2017/12/03

長い船旅の準備、そして旅立ち

 

この記事を書いている人 - WRITER -

ポートセルミの宿屋は一階が劇場と酒場を兼ね、二階に宿室がある。部屋に入り荷物を置くとすぐにリュカとビアンカは部屋を出て、階段を下りた。まだ昼前の劇場兼酒場は静かだが、食堂も兼ねているこの場所には朝食を取りに来る宿泊客もいる。今日は強風で船が出せないため、船乗りと思しき男たちがちらほらと朝食を取っている。船も出せず、急ぐ仕事もないためか、のんびりと食事をしているようだ。海の向こうの国の話は船旅に慣れている船乗りに聞くのが一番だと、リュカとビアンカは飲み物だけを注文し、二人の男が着くテーブルの隣に腰を下ろした。
「今日はこの風で船が出せないですよね」
リュカがいつも通りさらりと話しかけると、それまで話をしながら食事をしていた二人の男は手を止め、隣の席に着いたリュカを振り向く。
「ああ、こんな風が吹いちゃあなぁ。これで海に出ようもんなら、出て五分も経たないうちに船がひっくり返されちまう」
船乗りの男の言うことは決して大げさなものではない。外にはそれほどの強風が吹いているのだ。今もこの劇場型宿屋の窓や出入り口の扉をガタガタと揺らしている。
「僕たちも船で港を出る予定だったんですけど、これじゃあどうにもならないって、明日出ることにしたんです」
「あんた、船で旅をするのか? この風じゃあな、東への定期船も出せねぇからなぁ」
リュカたちの身なりを見て、船乗りの男は二人が定期船に乗って旅をするようなごく普通の旅人だと思ったようだ。まさかリュカたちが自前の船を持っていることなど、想像だにしていない。
「いや、定期船じゃなくて僕たちの船を使うんです。……と言っても、貰ったものなんですけど」
「ん? あんたらの船? 貰った? どういうことだ」
話が違う方向に逸れそうになるのを見て、ビアンカが身を乗り出しながら口を挟んだ。
「新婚旅行も兼ねての船旅なんだけど、どこか素敵な場所は知らない? 船でとりあえず南に向かおうかな~とは思ってるんだけど」
リュカと同じ席に着いている金髪の美しい娘に話しかけられ、船乗りの男は思わず鼻の下を伸ばす。しかし娘の『新婚旅行』という現実的な言葉にすぐに打ちのめされたように、思わず恨めし気にリュカを見る。
「私たち、元々東の大陸に住んでいて、西の大陸も少し旅をしたから、今度は南がいいかなって思ってるんだけどね」
ビアンカがテルパドールと言う具体的な名前を出さない理由はただ一つ、船旅をもっと楽しいものにしたいからだった。ポートセルミから直接南の大陸にあるテルパドールに向かうには、かなりの距離がある。延々と船旅を続けるのも構わないが、それよりも何か面白い、楽しいものがあるならそれを目指してもいいと考えていた。
ビアンカの言葉に応えるべく、船乗りの男は不敵な笑みを浮かべながら、内緒話のように小声で話し出した。
「だったらいいことを教えてやろう。この港から陸に沿って南下すると、大きな砂漠に突き当たるはずだ。その砂漠のどこかに大きなお城があるって話だぜ」
男の話は間違いなくテルパドールのことだと、リュカにもビアンカにもすぐに分かった。
「偶然ね。私たちもさっきそのお城の話を聞いたばかりなの。地図で見たらかなり遠いところにあるから、途中でどこか船を泊めて休めるような場所はあるかなって思ってたんだけど、どこか知らないかしら?」
「俺は南への船には乗ったことがねぇから良くは知らねぇけど、途中で船を泊めるような場所はあるけど、せいぜい水の補給ができるくらいだって話だぜ。食料は旅に出る前に大量に乗せておいて、それを計画的に使うか、船の上から魚釣りでもするか、だろうな」
「なかなか過酷な旅ですね。それでも南のお城に行く人がいるんですか?」
船乗りの男の話を聞いて、リュカは正直かなりのリスクがある船旅に少々躊躇し始めた。
「まあ、船旅ってのはどこに行くにしても命がけだからな。大波が来てひっくり返されたら終わり、魔物に襲われて沈められても終わり。そういう覚悟が必要ってことよ」
そう言いながら高らかに笑う船乗りだが、彼は毎回毎回命を懸けて船に乗っているということだ。それだけの覚悟を持っているからこそ、かえってこうして笑って話せるのかも知れない。
「砂漠のお城の話なら私も聞いたことがあります」
船乗りの男と同じ席に着いて食事をしていたもう一人の男がぼそりと口を開いた。彼は見るところ船乗りではなく、何かを研究でもしているような学者風の男だ。眼鏡をかけ、色白で、いかにも長旅には耐えられないような華奢な体つきが服の上からでもしっかりと分かる。
「何でも伝説の勇者をまつったお墓があるとかないとか……」
