マスタードラゴン

 

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ボブルの塔を出る頃にはリュカたちの体力も魔力もいくらか回復していたため、リュカは移動呪文ルーラを使って天空城まで戻ることを試みた。しかし天空城は一つ所に留まることのない空を浮遊する城だ。常に城を取り巻く背景が同じわけではない。ただでさえ天空城は雲の間を行く船のようで、形を変える雲の間を抜けて行く天空城の場所を思い浮かべるのは困難だった。
それならば天空城が発する神々しい力を感じ取ることができればその場所まで呪文を飛ばすことができるのではと、リュカとポピーは二人それぞれ天空城の放つ唯一無二の力を感じ取ろうと目を閉じて集中した。しかしリュカの道具袋に収まるドラゴンオーブに封じ込められている神の能力と、それと類似した力を感じるドラゴンの杖が、二人の集中を妨げる。万が一ルーラの呪文の行き先が間違った場所へ向かえば、断崖絶壁に囲まれたこの大きな島へ戻ってくるのは不確かになる。それほどの危険を伴うならば地道に天空城のある場所までの道を歩いて行くのが確実だと皆の意見は一致して、今はサーラとアンクルが皆を連れて山々の景色を見ながら飛んで西へ移動している。
「あ! あそこに川が見えるよ。ちょっと休憩しながら行こうよ」
「そうですね。特別急ぐものでもありませんし、少し降りましょうか」
ティミーが指差す方向を確かめ、サーラが双子を抱えながら徐々に下降していく。その姿を見てアンクルもまた後を追って下降していく。身体に感じた唐突な浮遊感に、リュカはうつらうつらしていた目を開ける。
「ん? どうかしたの?」
「オレもサーラも、さすがにぶっ通し飛び続けるのは疲れるからな。ちょっと休ましてもらうぜ」
「ああ、そうだよね。悪いね、任せちゃって。ふわぁ、眠い」
「ホントに悪いと思ってんのかよ、この王様は」
「がうぅ」
「悪いと思っておられても、それ以上にお疲れなのです」
「……まあな。色々あったからな」
今ではボブルの塔での死闘が遠い過去のようにも感じられるから不思議だった。しかしその時は確かにあったのだ。アンクルは一度命を奪われ、スラりんの呪文により命を救われた。そしてリュカもまた一度命を失った。その命を救ったのは息子である勇者ティミーだ。
アンクルは自身が一度、この世と決別しかけたことを思い出すことができる。敵ゲマはやたらと背が高く、その姿は魔導士のそれだが、振るう死神の鎌の速さ、力強さをその身に受ければそれは屈強な戦士にも劣らぬ剛力を思い知らされるものだった。不意打ちを食らえば避けられず、その身に受ければ深々と食い込んでくる鎌の威力に、アンクルの見ていた世界は一瞬にして暗転したのだ。
死を実感することなどないと思っていた。死んでしまえば何もなくなる。今までの記憶は勿論、身体の感覚も、物事を思う思考も、何もかもが自分の周りからはなくなるのだと漠然と思っていたが、死神の鎌にかかったアンクルの周りに現れたのは、あらゆる負の感情を詰め込んだような漆黒だった。一切の感覚がなくなると思っていたが、視界は黒く塗りつぶされ、耳には何者かの泣き声、叫び声、悲鳴、怒号と言った、一切の喜楽を切り離した音が耳を塞いでも入り込んできた。身体が何かに沈み込み、その時には一切のものが自身から失われた気がしたが、身体は間もなく浮上して再び漆黒と負の感情を吐き出す声の中に晒される。それらが忙しなく繰り返されるのだ。いっそのこと絶え間なく漆黒の世界に、悲鳴や怒号の中に身を置いてしまえばいずれはそれらに慣れて感覚も麻痺していくのかも知れない。しかし沈んだり浮上したりする中では、その環境に慣れる未来が描けなかった。
