湖の底の城

 

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西側に広がる森林地帯を見ながら、リュカたちは見晴らしの良い草原の中に馬車を進めていた。森林地帯の手前には、その場所だけ切り取られたような砂漠がある。すぐ西に豊かな森があるというのに、なぜその場所だけ草木も生えない砂漠になってしまったのか、リュカはその景色を見ながら思わず首を傾げていた。風が吹き、砂漠の砂が舞い上がると、砂はまるで魔物のように森へと襲いかかる。しかし森の生命力は風に舞う砂に負けることはない。砂漠の向こう側に広がる森には活力があり、これからも森として生き続ける未来が想像できた。それだけに、何故森と隣接する場所が突然砂漠になってしまっているのか、リュカには不思議に思えた。
「ボクたちもこの辺りは全然知らないよねー。サンチョたちと旅に出ていた時も、ここには降りたことがないんだ」
「おばあちゃんの故郷がこの大陸にあるってこと、大分前から分かっていたんだけど、それよりもお父さんとお母さんを見つけるのが先だって、みんな思ってたの」
「じゃあもし僕がどこにいるかって手がかりがなければ、みんなで先にエルヘブンに行ってたかも知れないね」
「そうだね。でもやっぱり、お父さんと一緒に行く方がいいよ。だってお父さんはおばあちゃんの子供なんだもん」
「孫の私たちが行くよりも、子供のお父さんが行く方がエルヘブンの人達も受け入れてくれるかもって、サンチョたちが話してたの、聞いたことがあるわ」
「そうそう! ボクもそう思う。だっておばあちゃんはボクたちと会ったことないしさ。それよりもおばあちゃんと会ったことがあるお父さんが行った方が、ちゃんと話ができるだろうなって思ったよ」
ティミーとポピーが母であるビアンカとの思い出がないように、リュカにとって母マーサとの思い出は何も残っていない。リュカが生まれて間もなく、マーサは魔物に連れ去られてしまい、まだ言葉も話せない赤ん坊のリュカは母との思い出を共有することもなく、ただ想像の中にマーサという母親が存在しているだけだ。
しかし母であるマーサにとっては、リュカを生むまでのすべての記憶が思い出として胸の中に残っているはずだ。それはリュカがずっと隣で見てきたビアンカの様子を思い出せば容易に想像できた。子を身籠ったビアンカは常にお腹の中の新しい命を大事にし、守り続けてきた。大きくなっていく腹を優しく撫で、赤ん坊が元気に生まれてくるよう祈りを捧げていた。それまでの冒険でかなり無茶をしてきたことを忘れてしまったかのように穏やかに、ひたすら生まれ来る新たな命を大事にしていた。
生まれた双子を見つめるビアンカの目には、数か月前から育っていた母としての感情がありありと現れていた。一度に二人の子供を産んだのだから、その労苦たるやリュカの想像を遥かに超えるものだろうが、彼女が生まれたばかりのティミーとポピーを見つめる目は紛れもなく愛情に満ちた母親のものだった。無事に産声を上げて、生きている二人の姿を目にしたら、彼女はまるで地獄から天国に来たような心地だったのかも知れない。
そして二人の赤ん坊の姿を丸一日も目にしないまま、ビアンカは魔物に連れ去られてしまった。彼女の記憶の中で、ティミーもポピーもまだ産声を上げたばかりの赤ん坊のまま、成長せずに八年という長い月日を過ごしているはずだ。リュカの母マーサに至っては、赤ん坊のリュカを記憶に留めたまま、もう二十年以上が経ってしまっている。まだ見ぬ母だが、今のビアンカの状況を想像すれば、恐らく母も一日一日苦しみながら生きているのかも知れないとリュカには思えた。
「早く助けないとね、お母さんも、おばあちゃんも」
「大丈夫だよ、お父さん。任せておいて! ボク、勇者なんだからさ!」
馬車の中でティミーが天空の剣を振り回したようで、ポピーが「危ないっ、お兄ちゃん!」と叫んだ。その声にリュカも一瞬肝を冷やしたが、ティミーの扱う天空の剣はやはり剣そのものに命が宿っているのか、ポピーの髪に触れたにも拘わらず、髪の毛を切り落とすこともなかった。ティミーの心に反応して、天空の剣は攻撃するべき相手とそうでない相手を見分けているようで、リュカはその剣を使いこなすまだ八歳の息子を不思議に感じてしまう。
「もう! 本当にお兄ちゃんが勇者で世界は大丈夫なのかしら……」
「大丈夫に決まってるだろ! なんだよ、ポピー、またひがんでるんだろ」
「ひがんでなんかいないわよ! ただ世界が心配だって言ってるだけじゃない」
「それをひがんでるって言うんだよ」
「ひがんでなんかない!」
「いいや、ひがんでる!」
「あぁ、それなら僕が一番僻んでるかもなぁ」
双子の喧嘩が始まりかけた時に、リュカが意図せず呟いた一言に、ティミーもポピーも虚を突かれたように黙り込んだ。唐突に静かになった二人を見て、リュカは苦笑いしながら話し始める。
「君たちのおじいさんはずっと勇者を求めて旅をしていたんだ。それを僕が知ったのは大人になってからなんだけどさ、それで天空の剣を装備できなかった時、本当に悔しかった。どうして僕が勇者じゃないんだって。僕が勇者だったら、父さんを助けることができたのにって、ね」
「お父さん……」
「……ごめんなさい」
「え? いや、何も謝ることなんかないよ。むしろ僕が謝らなくちゃいけないんだ。ティミーが勇者なんてものじゃなければ、こんな複雑なことにならなかったんだもんね」
「あっ、お父さん! ボクのこと勇者って、ちゃんと認めてくれたんだね!?」