学者風の男が発した言葉に、リュカもビアンカも口を開けたまま少しの間止まってしまった。
「勇者のお墓っ?」
「ええ、伝説の勇者のお墓ですから、ちょっと眉唾な話ではありますが、それでもそこここで聞く噂ですよ」
「じゃあそこに子孫も……と、うまくいけばいいんだけど」
「子孫って、何のことですか?」
ビアンカの呟きに、今度は学者風の男が身を乗り出して聞いてくる。どうやら彼に興味のある話のようだ。
「僕たち、伝説の勇者を探して旅をしているんです」
「何言ってんだ? 伝説の勇者って、かなり昔のヤツなんだろ? 今生きてるわけねぇだろ」
「その時の勇者はもういないだろうけど、勇者の子孫ならいるかも知れないって……」
船乗りの男の言葉にリュカは自身の考えを言いかける。しかしそれも以前、ヘンリーと旅をしていた時にアルカパを訪ねた際、町の人から聞いた話だった。今や伝説の勇者はいないだろうが、その子孫くらいなら今もいるのではないかと言う考えだ。それはビアンカとアルカパの町にいる時に、彼女にも話していた。
「何せ伝説の勇者ですからね。男か女かもわからない、人間だったかどうかも分からない、なんて言われてる方ですよね。その子孫をお捜しなんですか?」
「見つけなきゃいけないんです、どうしても」
リュカの真面目な表情を見て、学者風の男が同じように目を輝かせた。
「これは偶然ですね。私も勇者様を探す旅に出ているのです」
学者風の男の言葉に、リュカもビアンカも思わず目を見張って男を見る。まさか自分たち以外にも勇者を探す人間がいるとは思わず、同じ目的を持った男に瞬時に仲間意識を持つ。
「外界には魔物がはびこり、人間は常に危険にさらされています。安心して旅をすることも敵わない。魔物をこの世から消し去るためにも、勇者様のお力が必要なのです」
学者風の男が熱を入れて言うその言葉に、リュカは芽生えていた仲間意識が一気に崩れ去るのを感じた。しかし考えてみれば、男の考え方の方がよっぽど勇者を探す目的に沿ったものなのだ。勇者とは世界を救う者。昔よりも魔物の数が増え、旅をする危険は増している。そんな世の中を救うために勇者の力が必要だと感じるのは、おかしなことではない。むしろ、魔界に連れ去られた母親を救うために勇者の力を必要としているリュカの方が、よほど特殊な事情を抱えている。そして、リュカの目的の方がよほど身勝手なものだ。
「勇者様のお力があれば、きっとこの世界は救われる。それに……勇者様と言うお人がどのような方なのか、とても興味があるのです。人間とも分からないと伝えられている方は一体何者なのか、この目で見てみたい……それが私の旅の目的です」
そう言いながら目を輝かせる学者の男を見て、リュカもビアンカも彼とは旅を共にできないと直感的に感じた。どうやら男は勇者に世界を救ってもらうという大きな目的の陰に、単に勇者と言う珍しいものを見てみたいという、いかにも学者としての目的を持っている。そんな彼に、リュカは興味だけで危険な旅を続けるのは止めた方がいいとすら言葉をかけたくなった。
「しかしここらの魔物は強くて、なかなかこの町から出られないのです。妻と共に海を渡ってこの町に来たのは良いのですが……外に出られないもので、日銭を稼いでこの町でどうにか暮らしています」
「日銭を稼いでって……何をしてるの?」
既に人々は働いているような時間にのんびりと食事をしている学者の男に、ビアンカはどこかとげのある言い方で問いかける。
「妻が宿屋で働いてくれています。今も宿の厨房で皿洗いをしているかも知れません」
のんびりとそんなことを語る男に、ビアンカの目つきが変わった。リュカが気づいた時にはもう遅く、ビアンカは学者の男に捲し立てるように話し始めていた。
「奥さんが一人で働いてお金を稼いでいるですって? ちょっと、あなたも一緒に働いてきたらどうなのよ。町にしばらくとどまるなら、奥さん一人で二人分の生活費を稼ぐのは大変よ。そんなの、学者さんの頭があるなら言われなくても分かるでしょ。それとも勇者様のことを考えるだけで精いっぱいなの? そんなんじゃ勇者様を探すことなんてきっとできないわ。第一、奥さんに平気で苦労させるような人と、勇者様だってお会いになりたくないんじゃないかしら?」
「ちょっと、ビアンカ。その辺でいいんじゃ……」
「でもちゃんと言ってあげないと、この人、きっと気づかないわ」
「奥さんはそれでもいいって思ってるのかも知れないよ」
