グランバニア新年祭

 

この記事を書いている人 - WRITER -

グランバニアの城下町に楽器の音が響き渡る。一斉に吹き鳴らされた楽器の音に最も驚いたのが、国王であるリュカだった。教会前の階段の上に立ち、両側を六人の奏者が階段の下について、今は国王私室に置いてある妖精のホルンに似た楽器を勢いよく吹き鳴らす。その音が止むと、教会前に集まる国民たちから一斉に拍手があった。
通年であればここでオジロンから国民への言葉があるはずだが、今オジロンはにこやかな笑みを浮かべたままサンチョの隣に並び、リュカの後ろに立っている。その隣には教会の主である神父も恭しく並んでいる。リュカは背中に彼らの視線を感じつつ、横からは子供たちの視線を嫌でも感じつつ、震える足を心の中で鼓舞しながら一歩前に進み出た。
新年の挨拶は国王が行うべき行事の一つで、リュカは国王として初めてその役目を果たすこととなった。オジロンに通年の挨拶の内容を教えてもらい、それをそのまま踏襲しようかと考えていたところをオジロンにもサンチョにも悟られ、拒まれた。リュカ自身の言葉で語ることに意味があるのだと、国民は国王自身の言葉を待ち望んでいるのだと、リュカには過度にも聞こえる期待を隠すことなく伝え、リュカは止むなく自身で新年の挨拶の言葉を考えなくてはならなくなった。
年が明けるまであと三日となった時に、リュカは内密に一人、ラインハットへ文字通り飛んで行った。友のヘンリーならばそれらしい挨拶の言葉を持っているだろうと相談をしに行ったのだった。笑われることは承知の上で友に相談内容を告げれば、案の定笑われたが、デールが毎年行っている新年の言葉が書かれた紙を数枚に渡り見せてくれた。それを見て、リュカはとてもデールの真似はできないと即座に諦めた。同じ文面を口にすれば少なくとも十回は舌を噛むだろうと思った。リュカの愕然とした表情を見てにやにやと笑っていたヘンリーだったが、リュカを励ます言葉には優しさが感じられた。変にカッコつけてヘマをやるよりはお前らしい言葉で臨めよと、いつの間にか国王として飾り立てた言葉が必要だと思い込んでいた自身の間違いに気づいた。
変に強張っていた肩の力を抜き、リュカは国王としての言葉を考えた。難しいことはできないのだから、国民に寄り添った簡単な言葉で挨拶をしようと決めた。方針を決めてしまえば、言葉は淀みなく出てきた。自分が国民に伝えたいことは思ったよりもたくさんあったのだと気づかされた。
教会の階段の上に立ち、見下ろす場所にはグランバニア国民がひしめき合っている。しんと静まり返った教会はいつもと変わらないが、これほどの聴衆を目の前にしての静寂に、リュカは国王としてこの場に立っている現実に直面できる。緊張する心を押さえつけ、少々無理にでも笑顔を作れば、用意していた言葉を口にすることができた。
自分が国王として初めてこの場に立ち、新年を迎えることができたことにまずは感謝をする。国は民がいなければ成り立たない。皆が国の中で日々の営みを行うことで国を支え、元気に暮らしていることで国も元気になり、笑えることで国は明るくなる。八年の長い間を不在にしたことを改めて詫びると同時に、これからも王妃と前王妃の捜索を続ける意志は変わらないと伝える。度々城を不在にすることはあるが、決してこの国を放り出したりはしない、必ず戻り皆の平穏を確かめ、国王としてあるべき姿に近づけるよう努力すると誓う。
今、世界が安定している状態とは言い難い状況で、魔物の数も増えてきていると知らされていると同時に、旅の中ではその現実を実感することもある。グランバニアだけではなく世界の平穏のためにもこれからは王子の力が必要になる。
「ティミー王子は世界を救うと言われる勇者としての生を受けました」
リュカの言葉に最も驚いていたのはティミー自身だった。今までリュカがティミーのことを面と向かって勇者と認めたことは一度もなかった。ティミーはいつでも勇者としての覚悟や自信を持ち、そうあるように努めていたが、父はいつもそんなティミーを良く思っていなかった。少なくともティミーはそう感じていた。ずっと認めてもらいたかった父からの言葉が、まさか新年の挨拶の中で、国民の前で誓いを立てるかのように大々的に表されたことに、ティミーはまるでつま先から頭の先まで電気が走るような衝撃を感じた。
世界が勇者を必要としている限り、自分は一国の国王としても、子供の父親としても勇者を育てなければならない義務を負っている。今までも国の皆には協力してもらっているが、これからもティミーを一緒に育てて欲しい。そして勇者を共に支えるべく努力を重ねるポピー王女の心にも寄り添って欲しいと、リュカは一国の王子王女の成長をこれからも一緒に見守って欲しいのだと国民の理解を求めた。
リュカが話している間、教会前に集まる民衆はひと時も国王の顔から目を話すことなく話に聞き入った。リュカの後ろに立つオジロンは満足そうに何度も頷き、サンチョに至っては感動で鼻をすすっていた。