死神の鎌で命を奪われた者の逝く先は、地獄よりも深くに存在する場所なのだとアンクルはその時の感覚を思い出せることに身震いする。罪を犯していようがいまいが、あの鎌に命を奪われれば強制的に地獄にさえ憧れるようなあの深い漆黒へ連れて行かれる。自死を選べもしないあの場所で永遠の時を過ごすと言うことは、その内気が狂って我を忘れて、自身というものを失ってもなおその場所に身を置き続けることになる。
その時に見えた微かな光明に、アンクルは一度気づくのに遅れた。漆黒の世界に伸びてきた光に手を伸ばし損ね、その光はあえなく消え去った。どこまでも何もない、しかし時折音だけは聞こえるその暗闇で、アンクルは自ら助けを求めた。彼の中にはまだ仲間たちの記憶が鮮明に残っている。心優しく、強く逞しい仲間たちの救いの手を、アンクルは彼らのことが記憶から消えない今の内に必死に求めた。
もう一度の機会が降って来た。アンクルはその光を我武者羅に掴んだ。強い光ではなく、強く掴んで引っ張れば千切れてしまいそうなほどに細かった。しかしアンクルは仲間たちのところへ帰りたい、その内自身を失ってしまうこの場所に留まり続けるのは御免だと、その光を手繰り寄せるように引っ張り続けた。スラりんの唱えたザオラルの呪文に助けられた瞬間だった。
リュカが一度命を消した時、どのような世界に身を置いたのかなどアンクルには分からない。しかしその魂はまだ確実に仲間たちの近くを漂っていたはずだ。人間も魔物も、生き物なら大抵は死を恐れる。誰だって死にたくはないから、もし生き返ることができるならその力に縋りたくなるのが真実だろう。
アンクルには効果のあったスラりんのザオラルを何度受けようとも、焼け焦げ床に横たわるリュカにはその効果は現れなかった。スラりんの魔力が尽きて、リュカの命を諦めなくてはならなくなった瞬間、仲間たちの様子が一変した。皆が絶望と憤怒に震えた。プックルは復讐の心を奮わせ、ピエールもまた自棄を起こすように敵に猛進していった。スラりんは自分の無力にその場から動けなくなり、サーラが冷静を装っていられたのは激しく敵にぶつかるプックルとピエールを目にしていたからだった。あの二人がいなければ、サーラは身体ごと敵に突っ込んでいっただろう。
アンクルは、本来はリュカが守り切らねばならない双子を護る役目を自ら負った。この場で最も絶望を感じていたのは間違いなく子供たちだったはずだ。まだ続く戦いの最中、無言で立ち尽くす子供たちにかける言葉はない。双子は父が死ぬ可能性など微塵も考えたことがなかったに違いない。これだけ危険な旅を続けていても、リュカの強さを日々目にしている子供たちは、まさか父が倒れるなどとは考えようにも考えられないのだ。その父が目の前で倒れたことに、父の命を信じていた子供たちの心が壊れてしまってもおかしくはなかった。
ポピーから放たれる敵にも劣らぬ激しい魔力を感じ、アンクルは彼女の心が壊れてしまったのだと思った。小さな身体から発せられる凄まじい魔力に、ポピーの身体が耐えられるとは思えなかった。彼女は怒りに身を任せて残る魔力以上の力を出しかねなかった。常にどこか冷静に一歩引いて戦いの中に身を置く彼女が最も我を忘れてしまっていた。
敵の反射呪文マホカンタの効力のことなどまるで頭から抜け落ち、彼女は激しい悲しみと怒りに任せて、初めてマヒャドという氷系最強呪文をその小さな両手から放った。サーラが機転を利かせなければ、敵の反射呪文に弾かれ、巨大な氷柱に身体を貫かれたのは味方だったのかもしれない。しかしサーラが自身にも纏う反射呪文の効果を利用し、角度を測り、敵にマヒャドの呪文をぶつけた。あの時、間違いなく敵ゲマに凄まじい損傷を与えたに違いなかった。
ポピーは残る魔力の底など気にせず、身体に無理がかかってでも、考えなしに続けて呪文を放とうとしていた。そこにあったのは明確な殺意だ。父を死なせた敵を確実に死に追いやってやるのだと、復讐の炎が少女の目に揺らめいていた。
