「世界少年少女文学全集 第2巻 中世編」(創元社)を読んで(2)

 

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2つ目に収められていたお話は、「ローランの歌」というフランスを舞台にしたお話です。「ローランの歌」は、フランス文学の中でも一番古い詩で、文学の様式としては叙事詩であると言えると、解説にありました。また解説には、”叙事詩というのは、それをうたったひとびとの過去の歴史や思い出に題材をとって、それに想像をくわえてつくりあげた物語のこと”とありました。ローランの歌の題材にされている戦争も実際にあったいくさで、西暦778年にカロロ大帝という当時のフランス大王がスペインを攻めて、本国へ帰る途中に、大王のしんがりが全滅したということがありました。その時のことを題材にした歌が、それから300年ほど後に作られたということです。

このお話を読んだ後に先ず頭の中に浮かんだのは、フランスの国歌です。ご存じの方もたくさんいらっしゃるかと思いますが、歌詞が何とも過激ですよね。しかしあの国歌がまさしくフランスという国が歩んできた歴史を表しているのだと感じます。国歌、ですからね。やはり国の歌にはその国の歴史や国体や国民性が刻まれているものなのでしょう。日本の国歌にも、確かに日本の歴史や国体や国民性が刻まれているのと同じで。

それと、フランスの憲法に、標語は「自由、平等、友愛」とあるそうです。これもまた、フランスと言う国が歩んできた歴史が表れているなと思います。不自由だったから自由を求めたし、不平等だったから平等を求めた、ということだと思われます。友愛に関しては、辞書を引くと、”知人に対しては献身的な愛をささげ、見知らぬ他人に対しても必要な愛を惜しまないこと”とありました。自分との関係性によって愛が段階的なものになるという表現に、とてもリアルを感じました。理想は博愛だけど、現実は友愛に留まるのかな、みたいな。それでもかなり高い理想とも思えてしまうのも、少し悲しいようにも思えますけどね。

総じて、フランスという国にはとてもリアルが詰まっているのかなと感じます。学生の頃に世界史を習い、昔のヨーロッパの国の国境線が慌ただしいように変化してきたのを思い出せば、この戦いに満ちたようなフランスの国柄にも納得せざるを得ないものだと感じます。そして戦いには立派な意味があり、戦う者たちは勇敢で誇り高く立派な者たちだと、戦う人々を讃える気持ちが強いことを感じました。

今日のフランスがどのような国になっているのか、私は詳しくないのですが、フランスという国の根底にはこのような強さがあるのだろうと、この「ローランの歌」の中に見たような気がしました。

また、お話の内容とは別に、やはりこちらにもゲーム好きをワクワクさせるものがいくつかありまして……ローランの剣であるデュランダル、ローランの吹く角笛、オリヴィエの剣であるオートクレール……聞いたことのある名がここで知れて良かったです(笑)

それと……この辺りに何とも言えない残虐さを感じるのですが、最後の裏切り者ガヌロンへの仕打ちが……まあ、あれですよね。グリム童話にも通じる残酷はこちらにもあったと言うことで。だってこれ、児童書……。こういうところがちょっと受け入れられないところなんだよなぁ、と(惑) 気になった方はぜひ読んでみてください。

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