リュカの声は国王の威厳を感じさせるものではなく、柔らかく慈しむ心が滲み出るようなものだった。中にはリュカの穏やかな表情を見ながら、「マーサ様……」と呟き涙する者もいた。魔物をも魅了するリュカの声も顔も目も、そのほとんどが母マーサから譲り受けたものだ。リュカを見ながら未だ戻らぬマーサを思い出す国民は少なくなかった。
リュカの挨拶が終わると、教会前の民衆から割れんばかりの拍手が起こった。感動的な演劇でも見た後の様に、拍手はなかなか鳴り止まなかった。リュカは自分を見上げる人々の表情一つ一つを見て、話す言葉は確かに伝わったのだと実感を得て、一礼をする。緊張から解放された緩みからか思わず目頭を熱くしたが、ここで涙を見せてしまっては締まらないと喉を上下させて堪えた。
新年祭初日、城下町は既に祭りの賑々しい雰囲気に包まれていた。噴水広場を中心に様々な屋台が立ち並び、楽隊が盛り上がるような明るい曲を演奏し、その周りで人々は弾み踊る。その光景にリュカは思わず自身の戴冠式の様子を思い出し、祭りの楽しい雰囲気から一転、奈落の底に突き落とされるような感覚に陥る。
「お父さん、どうしたの?」
下から顔を覗き込まれ、リュカは途端に破顔してポピーを安心させる。
「何でもないよ。ところで魔物のみんなはどこにいるのかな」
「あっちで遊んでるみたいだよ、ほら!」
ティミーが指差すのは噴水広場より城門近くの場所だった。そこに巨大な青色と緑色が見える。キングスとベホズンが揃っている光景は遠くからでもよく分かる。彼らの弾む大きな体を使って、まだ小さな子供たちが楽しそうに遊んでいるようだ。ミニモンが通りの上を飛び、時折指先から火を飛ばすと人々から楽し気な歓声が上がる。スラりんとスラぼうがぴょこぴょこと地面を跳ねて屋台の台の上に飛び乗ると、屋台の主人がカップにジュースを注いで渡す。それを二匹が頬を寄せてストローでじゅうじゅうと吸うものだから、それだけで傍にいる女の子らが黄色い声を上げる。人間の祭りの中に、魔物の仲間たちが完全に溶け込んでいる様子を、リュカは心の底から嬉しいと感じた。
「がうがう」
「あ、プックル。どうしたんだよ」
「プックルは本当にお父さんが好きなのね」
「がう……」
「何だよ、照れるなよ、プックル。一人で不安なら僕が傍にいてあげるよ」
「プックルはこのような祭をどう楽しめばいいのか分からんのじゃよ」
マーリンが楽し気にリュカの隣を歩きながらそう言うと、プックルが肯定も否定もしないような声を地面に落とす。グランバニア国民の男性には、実はプックルの人気は高い。強さの塊のようなその見た目に、強くあろうとする男どもは憧れの眼差しを向ける。しかしおおよその女性にはその厳めしい面や、今にも疾風のごとく駆け出してしまいそうな見事な体躯で怖がらせてしまうのだ。かと言って、プックル自身から傍に寄って腹を見せ、猫のように腹を撫でてもらうようなこともしたくはない。基本的に戦うことが専門で、戦うことが好きなプックルにとって、人間の祭の中でどう楽しめばいいのかは何年たっても分からないままなのだった。
城下町を歩くリュカたちの周りは、国民たちが恐れ多いと言わんばかりに空間を作る。お陰で歩きやすいのは助かるが、リュカとしてはせっかくの機会だから国民ともっと直に話をしたいと思っていた。その点、ティミーは相変わらずの人懐こさで既に何人もの人々と他愛もない話をしている。王子であり勇者でもある彼だが、このグランバニアの国の中では一人の少年にもなれることはリュカにとっても喜ばしいことだった。
「ピピン、ほら、お父さんと話したいんでしょ。今日はブレイコウってやつなんだから、いくらでも話していいよ」
そう言いながらティミーが連れてきたピピンという少年は、少々おどおどした態度を示しつつも、堪え切れない好奇心が溢れたような目でリュカをちらちらと見上げている。薄茶色の髪は縮れるような癖毛で、長く伸びた髪を後ろで一つに紐で巻きつけて束ねている。見たところティミーやポピーよりもいくつか年上のようだが、まだ成人している年齢ではなさそうだった。
「あ、ああ、あ、あの、は、初めまして……じゃないんだった、お会いしたことはあるんですけど、いや、でも、僕もあんまり覚えてなくて……なんて、こんなこと言ったら失礼になっちゃうかな。いや~、なんて言ったらいいんだろ……」
あまりにも緊張しているピピンを見て、リュカは思わず小さな笑い声を上げてしまった。リュカはいつもの旅装とは異なる式典用のマントをばさりと避けると、手を伸ばしてピピンの肩に手を置いた。
「そんなに緊張されると、僕まで緊張しちゃうよ。ティミーと友達なんだね。ありがとう、仲良くしてくれて」
「とととと友達! そんな、王子様相手に友達なんて、恐れ多い! あ、でも、王子と王女がお生まれになった時、僕が一番近くにいたかも知れません、なーんて……うわぁ、どう話したらいいんだろう……もう、泣きそうです……」
「ピピン! しっかりおしよ。……これはこれは国王様、あたしはこの子の母です。突然訳の分からないことを申し上げてしまった非礼をお詫びいたします」
