足元に体当たりのように頭突きを食らわすプックルの勢いに、ブラックドラゴンが僅かに体勢を崩す。鋭い爪を立て、自身の三倍はあろうかと言う黒竜の身体に上れば、敵が身構える前にとその首に噛みつく。竜の吐く火炎を止めたいというのと同時に、あわよくばそのまま息の根を止めてしまおうと、プックルは竜の太い首を嚙み込む。
固い鱗に覆われた場所を避けているというのに、皮膚自体が固い竜の首を一息に嚙み切ることはできない。しぶとく首に食らいつくプックルを剥がすように鷲掴みにすると、ブラックドラゴンはプックルを床に叩きつけるように投げた。防御呪文の効果でプックルはすぐにその場に立ち上れるが、すぐさま竜の足が上から迫った。避ける間もなく踏まれ、石造りの床にプックルの身体がめり込む。
プックルが身を固くし防御態勢を取る傍ら、リュカの剣が竜の足に斬りつける。鈍いながらも痛覚はあるようで、痛みを感じて反射的に僅か上がった竜の足の下から、プックルが懸命に逃げ出した。ぎこちない歩みを見れば、プックルの足の骨が折れているのが分かる。近くに来たプックルにすぐさまリュカは回復呪文を施す。
二体のブラックドラゴンを相手に、ポピーとアンクルがそれぞれの立ち位置から呪文を浴びせていた。彼らの手からは竜が苦手とする冷気が放出されている。二人のヒャダルコの勢いを打ち消すように、二体のブラックドラゴンが火炎を吐けば、氷と火炎が衝突したところで全てが霧散する。呪文は魔力を消費する一方で、竜の吐く火炎は竜が生きている限りは無限に体内から生み出すことができる。
魔力が尽きてしまえば負けてしまうと、ポピーは呪文の手を止めないままアンクルに大声で呼びかける。両手は呪文の使用で塞がっている。ポピーの強い視線に意味を理解したアンクルはすぐさま飛んで彼女の元に駆け付け、その小さな身体をひょいと肩に乗せた。二人の冷気呪文が合わさり、威力を増し、竜の吐き出す火炎の息を一気に蹴散らす。二体の竜の顔面に冷気が届き、氷の層を増し、竜の顔を分厚い氷がまるで頭部全体を覆うような氷の兜となって固めてしまった。息を吸うことも吐くこともできなくなった黒竜は混乱したように床に大蛇のような尾を打ち付けて暴れる。
まるで冷静さを失ったブラックドラゴンにサーラが宙から飛びかかる。鱗に覆われた背面ではなく、打撃を与えやすそうな腹部に固い蹄で飛び蹴りを食らわせる。脇腹に蹴りを食らった黒竜がよろめくところを、サーラは更に鋭い角を向けて間髪入れずに腹部を攻撃する。サーラの攻撃が効いていると見るや、プックルが同じ敵に飛びかかり、自身の鋭い爪を立てて薙いだ。竜は首を仰け反らせて悲鳴を上げようとするが、その声は分厚い氷の兜の中に籠るだけだった。
リュカとピエールが続いてブラックドラゴンに剣を向けた時、メタルドラゴンが宙から飛びかかってきた。生き物の気配はしないものの、その耳障りな金属音は嫌でも耳に入る。咄嗟に避けたつもりだったが、二人とも敵の大きな金属の足に吹き飛ばされ、床に叩きつけられた。しかし追撃してくることはなく、金属竜はその青緑色の警戒する目を只無機質に光らせ、最も近くにいる敵と認める者に襲いかかろうとしている。二体のメタルドラゴンの目がティミーを捉えた瞬間に、金属の翼をガチャガチャとはためかせ、小さな標的に飛びかかる。
ティミーは確かに敵の動きを見極めた。戦いに慣れた少年の目は、金属の竜が自分に飛びかかってくるところを捉え、狙って、天空の剣を向けた。その先から電撃が走る。暗い洞窟の中に一瞬の稲妻が現れ、一体のメタルドラゴンに直撃した。敵の身体から金属がメチャクチャにぶつかり合うような不協和音が響く。それはまるで竜の叫び声のようだった。
それと同時に、ティミーにもう一体のメタルドラゴンの攻撃が及ぶ。天空の盾では防ぎきれないその打撃に、ティミーの身体が床を滑って行く。その先に運悪く、ブラックドラゴンが待ち受けていた。巨大な足が小さな少年の身体を踏みつけようと高々と上げられ、下ろされる。ティミーは状況を把握する間もなく、急激に身体を持ち上げ宙に攫われた。アンクルがティミーを救い、そしてすぐに床に彼を放り出すと、間髪入れずに黒竜の腹部に頭突きを食らわせるように突っ込んでいく。既に一体のブラックドラゴンの腹部は傷だらけで、その動きは明らかに鈍っている。弱るブラックドラゴンをまずは一体仕留めようと、リュカたちは総力を挙げて一心に攻撃を続ける。
頭部を覆っていた氷の兜が溶け、床に落ちて割れた。ようやく思うように火炎が吐けると、攻撃を受け続けていたブラックドラゴンが大きな口を開けて息を吸い込んだ途端、腹の傷から体内に溜め込む火炎が漏れ出し、噴き出した。叫び声を上げ、床に頽れる竜はその場で戦線を離脱する。逃げることもできずに、竜は仰向けに倒れたまま、腹から無限に流れ続けるような火炎が暗い洞窟内を照らし続ける。
剣を持って勇ましく戦うことのできないポピーとスラりんは洞窟の暗がりの中から、密やかに呪文を飛ばした。二人の攻撃補助呪文ルカナンがメタルドラゴン三体に届けば、それを察知した敵が機械的な青緑色の目を彼女らに向ける。背の翼で自由に宙を飛ぶことができる金属竜は、見た目に依らず動きが速い。あっという間に目の前に迫ったメタルドラゴンから逃げることもできず、ポピーはスラりんを腕に抱いて庇いながら、尾の強烈な一撃を食らって吹き飛ばされた。スクルトの呪文の加護を受けているが、一撃で気を失いそうになったポピーにすかさずピエールが回復に向かう。
背後から迫る気配に、リュカは振り向きざま剣を振るう。金属竜の身体にもリュカの剣がめり込み、その金属の身体が確実にルカナンの影響を受けているのが分かる。しかしその状況を感じたと同時に、メタルドラゴンが宙で翻り尾を振り上げた。真上から振り下ろされた金属の尾の一撃は強烈で、リュカの頭部を掠め右肩を打ち、そのまま床に身体を打ち付けられた。頭部に一撃を受けていれば、一撃で昏倒していたかも知れない。
ブラックドラゴン二体の火炎の息が洞窟内を眩しいほどに照らす。洞窟内の温度が上がり、その息苦しさに強く顔をしかめる。広い範囲で吐き出される火炎を相手に、リュカたちは逃げ場を失う。しかしその時、初めにメタルドラゴンが塞いでいた通路が一つ、空いているのをリュカは目にした。
「みんな、あっちへ逃げ込むんだ!」
広い場所で残り五体の竜と戦うのは、一体どこまで体力と魔力を消費するか分からないと、リュカは出来る限り戦いを避けるべく仲間たちに道を示す。プックルとサーラが同時に通路へ向かう。その動きを見たメタルドラゴンが三体、揃って同じ場所へと向かう。その内、ティミーの電撃を食らった一体は明らかに動きがおかしく、宙を彷徨いながらふらふらと飛んでいる。
走るリュカたちの後ろからは黒い竜二体が大きな足音を響かせて追ってくる。竜の足に踏み潰されないよう、リュカたちは蛇行しながら逃げて行く。動きの鈍い竜はリュカたちの動きについて行けず、一歩遅れて床を踏み込み、床だけを派手に壊していく。