リュカの言葉に、ビアンカははっと息を呑む。自分自身が目の前の学者の男にどこか嫌気を感じたがために、思わず男を責める言葉を投げかけたが、見たところ学者風の男も年は若く、妻がいるとしたらその妻もまだ若いのだろう。愛する夫が夢を追いかけて勇者を探し出したいと言ったら、妻は喜んでその手伝いをするのかも知れない。リュカが母を救うために勇者を探す旅を続けるのに、ビアンカは彼の役に立ちたくて喜んで旅についてきた。それもこれも、リュカのことを心から愛しているからだ。大好きな彼の役に立てるのなら、傍にいられるのなら、どんなに苦しいことでも耐えて見せようと、そんな覚悟があるからリュカとビアンカは夫婦になったのだ。
「僕も、君が何かをしたいっていうんだったら、喜んで手伝いたいと思うよ」
にこやかにそんなことを言うリュカを見て、ビアンカは顔から火が出る思いがした。自分の考え方の浅はかさと、リュカの底知れぬ想いに触れ、ビアンカはしばらく気まずそうに黙り込む。
「……あなたの言う通りですね。私は妻に甘えすぎていました。自分のやりたいことだけに没頭し、何も妻のことを思いやれていなかった」
学者の男は強く言われたビアンカの言葉に、素直に胸を痛めた様子だった。席を立つと、「妻の様子を見てきます」と言ってそのまま宿屋の方へ立ち去ってしまった。席を共にしていた船乗りの男も食事を済ませると、すぐに席を立った。
「俺にはまだよく分かんねぇけど、まあ、結婚ってのがいいもんだってのは何となくわかったよ」
そう言いながら、船乗りの男はリュカとビアンカをニヤニヤと見ると、「あー、早く嫁さん欲しいぜ」と捨て台詞を残しながら、港へと向かって行った。
リュカとビアンカも席に戻り、なんとなく会話もなく、黙々と食事を早々に済ませた。食事を終えて周りを見れば、他の客たちのよそよそしい雰囲気を感じる。それと言うのも、先ほどビアンカが学者風の男に怒った場面を見たからだろう。リュカとビアンカにはあまり関わりたくないと言った雰囲気が嫌でも感じられた。二人はこの場での情報収集は難しいと、とりあえず店の外に出ることにした。
ポートセルミの劇場型宿屋を出たところで、リュカが現実的な話をし始める。
「ところで僕たち、テルパドールに行くのにどれくらいの食料を用意すればいいんだろう」
「水だって大量に必要よ。長い船旅に詳しいのは船員さんだわ。港に行って話を聞いてみましょう」
「そうだね。ああ、さっきの船乗りさんに話を聞けばよかったな」
「何か、話しそびれちゃったものね」
ビアンカはそう言ってから、隣を歩くリュカの手を取り、彼を見上げる。
「……何?」
ビアンカの行動に、直感で何か嫌なものを感じ取るのは、リュカの特技になってきたようだ。
「さっきの言葉は本当よね。私が何かをしたいなら喜んで手伝ってくれるって」
「……危ないことじゃなければね」
リュカの牽制の言葉に気づかないふりをして、ビアンカは今度はリュカに腕を絡ませながら言う。
「やっぱりルーラって私も覚えておいた方がいいと思うのよねー。だって便利じゃない? もしリュカの魔力がなくなっても、私も使えたらすぐにどこかへ行けるわけだし。緊急時にも対応できると思うのよねー」
「そんな目を輝かせながら言われたら、教えるわけに行かないよ。絶対に必要じゃなくても使うだろ、君は」
「あら、そんなことないわよ。私の目を見てよ、そんなことをすると思う?」
「思う。絶対にする。気づいたら一人でどこかへ行ってそうで怖い」
「どうしてそんなに信用してくれないかな……」
「小さい頃からの君を知ってる人だったら、多分、誰もルーラを教えたくないと思うよ」
「ねぇ、お願いよ。教えてよ、ねっ?」
「そんな甘えた声を出してもダメ。それに、この呪文は教えようにも教えられないんだよ」
「どういうこと?」
「呪文書に載ってるような呪文じゃないんだ。古代の呪文を復活させた時に身に着けた呪文なんだよ。覚えようとして覚えたものじゃないから、僕もどうやって教えたらいいのか分からない」
「古代の呪文ですって!? なんてカッコイイ響きなのかしら。尚更覚えたくなるわ。ねぇ、どうにかして使えるようにならないのかしら」
ビアンカがしつこく聞いてくるのを、リュカは呆れた様子で横目に見た。ルラフェンに行けばもしかしたら使えるようになるかも知れないが、その話は絶対にしないと、リュカは心の中で固く誓った。彼女がもしルーラを使えるようになったらと考えると、末恐ろしい。好きな時に、好き勝手にどこかへ飛んで行ってしまいそうで、それはとんでもなく危険なことだと、リュカは身震いする思いがした。しかも彼女のこと、先ほどのように怒りを感じた時など、感情的にルーラを発動させてどこかへ行ってしまう可能性も無きにしも非ず。
「ぜっっったいに教えない」
「えー、どうしてよ。リュカのケチ! ずるいじゃない、一人だけ使えるなんて」
その後はビアンカに何を言われようが、リュカはことごとく彼女に反論し、話を逸らし、宥めたりと、様々なことをしつつ、それとなく港へと向かって行った。