「お父さんは覚えていないのかも知れないわね。ピピンのお母さんが私とティミーを育ててくれたようなものなのよ」
「そうそう! だからピピンはボクたちのお兄ちゃんみたいなものなんだよ」
「お、お兄ちゃん……ふふ、嬉しいなぁ、そんなことを言ってもらえるなんて」
話を聞けば、かつてグランバニアから国王王妃両名が失踪した事件の後、まだ生まれたばかりの双子の乳母役を務めたのがこのピピンの母だった。当時、他に乳の出るような女性が他におらず、唯一まだ子供の域を出ないピピンを子に持つ彼女に白羽の矢が立ったということだ。その事情をマーリンに聞いたリュカは、ピピンの母の手を両手に取り、心からの礼を述べた。彼女が顔を紅潮させてリュカの顔をうっとりと見つめ始めたところで、ティミーが「お父さん、ピピンとも話してあげてよ!」とリュカのマントの裾を引いた。
リュカは改めてピピンの癖の強い薄茶色の髪を見て、ふと思い出すことがあった。
「もしかして君のお父さんって……」
「はい! 父はグランバニアの兵士長を務めています。僕もいずれ、父の後に続いて国の兵士になろうと思っています!」
グランバニアでは定期的に二階の大会議室で会議が行われる。その際に兵士長クラスの者を呼ぶが、ピピンに似た男をリュカはこれまでにも見たことがあった。名前も似ていた記憶がある。
「今日も城の警備で見晴らし台に立っているはずです。僕、強い父に憧れてて……だから成人の時には絶対に兵士に志願しようと思ってるんです」
ピピンが生き生きと話す隣で、彼の母が小さく溜め息をついていたのをリュカは見逃さなかった。母が息子の兵士志願に反対しているのがはっきりと感じられた。しかし国を強くしようとしている国王の前でそのようなことを話せるはずもなく、ただその態度を小さく露にしただけだった。
リュカは経験上、知っていた。父に憧れる少年の心を押さえつけることは所詮、できないのだ。一度憧れてしまった父の背中に、少年は常に追いつこうと走り続ける。それがどれほど危険なものであろうと、憧れや夢が前にあるのならそれを追い求める心を止める手立てはない。それがたとえ母親でも、いずれは独り立ちする子供の未来を決めつけてしまうことはできない。
リュカは乳母役を務めてくれたピピンの母に感謝を思いつつも、ピピンの夢とは切り離して考えなければならないのだと思う。ピピンに右手を差し出すと、ピピンは一時怖気づきながらも同じように右手を差し出す。リュカはピピンの、まだリュカよりも小さく温かな手を取ると固く握手を交わした。
「これからのグランバニアには君みたいな強い心を持った人が大事なんだ。兵士の仕事は大変だけど、君のような心があればきっとなれると思うよ。頑張って」
「うおおおお、ありがたき幸せっ! 絶対に、絶対に僕、兵士になってみせます! そしてゆくゆくは国王様と一緒に旅に出て、世界を見て回りたい……」
「これっ! 調子のよいことを言ってるんじゃないよ! すぐに図に乗るんだからね、あんたって子は」
「そうだ! ピピンは明後日の武闘大会には出場するの?」
ティミーがそう問いかけると、ピピンはまるで相手が王子であることを忘れた様子で鼻を鳴らして応える。
「もっちろんですよ! 父にしごかれてますから、結構自信あるんですよ~」
「そうよね。ピピン、見かけによらず力が強いんだもの。大きな槍をぶんぶん振り回している所を見たことがあるわ」
「そうそう! あんなに重い槍、ボクなんかとても持てないよ」
「あ、でも大会は武器使えないんですよね。檜の棒くらいは使えるんでしたっけ?」
「いや、ドリスの意向で武器は一切使っちゃダメだって聞いてるよ」
「そ、そうだ、ドリス姫の……いや~、姫は戦っている時も美しいですよね。こう、なんと言うか、今や大人の色気が出て、もうそれだけで……」
急にもじもじとし始めたピピンをポピーがどことなく白い目で見ている。ティミーは戦うドリスを思い出して、「ドリスはとにかく速いんだよね~」と、まるで何度も戦ったことがあるかのような感想を口にする。実際にティミーはドリスと何度か手合わせをしたことがあり、素手での勝負で彼はドリスに勝った試しがなかった。
「今回は僕も出るから、対戦相手になったらよろしくね」
「へっ!? 国王様自ら出るんですか? そんなの、聞いてないですよ~。絶対に勝てないじゃないですか」
「いや、僕もさ、素手での戦いって慣れてなくて、実はあまり自信がないんだよね。だからお手柔らかにね」
「うわ~、国王様と当たったらイヤだなぁ、戦い辛いなぁ」
「がうがう」
「プックル、お前は出ちゃダメだよ。武器を使っちゃいけないんだから」
「がう?」
「お前の武器は取り外しができないだろ。爪も牙も取り外しが効かないんだからさ」
グランバニア新年祭で行われる武闘大会に、魔物らは出場できない取り決めになっていた。武器を使わない大会の中で、人間と魔物が戦うとなれば、その体格差や力量差で圧倒的に魔物が有利となってしまう。たとえばゴレムスがこの大会に出場すれば、恐らく人間の参加者はただの一人もいなくなるだろう。ゴレムスの大きな手に掴まれ、地面に叩きつけられて、一貫の終わりということになるのは目に見えている。