彼女の無茶を最も止めたがっていたのは当然、兄であるティミーだ。父を失い、妹までも危険を顧みずに呪文を放とうとしている。この場で父と妹を同時に失いかねない状況に、ティミーは家族として、勇者として必死に抗った。
まだ小さな少年の身体全体から光が噴き出した時、アンクルは目の前の少年は確かに世界を救うのかも知れないとそんな予感を覚えた。神の申し子という者がいるとすれば、彼のことなのだろう。彼ならば人々が奇跡と呼ぶものを現実に起こせるのかも知れないと、光が止んだ後に聞こえたリュカの息子を呼ぶ声に、そう思わざるを得なかった。
しかしティミーはまだ小さな少年なのだ。勇者の使命を負っているとは言っても、一人でその使命を抱え込むにはまだ幼過ぎる。彼が使命を全うするには強い支えが必要だ。その最も強い支えが父リュカであり、妹ポピーであることは疑いようもない。ティミーを支える柱の二人がどちらかでもいなくなってしまえば、彼は忽ち勇者としての使命を成し遂げる気力を失ってしまう。世界を救うというのであれば、彼らの誰一人として欠けてはならないのだろうと、アンクルは地面に下ろしたリュカの眠そうな顔を見ながらそんなことを思った。
「アンクル、静かだね」
「オレが静かじゃ変かよ」
「どこか怪我してる? 傷があれば治すよ」
「ねえよ。……ほら、子供たちが呼んでるぜ。行ってやれよ」
サーラに運ばれていた双子は地面に下りるなり、近くに流れる川の様子を一緒に見に行こうと父リュカを呼ぶ。その声は溌溂としており、大して疲れていないようだった。子供たちは身体が小さく体力も大人には到底敵わないというのに、体力の回復は非常に速い。前を行くサーラも道中殆ど静かに移動していたところを見ると、ティミーもポピーも移動中は疲れて眠ってしまっていたようだった。
リュカが双子のところへ歩いて向かう後ろから、プックルが当然のようにリュカの後をついて行く。リュカの肩に乗っていたスラりんがプックルの背に飛び降り、背中の赤毛の中に埋もれるように見えた。
その光景を見ながら、アンクルは自身の背中に回り込むピエールに気がついた。何をしているのかと思えば、ピエールはアンクルの背の翼に残る傷を癒しに背後に回ったのだった。
「しっかりと治っていなかったようですね」
「そうかよ。自分でも気づかなかったぜ」
「身体が大きいと痛みにも鈍いのかも知れません」
「そうとも限らねえぜ。あの王様も自分の痛みには相当鈍いだろ」
「確かにそうですね。困った方です、本当に」
「しかしそう言うところも含めて、あなた方はリュカ王と共に生きようと思えたのでしょう」
翼を休め、歩いて近づいてきたサーラが仲間たちに声をかける。逞しい手で肩をトントンと叩いている所を見ると、日に日に大きくなっている子供たちを両腕に抱えて飛び続けるのもそれなりに疲れるようだ。
「まあなぁ。何と言うか、あの王様は放っておいちゃなんねぇって感じがするよな」
「アンクルは見た目に依らず世話焼きな性格ですよね」
「そう言うピエールだって同じだろ。あいつ、放っておけないだろ」
「放っておくととんでもないことをしそうなところはありますね。王子王女の方がむしろどこかしっかりしている気がするくらいです」
「はっ、言えてるぜ」
「リュカ王は幼い頃からパパス王に連れられ旅をされておいででしたから、常識的なことにはあまり囚われないところがおありなのでしょう」
「なんだよサーラ、偉く他人行儀な感じだな。お前の主君だろ」
「私の待つ方はあくまでもマーサ様です」
サーラはリュカが生まれるよりも前に、エルヘブンからグランバニアへ来たマーサと出会い、彼女に心酔する経緯があり、今は彼女の息子であるリュカや孫であるティミーとポピーとの旅に同行している。当然、リュカたちを命懸けでも守ることに心を決めているが、それは彼らが主君だからと言う理由よりも、彼らがマーサの子供であり孫であるからという理由から生じるものだ。マーサが命を賭けても守りたい者たちを、サーラもまた同じように守る義務を負うと感じているのだ。