強風のため出港を取り止めた船が多く泊められた港だが、船乗りたちは翌日の出港準備を整えるため港を出入りしていた。積み荷の確認、船の整備点検、航路の変更有無など、長旅に備えて幾度となく点検を行っている。一度航海に出てしまえば、途中で寄港する場所がなければ、頼りになるのは船だけだ。船の状態は万全に万全を期する必要がある。
船旅に慣れた船乗りたちは長旅の準備を陽気に進める雰囲気がある。港に停泊する船に出入りする船乗りたちの多くは、鼻歌でも歌いながら積み荷を運んだり、船の整備を行っていたりする。しかし彼らはいつでも命がけの航海に出ているのだ。いつでも覚悟をしているからこそ、今を楽しもうと笑顔を絶やさないのかも知れないと、リュカは船乗りの男たちを眺めながらどこかその心境が分かるような気がしていた。
船旅初心者のリュカたちにも、船乗りたちは親切だった。リュカたちが目指すテルパドールへの航路に詳しい船乗りが注意すべき海流や、途中船を泊めて水を確保できる地域を教えてくれたり、魚釣りのコツや道具まで譲り受けることができた。長旅に慣れた船乗りたちの話を聞き、リュカとビアンカは町に戻って食料の調達を始めた。港でも船乗りたちの厚意で食料をいくらか分けてもらうことができたが、テルパドールまでの長旅となると到底足りない量だった。ポートセルミは港町ということもあり、長旅に備えた食料を多く店で取り揃えていた。その中にはカボチ村で採れた野菜なども多くあり、リュカは以前カボチ村を訪れた時のことを思い出しながら、複雑な表情をしつつ買い物を続けた。
仲間の魔物たちも陸を旅する時は各々食料を見つけてどうにかしていたが、海の上となると勝手が違う。二人は船乗りたちが目を丸くするほどの量の食料を次々と船に運び込み、それだけで町と港を何往復もする重労働となった。
水においてはさすがはポートセルミと言うだけあり、港に給水用の水道を引いており、そこから有料で船旅用の水を得ることができた。ルドマンから贈られた船には当然のように水を入れる樽がいくつもあり、それら全てにリュカたちは水を入れ、船に積んだ。船乗りたちが言うには、『船が動いている限り水は腐らない』という話で、しかもポートセルミの港に引かれた水道の水はカボチ村方面の山からの名水とあり、腐りにくい水らしい。
せっせと船旅の準備をするだけで、時間はあっという間に過ぎて行った。気づけば町は穏やかな昼過ぎの太陽に照らされていた。ようやく出発の準備がおおよそ整ったところで、それほどの時間が経っていたことに気づいたリュカは、ふとビアンカの様子を窺った。さすがに疲れた顔つきをした彼女だが、しかしその目にはやはり旅に出る楽しさや嬉しさがにじみ出ている。
「お疲れさま、リュカ。色々と買ったから、もうお金がすっからかんね」
「ルドマンさんにお祝いのお金をもらってなかったら、どうにもならなかったなぁ」
「それこそまずはポートセルミで働かないといけない状況だったわ。あ、でも私があの舞台に立てばすぐにでもお金が稼げたかしら」
ビアンカがそう言うと、リュカは以前ポートセルミに立ち寄った時のことを思い出した。舞台ではクラリスたち踊り子の妖艶な踊りが披露され、舞台に向かって飛び交う声援はほとんどが男たちのものだった。そんな舞台にビアンカが立つことを想像し、リュカは今までにないほどのしかめ面を見せた。
「……そういうの、冗談でもやめてくれる?」
「あら、冗談じゃないわよ。お金が必要って言うんだったらそう言う方法も考えなくちゃ。お金を稼ぐって、とてもシビアなことだもの」
「でも仕事は選んだ方がいいと思う。君にはああいう舞台は向いてないよ、きっと」
「そんなのやってみなくちゃ分からないじゃない。やってみたら意外と、っていうのもあると思うわ」
「うーん……まずああいう衣裳を着ないと思う……」
「どんな衣裳なの? 普通の舞台で劇をやる衣裳なんでしょう?」
「夜見てみれば分かるよ。どうせあの宿に泊まるから見ることになると思うし」
ビアンカはどうやら舞台で行われるのは演劇の類だと思っているらしい。クラリスと話した時も、彼女が演劇の主役を演じるような舞台女優だと思ったのだろう。
「お昼を食べていないし、夜も兼ねて今から食べに行こうか」
港町を照らす太陽の光は既に西に傾き、リュカたちがポートセルミの宿屋に着くころにはそれはオレンジ色の夕日に変わっている頃になる。
「それ、いいわね。ずっと動いていたからお腹が減ったことにも気づかなかったけど、いざ気づいたらお腹ペコペコ。行きましょう行きましょう」
「あ、ところでお金は?」
「食事する分くらいは残してるわよ。そこまでぎりぎり使ってないから大丈夫」
「でもテルパドールに着いたら、すぐにでも仕事を探した方がいいかもね。何か僕にもできそうな仕事があればいいけど」
「やってみればきっと何だってできるわよ。いざ仕事を探すって状況になったら、きっと選んでいられないわ」
「それもそうかもね」
ポートセルミの上空には港町らしくカモメが鳴き声を上げながら飛び交っている。青い空に白いカモメが飛び交う景色は、ポートセルミの町そのものを映し出すように美しい。二人が町を歩いていくうちに時刻は刻々と過ぎ、町を覆う空は西からオレンジ色に染まり、東の空には海の上に一番星が輝く時刻となった。ちょうどその頃、リュカとビアンカは宿に着き、賑わい始めた劇場兼食堂に入っていった。
明日出港予定の旅人の姿がちらほらと見え、その中に戦士の装いに身を固めた男とその子供らしき男の子が一つのテーブルに着いているのが見えた。すでに食事をしており、その雰囲気は父子の穏やかな温かさに包まれているように見えた。
ちょうど空いている席がその父子の隣であったため、リュカとビアンカはそこに席を取り、ビアンカはにこにこと男の子を見つめた。男の子は隣に座る見知らぬ女性に見つめられ、少し照れくさそうに視線を外したり、気になってちらっと見たりしている。
「こんばんは。あなたたちも旅をしているんですか?」
リュカは旅の途中いつもそうするように、気さくに戦士風の男性に話しかけた。すると旅慣れた戦士の男も応えるように、気軽に言葉を返してくる。
「ああ、これから東の大陸に渡る予定でな。本当は今日船に乗る予定だったんだが、この風でな。見たところ君たちも旅人だな。恋人同士で旅をしてるのか?」