「ピピン、大丈夫だよ。お父さんは準決勝まで行かないと対戦できないからさ」
「一国の国王が、しかも恐らく最も戦い慣れている男が予選から出場と言うのも、なかなかに格好がつかんからのう」
「もし予選で負けちゃったら、そっちの方がカッコつかないけどね」
今回の武闘大会に出場するのは凡そがグランバニア兵士たちだ。彼らの強さを競わせ、見極める役割もこの大会にはある。ドリスが趣味全開で発案しただけの大会ではないのだ。
「ジュンケッショウって……ああ、それは無理です。だってそこに行く前に絶対にどこかで父と当たりますもん」
「お父さんも出るんだね」
「はい。僕が出るって言ったら、すっごい嬉しそうな顔して『対戦となったら実力の違いを見せてやるぞ』なんて脅しをかけるんですよ。ひどくないですか? 子供に対しては手加減してくれたっていいと思いません?」
話している内にどうにも人懐こくなるピピンに、リュカもいつしか自然と打ち解けていた。ピピンの母は後ろで苦い顔をしていたが、リュカとしてはこの少年ぐらいの距離感がちょうど良かった。ティミーもポピーも赤ん坊の頃に遊び相手をしてくれたであろうピピンを兄のように思っている節がある。
ひとしきり話した後、リュカたちは再び祭の雰囲気溢れる城下町を歩き始めた。国王であるリュカが屋台の前で立ち止まり、普通の庶民と変わらぬ態度で串焼きを頬張る姿を見た国民は驚くのと同時に、国王に対する距離がぐっと縮まるのを感じた。屋台の主人も砕けた敬語でリュカに話しかけ、リュカの両側にいる王子王女にも同じ串焼きを差し出す。ティミーもリュカと同じように頬張り、ポピーがどうすれば上品に食べられるだろうかと思案している横から、プックルが串にかぶりつき一口でぺろりと平らげてしまった。ポピーが慌てて串をプックルの口の中から取り出し、「串が喉に刺さったらどうするの!」と叱られたプックルは耳も髭も萎れさせて俯いてしまった。
この楽しい雰囲気に包まれた祭の外では、新年初めとは言え、国の警備に当たる兵士たちや魔物たちがいる。ピピンの父も本日の警備に当たっており、魔物の仲間ではピエールにガンドフ、メッキー、マッド、ゴレムス、サーラ、ロッキー、そしてアンクルが城外の見張りを行っている。警備は当然、交代制で行われ、時間がくればプックルやマーリンが外に出て警備に当たることになる。警備から外れている者だけがこうして祭に参加しているのだった。
グランバニアには国王と王妃を一度に失いかけた反省がある。もう二度と同じ轍を踏むまいと、警備体制は念入りに調えた。兵士たちが酒を飲めるのは当日の警備担当から外れている者だけだ。そう決めている中でも、兵士たちは自戒の念を込めて、酒量には細心の配慮をしている。祭とは言え、バカ騒ぎをする輩はいないようだった。皆が互いに、破りたいとは思わない制約の中で、祭を楽しんでいた。
「リュカ王よ、安心できたかのう」
ふと隣で話しかけてくるマーリンの小声に、リュカは密やかに小さく頷く。リュカの心の中に蟠り続けるかつての悲劇の宴を、マーリンも当然のように同じく感じている。今、城の外の警備に就いているピエールもガンドフも他の魔物の仲間たちも、リュカの戴冠式の宴の時を共に過ごした者たちは皆、それぞれに八年前のあの悲劇を二度と繰り返すまいと緊張した心持ちで警備に当たっているに違いない。北の塔の不穏も尚続いている。その塔の様子をピピンの父である兵士長も監視しているのだろう。
「ねぇ、僕は見回りに行かなくてもいいのかな」
「国王自ら見回りなんぞしたら、祭に参加している兵士たちもおちおち祭を楽しめんじゃろうが。お主はここで、国王として民と触れ合うのが仕事じゃ」
「そっか、そうだよね。みんな、やるべきことは違うんだもんね」
「それぞれに役割というものがある。全てを背負わずとも良いのじゃ。ほれ、見てみい。あそこで楽しそうに酒を酌み交わしている二人を」
マーリンが緑色のフードの奥から楽しそうな声で指差す方向に、まるで町人同士が気軽な会話を楽しみながら楽しい酒を飲んでいる二人の姿があった。式典用の衣装を身にまとうその姿で身分の違う人間なのだと分かるが、オジロンとサンチョから醸し出される雰囲気は城下町に住む町人と寸分違わない。既に二人とも頬を赤く染めており、上機嫌だ。
「オジロンさんもサンチョも、お酒が好きだよね」
「私、あんまりお酒のニオイって好きじゃないのよね」
「ははっ、僕も苦手だよ。少し飲んだだけで眠くなっちゃう」
リュカたちが近くにいることに気づいたオジロンが、手招きでリュカたちを呼ぶ。周りではグランバニアの城下町に住む人々が祭を楽しんでいる。一方で城の警備体制も万全を期している。リュカは子供たちとマーリンと、屋台から漂う香ばしい匂いに鼻が忙しいプックルと共に、国王代理と国の宰相のところへと歩いて行った。