プックルとサーラ、そしてアンクルが再び通路を塞ごうとするメタルドラゴンをその手前で防いでいた。サーラとアンクルが呪文を浴びせかけたが、金属で作られた古代仕掛けの竜は火の玉を浴びても火炎の嵐を受けても、その光る身体にはさほどの損傷を食らっていない。ただの足止めにはあまりにも魔力を消耗してしまうと、プックルが補うように金属竜の尾に噛みついて動きを止めていたら、途中から尾が切れて金属竜が悲鳴のような不協和音を発した。
アンクルが一体のメタルドラゴンを蹴り飛ばした瞬間を狙い、リュカたちが空いた通路の奥へと走り抜ける。通路に入り込めば、ブラックドラゴンはその巨体のせいで横並びに進むことはできない。
リュカたちが逃げ込んだ通路の先は真っ暗で、全く視界が効かない。サーラが宙を飛びながら明かりを灯し、遥か先に見えた景色にリュカたちはすぐさま絶望の淵に立たされる。突き当りの壁が見える。行き止まりだ。
「お父さん、やっぱり戦うしかないんじゃないかな!?」
「こ、ここでならあの大きな竜をまず一体、その次一体って……魔力が持たないかも……」
リュカたちが前方の景色に絶望を感じている最中、背後に迫る敵の気配が唐突に大人しくなった。そのまましばらく走り続け、敵との間合いを広く開けたリュカたちが振り返ると、追ってきていた竜たちはその場に立ち止まり、様子を窺うような視線をリュカたちに向けている。よく見て見れば、その視線はリュカたちを越えてその先に向けられているように、遠くに視点を合わせている。
「……追ってこないようです。このまま進みますか、リュカ殿」
息切れが収まらない仲間たちは皆、その場で立ち止まり呼吸を整える。リュカは行き止まりに見える先の通路を見据える。サーラが灯す温かな明かりの中にいるというのに、この通路に入り込み進む中で、じわじわと身体を包もうとする冷気とも悪寒とも感じられる空気を感じる。
「ブルブル……。なんだかだんだん寒くなって来たぞ……」
「なにかイヤな感じのするところね、ここ……」
ティミーとポピーにも確かにその空気が伝わり、二人は背を丸めるように身を小さくし、微かに身体を震わせる。サーラの灯す火が、突き当りに見える壁から流れる妙な風に流され、一瞬吹き消されそうな勢いで揺れた。
プックルの赤い尾が床を掃除するように地に落ちている。本能的にプックルの身体は恐怖を感じていた。しかしその尾が振られ、黄色いリボンが揺れれば、キラーパンサーの雄々しさを思い出すように赤い尾はいつものようにゆらりと立ち上がった。
「あの竜たちは、この先の雰囲気を感じ取り、退いたのかも知れませんね」
「確かにな。こりゃあ……オレたちも逃げた方がいいかも知んねえぜ」
「逃げたかったら逃げてもいいよ。でも、僕は行く」
神の力の封印を解かなくてはならない。そのためにリュカたちは今、このボブルの塔の探索を進めている。その役目は恐らく、リュカたちではなくとも、世界中を捜して他に役目を負える人間がいれば、代わりが効くものだ。広い世界を、長い年月をかけて捜し回れば、リュカたちを凌ぐような強者にも巡り合え、そしてその役目を引き継ぐこともできるかも知れない。
しかしこればかりは代えが効かないのだと、リュカは突き当りの壁を見つめる。目を凝らしてみれば、その床に大きな穴が空いているのが見える。さらに地下への道が続いている。そこから双子も感じる寒々しい気配が流れ出してきているのだ。命を賭けてでも戦わねばならない。かつての父パパスが命を賭けて戦ったように。相打ちでも、この手で倒さなければならない相手だ。
リュカのマントを両側から掴む子供たちがいる。本来ならば、子供たちを洞窟の外に出して避難させるべきなのだろう。しかしここまで成長した子供たちを既にリュカは頼りにしている。情けなくも、まだ子供である彼らの力が恐らく必要だ。
「一国の王を一人で行かせられるとお思いですか? オジロン様やサンチョ様に何とお伝えしたらよいのですか」
「多分、相当ヤバイ奴なんだろうけどよ、やるしかねえんならオレも行くぜ」
「ピッ!」
仲間たちの顔を見れば、リュカは今があの時とはまるで違う状況なのだと心が奮い立つ。一人ではない。無力な子供ばかりではない。もしかしたら神がこの機会を与えてくれたのかも知れないとさえ思い、リュカは無意識に震えていた手から恐怖が抜け出していくのを感じた。
「みんなは僕が、絶対に守るからね」
本心とは異なる言葉を口にすれば、リュカの心も平静を保つことができる。リュカの本心は、憎悪の炎で自身の身体を焼き尽くしてしまうほどだ。逸る気持ちを抑えるように、リュカは自分の口から出た建前の言葉の中で、理想の自分の姿を思い浮かべ、そして前に踏み出した。
地下の空洞もやはり何者かの手で造られた場所で、尚且つ壁にも床にもところどころに装飾が施されていた。サーラの灯す火も必要ではなかった。まるでリュカたちを待ちわびるように誘い込むように、彼らの目の前で生き物のように一つの火の玉がゆらりと浮かんでいる。リュカが火の玉を睨めば、その視線を楽しみながら、火の玉は笑い声を上げるように瞬時燃え盛る。
火の玉がリュカたちを先導するように、通路の奥へと進み始める。いつもであれば飛び回る火の玉を楽しみそうなティミーも、不気味に宙を飛び回る火の玉に怯えそうなポピーも、ただ無口に父の後をついて行く。二人は罠に誘い込むかの如く飛び回る火の玉よりも、その誘い込む手をこちらから強く掴み、悪魔の誘いに喜んで乗り進んでいく父の後姿の方に恐怖を感じていた。今なら父を止めることもできるかも知れないと思いつつも、決して父は歩みを止めないだろうということも賢しく感じている。
父が皆を護ると言葉にしていたが、後ろを振り返ることもなくただ早足に歩いて行く父の背中は、前に進むことしか考えていないように見えた。仲間たちを守るというよりも、仲間に背中を預けて、父自身は単身でも敵に突っ込んでいきそうなほど、その後ろ姿は危うい。
先頭を歩くことが多いプックルが、今はまるでリュカに付き従うようにその斜め後ろを静かに歩いている。心なしか全身の毛が逆立ち、いつもより身体が大きく見えた。歩く途中で低い唸り声を上げるが、その声をプックル自身が意識していない。既に魔物の目には見えている敵の姿に、無意識に牙を剥いて、唸り声を床に落としているのだ。
ピエールが密かに兜の奥で目を見開いていた。感じる魔物の気配がただならぬものであることは把握していたが、その敵の姿を彼もまた目にしたことがあった。忘れたくとも忘れられない後悔の時、その記憶の中に彼の敵の姿があった。主を、その愛する妻を石に変えた敵の姿を認めれば、ピエールは全身が武者震いに震えるのを感じた。
静かな時を乱す者はいない。スラりんは今はリュカの肩の上に乗り、彼が歩く度に揺れる雫形の身体に得も言われぬ恐怖を感じている。アンクルもまたいつもの軽口を閉ざし、巨体を縮こまらせるようにして背を丸め歩く。最後尾からサーラが前に迫る敵から受ける圧迫感に浅い呼吸を続ける。誰もが近づく敵の気配に、言葉を交わさず進み続ける。
目指していた明かりの灯る空間に出れば、そこには水の気配があった。これまでの洞窟内で見かけたただ湧き出た地下水が自然に溜まるような場所ではなく、周囲に整然と堀が造られ、そこに地下水が静かに流れている。
