残された者たち

 

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新国王と王妃が行方不明になってから丸一日が経とうとしていた。グランバニアの兵士たちの素早い捜索により、「北の教会で国王を見た者がいる」という情報を得て、国王オジロンが兵士たちを北の教会に向かわせてまだ間もない時だった。グランバニア城内は王妃に続いて国王までもが不在になったことに揺れ始めていたが、それらをオジロンを始めサンチョ、兵士たちを束ねる兵士長らが平静を保つようにと声をかけていた。
王室内には赤ん坊の泣き声が響いていた。さすがに長く泣き続けたため、ポピーは疲れのために眠ってしまい、ティミーの泣き声も僅かなものになっていた。懸命な泣き声を上げ続けるティミーを腕に抱く乳母は己の心臓が握られるような痛みを感じながら、彼女も頬に涙を流しながら必死にティミーをあやしていた。
「ティミー様、今はどうか休まれてください。お父上もお母上もきっと無事に戻ってまいります。どうか、どうか……」
サンチョも今にも泣きそうな声でティミーをあやす。ティミーも声の限りに泣き続けたため、まだ生まれたばかりの小さな体に疲れをため、少し経つとそのまま眠りに就いてしまった。ティミーとポピーの涙に濡れた小さな顔を見て、サンチョはたまらず目をきつく瞑り、涙を流す。
「サンチョよ、お主が涙を流してはいかん」
「は、はい、オジロン様。しかし、こんな生まれたばかりの幼子を残して坊ちゃんは一体どこへ……」
「北の教会でリュカ王を見た者がいると分かったのだ。大丈夫だ、じきに見つかるに違いない。王も王妃も無事にここへ戻ってくる……そう信じて待つほかない」
「しかし私はもう、坊ちゃんを十年以上も待ち続けたのです。そしてここへ戻られた。すぐに戻られると信じたいのですが、今度は一体いつ戻られるのですか」
「幼い頃に兄上と別れた子供が成長して戻ってきた。リュカ王は間違いなく強運の持ち主。わしらが信じなくては、誰が信じるというのだ」
「信じたい、信じたいですよ。当り前じゃないですか。坊ちゃんはとんでもない強運の持ち主だと信じています。途方もないご苦労をされながらもここへ戻られたんですから。しかし、それにしたってビアンカちゃんと一緒にいなくなるなんて……」
サンチョが悲痛な思いをオジロン王にぶつけている時、王室の扉が荒々しく開かれた。扉の脇には常に門番を二人立たせており、王室に入る者を全て認めてから通している。扉を開くのは門番の役目であり、それが乱暴に開かれることはない。しかも今は夜も更けた時刻で、王室に入室する者は緊急性の用事を持った者か、或いは敵の侵入の場合が考えられた。
開かれた扉を前に、オジロンもサンチョも咄嗟に身構えた。王室内にいる兵士たちもすぐさまオジロンを守るために扉の前に立ちはだかる。乳母たちは必死になって腕に抱く王子と王女を守ろうと、扉に背を向けた。
「オジロン殿……!」
扉を開いた二人の門番の間を抜け、一匹のスライムナイトが王室に飛び込んできた。続いて険しい表情をしたキラーパンサー、それに悲しみを一つ目に湛えたビッグアイが肩を落としながら入室した。王妃を捜すために旅立ったリュカが、頼れる魔物の仲間たちを数匹連れて行ったことは皆知っていた。その仲間が王室に飛び込んでくるように戻ってきたのだ。リュカと共に長く旅をしてきた魔物の仲間たちの姿を見て、オジロンもサンチョもその中にリュカの姿を見つけようと視線を彷徨わせたが、その姿はなかった。
「北に魔物の塔があります」
オジロンやサンチョの言葉を待つ余裕もなく、ピエールはすぐに自身の行うべきことをした。時は一刻を争う。共にリュカとビアンカの状態を訴えようとするプックルをガンドフが撫でてなだめ、報告はピエールが心を静めて端的に行った。
「そこにリュカ王とビアンカ王妃がおられます。すぐに救援を」
「何故共に戻ってこなかったのだ! 王と王妃を魔物の塔に置き去りにするなど……」
「運ぶための多くの綿や大きめの布などをご用意ください。二人を傷つけずに運ばなくてはなりません」
「運ぶ? 何を言っておるのだ。王と王妃は無事なのか!?」
「二人は魔物の呪いにより石にされてしまいました……。石像となった二人をまずここまで運ばなくてはならないのです」
ピエールの脳裏に石像と化した二人の姿が蘇る。物言わぬ石となってしまった二人の前で、ピエールはどれほどその場で命を絶とうと思ったか分からない。しかし二人を石にした魔物の言葉を信じ、二人はまだ生きていると信じ、彼らを救うべくこのグランバニアからの救援を求めて戻ってきたのだ。石となっても彼らはまだ生きていると、ピエールもプックルもガンドフも信じている。
「詳しい話は後でします。今はただ王と王妃を救うためのご準備を」
「うむ、とにかくお前の話を信じよう。信じなくては、お前の隣にいるプックルが今にもわしに飛びかかってきそうじゃ」