夜も更けて、グランバニアの城の中全体が静かに寝静まる時間だ。一般では夜には夜の盛り上がる祭りの景色があるのだろうが、グランバニアは巨大な城内に城下町をすっぽりと入れてしまっている構造で、昼なのに夜のような景色を城下町では楽しむことができる。野外で行われる花火のような派手な楽しみは不可能だが、広い城下町ではミニモンやマーリンが呪文を応用させて花火のように散らして見せたり、ポピーも呪文の応用で小さな氷の粒を生み出して幻想的な光景を城下町の人々に披露したりしていた。
祭りを楽しんだ人々は心地よい疲れと共に眠り、明日にはまた祭を楽しもうと良い夢を見ているのかも知れない。楽しい祭りの雰囲気を存分に楽しんだ二人の子供たちも今は広いベッドの上で深い眠りに就いている。
リュカは一人、子供達の眠る部屋を出て、同じ階にある厨房に向かって歩いていた。厨房で働く人々も今日は祭りを楽しみ、それぞれの部屋にて身体を休めている。明日になればまた朝からリュカたちの食事の用意があるため、既にその下拵えは済ませてあるようだった。
「おや、坊ちゃん……じゃないんですよね。リュカ王、どうかなさいましたか、こんな夜更けに」
明かりを灯さずに廊下を歩いていたリュカだが、暗がりには既に目が慣れていた。恐らくそれはサンチョも同じだったようだ。
「サンチョこそ、どうしたの、こんな時間にこんなところで」
「いえ、私はちょっと酔い覚ましに飲み物を頂戴しようと、厨房にお邪魔してたんですよ」
「僕もちょうど、何か飲もうかなと思って出てきたんだよ」
「酔い覚ましにですか?」
「僕がお酒を飲めないの、知ってて言ってるね?」
「お父上はなかなかお強かったのですがね」
サンチョの細かな表情までは見えないが、恐らく彼は今穏やかな顔をしているのだろう。父のことを柔らかな雰囲気で話すことができるようになったサンチョの過ごした年月を思うと、リュカはいつでもサンチョに感謝の言葉を向けたくなる。しかしサンチョが求めているのはリュカの感謝の言葉などではないことを、リュカ自身理解している。
「ちょっと話をしようよ、サンチョ」
「明日も新年祭がありますから、無理をしない程度でしたらご一緒させていただきますよ」
「厨房に焼き菓子が保管してあるって聞いたんだけど」
「ああ、あれはですね、調味料が保管してある引き出しの奥にこっそりと……」
「それ、ティミーに教えたのってサンチョでしょ」
「……私のつまみ食いがバレてしまったものですから、止むを得ずですよ」
「口止めってこと? 悪いなぁ、サンチョ」
「ここだけの話にしておいてくださいね」
悪戯が露見した時の子供のように肩をすくめて人差し指を口に当てるサンチョを見て、リュカは思わず笑い声を上げそうになった。しかし静まり返る城内で笑い声を立てるわけにも行かず、小さく噴き出すだけに留めた。
静まり返る厨房だが、常に調理が行われるこの場所には様々な香ばしい匂いが染みついている。明かりを一つもつけない状態ではさすがに暗いと、サンチョが入口近くに備え付けてあるランプに種火から火を灯し、厨房内に備え付けられている大きなテーブルの上に置いた。このテーブルの上には普段、調理が済んだ皿が所狭しと並べられ、順々に国王私室やオジロンとドリスが使用する二階の部屋へ運ぶことになっている。その他にも兵士たちの宿舎へ運び入れたり、魔物の仲間たちに提供する食事も作っている。サンチョは彼らが食す前に毒見役として様々な料理を口に運ぶため、それで一日のおおよその食事が済んでしまうらしい。この体型を維持できるのだから、それなりの量の食事を口に運んでいるに違いない。
「温かいお茶でも入れましょうか」
そう言いながらサンチョはてきぱきと、勝手知ったる調理場と言った様子で茶の支度を始める。その後ろ姿をランプの明かりの中に見ながら、リュカはかつてのサンタローズで暮らした日々を思い出す。あの時もサンチョはまるで一家の母であるかのように、パパスとリュカの世話を焼いていた。母を知らないリュカに、母のような温もりを教えてくれたのは紛れもなくサンチョだった。サンチョに抱き上げられて、ビアンカに赤ん坊だと馬鹿にされた思い出もある。ふくよかなサンチョに抱き上げられれば、それだけで安心できたのは、サンチョが偏に父パパスと母マーサを誰よりも慕い敬い、そして王子だったリュカを本当の子供のように可愛がってくれたからだ。
家事全般に慣れたのはあのサンタローズでの暮らしがあったからかも知れない。それ以前にも恐らく父と旅をしていた時には、父の身の回りの世話をするのが彼の役目だった。従者として完全な形を求め、命を賭けて前国王パパスに仕えていた彼は、その一途な思い故に父を奪ったラインハットに対しての暗い気持ちを拭い去ることができない。
「お砂糖はいりますか」
「ううん、大丈夫」
「そうですか。大人になりましたね」
「僕をいくつだと思ってるの」
「私の中ではまだあの時からさほど変わっていませんよ」
「そうなの? 僕ってまだ子供なのかなぁ」
「いえいえ、そう言うことではなく、親から見れば子供はいつまで経っても子供というだけです」
サンチョはそう言いながらリュカの隣に腰かけると、カップにふうふうと息を吹きかけて自分で入れた茶をすする。リュカも一口飲むと、心の落ち着く花の香りが鼻からふっと抜けるのを感じた。サンチョは茶葉の種類にまで、この厨房のことをよく把握しているらしい。眠れぬリュカに安眠をと、眠りを誘う作用のある茶を選んで入れてくれたようだ。
「子供はいつまで経っても子供かぁ。道理で父さんにはいつまで経っても追いつけないはずだよ」