堀の縁には規則正しく柱が立ち、その上に真っ赤な火が灯る。明かりに照らされた床にはリュカたちには不可解な模様が描かれ、その中に蛇や蜥蜴などが描かれているのを見れば、塔の上部に感じていた聖なる気配など微塵も感じられない。そしてリュカたちの正面には、サーラよりも高く、アンクルよりは低い背の、濃紫色のローブに身を包んだ敵が、フードの奥から愉し気な笑みを口元に浮かべていた。
「ほっほっほっほっ。ここで待っていれば来ると思っていました」
思うよりも高めのその声を聞くだけで、リュカの身体は思わず強張る。幼い頃に感じた絶望的な恐怖に上塗りされるように、八年の時間と妻を奪われた憎しみが、それまでの彼の疲労など忘れさせ、全身に力が漲らせる。隣に立つプックルなどは既に臨戦態勢だ。いつでも飛びかかれるようにと、姿勢を低くし牙を剥いている。
リュカたちの様子をじっくりと眺めながら、父の仇ゲマはまだその時ではないと言わんばかりに、ゆったりと濃紫色のローブの裾を揺らす。フードの奥でその目がにたりと弧を描く。
「私のことを覚えていますか?」
分かりきっていることを聞くなと叫びたい気持ちを堪え、リュカはただ無言でゲマの邪悪な目から目を離さない。手を剣の束にかけ、素早く抜き放つ。リュカが戦闘態勢に入ったのを見て、すぐ後ろに控えるティミーもポピーも、この邪悪な魔導士から感じる途轍もない魔力の気配に負けないよう心を奮い立てて、戦いの心を前に出す。
「おや? 覚えていませんか? それはまた薄情な子供ですね。あなたの父は命懸けであなたを守ったと言うのに」
剣を握る手に力が入るが、リュカはまだ黙って敵の目を見続ける。敵の挑発に乗ってはいけない。仇は非道極まりない魔物だ。敵の言葉に言葉を返した瞬間、その邪悪な手の平の上に乗ってしまうようなものだ。話の通じる相手ではないのだと、リュカはただ静かに敵に剣を向ける瞬間を窺う。
「少しは大人になったようですね。あの時はまだそこにいる子供よりも小さかった。とても可愛らしい男の子で、健気にお友達を守ろうとしていましたね。私はね、よく覚えているんですよ」
「……黙れ」
「あれほど勇敢な子供を、それまで見たことがありませんでしたからね。大抵は私を見れば逃げ出すかその場で気を失うか。人間の子供なんてそんなものですよ」
「人間はお前が思うほど弱くはないさ」
リュカの声は非常に静かだった。敵の挑発には乗るまいと、必死に心を鎮めていた。淡々と、己の思う事実を言葉にするだけだった。感情を置き去りにするのが正解だと、今は思っていた。
「ほっほっほっほっ。そんなことはどちらでもいいでしょう」
高らかに笑う魔導士はそう言うと、濃紫色のローブをばさりとはためかせた。ローブの内側から目に痛いほどのぎらついた装飾が現れ、その全てに敵の魔力を増幅させる作用を感じた。敵の魔力には恐らく底がない。父パパスを殺めた時、この魔導士はまるで本気を出していなかったのだと、改めて知らされた。
「ともかく今ここでお前たちのチカラを確かめさせてもらいますよ」
ゲマの魔に染まる青の顔は常に不気味な笑みが浮かんでいる。長いローブの袖を一度振るだけで、その手には死神の鎌が握られる。リュカが手を横に広げ、咄嗟に皆を下がらせた。その判断が一瞬でも遅れれば、ティミーの首が死神の鎌にかかっていた。しかしそれさえも計算ずくだと言わんばかりに、ゲマはいかにも面白いと言うようにリュカたちを眺めている。
少しでも敵の攻撃力を削がなければと、ティミーとスラりんが同時にスクルトの呪文を唱える。直後に死神の鎌が宙から飛びかかっていたアンクルの首に迫る。宙で翻って素早く避けたアンクルだが、左の角がその打撃を受け、折れてしまった。スクルトの呪文の効果がなければ、振るわれる鎌の勢いで地面に叩きつけられているところだ。
プックルが真正面から突っ込んでいく。獣の直線的な攻撃を、ゲマは笑いながら宙に飛んで躱す。翼などないが、ゲマはその果てしもない魔力を使い、自由に空間を移動する。そしてお返しにと、死神の鎌を振るう。
プックルはその動きも読んでいる。鎌を躱し、その長い柄に飛び乗って勢いをつけ、間近からゲマの首に食らいつこうと飛びつく。迫るゲマの顔が歪み、魔導士の魔物としての大きな口がパカリと開く。喉の奥に渦巻く火炎が見えたかと思うと、それは激しい炎となってプックルに、辺りに巻き散らされた。全身に炎を纏ったまま、尚もゲマの首に食らいつこうとするプックルだが、「プックル!」と叫ぶリュカの声を辛うじて耳にした。直後、死神の鎌の攻撃を防いでくれた金属音を聞き、自身に迫っていた鎌の先を間近に見て、顔を悔しそうに歪めて飛び退いた。そして意識が薄れゆく前に、堀に流れる水へと突っ込んでいく。
宙からサーラが、床からポピーが、呪文の構えを取っていた。目を合わすこともなく、二人は同時に呪文を放つ。大きな火の玉が敵の頭上から、火の勢いを助長させるような爆発がゲマに迫る。ゲマは動じない。その身体を包む強い魔力の膜がある。
跳ね返ってきた火の玉を避け切れず、サーラの身体が炎に包まれる。ゲマのマホカンタに跳ね返されたイオラの爆発もまた、ポピーたちを一斉に襲う。広い空間に爆発音が轟き、柱の真っ赤な血のような火が激しく揺れる。
「ほっほっほっ。私に呪文は効きませんよ。悪しからず」
その言葉にポピーは一瞬絶望を感じた。敵がマホカンタの呪文を使い、呪文を跳ね返してくるのなら、攻撃呪文だけではなく攻撃補助呪文ルカナンも放つことはできない。しかし静かな怒りを身体に溜めて敵に立ち向かう父の背中を見れば、すぐに気を取り直す。味方の攻撃力を限界まで底上げするのが自分の役目だと、父に向かって両手を伸ばした。バイキルトの呪文がリュカの身体に力を与えるのを見て、ゲマはふっと冷たい視線をポピーに向けた。
「その呪文はなかなか厄介ですね」
ゲマの呟きにも似た声に、リュカが危険を察知する。ポピーを守るように立ち、ゲマの注意を自身に惹きつける。父の背に庇われながら、ポピーはすぐさま他の仲間の攻撃力を増強するべく呪文を唱えようと構える。
リュカの目の前からゲマの姿が消えた。魔力を使い、自在に空間を移動できるゲマは、唐突にポピーの目の前に現れた。バイキルトの呪文を唱えかけていたポピーの声が止まる。恐怖に身をすくませ、唱えかけていた呪文は完成しないまま辺りに散ってしまった。
「まずはこの娘から」
そう言って振り上げた死神の鎌を、密かに間近に迫ったピエールの剣が弾いた。できれば弾く勢いでその鎌を敵の手から落とさせたかったが、それは適わなかった。ゲマは邪悪な魔導士であるのと同時に、戦士としての力も半端なものではない。敵の大きな手によって強く握りこまれた死神の鎌が、すぐさまピエールを標的に変える。床に頭を擦りつける勢いで鎌を避けたピエールは、その視界の端で再び死神の鎌を弾く剣の煌めきを見た。
「ポピー!」
「うん!」