「えっ? い、いや、認めてないよ、うん、認めてない。もし旅をしている途中に、他に天空の剣が装備できる人がいたら、その人にお願いしようかな~なんて……」
「お父さん、本当にそんなこと、できるの? 誰か知らない人に、この世界を救って、おばあちゃんを助けてくださいってお願いすることになるのよ?」
「う、うん、そうなんだけどさ。その人が大人の人だったら、きっとお願いできると思う」
「じゃあもし、その子がティミーよりも小さい子供だったら? もしか弱い女の人だったら? もし歩くのも辛そうなおじいさんだったら? 世界を救ってくださいなんて、頼める?」
「……ポピーは想像力が豊かだなぁ。そんなこと、考えたこともなかったよ」
「でもないこととも言えないわ。だって、ティミーが勇者なんですもの」
「なんだよ! それ、どういう意味だよ!」
「色々な可能性があるってことよ」
「ポピーってホント、頭でっかちだよなぁ。そんなこと、考えたって仕方がないだろ。今あることだけ、考えればいいんだよ」
「そういうわけにも行かないじゃない。いろいろな可能性を考えるのだって大事な事だと思うわ」
「今考えたって、何にもならないだろ、そんなこと!」
「でも考えておくことも必要だって言ってるのよ!」
「……はいはい、兄妹喧嘩はおしまい。君たちは本当に仲がいいんだね」
本音をぶつけ合って言い合えるのは仲が良い証拠だと、リュカは二人の言い合いを微笑ましく眺めていた。双子という関係だからなのか、たとえ傷つけるようなことを口にしてしまったとしても、後々二人はそれを反省し、相手の心を思いやり、謝ることができる。傷つける言葉を口にした自分の心も、言われて傷ついた相手の心も、まるですべてを自分の心のように想像することができる。リュカには二人がそのような関係を知らずに築いているように見えた。
「どっちも大事なことだと思うよ、これからを考えるのも、今を考えるのも。どちらか一方だけじゃ、きっと上手く行かないことがあるんだと思う。上手にどちらも、考えて行こう、ね」
リュカは本心で二人にそう告げた。今を考えることも重要であり、これからのことを考えることも当然重要なことだ。本当はティミーもポピーもその事実を理解しているに違いない。彼らはまだ八歳という子供だが、八歳とは思えない様々な経験を既に積んでいる。六歳の頃から世界に旅立ち、既に二年ほどの旅の経験がある。その中で二人は多くのものを見て、聞いて、無意識にも学んでいるのだろう。時折喧嘩になってしまうのは、お互いに強い思いを伝えたい意識が強く働き、そのうちに本質を見失ってしまうだけなのだ。
リュカが穏やかに二人の意見を取り入れると、ティミーもポピーも互いに意地になっていたと気づいたようで、大人しく口を噤んでしまった。二人だけでは引っ込みがつかない場面でも、父であるリュカが優しくとりなすと、二人とも強い気持ちを抑えることができた。
「ティミーもポピーも本当に頭がいいんだね」
「頭がいいって……でも、ボク、あんまり勉強は好きじゃないよ」
「私もまだまだ呪文を使えないもの」
「勉強ができるとか、呪文がたくさん使えるなんていうのは、また別の話だよ。頭がいいっていうのは、そういうことじゃないんだ」
「じゃあ、どういうこと?」
二人が口を揃えて、同じ表情で問いかけてきたため、リュカは思わず二人の顔を見て吹き出しそうになってしまった。いくら喧嘩をしても、意見が食い違うことがあっても、彼らはまるで一心同体のような特別な関係だった。そしてその関係性を、本人たちも心の中で密かに認めている。
「しっかり自分の頭で考えて、それを伝えられるってことだよ。とても大事なことだと思うよ」
グランバニアの王子と王女として生まれた彼らは、常に人々から敬われ、賞賛の言葉を多く浴びる立場の人間だ。心地よいその環境にあってこそ、二人はその心地よい湯に浸かって満足することなく、常に前を向き、行方不明となった父母を捜す旅に出ることを夢見て、日々自身を磨いていた。王子と王女に生まれた彼らはいくらでもその立場に甘えることができたはずだ。たとえティミーが伝説の勇者としての使命を負っているとしても、まだ八歳の子供という状況を理由に、グランバニアの城に匿われていてもおかしなことはない。しかし彼は自らその使命を背負い、自ら行方不明の父と母を捜すのだと、強い意志を持って旅に出た。
妹であるポピーに至っては、勇者としての使命を負う兄を応援する立場としてグランバニアの城に残ることも十分可能だった。しかし彼女自身もまるで勇者の使命を負った者のように固い意志で、兄を助ける役目を自ら背負い、八歳という年齢ながらも危険な旅に出ている。
子供であるからこその好奇心が強いこともある。リュカとビアンカも幼少の頃、レヌール城のお化け退治に行くのだと、夜中にこっそり町を抜け出して小さな冒険に出たこともあった。あの冒険は大きな猫だったプックルを助けたいという思いもあったが、それと共にただただ広い世界を見たいというビアンカの強い好奇心があったからこそ、実現したものだったと今ならそう振り返ることができる。
かつてのビアンカの正義感と好奇心に、今のティミーとポピーの姿が重なる。その姿に、リュカはビアンカの中には確実に伝説の勇者の血が流れていたのだということを再認識させられた。
リュカの少し前を歩いていたプックルが、静かに耳を立てて辺りの様子を窺っていることにリュカは気づいた、馬車が進む道は一面草原地帯で、非常に見晴らしが良い。魔物が出没するとしたら、左手に広がる森林地帯からだろうかと、リュカも静かに集中し始めた。