「リュカ王はリュカ王です。お父上とはまた違いますよ。同じではないですし、同じでなくて良いのですよ」
まだ六歳の時に喪った父は永遠に追いつけない存在となってしまった。共に大人になり、肩を並べて歩くようにならなくては、比べたいことも比べられない。リュカは今も、何か行動に迷う時には、父ならばどうしただろうかと考えることがある。意識はせずとも、リュカの中で憧れの父パパスは一つの行動指針となっている。
「お父上もね、本当は色々と悩んでおられました」
「父さんが悩んでた? あんまり想像できないな」
「何度も坊っちゃんをグランバニアへ帰そうと思っていたんですよ。何が坊っちゃんにとって一番良いことなのか、母親だったらそれが自然と分かるものなのかも知れないけど、父である自分には分からないと、苦しんでいたこともあるんです」
サンチョから聞く父パパスの話は全てが新鮮に感じられた。子供だった自分には知り得ない大人同士のやり取りを交わしていた国王と従者という関係性は、特別な固い絆で結ばれていた。父が唯一の供としてサンチョという従者を付けたことは、サンチョの父に対する心酔ぶりもさることながら、最も心を砕いて話ができる仲間だったからだろう。
父がとある洞窟で天空の剣を発見した時、リュカはまだほんの赤ん坊だったという。旅の途中、リュカは父の背中に負ぶわれていた記憶が微かに残っている。魔物との戦闘となった時にも、父はまだ赤ん坊のリュカを負ぶったまま剣を振るって戦っていたのだ。リュカには魔物の返り血など浴びせぬよう頭まで布を被せ、魔物に背中を見せることは決してしなかった。もし敵に囲まれた時には、その背をサンチョが守り抜いた。坊ちゃんが何よりも大事なのだと、サンチョは大人になったリュカにその時の思いを素直に伝え、リュカはその言葉に目頭を熱くした。
発見した天空の剣が自分には使えないと分かった時、パパスはいかにして使うことができるようになるのかを必死に調べ始めたという。勇者にのみ使いこなすことができる天空の剣を、父は運命を捻じ曲げてでも自らの手で振るってみせるのだと言っていた。強い父ならば考えそうなことだとリュカは思った。
「もし坊ちゃんが……と考えたら恐ろしくて仕方がなかったんですよ、旦那様も私もね」
天空の剣を手に入れ、サンタローズの村を目指す旅の途中で、まだ赤ん坊のリュカが地面を這いながら布でぐるぐる巻きにされた天空の剣に近づいたことがあった。それを目にしたパパスが見るも慌ててリュカを抱き上げ、天空の剣から遠ざけたらしい。その姿を見て初めて、サンチョはリュカが勇者であるかも知れない可能性に気づいたという。
全く同じ状況だとリュカは思う。パパスはリュカを勇者かも知れないと思い、天空の剣から遠ざけ、勇者としての運命を負わせることを拒んだ。リュカもできることなら、父と同じ行動を取っていただろう。
しかしリュカが八年の間石の呪いにかかっている間に、ティミーは勇者としての力を目覚めさせてしまった。あの富豪の屋敷の前で、石の呪いを解かれたリュカは、まだ小さな背中に天空の剣を背負う父に似た癖毛の少年を見つめることしかできなかった。その少年には既に、勇者を思わせる意志の強そうな瞳と、人々を明るい方へと導く快活さが表れていた。捻じ曲げたかった運命は既にリュカの手の届かないところにまで遠くへ行ってしまっていた。
「ティミー王子やポピー王女は旅の道中、いかがお過ごしですか」
今やサンチョはリュカと共に旅立つことなく、国王代理であるオジロンを支えながら城でリュカたちの帰りを待つ身だ。彼自身、必要とあらばいつでも旅に出る心づもりはあるのだろうが、今はオジロンの方が彼の助けを必要としている。リュカもサンチョに任せておけばグランバニアの安泰は保たれると絶対の信頼を置いている。彼が国の護りの要と言っても過言ではないのだ。
「二人は楽しんでくれてるよ。危なっかしい時もあるし、僕が危ない目に遭わせちゃってることもあるけど、魔物の仲間たちのおかげもあって無事に旅が続けられているよ」
「頼れる仲間が増えました。マーサ様がお連れになった魔物たちもいますが、坊ちゃんがどんどん魔物を仲間にしてお連れになるから、城の人間は皆驚いていますよ」
「そりゃそうだよね。魔物を城の中に入れるのだって普通じゃないのに、その数が増えていくんだもん」
「今回お連れになったアンクルの悪そうな面構えと言ったら……私は初め、肝を冷やしましたよ」
「いや、それを言うならロッキーの方が驚いたんじゃないかな。だって爆弾岩だよ」
「……実を言うと、初めは誰も近づけませんでした」
その時の状況を初めてサンチョの口から聞き、リュカは笑いながら「あ、やっぱり?」と応じる。
「そりゃあそうでしょう。少しでも近づこうとすれば、顔? 岩? を赤くしてゴロゴロと転がってくるんですもん。誰でも逃げますよ」
「ただ嬉しいだけなんだと思うよ」
「それが分かるのは坊っちゃんだけでしょう! 誰も近づかずにしばらくすると、ごろりと背を向けてぐすんぐすんとやり出すもんだから、ああ寂しいんだなってそこで初めて分かりました。それでも迂闊には近づけなかったですがね」
「爆弾岩だもんね。僕も初めはおっかなびっくりだったよ」
「さすがのマーサ様も、爆弾岩に心を開くことができたかどうか……いや、マーサ様ならおやりになりかねませんね。あの方の不思議な力は恐らく、坊っちゃんよりも強いものだと今でもそう思います」
グランバニアに残された父と母の存在が今のリュカの存在を大きく見せているのだとリュカは思う。自分一人だけでグランバニアの民がここまでリュカを立派な国王として見てくれることはない。王の座に長く在位しているのはオジロンかも知れないが、期間こそ短くとも父パパスが残した偉大なグランバニア王の印象は国民たちに強く根付いている。そして母マーサもまた、当時のグランバニアを知る者にとっては深く心の中に残されているのをリュカは感じる。