兄妹はそれだけで意思疎通を果たし、ポピーは皆に守られる中、ティミーにバイキルトの呪文を放つ。ティミーが果敢にゲマの死神の鎌に、神々しい天空の剣を当てに行く。神の力が悪を凌駕するのだと、力を増したティミーがゲマの死神の鎌の攻撃を堂々と天空の剣で受ける。すぐさまリュカも加わり、プックルも別方向から飛びかかってくる。近くの敵を蹴散らすための炎をゲマの口の中に見た時、ポピーはピエールとプックルの攻撃力を上げることに成功していた。
群がる小さな敵が鬱陶しいと言うように、ゲマは辺りに激しい炎を巻き散らした。ティミーが皆を守るように守護呪文フバーハを唱える。炎の勢いを半減できるが、ゲマはもう一度息を吸い込むとすぐさま同じように激しい炎を吐き散らした。広間中に炎が及び、その熱に押されて呼吸をするのも苦しくなる。衣服や体毛に火が留まれば、すぐに堀の水へ向かって駆け出し、止む無く一度後退する。
呪文を跳ね返されるとなれば、直接的に攻撃を続けるしかない。ポピーの呪文で攻撃力を上げたリュカとプックル、ピエールにティミーがゲマを取り囲む。ポピーを一人にしないようにと、サーラが彼女の身体を抱え、そのまま離れた宙に控えた。その前をアンクルが守るように宙に留まる。少し敵から離れた場所に連れられたポピーは、束の間緊張から解かれるように息をして、残り少ない魔力をその手に感じていた。
「王女、マホカンタを唱えられますか」
サーラの静かな声に、ポピーは小さく肯定の返事をする。
「バイキルトじゃなくて?」
「私に呪文を跳ね返す力をください」
無暗に無意味にこんなことを言うサーラではない。ポピーは仲間の魔物を信じ、残り少ない魔力でサーラにマホカンタの力を与える。サーラの身体を光の膜が覆い、彼の身体は全ての呪文を跳ね返す力を得た。
死神の鎌がリュカたちに存分に振るわれる。空気を切り裂く鎌の太刀筋を読むのに必死で、リュカたちは攻撃の手をこまねいてしまう。リュカたちが剣を向けても、ゲマはその大きな身体を覆う濃紫色のローブをはためかせて攻撃を避けてしまうのだ。しかしゲマもまた、リュカたちの怒涛の攻撃を受け、狙うポピーのところへ移動ができない。足止めを食う状況に苛つきを感じたところに、後頭部に激しい一撃を食らい、ゲマの身体が前に傾く。
「上が隙だらけだったなぁ!」
アンクルが宙から突っ込み、ゲマの後頭部に飛び蹴りを食らわせた。冷たい視線を向け、ゲマの鎌がアンクルの首を狙って薙がれる。太い腕に斬りつけ、アンクルが痛みに顔を歪める。
「先に食らっておきますか?」
ゲマの言葉に合わせ、死神の鎌を持つ右手とは反対の、左手に魔力が集中する。あっという間に完成した巨大な火の球を、ゲマは事も無げにアンクルに向かって投げつけた。
その時、アンクルを突き飛ばしたサーラの姿があった。メラゾーマの巨大な火の球がサーラに迫る。しかしサーラの身体もまたゲマと同様、マホカンタの呪文を得ている。
サーラはゲマを正面に見据え、メラゾーマの巨大火球を弾き返した。投げつけられた勢いそのままに、メラゾーマがゲマ自身へ飛びかかる。背中を見せたゲマを、プックルが後ろから突き飛ばすと、敵の身体は巨大な火球の中に飛び込んだ。
真っ赤に燃える火球の中で叫び声を上げるゲマを見て、リュカはかつての父の最期を思い出す。同じ炎に焼かれて消えてしまえばいいとリュカが鋭い眼光で炎を見つめていると、燃え盛る炎の中からにたりと笑う敵の目が見えた。
炎の中から死神の鎌が飛び出す。リュカの首を狙う。突き飛ばすのはアンクルの巨体。鎌の刃がアンクルの背中に突き刺さり、縦に大きく薙がれた。両方の翼の中心に、深い死の傷跡が残った。
床に倒れたアンクルが一撃で命を奪われたのが分かった。ゲマの死神の鎌で殺された者の行方。それは竜の目を守り続けていた天空人のシスターが身をもって教えてくれた。床に倒れたアンクルの背中から、黒い靄がじわりと滲み出している。
すぐさま蘇生にかからなければとリュカが駆け寄ろうとするが、ゲマの鎌に阻まれる。リュカを蘇生に向かわせなければと、仲間たちが懸命にゲマの足止めをしようとするが、激しい炎を吐かれれば逆に足止めを食らってしまう。アンクルの身体が闇に包まれかけている。間に合わなければ彼は永遠にこの世を去り、天国にも地獄にも行けず、どこかの暗闇へと葬り去られてしまう。
リュカはゲマの向こう側に、ポピーが近づいてきているのを見た。目で制しようとするも、娘にはその意図が届かない。今の敵に彼女の呪文は一切通用しないのだ。ましてや近づいて直接攻撃を仕掛けるなど、無意味にも等しい。
その時、ポピーが意を決めたように何かを投げつけた。それはゲマにではなく、倒れたアンクルに向けてだ。宙を飛ぶ水色の雫形がリュカの目の端に映った。
スラりんが倒れたアンクルの翼の影に身を隠すように、その小さな身体を皆の目から隠した。スラりんの身体から呪文が発動する。アンクルの身体から滲み出る黒の靄が一時、止まる。しかし再び靄の勢いが強まれば、スラりんは諦めずに再び呪文を発動した。スラりん自身、リュカのザオラルの呪文を受けた際に、この呪文の力を体得していたのだ。アンクルの目がうっすらと開いたのを見て、リュカはゲマの死神の鎌を思い切り弾き返した。
「鬱陶しいですねえ……どれもこれも、ちょこまかと」
ゲマの振るう死神の鎌はまるで何本もあるかのように、素早くリュカたちの攻撃を弾き、そして隙を見つけては首を狙ってくる。ゲマがその手で鎌を扱っているというよりも、無限の魔力を使い鎌を操っていると言うのが正しい。それ故にその太刀筋を見極めるのは困難に極まる。首を掻かれそうになる直前に際どく避けているのが現状だ。
ゲマと対峙する中で、最も体力のないティミーの気が一瞬緩んだ。すかさずその小さな首をゲマが狙う。リュカが目を向けた時には既に、ティミーを庇うプックルの腹に鎌が突き刺さっていた。叫び声も上げずに、プックルが宙を舞い、そのまま床に倒れる。命が辛うじて繋がっているのを感じ、ピエールがすかさず回復の手を伸ばすが、ゲマも攻撃を緩めない。その手を死神の鎌が捉え、激しく斬りつけた。感覚のなくなった腕のまま、ピエールは構わずプックルにベホマの呪文を飛ばした。
息つく間もない攻防の中、ゲマが一瞬だけ息をつく間を見た。リュカが床を蹴りつけ、敵の懐に入り込む。死神の鎌がリュカの身体を捉える直前、父パパスの剣がゲマの首を下から斬りつけた。揺らぐ敵の身体に、ピエールの剣も突き刺さる。動きを止めた敵にトドメを刺そうと、ティミーが剣を突き出した。
その剣を、ゲマは素手でつかんだ。
「つかまえた」
天空の剣ごと、ティミーの身体が宙に浮いた。咄嗟に剣を手放せば良かったのだと、ティミーが思い至った時には既にその身体は敵の手中にあった。激しく抵抗するティミーの手を掴み上げ、死神の鎌がその小さな首に当てられる。無数の人々の殺められた命を、鎌の刃から感じる。その命が呪いをかけられたように、ティミーの首を欲しがっている。
「……どこかで見た光景だと思いませんか?」