オジロンの目に映るプックルは、姿勢を低くし、低いうなり声を上げ、オジロンの否定を許さない態度を取っていた。プックルにとってオジロンは元国王という立場ではなく、ただのリュカの叔父という、一人の人間に過ぎなかった。元国王であるがゆえに遠慮をすることもない。プックルにとっての主はあくまでもリュカ一人であり、守るべき存在は幼い頃の恩人であるビアンカだった。
オジロンの指揮により、すぐさま隊が組まれ、その隊の長として一人の兵士長とピエールが就くことになった。隊として移動するとなると、北の教会までは半日、北の塔へは更に半日を見込む必要があった。しかし既にグランバニアの兵士たちは不眠不休で国王と王妃の捜索を続けており、皆が疲労困憊の状態に陥りかけていた。兵士らの疲労を勘案すれば、更に一日を見込んだ方が良いとピエールも兵士長も考えていた。
「私も参りますぞ、オジロン様」
サンチョはオジロンの前に進み出ると、意志を固めた目でそう告げた。
「もう坊ちゃんをここで待ってなどいられません。坊ちゃんとビアンカちゃんを、私も皆と共に助けに参ります」
サンチョの心情を痛いほど感じるオジロンは、反論を上げる口実を無くしてしまった。まるで自分の息子のように可愛がっていたリュカが無事にグランバニアに帰還し、国王になった矢先に、再び大事な息子を奪われたような境遇にあるのだ。サンチョの悲痛はもしかしたら非業の死を遂げた実の父パパスよりも深いのかも知れないと、オジロンはただ低くうなり声を上げるだけだ。
「サンチョ殿、それはなりません。あなたはこの城の防備に当たってください」
兵士長に並ぶピエールが厳しい声でサンチョにそう指示した。
「敵の目的はこのグランバニアを落とすことにありました。そのうち、敵がこの城に攻め込んでくる可能性もあります。その時のためにサンチョ殿はグランバニアを守ってください」
「なっ……、敵がこの城を?」
「我々で塔の敵の親分となるものを倒しはしましたが、魔物の塔にはまだ多くの魔物が残っています。それらがこの城を攻めてこないとも限りません。念のため、グランバニアの防備を固めてください」
「また私に待っていろと言うんですか、ピエール殿! 私は、もう、待っているだけなど……」
「リュカ殿とビアンカ殿の新しい命を預けられるのは、あなた方しかいないんです。どうかティミー様とポピー様をお守りください!」
ピエールの悲痛な叫びは、リュカとビアンカの悲痛な叫びそのものだった。彼らが石にされながらもなお、最も気にかけているのはグランバニアに残してきてしまった生まれたばかりの双子のことだというのは、サンチョにも自ずと分かることだった。親となったばかりのリュカとビアンカが最も大事にしている存在は、今この王室で泣き疲れて眠ってしまっている双子の子供たちなのだ。
かつてこの国の王であったパパスは、一人息子のリュカをこの国に置いて、一人で妻マーサを救う旅に出ようとしたことがあった。しかしその父の背に何かを感じたのだろうか、まだ赤ん坊の域を出ない幼いリュカが大声を上げて泣き出し、世話をしている侍女がなだめようが、サンチョがあやそうが、リュカは声も嗄れんばかりに泣き続けた。パパスはその小さなリュカを見て顔を歪め、眉をしかめ、目に涙を浮かべた。我が子の悲痛な泣き声を聞いては、一国の国王であるパパスも父の感情を揺さぶられ、平静を保つことが出来なかった。
誰がどうやっても泣き止まなかったリュカだが、父であるパパスが一たび抱き上げれば、泣き声はすんなり止んでしまった。パパスはあの瞬間に、親子は共にあるべきだと信じ、幼いリュカを連れて旅に出ることを決意した。今となってはそれが正解だったのかどうかは分からない。しかしリュカがいたことによって、旅の途中のパパスの強さに一層磨きがかかっていたのはサンチョの知るところだった。
ティミーとポピーの双子には今、傍に父と母がいない。父であるリュカは生まれたばかりの子供たちを城に残しておくことが最善のことだと信じ、単身城を飛び出してしまった。リュカが双子をここに残して行ったのは、城の者たちが必ず二人を守ってくれると信じていたからだ。そうでなければ、リュカは無鉄砲にも生まれたばかりの子供たちを連れて出て行ってしまったかも知れない。リュカはグランバニアの者たちを信じている。サンチョはリュカの思いを守らなければならないのだと、ピエールの言葉に気づかされた。
「…………分かりました。私はここで王子と王女をお守りします」
「サンチョ殿、心中お察しします。ですが、ここは堪えてください。王と王妃の救出には我々で向かいます」
「サンチョよ、早速城の防備を固めるのじゃ。我らも王子と王女、国民らを守らねばならん」
「承知いたしました。城に残る兵士長たちに指示を出します。外壁と屋上と門と……すべての場所に兵を配置し、民の者にも戦う準備を整えさせましょう」
サンチョは自分のやるべきことを見極め、早速動き始めた。グランバニアの城の中があわただしく揺れる。その状況を見て、ピエールは落ち着いた様子で、プックルとガンドフと共に王室を後にした。