「母さんは僕に似てるんだよね」
以前その言葉をサンチョにも言われたことがある。その時は何故自分は憧れの父に似ていないのかと不満に思ったものだが、今はまだ見も知らぬ母に似ていることを、不思議な心地がしながらも受け入れている。
「本当に、よく似ていらっしゃいます。リュカ王にマーサ様の面影を見る国民は決して少なくないと思います」
「僕と、どういうところが似ていると思う?」
小さなランプの明かりに照らされるリュカの瞳を見ながら、サンチョは何度見てもリュカの瞳はマーサに瓜二つだと思わされる。暗がりの中でひと際存在感を増すリュカの光を内包する漆黒の瞳は、見ているだけで心が浄化されるような心持ちになるのだ。それはエルヘブンの民が持つ不思議な力によるものと今では知識として知っているものの、リュカもマーサも決してそれだけではない底なしの優しさを兼ね備えている。
「パパス様も坊っちゃんが大きく成長されるに従い、坊ちゃんの中にマーサ様を見ておられたのだと思います」
サンチョのその言葉に、リュカは父が屈んで視線を合わせてくれた時のことを思い出す。今だから感じられるが、あの時の父の目は潤んではいなかっただろうか。目が合ってもすぐに逸らされたこともあったように思う。リュカの中にマーサを見るパパスはその都度必ず妻を救い出し息子に合わせるのだと心の中で何度も誓いを立てた。そのような思いが今のリュカには自分のことのように想像できる。
「それって、辛かったかな」
「どうでしょう。辛いこともあったかも知れません。しかし嬉しくもあったでしょう」
「本当に?」
「そう言えば坊ちゃんがビアンカちゃんとお化け退治の冒険に出た時の話をしたことがありましてね」
リュカが幼い頃、父に連れられアルカパの町に滞在していた時に、ビアンカと二人夜中に町をこっそりと抜け出して、お化けが棲むと言われる北のレヌール城への冒険に出たことがあった。その際、サンチョはサンタローズで留守を預かっていたはずだが、リュカたちがサンタローズの村に戻った際にパパスからその話を聞いたのだろう。
「子供と言うのは一息に成長するものだと、感慨深げに話していらっしゃいましたよ」
「褒めてたってことでいいのかな」
「そりゃあもう、あの時のパパス様ほど興奮して話しておられたこともないのではと思えるほどでした。少しお酒が入っていたこともありましたけど、それにしてもよくお話になられていました、あの時は。よほど嬉しかったのでしょうね」
静かに語りながらサンチョはまだ弱く湯気の立つカップの茶を口にする。そして小さな焼き菓子を一度に三つも口の中に放り込む。
「坊っちゃんはお辛いですか?」
サンチョに問われた意味が飲み込めず、リュカは小さく首を傾げる。サンチョはふっと息をつき、残りの茶を飲み干すと静かに席を立った。
「ティミー王子にポピー王女、お二人の成長をお辛く感じたことはありますか」
調理台に置いたままだったポットから二杯目の茶をカップに注ぎ、少なくなったリュカのカップにも茶を足す。カップの中から再び温かな湯気が立ち上る。茶から漂う花の香りに、リュカの心は自然と落ち着く。
「そうだね。辛く思うこともあるけど、やっぱり、それだけじゃないよね」
「嬉しいですか」
「生きていてくれるだけで嬉しいよ。僕の傍でさ、僕を父さんって呼んでくれて、父さんって思ってくれて、もうね、それだけで十分なんだ。これ以上の幸せなんてないと思う」
「坊っちゃん……」
「人間って一度失われると、本当に大事なものに気づくのかも知れないね」
リュカの独り言のような呟きに、サンチョは言葉を返さない。ただすっかり成長し大人になったリュカの言葉を、胸に焼き付けるように聞き入っている。
「でもさ、僕は今に満足しているわけじゃないよ。僕の幸せはまだ完全じゃないから」
リュカは自分が強欲なのだと自覚している。一つのささやかな幸せで満足できるのなら、恐らくこのままグランバニアに腰を落ち着けて、国王としての生の中に生き続けるだろう。しかし彼は子供たちにとって、自分にとって足りないピースを諦めるわけには行かない。
グランバニア国王として在りながらも、リュカは妻と母を捜し出す目的のために走り続ける。この国には彼女たちがいなくてはならない。グランバニア国民の記憶に深く残るマーサと、王子王女の母であるビアンカ。この国にとっては二人の女性の存在が必要不可欠なのだと、リュカは決して彼女たちを諦めることはない。
「私はどこまでもついて行きます、リュカ王」
「これからも覚悟しておいてね、サンチョ」
「ええ、望むところですよ」
リュカが軽く握った拳をサンチョに向けると、その拳にサンチョ自身が丸めた拳を軽くぶつけた。主君と従者がするような行動ではないが、今の二人にはそのやり取りがちょうど良い距離感だった。どうしてもマーサの面影があるリュカの微笑みを見ながら、サンチョもまた改めて二人の奪還という目標を今年こそ成し遂げるのだと心に刻む。
「サンチョは生まれながらの苦労人?」
「いえいえ、そんなことはございません。私は世界一幸せな従者です。これほど素晴らしい主君に恵まれているのですから」
「嘘でも嬉しいよ」
「嘘なものですか」
サンチョはいつだってリュカの言葉を受け入れ、否定することがない。リュカはこの唯一の心の逃げ場にひと時心も体も休めて、小さく揺れるランプの明かりの中で他愛もない話をもうしばらくの間続けていたいと、揺れる小さな火を穏やかに見つめた。