「それに魔界に連れ去られてしまったマーサ様を救い出せるのは、世界広しと言えども彼らしかいないでしょう」
「そうですね。勇者はこの世でただ一人かも知れませんが、ただ一人ではきっと成し遂げられないのだと思います。人間と言うのは特別に弱く脆い反面、底知れない力をも秘めています」
ピエールは前に進みながら、更に前を行くリュカたちの後姿を見守る。ピエールは双子が生まれ、育っていく過程を見てきた。親であるリュカとビアンカが行方知れずの内にすくすくと育って行く双子は、グランバニアの人々の悲しくも優しい愛情に恵まれ、あっという間に成長を遂げてしまった。オジロンにもドリスにも、母は生まれたばかりの子供たちを守るために、父は攫われた母を救い出すために、今は城を不在にしているのだと刷り込まれるように説かれていた。双子の父も母も必ずこのグランバニアに戻ってくるのだと語り続け、双子は正直にその話を信じた。強く優しい父も母も、必ずこの城に戻ってくることを信じ、子供たちは周りの想像以上に真っすぐ正しく育って行った。
サンチョが双子を抱き上げる仕草には懐かしさがあった。しかしまだ赤ん坊の双子を腕に抱く時、サンチョは決まって目尻に涙を浮かべていた。彼にその理由を問うたことはないが、サンチョの胸の中に去来する思いは様々で、もし問いかけたところで彼もまた答えに窮していただろう。一言では言い表せない思いが間違いなく彼の胸の中に渦巻いていたのだ。
子供と言うのは人に教えられたことや、人から与えられる愛情に確かに応えて育って行くのだと、ピエールは双子が育つのを見ながらそう感じていた。生まれたばかりの赤ん坊には言わばその小さな命があるだけで、他には何もないに等しい。グランバニアの王子王女として生まれた彼らに、国の者たちは皆惜しみない愛情を注いだ。本来は父と母が与えるべき愛情を、父と母への尊敬の念を、まだ何も持たないような子供たちに教えてやらねばならないのだと、ピエールもまた幼い二人と遊んだことがあった。君たちの父と母がいかに強く優しい人物なのかということを、心から教えておきたいと思った。
八年の時を経て、父と双子は再会を果たした。父への尊敬の念を持ち、知らないはずの愛情を刷り込まれていた双子は、ピエールたちが想像していた以上にすんなりと父の存在を受け入れた。戸惑いがあったのはリュカの方だ。彼の中で、双子は赤ん坊の時のまま成長していなかったはずだ。それが突然、成長して、尚且つ背中に天空の剣を背負う我が子を見れば、当然のように混乱しただろう。
しかし父の戸惑いを振り払うように、ティミーもポピーも父との距離をすぐになくしてしまった。対して人懐こい性格、と言うよりも魔物でさえ懐かせるリュカの特別な性質も相俟って、子供たちが詰める距離には大して戸惑わないところがリュカだった。自分を父と受け入れてくれるのならそれに返さねばと、リュカもまたすぐに我が子たちとの距離をないものにした。
小川に向かって歩く後姿を見れば、親子と言うよりは年の離れた兄弟のようにも見える。ただ、親子であれ、兄弟であれ、血の繋がった彼らには切っても切り離せない強い絆が生まれながらに存在している。意識していなくとも確かに感じている絆に、リュカもティミーもポピーも寄りかかる心地よさを感じているに違いない。その強い結びつきが、彼らが前に進むことのできる原動力だ。彼らの中に築かれているこの関係を二度と失わせてはならないと、ピエールは何度でも新たにそう思う。
「どれもが危なっかしいヤツだけど、どうにか守ってやるしかねえよなぁ」
「難儀な人の仲間になってしまったものです」
「しかしリュカ殿と出会えたお陰で、私はただの魔物としての生ではなく、この世に生きる意味を見い出せました。感謝しかありません」