プックルが先頭となって塔の中を進む。グランバニアの城を守る兵士を残す必要があったため、ピエールたちが王と王妃を救出するのに率いてきたのは二十人の兵士で編成された小隊一つのみだった。塔を登り、石になった王と王妃を助けるだけならばそれで十分だと、多くの兵士を救出には割かなかった。
塔の中には相変わらず魔物の姿があったが、グランバニアの兵士たちはピエールの予想を超える強さを持っており、現れる魔物を倒し、着実に前に進むことができた。人間の兵士の隊とは別に、魔物の仲間であるスラりんとキングスも兵士たちと共に前進していた。補助呪文に長けたスラりんは戦闘になるとすぐさま小隊全体にスクルトの呪文をかけたり、敵の守備力を下げたりと、臨機応変に細かに動いていた。それでも命を落としかける兵士がいれば、キングスが間を置かずにザオラルの呪文を唱え、兵士の息を吹き返させた。ピエールは初め、キングスは城に残るべきだと諭そうとしたが、キングスはピエールの言うことなどまるで耳に入れず、ほとんど勝手についてきてしまったようなものだった。しかしそのお陰で、誰一人命を落とすことなく塔を登り続けている。
プックルの雄たけびが響く。敵の魔物が逡巡する。プックルの雄たけびはいつにない迫力を持っていた。邪魔するものはどんなものでも噛み千切り、両足の爪で引き裂いてやるのだと、魔物そのものの表情をしながら突き進んでいた。プックルの全身から漲る力に、仲間のガンドフですら慄くほどだった。しかしそのガンドフも、しつこく前に立ちはだかる敵がいれば、容赦なく熊の身体で突進したり、敵から奪った鉄の盾で敵に殴りかかったりした。魔物たちの仲間の強さに、人間の兵士たちも士気を高め、現れる敵の魔物たちを次々と倒していった。
「ピエール殿、果たしてここからグランバニアの城を攻める魔物が……」
「この様子では恐らく、城は大丈夫でしょう。ここにいる魔物らは特に統率が取れているわけではなさそうです」
敵の目的はグランバニアの国王になりすまし、人間の国を破滅に導くことだった。しかしその目的を持った敵の親玉をピエールたちは既に倒している。この塔に棲む魔物らは主を失うと同時に目的も見失い、今も漫然とこの塔に棲みついているだけなのだろう。誰かが代わりに主となり、魔物らを率いてグランバニアに向かっていることは考えられない状況だった。そのうち、この塔には何者もいなくなってしまうのかも知れない。人間が魔物の城を陥落させたようなものなのだ。
「早く王と王妃を城に連れ帰りましょう。もうすぐです」
塔の最上階に着くと、そこには朝日が東の彼方から差していた。塔の上部に渦巻いていた黒い雲は今、すっかり取り払われどこかに流されてしまったようだった。ピエールたちが塔を登っている間に、塔の邪気はみるみる取り払われ、そこには希望に満ちた陽の光が流れ込んでいる。その光景に、ピエールもプックルもガンドフも、あの忌まわしい記憶は嘘だったのかも知れないと思ったほどだ。リュカもビアンカも石になどならず、この朝日の輝かしい力を浴びて、これから進もうとしている塔の中から元気に飛び出してきてくれるのではないかと、彼らは一様に表情に元気を取り戻した。
プックルが軽やかに、つい数日前に倒したばかりの巨大オークやキメーラが坐していた玉座の前を通り過ぎる。あまりにも巨大な魔物の玉座に、人間の兵士たちは恐れ戦くような視線を投げかけていたが、前を歩くプックルが何も警戒していないのを見ると、隊は躊躇することなくその後に続いた。階段ではガンドフが石像を運ぶための台車を持ち上げ、軽々と運んでいく。ピエールはここまで何も滞ることなく順調に事が進んでいることに、素直に安心していた。一人の犠牲者を出すこともなく小隊を進めることができ、この禍々しかった魔物の塔で光り輝く朝日を浴びることができ、今は全てが味方してくれているのだと強く思うことができた。
階段を降りたところに、この塔の主であった魔物ジャミと戦った大広間がある。そこには、外の朝日のすがすがしさなど知らないと言わんばかりに、未だメラメラと火台に炎を上げ、広間の中を明るく暗く照らし続けていた。
階段を降りたところで、プックルが微動だにしなくなった。火台の炎に照らされ、プックルがまるで影のように黒く見える。尻尾は床に垂れ下がり、重力に逆らう立派な鬣も今はしなだれているように見えた。プックルはそれこそ、時が止まったのかと思っていた。あるはずのものが、そこになかった。
「がうっ! がうがうっ!」
ピエールにはその声がはっきりと、リュカとビアンカを呼ぶ声だと分かった。声を出すと同時にうろたえるプックルの横を、ピエールが通り過ぎる。石にされたリュカとビアンカは間違いなく、この大広間の中央辺りに並んで立っていたはずだった。ガンドフが一度、リュカの石像を持ち上げようとしてブーツの一部を床にぶつけ、少し石像を傷つけたことは皆覚えている。その時の小さな石の破片が今も床に残されている。その石の破片に鼻を擦りつけ、プックルは力のない声を出した。
「ピエール殿、どうしたのですか?」
兵士長に問われ、ピエールは震えそうになる声をどうにか抑えた。
「ここに、あったはずなのです。王と王妃の石像が、ここに……。何故、ないのだ……?」
「リュカ、ビアンカ、ゲンキニナッタ。シロニモドッタ」
ガンドフが先ほどの朝日の希望をそのままに受け、明るい調子でピエールにそう告げる。大きな一つ目をにっこりを細めてそういうガンドフを見ると、もしかしたらそうなのかも知れないとピエールも光明を見たような気がした。リュカとビアンカはあの後、何かしらの加護を受け、石の姿から元に戻り、リュカのルーラで既にグランバニアに戻っているのだと考えることもできた。
ジャミという白馬の魔物と戦っている際、大広間の中に光が満ち溢れた瞬間があった。ピエールはそれまで、あれほどの神々しい光を見たことがなかった。その光が、あのビアンカからあふれ出ていることに目を疑った。回復呪文を唱えることのできない彼女が放つ光にしては癒しに満ちており、人間が放つ光にしてはあまりにも神々しすぎた。もしかしたらビアンカに隠された力があり、その力によって石の呪いが解けたのかもしれないと、ピエールの胸の内にも希望が満たされ始めていた。
しかしピエールとガンドフの希望を打ち消すように、プックルが一人、床の跡を辿るようにのろのろと歩いている。猫のような声を出しつつ、注意深く鼻を床に擦り付けるようにしてゆっくりと歩いていく。プックルはピエールや兵士たちの脇を通り過ぎ、再び階段を登ろうとしていた。階段にはキングスがまるで誰も通さない扉のように立ちはだかっていたが、プックルはその隙間を猫が身体をすり抜けさせるようにして通り抜けて行ってしまった。
「プックル、どこへ行く!」