森の中に感じる気配は明らかに人のものではない。森の中から魔物の群れがリュカたちの様子を窺っていることが感じられた。リュカたちはその気配に気づきながらも、ゆっくりと馬車を進めていく。もしやり過ごすことが出来れば、それが最善の方法だ。
「……お父さん、戦わないの?」
ティミーが馬車から小さな声でリュカに問いかける。ティミーもポピーも当然のように魔物の気配に気づいていたようだ。子供とは言え既に二年の旅の経験を積んでおり、その上彼らには元来備わる能力が高いのは間違いない。ティミーが天空の剣を手にして今にも馬車を飛び出しそうになっている様子を見て、リュカはのんびりと答える。
「ティミーは戦いたいのかい?」
「悪い魔物は少しでも減らした方がいいんだよね?」
「あそこにいる魔物は悪い魔物なのかな?」
「ボクたちを襲おうとしてるんだもん。きっと悪い魔物だよ」
ティミーの信念をリュカは間違っているとは思わない。しかし敵となる魔物に可能性を見出した結果、リュカは魔物の仲間たちを得ることができた。敵である魔物と戦わなければならない場面も多くあるが、初めから魔物の中の可能性を捨ててしまうことがリュカにはできなかった。
森の中から姿を現したのは、剣と盾を装備した竜人のような魔物だった。背中には大きく青い竜の翼を生やし、頭には兜を被り、大きな竜の尾を後ろにゆらゆらと揺らしている。リザードマンと呼ばれるその魔物が四体、リュカたちの様子をしげしげと眺めるように様子を見ている。人間だけの集団であれば、リザードマンらは迷いなく襲いかかっていたのかも知れないが、馬車を囲むのはリュカという人間の外は、皆魔物なのだ。馬車の前を行くのはキメラ、人間の隣を歩くのはキラーパンサー、馬車の後ろからのしのしと歩いてくるのはゴーレム。その異様な光景に、リザードマンたちは思わず顔を見合わせて、何事か言葉を交わしているようだった。
「お父さん、あの魔物さんたちとお話してみるの?」
今度はポピーがリュカに問いかける。その言葉に信じられないといった表情をするのは、隣にいるティミーだ。
「話をするって、どうやって? 相手は魔物だぞ」
「でも話してみて、もし私たちを襲ってこなければそれでいいじゃない」
「襲ってこないとは限らないだろ」
「でも襲ってこないかも知れないわよ」
「そんなこと言ってたら、やられちゃうよ!」
「でも全部の魔物さんが悪いとは限らない!」
「……すぐに喧嘩になるんだなぁ、二人は。まあまあ、落ち着いて」
二人を宥めながらも、リュカは四体のリザードマンを注意深く見つめていた。四体の内、二体のリザードマンが馬車の中にいる二人の人間の子供を見るや、にやりと顔を歪めてじりじりと馬車へと近づいてきたので、リュカはその気配に容赦なく破邪の剣を構えた。
「お父さん?」
「二人は絶対に外に出ちゃダメだよ。ゴレムス、二人の傍にいてくれ」
リュカの命令のような強い言葉に、ゴレムスは静かに馬車にぴたりと張り付いた。リュカはその様子を確認すると、プックルとメッキーと共に、森から素早く駆けてくるリザードマン四体と対峙した。ティミーが馬車から飛び出そうとしたが、ゴレムスの大きな手に阻まれ、戦いに参加することはできない。
「ボクも戦う! どうして邪魔するんだよ、ゴレムス!」
ティミーの悔しがる声が後ろに聞こえたが、リュカは振り向かなかった。たとえ伝説の勇者で、天空の剣と盾を装備していても、なるべく戦いに参加させるべきではないとリュカは思っていた。この旅の途中、船の上で見事キラーシェルを倒したティミーの姿を見たリュカだが、それだけでティミーを戦闘要員として出すわけには行かなかった。
子供を人質にとる悪魔の顔を思い出す。生死をかけた戦いには、卑怯な手段を堂々と使う魔物も存在することを、リュカは身をもって知っている。もし子供たちを人質に取られたらと思うと、リュカはにやつく笑みを浮かべるリザードマンとの戦いに子供たちを参加させる気には到底ならなかった。
リザードマンは翼の力も使って、まるで疾風のようにリュカたちに迫ってくる。リュカは破邪の剣を右手に持ったまま、すかさずバギマの呪文を放ち、リザードマンの足を瞬時に止める。その隙にプックルがリザードマン一体に飛びかかる。リュカも駆ける勢いのまま、正面のリザードマンに切りかかった。真空の刃で傷を負った腕や足の痛みもそのままに、リザードマンは手にした盾で攻撃を避け、リュカもプックルも弾き返してしまった。残る二体はリュカとプックルの後ろに回り込み、リザードマン四体により包囲された形となった。
正面から剣で切りかかってきたリザードマンの攻撃を避けるリュカに、後ろから別のリザードマンが襲いかかる。しかし宙から飛び込んできたメッキーが鋭い嘴での攻撃を加え、敵を地面に倒した。倒れたリザードマンに、まるで拳を叩きつけるような格好でプックルが飛んでのしかかると、一体のリザードマンはそのまま動かなくなってしまった。
リュカが呪文の構えをした瞬間、プックルとメッキーはすかさずその場を離れる。バギマの呪文で起こる無数の真空の刃が、再びリザードマンに襲いかかる。リザードマンには回復の術がないことを、リュカもプックルもメッキーも気づいていた。固い竜のうろこが真空の刃に傷つけられようとも、傷をこしらえたままリュカたちに攻撃を仕掛けてくるのだ。初めよりも動きが鈍くなったリザードマンの攻撃を、リュカとプックルは巧みに避け、敵に囲まれていた中心部から抜け出した。
しかしその際、リュカはリザードマンの素早い剣を受け、右腕に深い切り傷を負った。その衝撃に思わず剣を取り落としそうになるが、歯を食いしばり、すぐに自身でベホイミの呪文を唱えて傷口を塞ぐ。リザードマンが苦々し気に顔を歪める。回復呪文を唱える人間を始末しようと、リザードマン三体が一斉にリュカに剣を向けた。