「いいえ、夫婦なんです。と言っても、結婚したばかりなんですけどね」
リュカが少々照れくさそうに言うのを見て、戦士の男はリュカに何かを見るような目をして微笑んだ。
「ほほう、夫婦で旅を? すると新婚旅行と言うわけか。なかなかいいものだな」
戦士の男の言葉に、リュカは少しの違和感を覚えた。初めは気が付かなかったが、もし家族で旅をしているのなら、ここに男の子の母親がいるはずなのだ。しかし隣に座るのは父と子の二人だけだ。旅をする見知らぬ土地で、母親だけが別に行動するようなことがあるだろうかと、リュカは思わず首を傾げる。
「ねぇ、君はお父さんとの旅は楽しい?」
ビアンカが男の子の顔を覗き込むようにしてそう尋ねると、男の子は照れくさそうにしながらもはっきりと「たのしいよ」と答えた。一言そう答えると弾みがついたのか、男の子は笑顔を隠そうともせずにビアンカに話し始めた。
「この前もね、お父さんが強いマモノを剣でやっつけてくれたの。かっこよかったんだよ。ボクのお父さん、とっても強いんだ」
「そうなんだ。強いお父さん、いいわね、かっこいいねー」
「ボクのお父さんは世界一強いんだよ! どんなマモノにだって負けないんだ」
男の子が胸を張ってそう言う姿にリュカは胸を突かれた。男の子の年のころは六、七歳ほどに見え、共に旅する父を心の底から信頼し敬愛している雰囲気が滲み出る。強い父に与えられる保護は絶対で、男の子はその保護がなくなることを想像だにしない。常に戦士である父の隣で、旅は危険なものだと教えられつつも、やはり自分は父に守られているから絶対に平気なのだと思っている。強い父が魔物の前に倒れるわけがないと、男の子は希望しか知らない目でリュカとビアンカに話しかけてくる。
男の子が無邪気に話す姿を、父は穏やかに見つめている。子供を愛する心が自ずと滲み出て、それは隠れることがない。同時にどこか切ない雰囲気がそこにはあった。そんな父親の表情を、リュカは過去にも見たことがあるような気がした。しかし子供の頃、それが切ないものだとは気づかず、ただ違和感を覚えた記憶だけが残っている。
話をする中でも、男の子の父である旅の戦士は旅の目的については語らなかった。魔物が多く出没する中、大事な息子と共に外の世界を旅する親もいないだろう。何か旅の目的があるはずだが、彼は何も語らず、そして早くにこの場を去りたい様子が窺えた。何か今の状況で、都合の悪いことがあるのかも知れない。
「明日は早いんですか?」
リュカが話を転換させると、旅の戦士はどこか安心したように笑みを見せる。
「そうだね、東への定期船は早くに出るようだから」
「それじゃあ早く寝ないとね。船の長旅はとても疲れるから、ゆっくり休んだ方がいいよ」
リュカが男の子に話しかけると、男の子も元気に頷いて、きれいに食べた皿をテーブルに残したまま父親と共に宿へと姿を消していった。立ち去る際、旅の戦士はリュカに会釈をし、息子と手を繋いで部屋へと歩いて行った。
「あの人、子供と二人旅なのかしら? リュカとパパスさんみたいよね」
二人が立ち去った後、席に運ばれてきたサラダを食べながらそう言うのを、リュカは素直に頷いて聞いた。リュカ自身、旅の戦士と男の子を、かつてのパパスと自分に重ねて見ていた。それ故に、様々な感情が溢れ、まともに父子を見れない場面があったのだと気づく。
「もしかしたら、同じような理由で旅をしているのかもね」
「同じような理由って?」
「お母さんを探してるかも知れないってことよ。一緒にいなかったでしょ、お母さん」
ビアンカに言われて初めて気がつき、リュカは「ああ……」と息を漏らすような返事をする。
「まあ、分からないけどね。もしかしたらお母さんは一人で買い物に出かけてるだけかも知れないし」
「旅って、色々だよね。みんな、色々な事情を抱えて旅をしてるんだ」
「そうね。パパスおじさまもきっと必死に抱えていたのね。リュカのために……」
幼い頃のリュカは、父が何を目的に旅をしているかなど何も分からなかった。そして何も知らないで良かったのだ。父と共にいられればそれで良かった。幼いリュカには父と旅をしている、その世界だけで十分満ち足りていた。きっと先ほどの男の子も同じだろうと、リュカは彼のキラキラとした目を思い出しながら思った。まだ幼い子供にとっては、親が与える世界がすべてなのだ。自分では一人でできたと思うことも、陰で必ず親が支えている。
「あなたたちも明日にはこの町を出るの?」
食事を運んできたバニーの店員に話しかけられ、リュカは短く「そのつもりです」と答えた。
「もう風も落ち着いてきてるから、明日は船も出せるでしょうね。恋人同士で旅をしているの?」
「いえ、夫婦なんです」
言った直後に少し恥ずかしそうに目を泳がせるリュカに、ビアンカもつられて恥ずかしさが込み上げてくるのを感じた。自ら夫婦と名乗ることに、二人ともまだ慣れていない。
「へえぇ、いいわねぇ。新婚旅行ってやつね。憧れるわぁ」
うっとりとどこかを見つめる女性店員は恐らくビアンカとそう年は変わらない。彼女もこの舞台で踊るクラリスと同じように、ここで働きながら男性との出会いを求めているのかも知れない。
「でも今時、新婚旅行ってだけで世界を回るカップルって珍しいわよ。前よりも魔物も多くなってきてるから、危険じゃない」
彼女の言う通り、単に新婚旅行と言うだけで船に乗り、遠くの国へ旅行する人間は今の世の中あまりいない。金に困らぬ富豪でも、自分の命を守る術に長けているわけではない。命の危険を冒してまで旅をするには、人それぞれ何かしらの事情を抱えているのが普通だ。
「伝説の勇者を探しているんです」
港町という人が大勢集まるこの酒場で働く彼女は情報にも通じているだろうと、リュカは旅の目的を素直に話してみた。先ほども偶然、勇者を探す学者風の男に会ったばかりなのだ。他にも同じ目的を持って旅をしている人間がこの酒場に来ていてもおかしくはない。
「伝説の勇者? それってあのおとぎ話に出てくる?」
「そうです。まだどこにいるかも分からないんですけど、とにかくどこかにはいるはずなんです」
リュカは真剣に話していたつもりだったが、おとぎ話に出てくるような不確かな存在を追い求めるという話の性質上、女性店員には本気に受け取られなかったようだ。
「伝説の勇者様を探してあてどもない旅だなんて、ロマンティックね。私も白馬の王子様を探して旅に出たいなぁ」