ピエールの声など聞こえないかのように、プックルは全神経を集中させて、リュカとビアンカの匂いを辿る。石になってしまった彼らの匂いを辿るのはもはや不可能で、その代わりとなる他の者の匂いを辿っていた。嗅ぎ慣れない匂いは非常に旅慣れた者たちの匂いで、プックルはこの匂いを一心不乱に辿り続ける。
朝日を受ける塔の上部の一点で、プックルは足を止めた。辿る匂いがなくなってしまった。辺りを必死に嗅ぎまわるが、追い求めている匂いはどこにもなかった。途切れてしまったリュカの痕跡に、プックルは悲し気な猫の声を上げる。十年以上前にも同じような境遇に遭ったプックルは、その時と同じような声を上げたことに気づいていなかった。
「プックル、ダイジョウブ。リュカ、ルーラデ、シロニモドッタ!」
明るく言うガンドフに、プックルは首を項垂れる。そう信じたいが、信じることはできない事実をプックルは鼻で嗅ぎ取っていた。プックルが追っていた匂いはリュカでもビアンカでもなく、知らない人間のものなのだ。その者とともに、リュカとビアンカは姿を消してしまった。
「プックル、ダイジョウブ。キット、ビアンカモ、イッショ!」
ガンドフが努めて明るくそう言っているのはピエールにも分かっていた。プックルの行動が何を表しているのか、ガンドフにも分からない訳ではない。リュカとビアンカを何者かが連れ去ってしまったことは、ガンドフにも分かっていた。しかし彼らが無事だと言葉にしないと、全てが収まらないと感じていた。彼らが無事である証拠はない。しかし彼らが無事ではない証拠もない。そうであれば、無事だと信じることが己の努めなのだとガンドフは一つ目を潤ませながらもそう思っていた。
プックルがうなり声を上げる。怒りを滲ませ、睨みつける先は、ピエールだ。ピエールはプックルに睨まれる以前に、自身の犯した過ちに愕然としていた。この塔にリュカとビアンカを残して、グランバニアの救援を求めに行こうと提案したのはピエールだ。もしあの時、この場に誰かが残っていれば、何者かに石となった二人を奪われることはなかっただろう。何故自分はあの時、この場に誰も残さなかったのだろう。明らかに判断を間違えたことに、ピエールは今にも襲い掛かろうとするプックルの前で力なく立ち尽くすだけだった。
「プックル。そうだ。全ては私の責任だ。何故、あの時私は……」
「がるるる……」
「そうだ、お前を残しておくべきだった。立ち去ろうとしなかったお前を残しておけば……」
「がうっっっ!!」
プックルが怒りに任せてピエールに飛びかかった。ピエールは抵抗の姿勢を微塵も見せない。プックルの渾身の一撃を食らえば、ピエールは次の瞬間命を落としているだろう。リュカと二度も別離を迎えたプックルは、ピエールに容赦する余裕を失っていた。
プックルに向かって飛びかかる小さな生き物があった。床に弾んで思い切りプックルに体当たりをする。突進するプックルにとっては大した打撃にもならないものだったが、目に当てられたためにプックルは思わず身体をよろけて床に転がってしまった。
「ピキーッ!!」
スラりんの怒りの声が響いた。プックルの前にキングスが立ちはだかる。ガンドフがピエールの傍に寄り添い、悲し気に目を潤ませる。魔物たちの緊迫した雰囲気に、グランバニアの兵士たちは固唾を呑んで場を見守ることしかできなかった。
「ピー、ピキー……」
スラりんが何を話しているのか、人間には誰も分からなかった。しかしその言葉はしっかり魔物たちに届いていた。プックルは悔しそうに顔を歪め、まるで人間のように目から涙を零す。しかしその涙を身体を揺らして振り払うと、プックルは塔を照らす朝日を睨むように見つめる。きらきらと輝く青い瞳の中には、絶望などなかった。プックルが信じる最愛の友は、決して諦めない人間だ。恐らく今も、石の姿のままでも、未来を諦めていないに違いない。彼は妻と子供の無事を祈りながらも、自身もこのままでは終われないという思いを消えることなく持ち続けているはずだ。
「にゃあ……にゃあ……」
子猫のような声を出すプックルに、スラりんは寄り添い、その小さな身を摺り寄せた。プックルは傍にいるスラりんを感じながら、今は一人ではないのだと気づいた。あの時とは違う。大勢の仲間がおり、仲間たちで協力することができるのだ。プックルの全身に再び生気が戻る。
「ピエール殿、王と王妃は……」
兵士長がピエールに尋ねる。人間である兵士たちには細かい状況が伝わっておらず、塔の頂上で朝日を浴びるこの状況をどのように捉えたら良いのか分からないようだった。ピエールはこの事態の責任を取るためには自らの命を絶つ覚悟を持っていたが、それほど簡単に責任が取れるものではないと理解していた。グランバニアの者たちは国王であるリュカと王妃であるビアンカの帰還を望んでいる。彼らは国の混乱を防ぎ、国を安定させなければならない義務を負う。その義務を、今やグランバニアに属するようになった魔物のピエールも同じように負っているのだ。
「王と王妃は、下の大広間にいました。しかし何者かが石となったお二人を連れ出してしまったようなのです。まだそれほど時間は経っていません。とにかくこの近くを捜す必要があります」
「それでは小隊を更に分け、塔の周辺の捜索を開始します。二名を城に戻し、更に捜索隊を依頼しましょう」
兵士長が素早く指示を出し、兵たちは命令通りに動き始めた。王と王妃がこの場にいなかったことに多少の動揺はあったが、兵士たちは兵士長の落ち着いた口調に取り乱すことなく、やるべき任務に就いた。塔を下り始める兵士たちを先導する形で、兵士長とキングスが先頭に立ち、来た道を戻っていく。戻る道にも当然、敵の魔物たちがいるはずだと、スラりんとガンドフもその後にすぐ続いた。
プックルが東の空をじっと見つめている。ピエールが横に並び、同じように東の空を見つめる。朝日は輝き、世界はまるで希望に満ちているような気がしてくる。
「がう……」
この場で忽然と匂いが消え去り、恐らくこの匂いは空の彼方に消え去ってしまったのだろうとプックルは思った。リュカとビアンカは何者かに連れ去られ、そしてその何者かはこの場で消えてしまった。
「キメラの翼……」
プックルにもピエールにも分かっていた。リュカとビアンカは既にこの近くにいないのかもしれない。彼らを連れ去った人間はこの場でキメラの翼を使い、どこかへ姿を消してしまったのだ。キメラの翼の帰巣性能は持ち主の行動に由来する。持ち主の家があればそこへ向かうのが通常だ。魔物が巣食うこの禍々しい塔に登ろうとする人間が、果たしてどこに帰ろうとするのかなど、誰にも分からない。その場所がグランバニア近くであることを願うだけだった。
「プックル、私は決して諦めない」
「…………がう」
「そうだ。諦めない。あの方はいつもそうなのだ」
ピエールはプックルにそう言うと、まるで耳元でその言葉が聞こえてくるような気がした。