「オレも似たようなもんかな。アイツと会わなかったらそこらのつまんねえ魔物としてずっと生きてただろうからな」
「自分の生きる意味を見い出せる魔物など、世界でもそうそういないでしょうね」
魔物でありながら生きる目的を見い出すことができたのは偏に彼らのお陰なのだと、魔物の仲間たちが前に行く人間の親子を見つめる目は穏やかだ。
魔物として生きて行くのに、特別な思考など必要なかった。人間は悪者だ、人間が目の前に現れれば倒せばよい、魔物とはそういうものだと本能的に植えつけられている。魔物の世界にある常識を覆し、同時に人間の世界にある常識をも覆したのがリュカという人物だ。連綿と受け継がれているエルヘブンの民の血がそうさせたというのは後に知ったことだが、リュカはそんな自分の血など知らないままに多くの魔物たちを仲間にしてしまった。そうしてしまえるのが彼の本能であり、本質である。少しでもこの世界の常識に疑問を感じる魔物がいれば、彼の本能に感化される可能性は高い。
ピエールもサーラもアンクルも、今後遥か未来に渡って、リュカと言う人間の傍で生き続け、その子供たちの成長を見守り、子供たちが大きくなりまた命を繋いでいく時には、その時にもその時を共に過ごすのだろうかと、まだ平和が訪れていないこの時にも想像できることに改めて生きていられることの喜びを噛み締める。



天空城の姿は遥か遠くからも眺めることができたが、たどり着くまでにはそこからまだ半日とかかった。断崖絶壁に囲まれた島の中に天空城が聳え立つ景色は、そのまま天界にでも迷い込んできたかのような錯覚に陥る。おまけに天空城の周りにはその平穏を表すように、天空人たちが優雅に遊ぶように飛んでいるのだから、尚のこと現実味の無い景色だった。
天空城に戻ったリュカたちを天空人たちは温かく迎えてくれた。果たして世界に平和が訪れていたのだろうかと勘違いするような光景を見ていたリュカたちだが、天空人たちは決して平和の中に遊んでいたわけではなかったようだ。空高くに舞い上がり、数人の天空人らで城の警備に当たっていたらしい。すこしでも不穏を感じれば天空城を移動させるつもりだった。それを聞いてリュカは天空城周りに不穏が無くて良かったと心から思った。勝手に移動されたのでは、二度と天空城にたどり着けない可能性もあった。
「天空城に着いたらちょっとホッとしました」
相変わらず地面に白い雲を生み出し、少し中空に浮いている天空城の中に入り込むと、ポピーはようやく心身ともに完全に休めると気の抜けた微笑みを浮かべた。この大きな島に棲息する魔物は弱く、リュカたちに襲いかかってくることはまずなかった。稀に血の気の多い魔物が牙を剥いて襲いかかろうとしてきたこともあったが、リュカがドラゴンの杖を手にして構えれば、それだけで恐れをなして山のどこかへ、森のどこかへと逃げ込んでしまった。それでも外の世界に身を置く限りは、常に心も体も緊張状態の中にある。町や村などの魔物の入り込めない環境に身を置いてようやく旅の緊張感から解放されるのだ。
「このオーブってどうしたらいいんだろう? とりあえず天空城に持ってきちゃったけど」
リュカの道具袋に収まるドラゴンオーブをティミーが取り出そうとすると、魔物の仲間たちが牽制するようにリュカとの距離を取ろうとする。魔物たちにはこのドラゴンオーブの光はあまりにも強く、決して直視できない代物だ。城の中にいる天空人らを騒がせないためにも、リュカはオーブを外に出さずに道具袋に入れたままにしておこうとティミーに言う。
「ところでこのロープ、誰かに借りたんじゃねえのか? 借りたんなら返した方がいいだろ」
アンクルはそう言いながら、自身の腰にぐるぐると巻きつけていたフック付きロープを解くと、力強い腕の動作とは思えない器用な手つきでくるくると手で巻いて小さくまとめた。リュカはロープを受け取りながら理解したように頷く。