リュカとビアンカが夫婦で、新婚旅行の途中で、そして伝説の勇者を探すという旅の目的に、女性店員は完全におとぎ話の世界に思いを飛ばしてしまったようだった。しかしその一方で、白馬の王子様を探して旅に出たいというのは、彼女の本音の一部かも知れない。
「白馬の王子様探しなんて、面白そうね。私もリュカと結婚してなかったらやってたかも!」
ビアンカがいかにも楽し気にそんなことを言うのを、リュカは苦い顔でじとりと見た。彼女の言う白馬の王子様という響きが、どうしてもヘンリーと重なって聞こえてしまい、リュカはあまり良い気分がしなかった。
「でも白馬の王子様にだって相手を選ぶ権利があるよ。それにもう王子様には相手がいるかも知れないし」
むきになって話すリュカを見て、ビアンカと女性店員は思わず目を見合わせ、同時に笑った。
「ヤキモチ妬いちゃって、かわいいわね~、旦那さん」
「リュカ、本気にしないでよ。あくまでもたとえ話じゃない。そんなことがあったら面白いだろうなぁって思っただけよ」
「君なら本当にやりかねないよね。でも君のお転婆についていける王子様は世界を探してもいないと思うよ」
「あら、ちゃんと見つけたじゃない」
何でもないことのように言うビアンカに、リュカは怪訝な顔を隠しもせずに彼女を見る。ビアンカは微笑みながらグラスの酒を少し口につける。
「私にとってはあなたがそうなのよ、リュカ。あなたが私の王子様」
いつもだったら照れてそんなことは言わないようなビアンカだが、今は酒の力でもあるのかさらりとそんなことを言っている。優しい笑みの中に熱のこもる視線を感じ、リュカは顔がカーッと熱くなるのを感じた。
「そうそう、そういうことよね。大体、実際に王子様と一緒になるだなんてきっと疲れるだけよ。運命の人に出会えれば、もうその人が自分にとっては王子様よね」
同調する女性店員はその後他の客に呼ばれ、すぐにその場を去っていった。テーブルの上には女性店員が運んできた皿が並び、魚の煮込み料理からは美味しそうな湯気が立っている。ポートセルミは港町だけあって、魚料理に評判があり、他のテーブルでも様々な魚料理が出されている。野菜と共に煮込まれた大きな魚の身をほぐし、ビアンカは二つの小皿にそれぞれ取り分けた。
「これから船旅に出てしばらくお肉は食べられないから、お肉もいいかなって思ったんだけど、やっぱりこういうところにくるとお魚が食べたくなるわよね~」
そんなビアンカの席の前には一緒に注文した白ワインのグラスが置かれている。ポートセルミでは水と酒とがほぼ同じ価格で提供されているため、それならばとビアンカは白ワインを注文していたようだ。
「ビアンカ、酒はほどほどにしておいてね。明日から長い船旅になるんだから」
「大丈夫、これでおしまいにするわよ。お酒を飲み過ぎて明日からの船旅が楽しめないなんて、つまらないものね」
言った通り、ビアンカはそれ以降酒を飲まず、水に切り替えた。水もカボチ村方面の山より流れる川から引いている水で、臭みも全くなく美味しいものだった。
船旅前最後の食事が満足なものに終わりそうなところで、劇場内が一気ににぎやかな雰囲気に変わった。舞台には次々と踊り子たちが姿を現し、華やかなステージが始まった。真ん中で踊るのはクラリスだ。彼女の踊りは魅惑的でありながらも、どこか可憐な少女のようなあどけなさもあるようにリュカは思った。それは彼女が本来持つものなのかも知れないと、リュカは初めて彼女の舞台を観賞した。ビアンカも同じようなことを感じていたらしく、ただ「きれいね、クラリスさん」と呟くだけで、他に発する言葉もなかった。それほどクラリスの踊りは観客を惹きつけるものなのだろう。
クラリスが一度舞台の奥へ戻ったところで、リュカとビアンカは席を外した。宿の部屋へ戻って休もうと、二階への階段を上る。そこでふと、手すりから身を乗り出しそうな勢いで下を見る男の姿を見て、リュカは男がそこから舞台の上に飛び降りるのではないかと思い、慌てて近づいた。
リュカの足音に気づくこともなく、男は尚も必死になって手すりから身を乗り出す。両足が浮いて、バランスを崩したように見えたところで、リュカは男の肩に手をかけて引き留めた。
急に肩をつかまれ引き戻された男は、初め驚いた顔をしていたが、リュカの困惑したような顔を見ると、何故かにやりと笑みを見せた。
「やや! あなたも気がつきましたね」
「気がつく?」
「そうです。ここからだと踊り子さんのムネをのぞけるんですよ」
そう言うと男は再び凝りもせず手すりから身を乗り出し、舞台を上から覗き込む。男に舞台へ飛び降りるという危険な考えはないと知り、リュカは安心したように息をついた。
「もうっ、いやあねえ……。男ってみんなこうなのかしら……」
ビアンカが呆れたように言う横で、リュカは男と並んで舞台を上から眺めてみた。舞台では踊り子たちがくるくると華麗な踊りを披露している。踊り子たちが舞う度に彼女らが身にまとう踊り子の服もくるくると舞い、この場所からの眺めもきれいだなとリュカは単純に思った。
突然、後ろから髪を思い切り引っ張られ、リュカは後ろに仰け反った。よろめく先に、ビアンカの怒った顔があった。そしてその顔のまま、にこっと口元だけ無理な笑みを見せる。
「でもリュカだけは違うもんねっ」
「えっ? 何が……。ああ、違うよ、僕はただ……」
「ただ、何よ。ただ踊り子さんのムネを覗いてただけなの? そんなに踊り子さんのムネを見たかったの?」
「ち、違うよっ。そんなこと思ってない……」
「何よ、そんなに慌てちゃって。慌てるってことは、そう思ってたってことだわ。そんなことしなくたって、私のがあるじゃない! 私じゃ不満だって言うの!?」
「ちょっと、ビアンカ、落ち着いて。勝手に話を進めない……」
「私だって踊り子さんに負けてないはずよ。リュカだって知ってるでしょ!」
「えっ!? あ、いや……うん、そうだね。いや、そうじゃなくって! ……とにかく部屋に行こう、行って落ち着こう。ね」
一人勘違いの収まらないビアンカを宥めながら、リュカはその場を離れ、取ってある部屋に向かっていそいそと足を運んだ。そんな二人を後ろから見ていた男は独り、「いいなぁ……」と呟き、部屋に入っていく二人の背中に恨めしそうな目を向けていた。