『僕はいつだって諦めが悪いんだよ』



深い森の中にあるグランバニアの国は初夏を迎えようとしていた。真夏になると蒸し暑さの中、森で動物たちも賑やかに騒ぎ始めるが、今は鳥たちが程よいおしゃべりに興じているだけだった。
大理石造りの城の中は蒸し暑さとは切り離され、国民の生活は心地よい環境に包まれていた。しかし一年前に比べ、国民の数は少々減っている。グランバニアという国に降りかかった凶事に恐れをなした人々が、少しずつ国を出てしまっているのだ。およそ一年前に姿を消してしまった新国王と王妃の二人は未だ見つからず、国を挙げての捜索に乗り出しているが、その痕跡は何も見つかっていない。
城の四階にあるグランバニアの国王私室には今、まだ言葉を為さない子供の声が響いていた。柔らかいじゅうたんの上をまるで走るようによたよたと歩く小さな男の子を、乳母であるピピンの母がにこやかに見つめている。上手に歩く兄の姿を、まだ歩くことのできない妹はガンドフの深々とした毛布に抱かれるように座って兄の姿を見つめている。早くも歩くことができるようになった兄に憧れるように、彼女もガンドフにつかまって立ち上がるものの、一人で歩くことはまだできない。兄に向って声を上げている姿は『ずるい!』と言っているようにも見え、その愛らしい姿にガンドフも見守る侍女たちも微笑みを浮かべていた。
「ティミー様は本当に歩くのがお上手ですね」
国王私室に姿を現したのはサンチョだった。新国王であるリュカと王妃のビアンカが行方不明となってから、サンチョはオジロンを再び代理の王として支えながら、このグランバニアの国を守り続けている。
王と王妃が行方不明になった後、グランバニアは一度、魔物の襲撃を受けたことがあった。しかしそれは統率された魔物の集団ではなかったために、グランバニアを守る兵士たちと魔物たちで難なく防ぐことができた。後から確認したことには、襲撃をしかけてきた魔物らは北の塔に棲む魔物らの残りで、グランバニアの国王を倒したという誤った情報が魔物らの中に流れ、その情報に勢いを持った魔物らがグランバニアの国を落とそうと攻めてきたのだった。
新国王が行方不明となり、国が揺れ始めていた時のことだったが、サンチョが国の兵士たちを奮い立たせ、魔物の襲撃を打ち払うことに成功した。幼い頃にあの勇ましきパパス王と別れながらも、十数年を経てグランバニアに帰還したリュカ王は奇跡の人だ、王は再び奇跡を起こす人なのだと、サンチョは自らその奇跡を信じ、彼のその信念に追随するように兵士たちも士気を高め、魔物らを追い払った。
そして彼らの信念を更に固めるような出来事があった。グランバニアの国を守るように、リュカが残した天空の剣が光り輝き、まるで太陽のような強い光でグランバニアの城を覆ったのだ。目が潰れるほどの強い光に、国を襲撃してきた魔物らは力を失い、光に触れればその光の中に消え去ってしまった魔物もいた。その光は一瞬のものだったが、城を襲撃した魔物らはあまりに神々しい光に恐れをなし、一斉にグランバニアの森の中に逃げて行ってしまったのだった。天空の剣が放った神々しい光は一度だけのものだったが、それ以来グランバニアは魔物の襲撃を受けることもなく、とりあえずは平穏な日々を過ごせている。
天空の剣は今も国王私室の大きなベッドの下に置かれている。その場所はまだ生まれたばかりだったティミーとポピーを、魔物の気配を感じた母であるビアンカ王妃が隠し、双子が守られた場所だった。その場所は今、神聖な場所として扱われ、そこに天空の剣は隠されるように安置されている。敢えて城の宝物庫に入れないのは、マーリンとサーラの助言によるものだった。
『天空の剣と双子との間に、何か特別な力を感じる』
それはマーリンとサーラの共通する意見だった。二人の傍に置いておくのが望ましいとして、しかしまだ赤ん坊の二人に天空の剣を持たせるわけにも行かず、今はまだ静かに安置されているだけだった。
国王私室に入室してきたのはサンチョだけではなかった。続いてプックルにピエール、ミニモンが部屋に入ってくる。ティミーもポピーもプックルの姿を見ると喜んで傍に寄ろうとする。人々に恐れられる地獄の殺し屋キラーパンサーであるプックルは、双子の姿を見ると複雑な表情をしながら、できる限り足の爪を引っ込めて静かにじゅうたんの上を歩いて行く。ティミーがプックルに飛びつくと、プックルはじゃれつくようにティミーを静かにじゅうたんの上に倒す。倒されたティミーはきゃっきゃっと声を上げて笑い、プックルの口髭を思い切りつかんだりする。ポピーはプックルの腹のあたりの毛を撫で、いつも自分がそうされるように「いこ、いこ」と声をかける。彼女は「良い子、良い子」と声をかけているつもりのようで、プックルはそれを理解している。ポピーにそうされると、プックルは顔を一瞬歪める。ポピーの小さな手に、リュカの大きな手を思い出す。プックルはポピーというグランバニアの小さな王女に、リュカの血がより色濃く流れているのを誰よりも肌に感じていた。
プックルはピエールとミニモンと共に、国王と王妃の捜索の旅に出ており、先ほど帰還したばかりだった。国王私室に入室するために旅から戻って早々に体を清め、再び国王代理を務めているオジロンと、補佐役のサンチョに報告を終え、こうして双子のところを訪れていた。まだ赤ん坊の域を出ない双子に触れるためには身体を清めなくてはならないことを義務付けられているため、プックルは面倒と思いつつも双子のために城の近くを流れる川で豪快に水浴びを済ませていたのだった。
ピエールが部屋の隅でプックルと双子のじゃれあう姿を見つめつつ、小さな溜め息をついていた。ピエールはあの怪物の塔での出来事以来、延々と後悔の念を抱き続けている。あの時、リュカとビアンカの傍に誰かがついていればこんなことにはならなかった、自分は何という過ちを犯してしまったのだろうと、悔やんでも悔やみきれない思いを腹の中に抱えている。ティミーとポピーが無邪気にプックルにじゃれつく姿を見る度に、その後悔の念は徐々に膨らんでいくようだった。
「ぴえー、ぴえーう」
ポピーの可愛らしい声が部屋に響く。ピエールは自分が呼ばれているのだと、静かに王女の所へ近づく。
「どうされましたか、ポピー王女」
ピエールがポピーの前で頭を下げ、その小さな姿を兜の奥から見つめる。ポピーからピエールの表情が見えることはない。しかし王女にとって相手の表情は見るものではなく、感じるもののようだった。つぶらな瞳には、とても赤ん坊とは思えない、思慮深い感情が垣間見えた。
「いこ、いこ」
そう言って、ポピーはピエールの緑スライムを優しく撫でた。ピエールは王女のその行動に、やはりリュカを思い出す。ポピーの瞳を見ていると、その不思議な瞳はリュカ譲りで、魔物たちの心を穏やかに静めることができるのだ。そしてポピーはまだ一歳という幼さでありながら既に聡明さを醸しており、言葉の習得も早い。この王女は紛れもなくリュカとビアンカの子なのだと、ピエールは絶対にこの二人を守らなくてはならないと改めて心に誓った。
ティミーは片時もじっとしていられないと言った様子で、今度はミニモンの尻尾を掴んで遊んでいる。ミニモンも嫌な顔などせずに、まるで魚釣りでもするかのように尻尾の先をティミーの先に垂らし、ティミーがつかもうとすると引き上げて遊んでいる。ティミーも楽しそうに声を上げ、調子に乗りすぎて転ぶと今度は泣いたりして、周りの者たちを飽きさせない。ティミーはまだ言葉を発せず、ただぎゃあぎゃあと楽しく遊ぶことが多い。一歳になったころには自由に歩けており、今では走るような勢いで部屋中を行ったり来たりしている。
『きっと可愛い赤ちゃんが生まれてくるわ』
部屋にビアンカの声が響いた。ミニモンの特技である声まねで、双子の母であるビアンカの声が再現される。ミニモンはこうしてビアンカの声を真似たり、リュカの声も真似することができるため、ティミーもポピーもまるで記憶にない父と母の声だけは耳にすることができた。しかしそれが父と母の声だとは、まだ二人は理解していない。ただミニモンがいろいろな声が出せるのを、楽しそうに聞いているだけだ。
『ビアンカ、走っちゃダメだって言われてるんだろ?』
『あ、そうだった。ごめんね』
『母親になるんだから、もうちょっと落ち着いた方がいいよ』
『あら、リュカも父親になるのよ。もうちょっと威厳ってものが欲しいところよね』
『威厳って言われても……どうしたらいいのさ』
ミニモンは記憶している声をそのまま発声するのが得意であるため、過去に聞いた二人の会話を再現することが多い。ミニモンが演じる二人の会話を、ティミーとポピーは声を上げて面白がるのではなく、ただ興味深そうにじっと見つめて聞いている。そして周りの様子を窺うと、サンチョもピエールもプックルもガンドフも侍女たちも、皆が微笑みながらもどこか悲し気な表情をしているのを双子は敏感に感じ取っていた。
それでも誰も、ミニモンの行動を止めることはなかった。誰もが、双子に実の父と母の声を聞かせてやりたいと思っていた。ミニモンの声真似で誰もが少なからず悲しい思いを抱いても、ティミーとポピーに父母の声を聞かせてやることは必要なのだと皆が思っていた。そうすることで、行方不明となったリュカとビアンカは必ず今もどこかで無事に生きていると信じることができたのだった。子供たちに声の記憶を残すことで、その父母との繋がりが切れることはないと、どんな形であろうとも親子の糸を断ち切らないよう皆が努力していた。
国王と王妃の無事の帰還を信じつつも、月日は容赦なく流れていく。子供たちは否応なしに成長し、子供達との時間を楽しみにしていたリュカとビアンカの夢はみるみる打ち砕かれてしまった。グランバニアという国に守られた二つの命は、父と母の手を離れたまますくすくと育っていく。



