「世界少年少女文学全集 第2巻 中世編」(創元社)を読んで(3)

 

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こちらの本に収められているお話で、三つ目に読んだのが、「ニーベルンゲン物語」というヨーロッパを舞台にしたお話です。このお話には、オーディンやジークフリート(私の読んだお話の中では、ジーグルト)が登場します。聞いたこと、ありますよね?

三部構成となっており、第一部の題名が「ニーベルンゲンののろい」。小人族ニーベルンゲンの持つ宝の中に一つの指輪があり、その指輪を奪った者に対して、ニーベルンゲンが呪いをかけるという内容。このお話の始まりを読んで、思わず指輪物語(ロードオブザリング)を思い出しました。指輪物語もかなり前に小説を読んだことがあります。ちょうどロードオブザリングの映画が始まったころだったんじゃないかな。ドラクエ世界の根っこがあると聞いて、読まないではいられないでしょうと、一度に全巻買って読みました。

このニーベルンゲン物語お話の冒頭で世界観が語られているのですが、ヨーロッパの北の方に色々な神々が住んでいて、それは人間や魔物とほとんど変わらない性質の神だということや、人間でも神々よりも力の強い巨人族というようなものもあったということが示されています。これを読むだけでワクワク感がありました。また、そんな神々(オーディン、ヘーニル、ロキー)よりも強い巨人の百姓フライトマルやその息子のファブニルとレーギンやオトルという者たちが登場し、彼らは皆が魔法使いで、かわうそに化けていた弟のオトルをこの神々が殺してしまったからと、神々を縛り上げてしまうという、神様ってなんだっけ?と思わせる事態になってしまいます。

その後、ニーベルンゲンという小人族から指輪を奪うロキーに、小人が呪いの言葉を吐くも、ロキーはそれを相手にせずに指輪をオーディンへの土産にしたと。しかしそれもフライトマルに取られ、それに対して今度はロキーがフライトマルに呪いの言葉を吐くと……。なるほどね、とここまでのお話の冒頭部分で、何となくニーベルンゲン物語の根っこが分かりました。実際、黄金を巡って、フライトマル親子らは争いになり、子であるファブニルとレーギンが親殺しをしてしまい、更には兄弟でも争いになり、結局兄のファブニルが黄金を独り占めにして、姿を竜に変えて洞穴の中でその宝を守っているという話に。家を追い出された弟のレーギンは、小人族ニーベルンゲンの酋長アルベリヒのところに身を寄せ、鍛冶屋になって暮らしたと。おお~、何だか物語の初めの初めを知ったような気持ちになって、やっぱりワクワク感が止まりません。

何でも、お話の初めの部分に触れると、心が躍りませんか? たとえるならば、ドラクエ3で世界を旅した後に、ピャーッと下の世界に落とされて、あの音楽を聞いた時のような感じです。ドラクエ1、2をプレイした後でないと、その時の感動はないのかも知れないですが、物事の始まりの始まりを知るのって、これって本能的に心躍るものなのかも知れないですね~。

そんな前置きのお話があってからの本編になります。次からがジークフリートの話ですね。私の読んだ本ではジーグルトという名前で記されていますが、一般的にはジークフリートとしての方が有名なのではないでしょうかね。このジークフリートもまた、実は王子という素性の人で、子供の内に先ほどの鍛冶屋となったレーギンに養われることに。この辺りのつながりがたまりませんね。

ジークフリートの魅力は、その大力や、竜の血を全身に浴びて不死身になったこと(ただ背中の一か所だけに弱点を残していること)、名剣グラムを手にしていること、たった一人で旅に出ること、戦乙女ブルーンヒルトとの結婚の約束(ニーベルンゲンの指輪を渡す)、その後、忘れ薬によりブルーンヒルトの事を忘れてしまったジークフリートはブルゴンデ王のグンナルの妹であるグートルンという王女と結婚と……この辺りから男女のドロドロの様相を呈してきます。

こういうところで活躍するのは、やはり家老の立場にある者ですね。活躍と言っても、暗躍で、ジークフリートの暗殺を企て、成功させてしまいます。何故そんなことをしたかと言えば、家老ヘグニとしては、ジークフリートの存在が目障りだった……そんなところです。このような状況、色々なお話でもゲームでもよくあることに思えませんか? ドラクエ5で言えば、グランバニアの大臣だったり、ラインハットの太后も似たような心境があったかも知れません。いわゆる、嫉妬ですね。

そしてそんな嫉妬による行動は、新たな恨みつらみを生み……と、お話は続きます。このお話の終わりは悲惨なものです。最後には生き残ったグートルンが全てを滅ぼし、自らも討たれるという……悲惨です。ブルゴンデ族は滅亡。ブルゴンデ族がフン族に滅ぼされたことは歴史にも書いてあると言うことです。これが”ニーベルンゲンののろい”なのだと。

このお話の結びとして、欲のために力をふるうことは慎まなければならない、正義と愛情を持って人と交わらないと身を亡ぼすだけではなく国を亡ぼすことにもなるのだと、そのような教訓が書かれています。こんなこと、今に生きる人たちの多くは分かっているはずだけど、その渦中に身を置くと周りが見えなくなってしまうのが人間というものなのかも知れないですね。黄金がどれだけあったって、それが一体何なんだ、くらいに他のものに価値を見い出せれば、心も楽になるでしょうになぁ。

ここまでで、まだ第一部のお話です。この後、第二部、第三部と続きます。第二部は「聖杯王パルチファル」。聖杯と言うと、この本の初めのお話でもあるアーサー王物語とも繋がってきます。第三部は「白鳥の騎士ローエングリン」。第二部のパルチファルの息子がローエングリン。第一部のことで大いに書いてしまったので、第二部、第三部と気になる方は、ぜひご自分でお読みになってくださいね。(ここまでで既に長くなってしまったので……すみません)

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