あの時の自分だと、リュカは敵の手に渡ってしまったティミーを見て、悔しさに歯噛みする。ティミーの強さを過信していたのかも知れない。九歳になった息子は、あの時の自分よりもよほど強い。共に旅をし、共に戦えるほどに強い息子に、リュカは知らない内に期待をかけ過ぎてしまっていた。決して渡してはいけない敵に、大事な息子を人質に取られた父の気持ちが、今のリュカの中に入り込んでくる。どうすることもできないと、リュカは歯をぎりぎりと言わせながらただ敵と息子を見つめて手を震わせるだけだ。
ゲマがティミーを捉えたまま、宙高くに浮かび上がる。ティミーの目が不安に揺れているのを見ても、この状況では助けの手を伸ばすこともできない。ゲマと同じように宙に浮かぶサーラとアンクルも、静かに状況を見守っている。今はティミーの命を最優先させなくてはならない。
「さて、この後はどうなるんでしたかねえ。覚えていますか? ……ああ、あなたは気を失っていたから、覚えていないかも知れませんねえ」
そう言いながらゲマは濃紫色のローブを宙にはためかせながら、左腕を高々と上げた。その手の上に魔力が集中し、広間内を照らす明かりなど必要ないほどの火が集まり、みるみる巨大な火球となり、宙に浮かんでいる。
「これであなたのお父さんと同じところへ、行けるといいですね」
放たれたメラゾーマがリュカに向かう。ゲマの死神の鎌は油断なくティミーの首を捉えている。ティミーが腕を掴まれたまま身動ぎし、叫ぶ。ポピーの甲高い叫び声が響く。
炎に包まれたリュカの影が黒く揺れている。懸命に炎の中で立ち続けている。叫び声を上げることもない。子供たちに最期の叫び声を聞かせてはならないと、リュカは自身を焼く炎の中で、徐々に消えゆく意識の中で、必死に命を保とうとした。
「はなせっ!! このっ! 外道め!!」
父を助けなくてはならないと、ティミーが暴れる。今ならまだ間に合う。しかし敵の炎がまだ止まない。強烈なメラゾーマの力が、リュカの身体を焼き尽くそうとする。
「あなたもここで死にたいようですね。それならば、同じように」
ゲマは再び魔力を集め、巨大な火球を生み出したかと思うと、まるで遊びの一種でもあるかのようにティミーの身体を宙に放り投げた。空を飛ぶ鳥に狙いをつけて落とすように、宙に飛んだティミーの身体目がけてメラゾーマの巨大火球が飛び出した。
ティミーの左腕に装備する天空の盾が光を放つ。勇者の身体を護らなくてはならないと、盾が呪文を発動する。呪文反射の効果がティミーの身体を包み込み、マホカンタの効果を得たティミーが憎き敵のメラゾーマを弾き返した。
驚きに目を見開くゲマに、自身が放った強烈な巨大火球が返された。濃紫色のローブが真っ赤な炎の中に包まれる。敵の攻撃の手は止まり、隙が生まれた。宙でティミーをつかまえたアンクルが、共にリュカの元へと飛び込んでいく。
床に横たわったリュカは、身体を丸めたまま動かなかった。息をしていない事態に気付いていると言うのに、プックルがその魂に叫んで呼びかけている。ピエールが信じられないと言うように、呆然と立ち尽くしている。ポピーが父の身体の上にすがりつき、その傍らでスラりんが懸命に蘇生呪文を唱え始めた。サーラはリュカの死を目の前にしても、まだ守らなければならないものがあると、炎に依然包まれているゲマの様子を目を熱くしながら窺っている。
「おい! 馬鹿野郎! 子供を置いていく奴があるかよ!」
アンクルが力任せにリュカの胸倉をつかもうとするが、その手は止まり、握りこまれるだけだ。半分閉じられたリュカの目に生気はない。命を切らしてしまった身体を掴んで上げたところで、それは何の意味もなさない。ただの冒涜になると、アンクルはスラりんの唱えるザオラルの呪文に全てを懸けて黙り込んだ。
リュカの身体の上に乗るスラりんの身体から力が抜けて行った。既にスラりんはザオラルの呪文を三度唱えていた。しかしリュカの魂は戻ってこない。それはリュカ自身が心得ていた事だった。自らの生きる気力が弱い己には恐らくザオラルの呪文は通用しないと、彼は自身の身体も心もよく理解していた。スラりんの魔力が底を尽き、もう何の呪文も唱えられなくなったという状況になっても尚、リュカは生き返らなかった。
「私が彼を彼の父の元へと送ってあげたのですよ。ようやくあの世で親子の再会ができる。私も良いことをしたものです」
憎たらしい言葉を吐くゲマだが、その体力は確実に削られていた。宙高くに漂う気力を失い、その身は床にまで降りて来ていた。濃紫色のローブは自身の放ったメラゾーマの炎に焼け焦げ、あちこちがボロボロと崩れている。声にも疲労が滲んでいる。動きにも僅かな隙が見えるようになった。
戦友の弔い合戦だと言わんばかりに、プックルが激しい雄叫びを上げた。その青の目からはとめどない涙が流れている。この世に生きる目的を半分以上見失い、プックルは捨て身の覚悟でゲマに飛びかかって行く。ピエールもまた同じ覚悟を持って、ゲマに挑む。確実にこの敵を葬らなければならないと、リュカの死を無駄にしないためにも、敵の僅かな隙に飛び込んでいく。宙からはサーラが素早く舞いながら攻撃を仕掛ける。アンクルはもう二度と子供たちを人質になど取られぬよう、身を挺して子供たちを守る覚悟だ。
「……お父さん。ウソだよね?」
父リュカの身体を包んだ敵の炎の球には異常な熱を感じた。敵が放ったのはただのメラゾーマという呪文ではない。火球呪文最大の呪文の威力を更にその悪魔の手で増幅させていた。火の力を徐々に強め、苦しめ、激しい痛みの中で死を迎えるようにと、呪文の中に敵の非道が現れていた。
あれほどの炎の中にいたというのに、父の手を握ればもうその温かさが失われ始めていた。命が途切れた身体に、体温が戻ることはない。放っておけばこのまま父の身体は冷たく氷のようになってしまう。
「…………許さない」
ポピーの氷のような声が聞こえ、ティミーは父の胸に頭を預けていた妹を見た。同じようにポピーも顔を上げていた。互いに顔が涙で濡れていた。
「あんなやつ、死んでしまえばいいのよ」
「ポピー?」
「死ねばいいんだわ」
そう言うと、ポピーはその場にふらりと立ち上がった。彼女も魔力を多く使い、既に残りの魔力は底を尽きかけている。しかし妹の身体を包む魔力は、残り僅かなものとは感じさせない激しいものだ。倒れた父に背を向け、父の仇に向き直ったポピーは、その全身を凍てつくような冷気に包んでいる。
ポピーが顔を歪めながら、全身に残る魔力を絞り出すように両手に集中させた。その手を今も死闘を繰り広げる敵と仲間たちへと直線的に向けた。
放たれた猛吹雪が広間の中を吹き荒ぶ。マヒャドの呪文を放ったポピーの表情も、凍りついていた。彼女が初めて敵に対して、微塵も優しさや同情を持ち得ない瞬間だった。その無表情には彼女が持ち得ないはずの無慈悲が現れていた。
しかしゲマの身体はマホカンタの呪文で覆われ、全ての呪文効果を弾き返してしまう。感情のままに放たれた呪文を感じ、ゲマはにたりと笑うが、それを阻む者がいた。
サーラが冷静に角度を見ながら、ポピーの放つマヒャドの呪文を受け止める。サーラの身体もまた、同様に呪文反射マホカンタの効果が持続している。サーラは自身の身体を捻り、全身で投げつけるようにゲマに向かって王女の呪文を弾き飛ばした。