敵の目がリュカに集まった瞬間、プックルが地を揺るがすような大きな雄たけびを上げた。西に広がる森が、プックルの雄たけびに震え、風も吹いていないのに木々がざわついた。リュカに剣を向けていた二体のリザードマンが突然の雄たけびに立ち尽くし、思わず剣も盾も取り落とした。メッキーがリザードマン一体の首を鋭い嘴で突き、リュカはもう一体の右足に切りつけると、二体のリザードマンはもう地面に倒れたまま起き上がれなくなっていた。
残る一体のリザードマンは完全に形勢が不利になったが、ゴーレムに守られている二人の子供を手に入れられないのが惜しいのか、一体だけでもリュカたちに剣を向けてくる。地面に倒れる仲間のリザードマンが、受けた傷の痛みに苦しみながらも、ただ一体残っている仲間に呪文をかけた。呪文を受けたリザードマンの胸当てと盾が仄かに光を帯び、竜人の身体全体にも光のベールを被ったように見えた。
怖いものがなくなったように、リザードマンは捨て身のようながむしゃらさでリュカに襲いかかってきた。剣がリュカのマントをかすめ、代わりにリュカが向けた破邪の剣がリザードマンの左足に切りかかる。しかしまるでリザードマンの身体自体が一つの鎧になったかのように固く、破邪の剣ではかすり傷程度しかつけられなかった。
「お父さん! スクルトだよ! ボク、知ってるよ!」
馬車の中から大きなティミーの声が響いた。リュカ自身も、リザードマンの唱えた呪文がスクルトであることに気づいていた。恐らくティミーも、過去の旅で何度もスラりんの唱える同じ呪文を見ているのだろう。遠くからでもその呪文の正体に気づくティミーの能力に、リュカは内心舌を巻いていた。
プックルも敵に飛びかかるが、やはり大した傷を負わせることができない。代わりに飛びかかった際に受けた剣で深手を負い、メッキーに即座にベホマを唱えてもらっていた。リュカが剣を突き出すが、リザードマンはそれをひょいと軽く避け、次の瞬間、敵は馬車に向かって走り出した。
メッキーが猛然と飛んで追いかける。しかしリザードマンも翼を使い、メッキーに負けない速さで馬車に迫る。敵が狙うのは二人の人間の子供たちだ。竜人の魔物にとっては格好の食糧になるのだろう。リュカはすぐさま呪文の体制に入り、唱えようとしたところで、リザードマンは馬車に飛びかかろうとした。
鈍く重い音が響いた。馬車と双子を守っていたゴレムスが、まるで鉄槌のような拳の一撃をリザードマンに食らわせた。スクルトの影響で守備力を上げていたリザードマンだが、重々しいゴーレムの一撃で頭に被る兜が割られ、そのまま地面に叩きつけられた。ゴレムスは容赦がなかった。地面に叩きつけたリザードマンを間髪入れずに踏みつけ、虫の息になった敵の腕をつかむと、そのまま勢いをつけて遠くへ投げてしまったのだ。草地の上に体を静めたリザードマンは悔し気に顔を歪めていたが、もう起き上がる気力は残されていなかった。
「ゴレムス、ありがとう」
馬車の中で身を潜めていたポピーが小さく礼を述べると、ゴレムスはポピーを振り返り、小さく頷いた。ティミーは久々に見るゴレムスの静かな力強さに、口をあんぐりと開けたままゴレムスを見つめるだけだった。
「ゴレムス、ありがとう。助かったよ」
馬車へと戻ってきたリュカがポピーと同じように礼を言うと、ゴレムスは再び小さく頷いた。そして右手をリュカの前に差し出し、静かに待つ。リュカも勝手知ったる様子でゴレムスの手に自分の手を重ねると、彼との音のない意志の疎通を図った。ゴレムスの温かな気持ちを予想していたリュカだったが、彼の手から感じたのはどことなく厳しく叱るような気持ちだった。
マーサの孫たちを確実に守れと、リュカはゴレムスにそう言われたような気がした。ゴレムスはリュカの母であるマーサがグランバニアに連れてきた魔物だ。しかもマーサが連れてきた魔物の中でも最も付き合いの長い魔物だと聞いている。子供であるリュカを大事に思うのと同じく、孫であるティミーとポピーを大事に思うマーサの心を代弁しているようで、リュカは素直に彼の静かな叱咤を受け入れた。
「……これからはもっと気をつける。本当にごめん」
「どうしたの、お父さん?」
「ゴレムスに叱られてるみたい~」
ポピーが心配し、ティミーが茶化す中、リュカは二人に無事だった二人を見て改めて胸を撫でおろした。ゴレムスがリュカを叱るのも無理はないと思った。ここにゴレムスがいなければ、二人はリザードマンに襲われていたかも知れないのだ。敵となる魔物の様子を更に注意深く見る必要があるのだと、リュカは内心深く反省した。
「ッキッキ~」
リザードマンを倒した後、空高く上がって辺りの風景を見ていたメッキーが、朗らかな調子でリュカに呼びかけた。急降下してきたメッキーにリュカが「どうしたの?」と問いかけると、メッキーは明るい表情で前方に広がる草原を翼で指し示す。リュカたちにはただ草原地帯が広がる景色にしか見えないが、この先には違った景色が広がっていることをメッキーは教えていた。
リュカは地図を広げて確認する。この辺りは既に地図上には何も記されておらず、前人未到の地と呼べる地域だった。西に広がる森林地帯もその先に終わりが見え、右手に広がっていた山々も先へ行くに従いなだらかな丘のような景色に変わっている。そしてメッキーの声が明るいことに、リュカはこの先にもしかしたらエルヘブンがあるのかも知れないと、自身も心を弾ませて再び馬車を進め始めた。