港の朝は早い。まだ暗いうちから動き始め、日の出と共に船は出港の時間を迎える。朝の澄み切った空気に、リュカもビアンカも旅立ちの気持ちを高揚させていた。
外で一日待たせていた魔物の仲間たちを乗せた馬車は、まだ人気のほとんどない夜明け前に町中の道を通り抜け、早いうちに船に乗り込んでいた。魔物の仲間たちは馬車の荷台に乗りながら、人間の暮らす街並みを物珍しそうにしげしげと眺めていた。まだベビーパンサーだった頃の記憶が蘇ったのか、プックルが途中荷台から飛び出して町中を歩いたりもしたが、幸い町の人間に見つかることはなかった。港町の夜は遅く、朝は早い。しかしその合間のほんの隙間の時間、この港町には完全な静寂が訪れるようだ。リュカとビアンカはちょうどその時間に合わせて、馬車を港に移動させ、船に乗せることができた。
「もうちっと町を見物できたんじゃなかろうかのう」
マーリンが恨めし気に船の甲板から町の景色を眺める。町の灯も消え、人間の目から見れば町は完全な闇に包まれている状況だ。しかし魔物の仲間たちにはその景色がしっかりと見えているのだろう。メッキーは空を飛べることをいいことに、出港までの間、誰もいない町の中をしばらく空中散歩をして楽しんでいたようだ。
「ここで騒ぎを起こしたらリュカ殿に迷惑がかかりますよ」
慎重派のピエールが最もな意見を言うと、マーリンはつまらなさそうにピエールを見やる。
「冒険心の足らんヤツじゃのう、お主は。これから船での大冒険に出ようとしているのに、そんなことでは息が詰まるわい」
「皆が皆冒険心たっぷりでは、危なっかしくて仕方がありません。そうですよね、リュカ殿」
「うん、まあ、そうだね。僕もそう思う」
「あら、でも冒険心ってとっても大事だと思うわ。それがなければ人生の半分以上を損しちゃうんじゃないかしら」
東の水平線がうっすらと明るくなり始めた。ビアンカは間もなく訪れる夜明けの景色に心を躍らせ、その目は既に輝きを放っているようだった。彼女のそんな目を見ると、リュカは不安に駆られながらも、これからの旅が楽しいものになるに違いないという期待も自ずと抱く。彼女にはどこか人を勇気づける力がある。リュカは彼女の隣に立ち、同じように水平線に浮かび始めた朝日のオレンジを眺めた。
ルドマンから結婚祝いとして贈られた船には、仲間たちだけで乗り込むため、パトリシアも荷台を外してのびのびと外に出てきている。大きな船のため、パトリシアのような巨馬でも何の問題もなく船の上を悠々と歩けるようだ。パトリシアの背にはいつも通りスラりんが乗り、パトリシアと仲良さげに会話を楽しんでいる。その隣を大きな熊のようなガンドフが歩いても、まだこの船にとっては小さな生き物たちが手の平の上で戯れているに過ぎないと言った感じだ。
水平線から朝日が昇り始めた。港が一気に光に包まれ始める。港には既に人の出入りがあり、出港準備を始めているが、その中でもリュカたちの乗る船は一番に出港するつもりで動いていた。リュカは船長室に移動し、船の動力となる魔力の充填状況を今一度確認する。船長室の窓からもしっかりと朝日が見えるのを確認すると、ゆっくりと船を離岸させた。動き出す船に、甲板にいる魔物の仲間たちが歓声を上げる。その声に、港で働く人々は思わず船を見上げ、そして一様に驚いた顔をした。魔物の姿が見えたのかもしれないと思ったが、リュカはそんなことも楽しいと感じながら、出港を果たした。
「いよいよね。新しい旅立ちだわ」
「楽しいことがあるといいね」
「あなたと一緒だもの、楽しいことしかないわ」
隣で朝日を眩しそうに見つめるビアンカがそう言うと、リュカは彼女の肩を抱いた。
「お母様、早く見つけましょうね」
「うん……ありがとう、ビアンカ」
そう言って、リュカは船を大海原に出した。ゆっくりと進む船はこれから先長い長い旅に出る。水平線から顔を出した朝陽は大海原を白く染めている。そんな雄大な景色を見ながら、リュカとビアンカは同時に、場違いな大欠伸をした。そして二人顔を見合わせ、思わず照れ笑いをした。