Comment

  1. ともこ より:

    bibiサマ

    グランバニアのお話、待ってました!
    リュカの王様ぶり、王子と王女の城での生活、魔物達の普段の生活。そしてピピン登場!
    ゲームにはないオリジナル…でも素敵なお話で楽しませていただきました。

    サンチョとリュカの関係好きだなぁ
    いつかヘンリーにグランバニアに来てもらえたらいいですね、サンチョもラインハットへの気持ちが雪解けになって…。平和になった後の話ですね。

    武闘大会…ドリスのアリーナっぷりが楽しみです。悪い人は出てこないですよね(・・?)

    • bibi より:

      ともこ 様

      コメントをありがとうございます。
      グランバニアのお話、お待たせいたしました。
      今回はきっぱりとゲームから離れて、オリジナルで話を進めさせていただきます。あと数話続く予定です。
      ピピンは私の設定ではまだ子供なので、本格的に出始めるのは王妃救出後になるかも知れません。でも面白いキャラなので、今回も出てもらいました。
      サンチョとリュカは特別な絆で結ばれていますね。ラインハットとの和解は・・・本編中にできればなぁと思っています。
      ドリスはお察しの通りアリーナを思い浮かべながら書いてます(笑) ただ、アリーナよりも大分年上でもあるので、それなりに落ち着いた感じも出そうかなと思っています。
      DQ4もね、良いゲームですよね。本当はこちらも長編を書きたいくらいです。

  2. ケアル より:

    bibi様

    リュカとサンチョとの会話…読者もシミジミさせて貰いましたよ。
    リュカの心の中は、サンチョにしてみれば全て見透かしているみたい、さすがリュカを小さい時から見ているだけのことはありますね。
    サンチョの口から明かされたパパスの真実天空の剣…。そこからリュカが勇者ではないかパパス自信が勇者になるんだ、リュカのティミーポピーに対して思う本音など。サンチョはリュカぼっちゃんの本当に良いパートナー、いやヘンリーに並ぶ心友なのかもしれませんね。サンチョ最後には、リュカに対して「ぼっちゃん」を言い直していない…そんな二人の距離感にケアルはしんみり致しました。
    bibi様、やはり今度の旅にはサンチョを連れて行きましょうよ~⁉
    二人の会話をもう少し観賞していたいです、考えてくれませんか?(切実)

    次回はいよいよ武闘会ですね。ドリスがどこまで強いのか…ティミーはピピンに勝てるのか…ポピーは武闘会に出場するのか…リュカの体術は誰に教えて貰い試合で生かせるのか…サンチョが武闘会にでてドリスに勝って婚約するのか?(笑み)
    次回も楽しみにしていますね。

    • bibi より:

      ケアル 様

      いつもコメントをありがとうございます。
      パパスがかつて見つけた天空の剣に関しては、それだけで一つの話が出来上がるほどの過去だと思います。DQ4では天空の剣が一番最後に見つかるけど、DQ5では一番初めに、しかも既に父が手に入れていたというところにもドラマを感じます。
      サンチョは父であり母であり、一方ヘンリーは親友。二人に対するリュカの寄りかかり方が違いそうですね。サンチョにとってリュカはいつまでも坊っちゃんです。いずれはまた、サンチョにもどこか一緒に旅に出てもらう予定ではあります。いずれ・・・(汗)
      武闘大会には子供は出場できないことになっていて、今回ティミーもポピーも不参加です。残念ながら。
      サンチョとドリス! それは全く考えていませんでした。ちょっと年も離れてるし、そういう間柄になるのは難しいかも知れませんね。オジロンが何て言うか・・・(笑)

  3. ピピン より:

    bibiさん

    ついに来たピピンですがまだ子供なのは意外でした。
    まだ成人じゃないとの事ですが、この場合の成人はドラクエ世界の16才ですか?

    個人的に今回はポピーに叱られるプックルがMVPです(笑)

    • bibi より:

      ピピン 様

      コメントをありがとうございます。
      こちらのサイトでのピピン君はまだ14歳設定で、ちょうどビアンカ救出時くらいに成人の予定です。仰る通り、16歳で成人ということにしています。
      ポピーはプックルのお母さんになったような気で叱っています。串ごと食べるなんて危ないでしょっ! めっ! みたいな感じで。プックルもポピーの本気の怒りには普段の厳つさも形無しです(笑)

  4. ピピン より:

    bibiさん

    という事はビアンカ救出までまだ一年以上あるわけですね…!
    これからのイベントと照らし合わせて時間経過を計算して書くの大変そうですね…!

    きっとビアンカに似てるから本能的に逆らえないんでしょうね(笑)

    • bibi より:

      ピピン 様

      そうなんです。気が遠くなります(笑)
      一応、エクセルで年表を作って今後の話の予定を立てていますが、果たして上手く話が進むかどうか・・・自信がありません(泣)
      プックルはリュカよりもポピーの方が逆らえないんでしょうね。そうか、ビアンカに似てるから・・・間違いありませんね。

  5. ケアル より:

    bibi様

    なるほどbibiワールドでは、ゲームピピンは14歳設定なんですね。リュカ救出前のゲームピピン並びにデモンズタワーのあたりのゲームピピンは逆算したら…6歳ぐらいになりますね。ティミーポピー0歳ゲームピピン6歳、子供の描写をするならちょうど良い年齢。
    bibi様、そんな理由でしょうか?ゲームピピンの年齢設定(笑み)

    • bibi より:

      ケアル 様

      ピピンは先月誕生日で14歳になったばかり、くらいの設定です。そうですね、デモンズタワー辺りでは5、6歳くらいかな。ティミーとポピーの良いお兄ちゃんです。年は離れているけど、乳兄弟というところですね。

  6. ケアル より:

    bibi様

    すみません…さきほどのコメント、紛らわしい表現になっていますね。
    ゲームピピンと書いてますが、正しくは、bibiワールドピピンです。
    紛らわしい表現申し訳ありません。。

    武闘会には子供は参加できないんですか(汗)
    でも、bibiワールドピピン14歳は出場できるんですよね?
    ティミーポピーが出場できなくてbibiワールドピピンは出場できる、お互い子供なのにその境目は何でしょうか?

    • bibi より:

      ケアル 様

      いえいえ、大丈夫。理解しておりましたよ。
      武闘大会には12歳以上が出場できることにしました。中学生以上、と言ったところでしょうか。ご都合設定で申し訳ないです(汗) まあ、中学生くらいの子が大人の男に適うこともないので、力試しを楽しんでね、くらいの意味で参加させています。中学生くらいの男の子なんて、自分の力を試したくて仕方がないくらいの年齢かなぁと、祭りを楽しむ意味でも参加OKと言うことにしました。

Message

メールアドレスが公開されることはありません。

 




 
この記事を書いている人 - WRITER -

amazon

Copyright© LIKE A WIND , 2020 All Rights Reserved.