「ここは……海なのかな?」
馬車で進んだ先には、まるで海にも見える広い水場が広がっていた。船を下りて、既に十日ほどの日数が経っていた。これまで馬車を進めていた中、草原や砂漠、森林地帯の景色を見ており、近くに小川が流れることはあったが、これほど広大な水の景色を見るのは久しぶりだった。
「でもお父さん、地図を見るとここから北にも陸地が広がっているわ。だとすると、海ではないんじゃないかな」
「とにかく近くに行ってみようよ! 海だったら水がしょっぱいはずだよ!」
リュカとポピーが地図を見ながら首を傾げている横で、ティミーは馬車を飛び降りて、自分の手でその場所を確かめた方が早いと言わんばかりに広がる水の景色に向かって走り出してしまった。リュカが慌てて追いかけようとする中、プックルがまるでティミーの保護者のように小走りについていくのを見て、リュカはティミーのお守りをプックルに任せることにした。
「ねぇ、お父さん」
「うん?」
「ティミーが勇者って本当なのかしら? 私、今も信じられないんだけど……」
「うーん、お父さんは初めから信じないようにしてるけどね」
リュカが苦笑しながらそう答えると、ポピーは嬉しそうに明るく笑った。
「そうだったわね。お父さんはティミーを勇者って認めてないんだった」
「そうだよ。忘れてた?」
「うん、忘れてた」
二人の会話を聞いていたメッキーが楽しそうに「ッキッキッ!」と笑った。ゴレムスも無言ながらも穏やかに二人を見つめている。止めることなく馬車を進めている中、前方でバシャバシャと激しい水の音が響いた。見れば水嫌いだったはずのプックルが自ら水の中に入り、まるで汚れた身体を洗い流すかのように水の中で身体を激しく揺らしている。ティミーもさっさと靴を脱ぎ棄て、後ろで結んでいるマントの先を右肩に担ぐようにして水の中に入っていた。
「ひゃーっ、つめたいっ! でも気持ちいい! プックル、ボクが洗ってやるよ!」
激しく水しぶきを上げていたプックルに近づき、ティミーがプックルにのしかかる。ティミーとじゃれ合うように水に入っているプックルを見ながら、リュカはプックルが水を怖がらなくなった理由が分かったような気がした。
「うわっ!」
ティミーが突然、水の中に姿を消した。リュカの顔から笑みが消えた。プックルが傍についているというのに、リュカはその景色が目の前から消え去り、水の中に消えたティミーだけを追って駆け出した。
リュカが水の中に飛び込もうとした瞬間、ティミーが水の中から勢いよく顔を出した。水に濡れても元気なティミーの癖毛は、太陽の光を受けていつもよりきらきらと輝いて見えた。
「お父さん!」
「どうしたんだ! 大丈夫か、ティミー!」
「水の中に大きなお城が沈んでる!」
リュカの心配などよそに、ティミーの表情はとびきり明るい。新しい世界を見つけたというような、心躍る水の中の景色を見たティミーは、身に着けている旅装のことなど忘れて再び水の中に潜ろうとする。水をふんだんに吸ったマントを身に着けたまま水の中に潜るのは危険だと、リュカは息子を止めるために自身も水の中に入って行った。
「ティミー、待ちなさい! 水の中にも危険はある。一人で行こうとするな」
リュカは厳しくも、なるべく落ち着いた声でティミーにそう言って聞かせた。ティミーは今すぐにでももう一度水の中に潜りたい様子だったが、リュカの落ち着いた注意の声に、一度自ら上がると、すっかり重くなってしまったずぶ濡れのマントを剥ぎ取るように脱いで地面に投げた。
「お父さんも見てみてよ! あそこ、頑張れば行けるんじゃないかなぁ。もしかしたら、あそこがエルヘブンなのかも知れないよ!」
「エルヘブンが水の中にあるのかい? ゴレムスもサーラさんもそんなことは言ってなかったと思うけど……」
リュカはそう言いながらも、ティミーが見たという水の中の城というものに興味津々だった。水に沈む城などあるわけがないと思いながらも、ティミーが嘘をつくはずもないと思い、とにかく自分の目で確かめるのが一番だと、自身も色褪せた濃紫色のマントを近くの草地に投げ置いて水の中に入って行った。
「ねぇ、お父さん、私も行きたい!」
後ろを振り向くと、ポピーも牡丹色のマントを取って、リュカの後に続こうとしていた。再びバシャバシャと水しぶきをあげて水の中に入って行くティミーが、煙たそうな顔をして妹を振り返る。
「ポピーは泳ぐの苦手だろ。馬車で待ってろって」
「だ、大丈夫だもん。だってエルヘブンかも知れないんだったら、行くしかないんでしょ……?」
冷たい水の中に足を踏み入れたポピーは、その冷たさに思わず息を呑んでいた。決して水が好きではないポピーの様子に、リュカは娘の傍によって屈んで目線を合わせると、穏やかな声で伝える。
「ポピー、まだティミーの言う場所がエルヘブンかどうかは分からないよ。僕とプックルとティミーでちょっとだけ様子を見てくるから、それで行けそうなところだったら、みんなで行く方法を考えよう。それでいいかな?」
「どうしてお兄ちゃんだけ行けるの? 私は行っちゃダメ?」