「ポピー、何見てるんだ?」
本来、国王であるリュカが使用する大きな机を前にして、ポピーがその椅子に座り、数枚の紙を机の上に広げて見つめていた。その脇からティミーが顔を覗かせ、机の端に置かれている封筒に目をやる。
「誰からの手紙だよ」
「ラインハット」
「えっ? それって、サンチョに見つかったらマズいじゃないか。サンチョがラインハット嫌いって知ってるだろ」
「ええ、知ってるわ。でも、とても大事なことが書かれているの」
ポピーは真剣な表情で手紙を読み込んでいる。ティミーも脇から恐る恐るといった様子で手紙を目を細めて見るが、一体何が書かれているのか分からなかった。まだ六歳になったばかりのティミーにとっては難解な内容であり、見たことのない文字も並んでいた。しかしそれを、双子のポピーは辞書を引きながらも読んでいることに、ティミーは面白くなさそうにその場を離れ、大きなベッドに一人ごろりと寝転がった。
部屋の外が騒がしくなったと思ったら、扉の外から侍女の声がかかった。その次には、約ひと月ぶりに聞く声が響き、ポピーは慌てて机の上の手紙をたたんで引き出しにしまった。そしてカモフラージュとばかりに、机の上に呪文書を開き、いかにも真面目に読んでいるように装う。一方、ティミーは扉の外の声を聞くなり元気にベッドから飛び起き、部屋の扉に向かって走って行った。
「ただいま戻りました、ティミー様、ポピー様」
「おかえり、サンチョ。相変わらず、ぷにぷにだ~」
「はっはっはっ、私のお腹の肉は少々の旅ではまるで減りませんからなぁ」
ティミーに腹をつつかれ、サンチョは嬉しそうに声を上げる。ポピーもティミーに続いて扉の前に出向き、サンチョの無事の帰還を喜ぶ。
「サンチョもみんなも無事に戻ってきたのね。良かった」
「もちろんですとも、ポピー様。誰一人欠けることなく、帰還いたしました」
サンチョの後にはピエールとプックルが続き、プックルが頭を下げてポピーの前に出ると、ポピーは「良い子、良い子」と赤い鬣を優しく撫でてやった。プックルの方がよっぽど長く生きており、ポピーはまだ六歳の子供なのだが、このときはまるで逆の立場でプックルはポピーに甘えてしまうのだった。プックルがそうやって甘えてしまう理由を、ポピーはまだ知らされていない。
グランバニア王と王妃が行方不明となってから六年の月日が流れていた。王子ティミーと王女ポピーも六歳となり、先日、国を挙げての誕生祝賀会を行ったばかりだった。しかし国を挙げてというものの、祝賀会自体は非常に慎ましやかなものだった。六年前に比べて国の人口は更に減少しており、そのために国民一人当たりにかかる税負担は増えている。極力国民の負担を軽くするよう、グランバニア国として緊縮財政を行い、国としての歳出を抑えるよう努めている最中の祝賀会だったため、必然的に質素な会となったのだった。
今も戻らぬ国王と王妃を捜索する費用を懸念する国民も現れ始めていた。そのため、従来はグランバニアの兵士たちを多く外国に派遣していたが、今はサンチョを初め、リュカの旅の仲間であった魔物たちが主だって方々に旅に出て捜索を続けているだけだった。国家としては国民の不満を抑え、不安を極力なくしていかねばならない。当然、王と王妃の帰還を待ちわびている国民も多くいるが、国は国民の日々の生活を脅かさぬよう配慮する必要が常にあった。
「サンチョ様、オジロン様が王室にてお呼びです」
国王私室に入室したばかりのサンチョに、部屋の外から兵士の声がかかった。サンチョはしゃがんでティミーと話をしようとしたところだったが、思わず眉をしかめて「はい、今参ります」と部屋の外に聞こえるように返事をする。
「報告を終えたばかりですが、またお話があるようなので行って参ります。また後程こちらに寄らせていただきますね」
「うん! 旅の話をたくさん聞かせてね。ボク、楽しみにしてるんだ!」
サンチョたちが王と王妃を捜し求める旅に出ていることは当然ティミーも知っている。父と母が見つかればそれほど嬉しいことはないが、彼は一人の少年としてサンチョたちから旅の話を聞くのを大層楽しみにしていた。まだ見ぬ世界のことを、本の中だけではない、実際にその世界を体験した者から聞く興奮は、ティミーにとって最も楽しい時間の一つだった。
サンチョが部屋を出ていくのを見送ると、ティミーはピエールに近づいた。ピエールからも旅の話を聞こうと笑顔で近づいたが、そこには先客がいた。
「ピエール、ちょっと見てほしいものがあるの」
ポピーはサンチョが出て行った部屋の扉を慎重に見つめつつも、ピエールを呼び寄せた。ティミーが「ずるいぞ! ピエールをひとりじめするなよ」と抗議の声を上げるが、ポピーは「ひとりじめなんかしないわよ!」と言い返し、ティミーも一緒に呼び寄せる。
ポピーは国王の机の引き出しから、先ほど隠しておいた封筒と便せんを静かに取り出した。封筒の裏を見るなり、ピエールは思わず声を上げる。
「これは……一体いつから手紙のやり取りなどされていたのですか」
「一年ぐらい前から。でもまだこれは二度目なの。お父様のことをよく知っている方なんでしょう?」
ピエールはいつもは静かで真面目な王女の行動力に驚いた。静かで真面目ということは、裏を返せば隠し事が上手なのかもしれないと、ピエールは机の上に広げられる便せんの内容を読み始める。そこにはこの数年で達筆になったかつての戦友の文字がびっしりと書き込まれていた。
「なに? なんて書いてあるの?」
ティミーはポピーほど読み書きを得意としておらず、難しい言葉に当たるとすぐに読むのを諦めてしまう。ピエールが人間の文字をすらすらと読んでいくのを特に不思議にも思わず、ティミーはその内容をただ知りたがった。
「石を解く杖が存在する……そう書いてあるのよね?」
「石を解くって……じゃあ父さんと母さんの呪いを解いてあげられるってこと!?」
ティミーとポピーは顔も覚えていない父と母が、魔物の呪いによって石にされてしまったことを伝え聞いている。マーリンとサーラが城の図書室で頻繁に調べ物をしているところを見かけ、彼らから一度その話を聞いたようだった。それ以来、二人、特にポピーは自分でも城の図書室に行っては自ら石の呪いについて調べていたことを、ピエールは密かに知っていた。
「わたし、自分だけではどうしても調べられなくって……この方にお願いしてみたの」
「ポピーはこっそり父さんの机の引き出しを開けて覗いたりしてたんだよ。そしたら一つ、書いたまま出してない手紙を見つけて読んじゃったんだって。悪いヤツだよね~」
約六年前、グランバニアでの滞在を始め、即位式が行われるまでの日々の中、リュカは現在の状況を親友に知らせようと一通の手紙を書きかけていた。その内容がまるで国王とは思えないほど砕けたもので、ポピーは果たしてこれを書いたのが父であるこの国の王なのだろうかと疑ったほどだった。何の形式にもとらわれることなく自由に書かれた文章には、相手への親しみや敬愛の念が込められていた。しかし手紙は書きかけのまま、出されることなく机の引き出しにしまわれていたのだった。
宛名に記されていた名を頼りに、ポピーは父の友人であるラインハットのヘンリー宰相への手紙をしたためることにした。しかしそのことをサンチョに相談すると、彼は顔を赤くして「それはなりません!」と全く受け入れてくれなかったらしい。サンチョがラインハットを拒む理由をピエールは知っているが、今はまだ幼い二人に知らせることでもないと、ただポピーの話に耳を傾けていた。
「それでね、わたし、こっそりピピンに頼んだの。町からなら手紙が出せるかなって」
「なんという……王女からの手紙を町の者に頼んだのですか?」
「イチかバチかだったんだよ。だって町から出す手紙だって、この城の人がまとめてからそれぞれ出すんだろ? バレないかどうかなんてわかんなかったんだ」
ティミーの口ぶりから、手紙をピピンに頼むことは王子が提案したことのようだった。彼は妹の行動を一部始終知っている。なんでもかんでもペラペラと喋りそうな王子だと思っていたが、妹の大事な仕事のことは一切誰にも話さなかったらしい。二人ともとても六歳とは思えぬほどしっかりしており、彼らの行動力にピエールは舌を巻くばかりだった。
「ピピンが罰せられたらどうするおつもりだったのですか」