ゲマの身体を猛吹雪が襲い、その身体を凍てつかせる。激しい冷気の力に、流石のゲマもその動きを止め、大きな身体を曲げて、強烈な呪文に耐えようとする。身体の内側から凍てつかせるマヒャドの効果に、ゲマの全身から氷の棘が生み出される。怒りに顔を歪めるゲマは、自ら炎の呪文を浴び、氷を消しにかかったが、それも至近距離から何匹もの魔物の攻撃を受けながらで手間取っている。
すでに魔力が底を尽きかけているポピーが、体力精神力全てを魔力に変えてしまうかのように、その小さな両手に途轍もない魔力を集め始める。明らかに無茶をしている妹に、ティミーが強く呼びかける。
「ポピー! 止めろ! お前まで……」
ティミーの声がポピーに届かない。止まらない涙に嗚咽に、ティミーの声がくぐもる。ポピーの目からも涙が止まらない。ただその歪んだ表情からは、悲しみよりも激しい憎しみが溢れ出ている。悪魔そのもののような敵の姿しか見えていないようだ。
「お父さん! お父さん! そんなのってないよ!」
ティミーがリュカの胸を叩く。仰向けのリュカの身体が力なくわずかに跳ねる。みるみる冷たくなっていく父の身体に、ティミーはかつて父が祖父を失ったその時の光景を思い出す。
プサンの不思議な力により見せられたゴールドオーブの記憶の中に、父の過去を垣間見た。今まさに対峙しているあの悪魔のような仇の前に、リュカを人質に取られたパパスが激しい巨大火球の中に取り込まれ、焼かれ、そのまま身体ごとこの世から消え去ってしまった。目を覆いたくなるような光景だった。目の前から消えてしまえば、救いたくとも救えない。弔いたくとも弔えない。そんな過去を父リュカは密かに胸に抱いていたのだとその時知り得た。
歴史は繰り返すと言う。大昔から続く人の歴史も、この大地の歴史も、それこそ神様の目から見ればただ同じことを繰り返しているに過ぎないのかも知れない。しかしそんな真理は今、ティミーたちの誰一人として理解できるものではない。その歴史の中に生きている者にとって抗うべき歴史ならば、何が何でも抗ってやるのだと、ティミーは自身の特別な立場を今一度思い出す。
「ボクは勇者だ! こんなひどいこと、繰り返させてたまるもんか!」
諦めてたまるものかと、ティミーは自身の勇者としての力を一心に信じる。世界を救うと言われる勇者が、たった一人の父を失うことがあってはならない。酷い歴史なら繰り返させない。勇者として生まれた自分にしかできないこと、神様が自分を勇者と選んだのなら特別な力を与えてくれたはずだと、ティミーはリュカの胸の上に両手を当てたまま、父の命の復活を強く強く祈り願った。
ティミーの装備する天空の剣が、盾が、兜が、光を放つ。しかし実際に光を放っているのは、ティミー自身だ。あまりにも神々しいその強すぎる光に、ポピーが我に返ったように目を見張り、アンクルが後ろを振り向くが目が潰れそうな激しい光に思わず顔を背ける。ゲマと対峙していた仲間たちも、そしてゲマでさえも、ティミーの発する神の光に顔をしかめる。
ティミーの強い祈りが天に届くと、天から再びの命が授けられた。蘇生呪文ザオリクの力がリュカの身体に及び、完全にこの世と決別しようとしていたその身体と心に命を吹き込む。
リュカの全身に及んでいた火傷の痕が嘘のように薄れ、消えて行った。焦げ付いた衣服こそ元には戻らないが、リュカの全身を痛めつけていた傷と言う傷が全て、強烈な聖の力で治癒していく。薄く開いていた父の瞳に再び光が宿ったのを見ると、ティミーは父の胸の上に置いていた手で、父の手を強く握った。
「ティミー」
声の調子も普段通りだ。これまでの死闘などなかったかのように、リュカの身体は蘇生しただけではなく、回復呪文で全快したかのように万全の状態に戻っている。
父の復活を目にして、ポピーがその場で頽れた。怒り、悲しみ、憎しみで保っていた彼女の気力は、父が立ち上がるのを目にして途端に失われたのだ。魔力も完全に底をついていた。完全に守らなければならない存在となったポピーを、アンクルが腕の中に閉じ込めるように抱きかかえる。
「……その子供は実に忌々しい力を持っているようですね」
ゲマのおどろおどろしい声がリュカにも届く。ゲマが全身から魔力を放出する。空間内に魔力の渦が立ち込める。激しい熱が生まれ、空間に揺らめいているのが見える。
「何度向かって来ようと同じです。歴史は繰り返すのですよ」
「同じにはさせない」
「ほっほっ。そうですね、同じにはさせません。……それは今ここで、親子共々死ぬのですからね!」
ゲマは向かってくる魔物らを牽制するために、口から激しい炎を吐き散らした。ゲマは敵の人間と魔物の一行を甘く見ていた。絆というものがどのようなものなのかを仇は知らない。
激しい炎の中を、プックルもピエールも構わず突っ込んでいく。考えなしに突っ込んでいるのではない。敵が再びあの巨大火球を作るために時間を稼ぐのを、確実に阻止するために二人は同時にゲマに飛びかかった。濃紫色のローブの上から、メラゾーマの呪文を生み出そうとする両腕に噛みつき、剣で斬りつける。ゲマは顔を歪めながら、二匹の魔物を同時に両腕で打ち払い、死神の鎌を現出させて二匹の身体を鋭く薙ぐ。
その時間だけで十分だった。リュカがゲマに迫る。対峙するリュカとゲマ、どちらが悪魔なのか分からないほどの顔つきで、互いの武器を交わらせる。一度折られた父パパスの剣を、リュカははっきりとした憎しみの元に振るう。接近して間髪入れずに振るい続ける剣と鎌の間に、呪文を唱える間合いなど与えない。敵を仕留めるまでこの剣を振るうのだと、リュカは息を詰めたまま剣を振るい続ける。その間合いには、味方の魔物たちですら立ち入ることができない。
リュカの剣先がゲマの喉元を掠める。青い頬にかすり傷。青黒い血が飛ぶ。返しに死神の鎌がリュカの腕を斬り落とそうとする。腕を引き、父パパスの剣で受け流す。はためくローブの内側に見える胴に剣を突き出す。躱された直後、そのまま腕を狙う。鎌の長い柄が回転し、刀身が弾かれる。回転したそのままに、リュカの足元を死神の鎌が薙ぐ。飛んで避け、そのままゲマの首を狙う。身を仰け反らせて回避。左腕が拳を固めて飛んでくる。肘を突き出し軌道を変え、体勢を崩したゲマの首を再び狙う。捉えたと感じたが、やはりかすり傷。息が続かない。しかし呼吸をすれば、攻撃の手が止まる。止めるわけには行かない。
一瞬の隙も与えなかったはずだった。しかしゲマは死神の鎌を操りながらも、口の中に炎を溜め込んだ。目の前で吐き散らされた激しい炎に、リュカの身体は一瞬でも恐怖を感じた。後ろに飛び退いた瞬間に、ゲマの死神の鎌が己の首に迫るのを感じた。愉悦に歪んだゲマの顔が見えた。この悪魔だけは死んでも許さないと、リュカの心に憎悪が満ちる。
渾身の力を込め、残りの魔力さえも込めるように、リュカは父の剣で死神の鎌を迎え撃つ。更に力を込める。全身がミシミシと音を立てて壊れそうなほどの力を込め、リュカは敵の巨大な鎌をその手から弾き飛ばした。敵の魔力で操られている死神の鎌がまだ辛うじて宙に浮いているのを見て、リュカは忌々し気にその鎌を蹴り飛ばした。操りの魔力から解放された鎌は浮遊力を無くし、吹っ飛び、重々しい音を立てて床に転がった。