「ポピーは泳ぐのが苦手なの?」
置いて行かれまいとするポピーの必死な様子に、リュカは少し話を逸らすように彼女に問いかけた。ポピーは難しい顔をして黙り込み、一度だけ静かに小さく頷いた。
「あんまり得意じゃない……けど、少しは泳げるのよ」
「そっか。じゃあ少しだけ、僕と行こう。ただ危ないと思ったらすぐにここに戻るからね。いい?」
「……うん! ありがとう、お父さん!」
水の中にどのような危険が潜むか分からない状況で、ポピーへの対応が果たして合っているのか、リュカには自信がなかった。しかし双子のティミーだけを連れて行って、ポピーをこの場に置いていくことに真っ当な理由が見当たらず、今はこうすることが最善だと考えた。
リュカは馬車をメッキーとゴレムスに任せ、ポピーと共に水の中を進んでいった。外でも何かがあればすぐに知らせるよう留守を任せる彼らに頼み、徐々に深くなる水の中をゆっくりと進んでいく。
「ポピーも来るの? 大丈夫かなぁ」
明らかに表情を曇らせるティミーに、ポピーは噛みつくように言い返す。
「ティミーだって無理して行っちゃダメなのよ。誰かに何かがあったら、みんなに迷惑がかかるんだから」
「ボクは平気だよ。よくサンチョにも魚みたいに泳げるってほめられてたもん」
「でも調子に乗ってずっと泳いでて、疲れておぼれそうになったことだってあるじゃない」
「そんなのもっと小さいときのことだよ。今はそんな失敗しないもんね~」
「あの時からそんなに成長してないように見えるけどね~」
「……ええっと……喧嘩はしないようにね」
放っておくと喧嘩してしまいそうな雰囲気に、リュカは困ったような顔をしながら二人に言葉をかけた。ティミーもポピーもリュカの言葉で互いに口を噤み、それ以上相手を責めるような言葉を発しなかった。ティミーはプックルの隣に立ち、大きく息を吸い込むと、一気に水の中に潜って行った。プックルもほぼ同時に、水の中へと姿を消した。
「ポピー、本当に大丈夫かい? 戻って待っていても大丈夫だよ」
「ううん、お父さんと一緒なら、平気。私も水の中のお城、見てみたいの」
「そっか。じゃあ大きく息を吸ってから、潜るよ。いち、にの、さん!」
リュカが掛け声をかけ、ポピーも落ち着いた様子で大きく息を吸い込み、思い切ったように水の中に飛び込んだ。
水の中には別世界が広がっていた。まるで目の前に水があることを忘れるほどに透明で、はるか遠くの景色まで見渡すことができた。ここが海ではないことは水が塩辛くないことで分かった。まるで海のように広い湖なのだろう。ここまで澄み切った水の中に入ったことのないリュカは、湖の上から差し込む光で幻想的な雰囲気を醸している湖の中の景色に、思わず口を開けてしまった。漏れる息が泡となり、上に上がって行くのを見て、慌てて口を閉じた。
ティミーは本当に泳ぎが達者のようで、子供とは思えない勢いで下へと潜っていく。プックルは少し遅れて、ティミーの後をついていく。リュカもポピーの様子を気にしつつも、自身の中にわき起こる好奇心と共に彼らの後を泳いで行った。ティミーが水の中で振り向き、下を指差す。リュカがそこに目を向けると、透き通る水の中、はるか下に、巨大な建造物があった。もっと近ければかえってそれが城だとは分からなかっただろう。それほど巨大な一つの城が、深い湖の底に沈んでいた。
手を繋いでいたポピーが突然、リュカの手を振り払った。振り払われた衝撃に驚いたリュカだが、慌てて上に上がっていくポピーの姿を見て、娘の後をすぐに追いかけた。水から顔を出したポピーは苦しそうに呼吸を繰り返す。息を止めているのが限界だったようで、上手く水の上に顔を出せない瞬間に水を飲み、咳き込んだりもした。リュカはすぐにポピーの身体を支え、しっかりと呼吸ができるようにしてやった。
「ご、ごめんなさい。お父さん、もっと見たかったでしょ?」
「見るのはもう一回潜ればいいんだから、大丈夫だよ。そんなの気にすることないよ」
近くで大きな飛沫が上がり、プックルの大きな頭が水の中から飛び出した。プックルも決して水の中を潜るのが得意ではなく、必死に空気を求めるように呼吸をしている。その後、ようやくティミーが顔を出し、余裕のある表情でリュカに笑顔を見せる。
「お父さん、あったでしょ、水のお城! あそこってどうやって行ったらいいのかな。頑張って息を止めて行けば、何とか着くかなぁ」
ティミーは目を輝かせながら、水に負けない癖の強い髪をあちこち跳ねさせたまま再び水の中に入ろうかと考える。隣にいたプックルは疲れたように泳いで行き、馬車が待つところへと戻って行くと、身体を激しく震わせて水を払い、一度くしゃみをしてゴレムスのところまで歩いて行った。幸い、馬車の近くに魔物はいないようで、メッキーもゴレムスものんびり過ごしていた。プックルは暖かい日差しの下で、冷えた身体を温めるように草地の上に寝そべった。
「ティミー、あそこまで泳いで行くのは人間にはできないよ。とても息が続かない」
「えー? でもやってみないと分からないよ。ボク、ちょっとやってみる!」