「そんなことにはさせないわ。だってお願いしたわたしが悪いんだもの」
「でもポピーが手紙を出したから、ヘンリー様だっていろいろと調べてお返事をくれたんだろ。良かったじゃん」
ティミーがあっけらかんと言う前で、ピエールは再びヘンリーがしたためた手紙を読んだ。一体どのように調べたのか、石の呪いを解く杖のことと、その杖の伝説が残るとある小さな村のことまで詳細に書かれていた。ラインハットの情勢はあれから混乱することもなく、順調に復興を遂げ、今は国民も増えて国としては完全に落ち着いているようだった。その中で彼はグランバニアで起きた事件を知り、必死の思いで親友の子供の力になることをしたのだ。相変わらず心優しく面倒見の良い彼の性格を思い出し、ピエールはふっと兜の内側で小さく笑った。
「ピエール、今度はボクたちも一緒に行くよ」
張り切るティミーの声に真っ先に反応したのは、じゅうたんの床の上に寝そべっていたプックルだった。旅先から戻ったばかりで、いささか疲れた様子のプックルだったが、ティミーのその言葉に耳をぴくりと動かすと、のそりと立ち上がりティミーの脇に寄り添うように立った。
「父さまも六歳の時にはおじい様と旅に出ていたって聞いてます。わたしたちも六歳になりました。だから、もう旅に出ても良い年、よね?」
ピエールはリュカが子供の頃に父であるパパスという人物と旅をしていたことを話には聞いているが、その場面に居合せたことはない。ピエールがリュカと出会ったのは彼が既に青年になってからのことだ。しかしまだ幼かったリュカと共に外の世界を冒険したことがあるプックルは、ティミーとポピーが旅に出るという意思を見せたことに、特に驚きを示さなかった。ただ双子が共に旅に出るのなら、二人を絶対に守るという強い意志と、あの時のような楽しい旅ができるかもしれないという期待を見せていた。
「父さんはもっともっと小さい頃からおじいさまと旅に出てたんだよね? 僕たちが今旅に出るのは遅すぎるくらいだよ」
「そうよ。私たち、もっと早くから父さまをさがしに行きたかった。なのに王子だから、王女だからって城の外には出してもらえなくて……悔しかったわ」
二人は既に旅に出ることを決意しているのだとピエールには分かった。プックルは二人の意見に反対する理由などないと言わんばかりに、ピエールを期待の眼差しで見つめている。ピエール自身も、この小さな二人の底に秘められた力を薄々感じており、むしろリュカとビアンカの子供である二人を共に連れて行けば、二人の捜索は一気に前進するのではないかという根拠のない期待もあった。
「私からは何とも申し上げられません。やはりサンチョ殿と話をしないことには……」
魔物の兵士長に位置するピエールだが、この国の王子と王女を勝手に外に連れ出すことなどできるはずもない。最終的には国王代理であるオジロンの許可を得なくては、子供たちは城の外には出られないのだ。
「ボク、サンチョに話をするよ。ボクたちも一緒に連れて行ってって。父さんと母さんをさがしに行くんだって」
「私たち、六歳になったらそう言おうって決めていたの。だからサンチョさんを説得してみせます。サンチョさんが頷いてくれれば、オジロン様だってきっと頷いてくれるわ」
「ラインハットの宰相との手紙もお見せになるんですね?」
サンチョのラインハット嫌いはティミーもポピーも知っている。過去に何があったかは知らされていないが、普段は非常に穏やかで怒ることのないサンチョが唯一怒りの感情を表すのが、ラインハットという国に対してだった。それ故に、二人はサンチョの前では決してラインハットという国の名を出すことはしなかった。
「見せます。見せて、父さまと母さまの石の呪いを解く手がかりを教えてくれたと伝えます」
「ボクたちが見つけられなかったことを、ラインハットの人が見つけてくれたんだよ。サンチョだって、父さんと母さんを助けたいって思えば、この手紙だってきっと読んでくれるはずだよ」
ラインハットに対して感情的になるサンチョといえども、自分の感情よりも大事なのは行方不明となったリュカとビアンカを探し出すことなのだ。その手がかりを得られるならば、自分の感情を抑えてくれるだろうと、双子は賢くもそう考えていた。
「……サンチョ殿がここに戻られたら、話をしましょう。私も……お力添えいたします」
「えっ? じゃあ、ピエールはボクたちが一緒に行ってもいいって思ってくれてるの?」
「私からは何も申し上げられません。ですがもはや、お二人の意思を曲げることはできないでしょう?」
「そうよ。私たち、決めていたんだもの。六歳になったら旅に出るんだって」
ピエールはこの六年の間に逞しく成長した二人をまじまじと見つめ、複雑な感情のまま溜め息をついた。成長した二人をすぐにでも、リュカとビアンカに見せてやりたい。その思いだけはいつも確かに彼の心の中にあった。
「絶対にボクたちの力で、父さんと母さんを見つけよう、ポピー!」
「うん、絶対よ、お兄ちゃん」
早まる二人の気持ちを感じつつ、ピエールはこの二人ならば奇跡を起こすことができるかもしれないと、自然とそう感じた。まだ六歳になったばかりの双子だが、彼らには他の子供には見られないある種の神々しさが備わっていると、ピエールのみならず他の者たちもそう感じるところがあった。
突然、国王私室の広い部屋の中に、光が溢れる。ちょうど部屋の扉を開けたサンチョが、「うわっ!」と目を覆い、その光に背を向ける。溢れる光は部屋の中に置かれる大きなベッドの下から出ており、プックルもピエールも思わず伏せたり目を瞑ったりして光を避けた。しかしティミーとポピーはその光を目にしても景色が白く消えたりすることもなく、ただ不思議そうに光が溢れるベッドの下に這って潜って行ってしまった。
ティミーの手でベッドの下から引きずり出されたのは、白銀に煌めく天空の剣だった。まだ六歳のティミーにとってはかなり大ぶりの剣で、両手でも持ち上げるのは困難に思われるほどだが、それをティミーは軽々と片手で持ち上げている。自身の身長ほどもある長さの剣を、ティミーは高々と掲げ、その光は部屋の中にとどまらず、窓から扉からまるで元気な妖精のように飛び出していく。
「お兄ちゃん、それって……」
「ボク、これが使える」
双子の目にはただ真っ白な世界が広がっていた。光に背を向けるピエールも、床に伏せるプックルも、扉の外で目を腕で覆っているサンチョも、全てが白く輝いて見えた。しばらく輝きを放っていた天空の剣だが、徐々に光は止み、光から目を背けていた者たちは目を細めて、徐々に元の景色に目を慣らしていった。
ティミーの身長ほどもあった天空の剣が、今はティミーが持つのにちょうど良い大きさに変化していた。ティミーが天空の剣を両手で構える姿を見て、サンチョもピエールも思わず息を呑んだ。その姿はまるで一人の戦士のようで、とても子供とは思えない迫力を感じた。
「サンチョ! ボクたちも旅に連れてって!」
「お兄ちゃんならきっと、父さまも母さまも見つけられるわ! だって、お兄ちゃんは……」
天空の剣が認めた者が、今目の前に立っていることをサンチョは信じられない思いで見つめていた。これまでにもグランバニアでは奇跡の光が国を守ったことが何度かあった。天空の剣から発せられる光は神々しく、その光は外からの魔物を寄せつけず、このグランバニアを守り続けてきた。しかしその光が、一人の手に収まった瞬間を、サンチョらは初めて目にした。
「ティミー様が……そんな……」
「ボクが絶対に父さんと母さんを助けるよ」
光り輝く天空の剣を構え、自身に溢れた言葉を口にするティミーの前に、サンチョはもはや反論することができなかった。目の前に立つのはティミーであってティミーではない者だ。その絶対的な力の前では、サンチョは抵抗する術を持たなかった。
「サンチョ殿。まずはお二人から話しておきたいことがあるようです」
ピエールの言葉をきっかけに、ティミーとポピーはサンチョに隠していた事や秘めていた意志を伝え始める。サンチョはまだ幼い二人の強い気持ちを否応なしに感じ、二人の必死な思いに幼い頃のリュカを思い出す。小さな体にこれほど多くの思いを溜めていたことを知ると、先に天に旅立ってしまったかつての主君に許しを請うように心の中で頭を下げた。