Comment

  1. ケアル より:

    ビビ様!
    思わず、笑顔になっちゃう話ですね。
    ビアンカのルーラと胸の話は、思わず笑っちゃいましたよ(笑)
    ストーリーでは、ほんとにサラっと流される場面ですが(初見でない人はスルーして船に乗る)
    ビビ様ワールドは、楽しませて頂けて嬉しいです!
    ビアンカが石像になっている時、パルプンテを教えてもらいに行きますが…ビアンカもまたパルプンテを教えて!…なんて言うんでしょうね(笑み)
    あ!そういえば、メッキーがルーラを覚えてしまいますがビアンカとの遣り取りあるんでしょうか(楽)
    次回は砂漠ですね楽しみです!

    • bibi より:

      ケアル 様

      毎度コメントをありがとうございます。
      ビアンカさんは姉さんでありながら、好奇心旺盛な子供のままなのです。
      彼女には今後の旅も楽しくしてもらうつもりです。砂漠でも頑張ってもらいましょう(笑
      パルプンテとメッキーのルーラ、それも一つの話になりそうですね。面白そう。
      ただ、メッキーにルーラを教えて! とお願いしても、「ッキー」だけでどこまで伝えられるかという問題がありますな。
      メッキーは教える気満々でも、なかなかに難しそうです(笑

  2. ピピン より:

    ビビさん

    前回の提案を早速お話に反映していただきありがとうございます( ̄▽ ̄)
    今回は特にリア充ぶりを周りに見せつけてて笑いました(笑)
    ここまでくると羨む気持ちも無くなるでしょうね。

    リュカだって知ってるでしょ!って…意味深ですね(笑)

    • bibi より:

      ピピン 様

      コメントをどうもありがとうございます。
      ご提案、反映できていたでしょうか……?^^; 中途半端になったような気が……。すみません。
      リア充している当人たちは、リア充していることに気がつかないものです。それがリア充。
      おかげで周りは大変です。巻き込まれないように離れて見ていた方が良いでしょうね(笑
      リュカはもう……知ってますからね、色々と(笑

      • ピピン より:

        ビビさん

        いえいえ、あまり長くてもお話が進まなくなっちゃうので丁度良かったんじゃないかと思いますよ(^o^)

        それでもグランバニア国民なら二人のイチャつきは大好物だと思います(笑)

        • bibi より:

          ピピン 様

          そう仰っていただけると助かります。あんまり話が長くなりすぎてもね、そうですよね、うんうん。
          グランバニアに着いたら、存分に国民に披露することになるでしょう。本人たちは意識しなくてもね(^◇^)

  3. はるか より:

    更新お疲れ様です!

    今回のお話は、リュカとビアンカがラブラブでいい感じでしたね~!こういうの、めっちゃいいです!!
    旅人の戦士とその子供と出会うシーンでは、リュカとパパスが旅をしていた頃を思い出して、懐かしくなり、また、ちょっと悲しくなりましたw

    これから、長い船旅が始まりますね!
    次回も楽しみにしてます!!

    • bibi より:

      はるか 様

      コメントをどうもありがとうございます。
      今のうちに幸せを存分に味わっておいてね、という私の親心です。この後の展開を考えるとね……(泣
      あの父子との会話はぜひ入れないとなと、今回登場してもらいました。ゲームをしていても、考えるものがあったので……。
      さて、これからの船旅、砂漠の旅と、どうなることやら。私にもまだ全く分かっておりません(笑
      どうしようかな。

  4. からあげ より:

    最近見始めましたが、とても面白いです!
    更新待ってます!

    • bibi より:

      からあげ 様

      コメントをどうもありがとうございます。
      なかなか更新しないサイトですが、気長にお待ちいただけましたら幸いです。
      ちょくちょく覗いてやってくださいませm(_ _)m

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

 




 
この記事を書いている人 - WRITER -

Copyright© LIKE A WIND , 2017 All Rights Reserved.