武器でもあり身を守る盾でもある死神の鎌を失ったゲマに、リュカは怒涛の勢いで剣を振るう。避ける術は身体を躱すのみで、ゲマの動きは徐々に鈍りを見せる。致命傷はないものの、その悪魔の身体には確実に傷が増えて行く。敵に炎を吐かせる隙も、呪文を唱える間合いも与えない。
リュカの剣先が、ゲマの身体を捉えた。鋭い突きが、仇の左胸に突き刺さる。ゲマの口から青黒い血が噴き出し、その禍々しい手が剣の刺さる胸を押さえる。ゲマの邪悪な力が弱まったことを示すように、その悪の手から逃れようと濃紫色のローブの内側から光が飛び出た。黄金の宝玉が正しい持ち主に戻るかのように、リュカたちの元へと落ち、ころりと転がった。神の封印を解いてくれと言わんばかりに、竜の右目が煌めきながらリュカたちを見つめた。
ゲマが冷たい視線でリュカを見下ろしている。相手を凍りつかせるような表情で、リュカはゲマを見上げている。
「……そうですか……。ここまでチカラをつけているわけですね……」
ゲマの声には確かな疲弊が現れていた。しかしまだどこか余裕の感じられる、震えも嗄れもない声だ。赤く濁った眼にもまだ命が残り、リュカを正面から眺めている。左胸を深く刺し、その命を絶えさせるに十分な攻撃を与えたというのに、ゲマの身体から命は去ろうとしない。
「おや? 何を驚いているのです。この程度で私が本当に滅びるとでも? ほっほっほっほっ……。こんなところでチカラ尽きるまで戦うほどバカではありません」
リュカはこの敵を逃してはならないと、敵の胸に突き刺したままの剣を握る手に力を込める。しかしゲマは剣の刀身を素手で掴むと、手に血を流しながらそれを引き抜き、身を翻して宙に舞い上がった。アンクルは双子を隠すように守り、サーラは唯一宙を飛ぶ者として、同じく宙に浮かぶゲマへの攻撃の間合いを図る。
「どちらにせよ、あの時……パパスを灰にした時にリュカを殺さなかったのは私のミスでした。この私が戦っても息の根を止めることができぬほどチカラをつけるとは実に感心です。どうやら取り急ぎミルドラース様にご報告しなくてはいけません」
そこまで言うと、ゲマは一度苦し気に口から血を吐いた。下方に広がる床に青黒い染みができる。サーラが飛びかかろうと全身に力を溜めた時、ゲマは両手を身体の両側に大きく伸ばし、魔力を放出させた。同時にその魔力に引き寄せられるように、床に落ちていた死神の鎌がゲマの手に戻り飛んで行く。あれほど痛めつけたというのに、敵にはまだ底なしの魔力が備わっていた。
ゲマの身体の周りに、闇の空間が広がる。別の世界のような闇の中の景色は深く、その暗闇を見つめるだけで、リュカたちは心ごと闇の底へと落とされそうな悪寒を感じた。この世に生きる者たちは皆、ゲマの生み出す深く濃く、全てを包んで消し去ってしまいそうな暗闇を目にしたことがない。その暗闇の中に、ゲマの姿が消え去ろうとしている。
「……逃がしてたまるかっ!」
リュカは宙に浮かんで届かない敵に向かって、咄嗟に呪文の構えを取った。バギクロスの渦が両手の中に激しく渦巻き始める。しかしゲマの身体は依然として、呪文反射のマホカンタの影響を保ち続けている。サーラがそれを阻止するように、敵に弾き飛ばすように宙を滑空する。
「私も少し休ませてもらいましょう。くっ……ほっほっほっほっ……」
リュカがバギクロスの呪文を発動する直前に、ゲマの身体は闇に飲み込まれるように、空間の中で消え去ってしまった。後に残るのは激しい戦いの痕が残るこの広く禍々しい空間だけだ。床の至る所に焼け焦げた痕が残り、リュカが一度命を落とした所には、かつてラインハットの東の洞窟で残ったパパスの最期を思わせる激しい黒の痕が残されていた。リュカはその場で立ち尽くしたまま、呆然とゲマの消えた虚空を、顔を歪めて睨み続けていた。
Comment
bibi様
いや…もう…涙が…いやぁもう……(ウルウル)
ちょ…ちょっとまってくださいね…、えーと…とりあえず前座のドラゴン戦から…。
ブラックドラゴン登場、bibi様いつになったら描写してくださるのかなって思っていたら、そっかメタルドラゴンがいたことを忘れてましたよ。
なるほど、ドラゴン2種をダブルで出すつもりだったんですね、しかも、ゲマ戦の前というお膳立て!
実際ゲームでもブラックドラゴン3匹で出て来ますよね、そこにメタルドラゴン3匹が加わるなんて…ゲームで、もし6匹纏めて出て来たら…苦戦必須間違いないですな!
ドラゴンの一撃はやっぱり強烈!今後に出て来る上位種グレイトドラゴン戦はどうなってしまうのか今からワクワクです。
さて…本題のゲマ戦。
いやぁbibi様、ほんっとにすごいです!すごかったです!
おそらくbibi様が今まで描写されて来た戦闘シーンの中で、1番すごかったように自分は感じます!
他のbibi様ファンユーザーの方々にも、まずは、bibi様の過去作、子供時代、父の背中・別れ
https://like-a-wind.com/text5-5/
こちらを読んで頂いてから、このゲマ戦を見て頂けると、感情輸入がすごくしやすいと思いますのでURLリンクしちゃいますね(笑み)
まず、流石です、過去作とのリンクが読み手をハラハラさせます。
子プックル丸焼きで子リュカが水に落とす←今回はプックル自ら落ちる、失神中の子リュカ人質にし空中に上げ死に神の窯←ティミー人質にして空中に上げ死に神の窯、パパスメラゾーマ←リュカメラゾーマ、子ヘンリーを子リュカが庇いながら闘う←ティミーポピーをリュカが庇いながら闘う。
ここまで性格にリンクしてくれると読み手はワクワクしっぱなしであります。
スラりんのザオラル、ティミーのザオリク、ポピーのマヒャド、ここで使わせるつもりだったんですね、スラりんのザオラルは予想していましたが、ザオリクとマヒャドの描写は…涙がポロポロでしたよ…。
まさか、リュカを殺すなんて想定外でした、だって主人公ですよ⁉
このまま本気でリュカを死なせてしまうのではないかと…本気で心配しちゃいましたよぉ…(涙)
ポピーの本気で怒りマヒャド、あそこまで追い詰められたポピーは誰よりも怖いでしょうね、まさかポピーの口から「死んでしまえばいい」なんて言葉を聞くなんて、思っていなかった…今回の怒りポピーは、ドラゴンボールZのセル戦の怒り悟飯もびっくりですな(笑み)
マホカンタを今回うまく使いましたね、ドラクエの基本ですよね反射返し!
でもbibi様、今回のマホカンタ描写すごく良かったですが、ティミーに天空の剣を使わせて凍てつく波動は考えていたんでしょうか?
SFCではゲマ戦が最終になるのにリメイクはまだ終わらない…、3戦目の本気ゲマ戦!いったいどうなってしまうのか…リュカたちも心配でありますが、bibi様の精神力も心配であります(汗)
いや…本当にすごい死闘だった…。
bibi様が精魂尽き果てるわけだ…。
本当にお疲れ様でした、どうもありがとうございました。
次回は、とりあえず、失神したポピーをなんとか目覚めさせなければ!