「あ! ちょっと、待て、ティミー!」
リュカが止めるのも聞かず、ティミーは大きく息を吸い込むと、再び水の中に姿を消してしまった。一度水の中に潜って消耗した状態で再び潜っても、恐らくそれほど息は続かない。
「ポピー、泳いで馬車の所まで戻れるかい?」
「うん、それくらいなら大丈夫。早くお兄ちゃんを止めて、お父さん」
リュカはポピーが泳いで行くのを少し見届けた後、ティミーを追って水の中に勢いよく潜った。ティミーは泳ぎを自慢するだけのことはあるほど水の中を潜るのも上手く、リュカが予想していたよりも深くに潜っていた。しかし水の上に戻る時間と体力を考えてはおらず、ただ水の中の城にどれだけ近づけるかを試しているのがありありと分かった。好奇心旺盛な子供にとって、水の中に沈む城などと言うものは、まるで目の前に美味しいケーキを差し出されているようなものなのだろう。リュカも決して泳ぎが得意な方ではないが、ティミーの苦しむ姿など見たくはないため、必死になって息子を追いかけて深く深く潜って行った。
水の中の城との距離はまるで縮まらないように見えた。魚が水中を移動するのとは訳が違い、所詮はリュカもティミーも地上で生きている人間だ。いくら早く泳いでいるとは言え、魚の泳ぐスピードには到底及ばない。リュカはどうにかティミーに追いつくと、その手を強くつかんだ。ティミーが驚いたようにリュカを振り向き、ガボガボッと泡を数個吐き出すと、慌てて手で口を押えた。リュカが怒ったような顔つきで上を指差すと、ティミーも手で口を押えたまま何度も頷き、リュカに手を引かれる状態で上へと上がって行った。
リュカとティミーが同時に水の中から顔を出すと、「ッキッキー!」とメッキーの呼ぶ声が聞こえた。その声の緊張感に、リュカはすぐさま馬車へと目を向ける。見ればパトリシアと馬車を守るようにして、ゴレムスとプックルが魔物の群れと対峙していた。リュカとティミーが水の中から出てくるのを確認すると、メッキーはすぐさま馬車の方へと飛んで戻って行った。
「ティミー、水のお城については後で話そう」
「うん! ポピー! 大丈夫かー! 今行くからなー!」
疲れたように呼吸をするティミーだが、ポピーがまだマントもブーツも履かないまま戦いに参戦しているのを見て、慌てて馬車の方へと泳いで戻って行った。
馬車の周りで対峙していた魔物は、先ほども戦ったばかりのリザードマンだった。この辺りには多く棲息しているのか、馬車を取り囲むように四体のリザードマンがプックルやゴレムスに襲いかかっている。急いで戻ったメッキーも、空中から奇襲を仕掛けるように急降下し、リザードマンとの戦いに参戦している。リュカとティミーは全身ずぶ濡れのまま馬車に駆け戻り、マントも羽織らないままそれぞれの剣だけを手にして戦いに加わった。
「ティミーは馬車の中に入ってろ!」
リュカが叫んで注意するが、ティミーは既に天空の剣を右手に持ってリザードマンに向かって駆け出していた。左手にはまるでお守りのように天空の盾を装備し、勢いよく振り下ろされるリザードマンの剣を盾の神がかった力も借りて弾き返していた。リュカはティミーを下がらせようと彼の傍へ行こうとしたが、敵の攻撃により阻まれ、止む無く一体のリザードマンと対峙することとなった。
敵の剣に切りつけられたプックルにはすぐさまメッキーが駆けつけ、回復呪文を施す。リザードマンも空を飛べるため、メッキーに襲いかかり深手を負わせたが、地面に落ちたメッキーにリュカがすぐに回復呪文を唱える。ゴレムスは敵の剣を受けながらも、一部崩れる自身の腕には目もくれず、近づいてきた敵に強烈な拳を食らわせる。ティミーがリザードマンに無謀な攻撃を仕掛けようとすれば、その直前にプックルが素早く敵の目を引き、ティミーの攻撃の補助をする。天空の剣の一撃はリザードマンの兜も胸当ても砕いてしまうほど強烈だった。またリザードマンらもまさか人間の子供がこれほどの力を持っているとは思わず、余裕のある態度でティミーを相手にするため、それに憤慨するようにティミーは敵に剣を振るっているようにも見えた。
二体を倒したところで、残った二体が様子を窺うように少し後退した。残る二体も既にかなりの傷を負っており、回復の術を持たないためにこれ以上の戦いに躊躇しているようだった。その状況を見て、ポピーが後方から静かに呪文を唱えた。リュカたちには見えない幻影が敵たちを包み、二体のリザードマンは幻影として現れる人間の敵と真剣に戦い始めた。
「今のうちに逃げよう」
「倒さないの?」
信じられないと言った調子のティミーの声に、リュカは諭すように言葉をかける。
「僕たちは今、旅に出てるんだ。無駄に戦って体力を消耗するのは良くない」
この旅の指揮者がリュカであることを、プックルもメッキーもゴレムスも理解している。そしてリュカの真っ当な意見に反対することもない。ティミーは明らかに不満そうに口を尖らせていたが、リュカがティミーの身体を抱え上げて馬車に乗せると、幻影と戦っているリザードマンを後ろに見ながら、西に広がる森の中へと避難して行った。