Comment

  1. ケアル より:

    bibi様。

    プックルは本気でピエールを殺していたかもしれないですね。
    それを魔物の皆で庇い、スラリンが居なければ、もしかしたら致命傷の仲間割れになっていたかと思うと…(汗)。
    bibi様が、この場面をどのように描写なさるのか楽しみにしておりました。
    期待どおり、ハラハラドキドキ致しましたぁ(笑み)。
    プックルが匂いで追いかける、ガンドフ自身、自らを言い聞かせる、ピエールの罪悪感、そして、スラリンが皆に対しての説得の罵声とプックルへの体当たり。
    そして何より驚いたのが、グランバニア兵の戦闘力。
    彼らたちって思っていたより強かったんですね(ポリポリ)。
    まあそうでないと、あのへんの魔物たちから国を守れないですよね。
    リクエストに答えてくださり、ありがとうございました。
    感無量でございます。
    bibi様、一つ気になることがあります。
    本物の大臣の屍は、どこへ行ってしまったでしょうか?
    オジロンたち、後で大臣の策略を知り、本当のことを知って驚いたでしょうね。
    bibi様、リュカの口癖…
    「僕はいつだって諦めが悪いんだ」
    さすがbibi様、読者のハートを掴んで来ますね。
    たしかに、いつもリュカは口癖のように言っていましたよね。
    bibi様のこういう所…好きなんですよねぇ~!
    読み手の心をくすぐる絶妙な描写(笑み)。
    ちゃんと読み込んでいたら、この台詞の重要性が分かるし、リュカと言えばこの言葉です。
    子供たちの成長も、ちゃんと描いてくれたんですね。
    そう…空白の6年間を描写しないと…いやべつに描写しなくても本編は、べつに問題ないですが、やはり読者は読みたかった(楽)。
    ポピーの「いこ…いこ」「良い子…良い子」
    この台詞、今後の描写の重要性になりそうですね。
    ミニモンのリュカとビアンカの声まねは、ぜったいにティミーとポピーの成長に必要なのも分かりますが、やはりミニモンの心中が可哀想で…。
    6歳になったポピーとティミー。
    bibi様そこまで描写して本編だいじょうぶかなって思っちゃいましたよ。
    でも、この場面がないと、サンチョと双子のパーティーが作れなくリュカを探しにいけないですよね(笑み)。
    リュカ…ヘンリーに手紙を書いていたんですね。
    あのころ忙しくて、リュカは手紙を完成させれなかったのかもしれないですね。
    ポピー賢いですね、さすがは魔法使い、頭が良いですね。
    手紙を見つけれなかったらストロスの杖が分からなかったかもしれないですね。
    そして、ティミーが伝説の勇者だったなんて…しかも、ポピーの最後の台詞を思うに、ポピーとティミーは、天空の血を引いていることを理解しているの…かな?。
    bibi様、リュカはサンチョにヘンリーの話しをしていなかったんですか?。
    いや…もし話しをしていたとしても、かつての主君の死の原因はラインハットという、現実は変わらないか…。
    bibi様、今回も最高でした。
    次回は、いよいよリュカ救出ですね。
    ストロスの杖を取りに行くために村まで行く描写をなさるのか…それとも、リュカの居場所をどのように探し出すかを描写するのか…。
    はたまた、ゲームどおり、とつぜんに孤島のお屋敷に向かうのか…。
    楽しみです!。

    • bibi より:

      ケアル 様

      早速のコメントをどうもありがとうございます。
      正直、ここまで書いてしまって、後で自分が困らないのかという不安は未だ抱えたままです(冷汗)
      でもこのサイトは私が好き勝手に書き散らしている場所なので、好きに書かせてもらいました。
      グランバニアの兵力はそれなりにあると思います。山々に囲まれて外部からは守られているけど、国の周りにはそれなりに強い魔物がうろうろしているので、それらから守る兵士はそれなりに鍛えられているのではないかと。でもまあ、考えてみたら、今回捜索隊に出向いたメンバーの中に魔物たちもいたわけで、リュカたちがたった四人(一人と三匹)で向かったことを考えれば、かなり余裕を持って行けたのではないかと……。
      大臣の……はっ!? しまった、失念しておりました。今回の話に彼のことも入れておくべきでしたね。今回の騒動のキーマンを忘れるなんて(汗) グランバニア兵士たちの手によって丁重に……ということにしておいてください。無下に扱うこともできないので。(私が扱ってる……)
      リュカの「諦めない」は、私がこの長編に掲げるスローガン的なものなので、皆に引き継いでもらう予定です。みんなにしぶとく生きて欲しい、そんな感じです。
      双子はどうしても勇者の方に比重を置かれがちになるので、妹ちゃんにも活躍してもらうようにしました。まだ子供ながらにとんでもない呪文を覚えていくので、きっと頭も良いに違いないと。勇者君はこれからたっぷり活躍してもらいます。
      リュカはサンチョにヘンリーの話をしそびれている、と言ったところです。なんだかんだと忙しいまま時が過ぎ、話をしようと思っても時間が取れず、時間があったところでその話をするのを忘れ……そんな感じです。だからポピーから初めてリュカとラインハットとの関係を聞いて、目が飛び出るほど驚くことと思います。
      そうそう、いきなりサンチョと双子のパーティーを組むには、前段階が必要だなと思って、今回こんな話でまとめてみました。次はまたゲームに沿ったお話になるかと思います。ようやくゲームができる……(笑)

  2. ピピン より:

    bibiさん

    今回は色々と書きたい事が多いので敢えて省きます( ´∀` )

    ミニモンの声真似がここで活きるのは盲点でした。他の二次小説では肖像画を見て双子が両親に想いを馳せるシーンとか読んだ覚えがありますが、声まで聴けちゃうなんてこの作品の双子は恵まれてますね…!

    ポピーは流石の才女ですね。手紙の内容にはヘンリーも色んな意味でびっくりした事でしょう(笑)
    この二人の、お互いに補いあってる感が大好きです。
    ついに双子が本登場するかと思うとワクワクが止まりませんね…!
    新章が始まるんだなという感じがします٩(ˊᗜˋ*)و

    • bibi より:

      ピピン 様

      コメントをどうもありがとうございます。
      せっかく声真似得意のミニモンがいるので、こうして双子の声だけ両親を演じてもらいました。肖像画、良いですねぇ。それが思いついていたら、そちらを書いていたかも知れません。肖像画は果たして部屋にあるのかどうかも怪しいです。新国王となって、すぐにいなくなってしまいましたからね……。困ったもんだ。
      ポピーは才女ぶりを発揮してもらいました。ティミーが生まれながらの運命を負っているのに対して、ポピーは努力の子。それは、ビアンカとリュカの関係に近いものがあると思っています。とうとうこの二人を書ける時が来たのかと思うと、私もワクワクが止まりません^^ ゲームでも新章が始まるとワクワクしますもんね。その気持ちを大事に書いて参りたいと思います。

  3. ピピン より:

    bibiさん

    でも声真似は、多方面で応用が利いて話の展開が広がりそうですよね。
    敵だと厄介だけど仲間だとおいしい能力(笑)

    リュカもパパスも、「自分が勇者なら」という想いが少なからずあったでしょうが、ポピーもまた一番近い存在だからこその想いがありそうですね。

    • bibi より:

      ピピン 様

      この勝手に書ける小説の良いところは、戦闘に限られた特技を普段の場面でも使えるという所ですね。かなりミニモンに懐いてることでしょう、双子ちゃん。
      勇者に対する思いは、みんな複雑なものがあると思います。自分の双子の兄が勇者という現実を、ポピーは初めからちゃんと受け入れられていたのかって考えると、どうなんだろうと思ってしまいますね。ティミー自身も……。

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