そして、いよいよドラゴンの杖とドラゴンオーブ、次話も楽しみにしています。
今日…眠れるかな…興奮しています(笑み)
ケアル 様
コメントをどうもありがとうございます。
これまでに戦闘シーンは書きまくってきたと思うので、もうネタ切れだよと思いながらもどうにか書いてみました。
仇の前座はドラゴンだなと思い、地下奥深くに潜むドラゴンに登場してもらいました。竜の神様の塔の地下に潜むドラゴン、かつてはこの塔を守っていた者たち、なんて設定も面白いかなと思ったんですが、ややこしくなりそうだったんでそういうのは省きました。でもメタルドラゴンは古代技術で作られたドラゴンなので、もしかしたらそんな過去もあったかもなぁなんて。色々と想像(妄想)すると楽しいですね。そして話が広がって収集が着かなくなります。困っちゃう。
ゲマはこれ以上憎い敵はいないというところまで突っ走って欲しいので、とにかく嫌な奴になってもらっています。ドラクエ史上でもこやつは最も憎き敵と認定されているでしょうからね。おかげでラスボスの影が・・・という問題がありますが、その辺りも最後にはどうにかしたいなぁと思っています。最後のところまで早く書いて行きたいです。まだまだ色々とありますね。
過去との場面とリンクさせる意図はあまり持っていなかったんですが、自然とそうなりましたかね。ただ人質を取るという非道は必ず入れようと思ってました。それとスラりんと双子の新しい呪文も。ポピーは本気で怒らせると手に負えない子です。そうですね、DBの悟飯くんですね、まさしく。人は心が原動力ならぬ、怒りで底力、みたいな感じでしょうか。
私自身、ゲームの中でマホカンタを使うことはほとんどないんですが、今回はいいように使わせてもらいました。そうそう、天空の剣の凍てつく波動も考えていたんですが、そうするとこの戦い、全てティミーが持って行ってしまい兼ねないなぁと思い、封印させてもらいました。まだ彼は天空の剣から凍てつく波動が出ることに気付いてません。そのうち気づくかな。
まだこの塔の攻略、終わってないんですよね。いやぁ、もう終わった気になっていました(笑)さて、竜の目を所定の場所へ持って行かないと。・・・って、あの場所にはまたサーラとアンクルは入れないですね。待っててもらうかな。
bibi様
ドラクエシリーズの中で、ラスボス談義をした時、ミルドラースの名前を忘れがちになってしまうという…そんな話がネットにありました……たしかにね!(笑い)
bibi様まだゲマと3戦目を迎えていないから全てを知らないと思いますから、あまりネタバレ的なことを言わないようにしますが、
PS2とDSでドラクエ5リメイクした時、ゲマをここまで非道で邪悪で凶悪で外道なヤツに改良するなんて…、SFCプレーヤーは度肝を抜かれ、恨みと憎しみが増しました、むしろ、リメイクでミルドラース格下げでゲマがラスボスでも良かったんじゃないか?…だなんて自分は思っちゃいましたよ(笑み)
サーラにマホカンタしていなかったら、ポピーはマヒャドで氷付けになっていたんですね。
さすがの頭の良いサーラでも、この状況は予想できないですよね、戦闘状況を見ても、サーラがマヒャドを撥ね返してなければ、ティミーが開花してザオリクを使える状況になっていなかったかもしれませんよね、サーラのとっさの判断は素晴らしかったです!
ポピーの残りの呪文は…イオナズンとドラゴラム…。
bibi様がどのように描写するのか、すんごく楽しみにしていますね(楽)
bibi様、なんとかアンクルとサーラも、あの場所へ連れて行ってあげることはできませんか?
せっかくの神聖の場に彼ら達も!
だってあの二人がいなければ、全滅していたかもしれませんし…。
呪文で少しだけ穴を広げるとかどこかに秘密のスイッチがあるとか…、なんとかなりませんか?(願)
そして、ドラゴンの杖…bibi様、パパスの剣を辞めますか?
それとも随時持ち替えますか?
ケアル 様
リメイク版のヤツは、プレーヤーの反応を元に、更に悪い奴に仕立ててやろうという製作者側の思いが働いたのかな~なんて思っています。おかげでラスボスの影が更に・・・。
でも、やはりヤツはなれてもNO.2といういわゆるドラクエの大臣の立ち位置のような存在であって欲しいと言うのもありますね。そして私はそのNo.2の立ち位置にいるキャラが好きだったりします。敵でも味方でも。
サーラには頭脳として働いてもらいたいと言うのがあります。なんせ、国王も王子王女も、みんなしてここぞという時は突っ走ってしまうので、彼には抑え役をしっかりと務めてもらいたいところです。常に自分はその場にいない、俯瞰するような立場で。王女のマヒャドは予想していなかったと思いますが、王女やアンクルがうっかり間違えて敵に呪文を放つかも知れないと言うのはちょっと予想してたかな。
ポピーもティミーも、残る呪文はあとわずかですね。お話も終盤に入ってきているので、私も力が入ります。
アンクルとサーラは・・・ちょっと考えてみますが、ちょっと難しいかも。あまりご都合主義な感じにはしたくないので(散々やってるという噂もちらほら・・・)成り行きを見ながら書いてみたいと思います。
bibiさん、まずは執筆お疲れ様でした。
いつ頃からか、自分は何かの作業中に読み上げ機能で聴くようになったのですが、今回は流石に作業なんてしていられないくらい聞き入ってしまいました。
ゲマの不気味さ、底知れなさがヒシヒシと伝わってきて、ドラマCDを聴いているかのような臨場感と緊張感でした。
ティミーのザオリク習得が熱い…
その死闘っぷりにまさかこのまま倒しちゃうんじゃないか?と思いましたが、やっぱり逃げちゃうんですね…(笑)
ここまでリュカ達を苦しめといてなんて憎たらしい…!流石ゲマだ( ´∀` 😉
ゲマのメラゾーマは近年の作品でいう“攻撃魔力”によって威力が上がってるんでしょうね。
もしくはメラガイアーだったり…
ピピン 様
コメントをどうもありがとうございます。
ゲマが出る話はどうしても力が入ります。どれだけ非道なヤツとして書き上げてやろうかと・・・でもあんまり酷いことを書いたらこのお話を読んで下さる方々に悪い影響を与えかねないと、少しの自重と共に書いていました。私がゲマのことをこうして書けるのも、あの鳥山先生デザインのゲマがいるからですけどね。あれは完璧な悪だと思います。その姿形から色々と想像させてくれます。
ティミーのザオリクは以前からここだなと思っていて、満を持して登場した感じです。父を助けられるのは君しかいないよ、と。繰り返す嫌な歴史を覆せるのも君だけだよと。そういう強い使命を持ったのが勇者だろうと。そんな思いでティミーを書いています。
ここで逃げるのもまた非道外道のゲマだなと思います。そこに騎士道精神など微塵もなく、見苦しい位に自分の命が惜しいし、今度はどうやって痛めつけてやろうかなんて、そんなことしか考えてません。とんでもねぇヤツです。
メラガイアーなんて呪文があるんですね。最近のドラクエが分からず・・・攻撃魔力なんてのもあるんですね。面白そう^^
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戦闘の緊張感が回を追うごとに細かく激しくなっていきますねぇ。ゲームでもここから先はずっと緊張感と共にあったような気がします。
次回はいよいよ、リュカの武器が代わるのでしたか?なんだか杖を手に入れてたような…ネタバレでしたらすいません⤵️次回も楽しみにしております。
犬藤 様
コメントをどうもありがとうございます。
ホントにねぇ、戦闘の緊張感がどんどんますます・・・で、この先どうしたらよいのかと既に途方に暮れております。どなたか代わりに書いていただけませんか(悲) ってここで放り出しちゃマズイですよね。最後までどうにか頑張ります。
次回は、そうですね、そんな話になるかと思います。それと、神様の封印を解かなくては。まだ大事なお仕事が残っているのでもうひと頑張りです。