Comment

  1. ケアル より:

    bibi様。

    前回、書き忘れてました。
    リュカ、破邪の剣になったんですね。
    グランバニアには、微睡みの剣(まどろみのけん)があり、こちらの方が強く、ラリホーの効果もありますのに…。
    たしかにbibiワールドで破邪の剣で攻撃したら属性で炎が上がる描写も楽しいです。
    しかし、ギラの効果だし…ラリホーの効果と剣の攻撃力なら、微睡みではないでしょうか?
    描写の関係でしょうか?
    剣の選択理由が気になります!
    教えてくれますか?。

    ポピーの口調が、ビアンカにそっくりで…ニヤニヤしちゃいますねぇ(笑み)。
    ビアンカとポピーが揃ったらもう…bibi様、キャラクターの調整と動かし方に苦労しそうですね。

    ティミーとポピーを戦闘に参加させたくないリュカの気持ち、よぉく分かりますが、リュカが子供のころ、パパスを困らすような感じで戦闘に参加していたから、あまり子供たちを怒れないはず。
    スライム3匹に殺されそうになったんですよリュカ。
    もう少し、ティミーとポピーを信用信頼してあげてもいいのになぁ…(苦笑)。
    それにしても、ティミーの素質と天空武具は、目を見張る戦闘力ですな。
    これからも、ティミーとポピーのレベルアップのためにも、戦いに参加して貰いたいです!。

    ゲーム本編では、ここに来る必要はbibi様の言うとおり必要ありませんが、ここはbibi様の今後の描写のためにも、フラグとして入れておいた方が、ぜったいに良さそうですね。
    小説が書きやすくなりそうですね?。

    天空城に潜って行こうとするティミーの気持ちは、共感しますね(今はまだ天空城とは分かってないですが)。
    だって、城があるんですもんね。
    ポピーが泳ぎが、にがてだなんて、思っていませんでした。
    双子だけど、やっぱり違いがあるものですね。

    双子の遣り取りbibi様、楽しい描写になっていますよ。
    今後も双子漫才お願いします。

    bibi様、次回は、いよいよ海の洞窟ですか?
    ルラフェンのパルプンテは何時ごろ行きますか?
    ラインハットのコリンズとポピーとティミーの遣り取りと風の帽子は何時ごろ行きますか?
    次回も楽しみであります!。

    • bibi より:

      ケアル 様

      まどろみの剣って、形状がぐるぐるしてるんですよね。持ち運ぶのにちょっとなぁと思って、今回は出しませんでした。まあ、あれです、あんまりかっこよくない、それだけです(爆)
      リュカの中では、これだけ子供たちの強さを見ても、まだ赤ん坊の時のままの双子なんだと思います。大きく成長して、普通の子供にくらべたらかなり強いんだけど、赤ん坊のころからずっと成長を見守ってきたわけではないので、子供たちを認める心が追いつかない、そんな感じでしょうか。
      でもそんな親の心配をよそに、子供たちはぐんぐん成長するので、そのうちリュカも心を決められると思います。多分……。
      湖の中の城は、実際にゲームをしていて、私が本気でびっくりして、湖の周りを逐一調べたりしたので、今回話に出させてもらいました。真ん中の山が怪しいけど、その周りに何かあるのかしらと調べまくった記憶があります(笑)
      ビアンカがいない分、双子には存分に喋ってもらって場を盛り上げてもらいたいと思います。私も書いていて楽しいところです。
      ルラフェンやラインハットは、そのうち追い追い行きたいと思います^^

  2. ピピン より:

    bibiさん

    今回のティミー…、力を持った腕白小僧の面倒を見るのは大変ですね(笑)
    男の子という物は、恐らくいつの時代もヒーローに憧れるもので、そういう力をもって生まれてきたティミーが暴走気味になるのも仕方ないのかもしれませんね( ´∀` 😉

    その手綱を握るリュカがどう導いていくのか楽しみでもあります。

    • bibi より:

      ピピン 様

      いつもコメントをどうもありがとうございます。
      ティミーは使命を背負いながらも、その使命を重荷に感じるわけではなく、純粋に力に変えていく強さを持っているという感じなので、色々なことを楽しんでしまいます。それはそれで、親としては危なっかしくて見てられない、というリュカの心情を書くのが楽しいです(笑) そこら辺が今は一番わかる気がします。
      でも男親ならもう少し息子に冒険させるっていうこともあるのかなとも思います。男同士でしか分からないところもありそうですもんね。

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