「そうだ。おじいさんのところに返しに行こう。あの塔の話もおじいさんに聞いたことだから、このオーブのことも何か知ってるかも知れないね」
「それでは私たちはその辺りで適当に休ませてもらいますね。この城は広いですから、我々も伸び伸び休むことができて助かります」
サーラはそう言いながらも既に行く場所を決めているかのような足取りで歩きだす。彼は多くの蔵書が保管されている天空城の図書室が気に入っているらしく、そこへと向かったのが自ずと分かった。
「がうがう」
「プックルは城の中の農園が気に入ってますね。あそこにある水は癒しの効果もありますから、私も一緒に行ってきますね」
「ピキッ」
リュカの仲間の魔物たちを受け入れる天空城の中で、仲間たちは思い思いに過ごす時間が殆どだ。すっかり天空城での時間の過ごし方に慣れている彼らだが、やはり天空人たちが住まう神々しい天空城の中でいかにも自由にうろつくのは憚られるようで、比較的大人しく一つ所で過ごしていることが多い。プックルは城の中では唯一地上の匂いを感じられる農園を兼ねる庭園を気に入っており、そこで妖精と共に過ごすことが多い。スラりんとピエールは身体への水分補給を主な目的に同じ場所で過ごしているため、彼らも妖精とは仲良く話しているようだった。
「オレは外にいるよ。外っつっても城の中だけどな。こう、壁に囲まれた場所にいると何だか窮屈でよ」
「あの塔なんか窓も何にもなかったもんね。ボクも息苦く感じたよ、あの塔は」
「でも外が見えないから、高いって感じられなくて、私は助かったかな」
アンクルが床を踏みしめながら歩いてもまだ高さに余裕のある天空城の廊下で、天空人がすれ違うアンクルを見上げながら挨拶を交わす。天使と悪魔が挨拶を交わすような光景だが、彼らの間には一切の壁がない。初めこそ、天空人たちはアンクルやサーラの見た目に慄き、城に入れるべきではない者と見ていたが、リュカや子供たちが親し気に会話をする中で魔物たちの悪魔のような顔にも笑顔と言う表情があるのだと認めると、あっさりと心を開いてくれた。
「お父さん、あのおじいさんのところに行くんでしょ。早く行こうよ」
「ティミーとポピーも自由に寛いでて構わないよ。ロープを返しに行くのは僕だけで構わないし」
「そんなこと言いながら、お父さん、あそこで焼いてもらうパンを一人で食べるつもりなんじゃないの? ずるいよ、そんなの。ボクも行くからね」
「あ、私も食べたいな。何日もまともな食事をしていないから、とっても美味しく感じそうね」
すっかり腹を空かせている子供たちを見てリュカは申し訳ない気持ちになりながら、二人を連れて天空城の中を歩き始めた。育ち盛りの子供たちには目一杯のパンを食べてもらいたいと思いつつ、自らの腹も盛大な音を立てたことに、この天空城に入ってようやく心底緊張から解放されたのだと感じた。
目的の場所が近づけば、まるで町のパン屋の近くを通りかかっているのかと思うような香ばしいパンの香りが三人の鼻を突いた。他の場所では決してしない食べ物の匂いに親子三人で鼻を動かし、匂いに誘われるままに部屋の扉を開ける。
部屋の中には数人の天空人の姿があり、その中でリュカはパンを焼くことを趣味にしている一人の天空人の女性を見つけた。彼女はテーブルの上に網籠を乗せて、その中に焼き立てのパンを入れていた。テーブルに着く二人の天空人の注文に応えるようにパンを出している姿は、町のパン屋で働く娘と何ら変わりなく見える。
「あら、お帰りなさい。無事に戻ってこられたのね。良かったわ」
天空城が地上に留まり続けている理由を、城に住む天空人の多くが知っている。リュカたちが東に建つ塔に向かい旅をし、戻るまでは天空城を地上に留めておくのだと、誰ともなくそんな噂が出回り、その噂を純粋に信じる天空人たちは何の疑いもなく地上に留まる天空城の中でリュカたちの帰りを待ち続けていたのだった。
「一つパンをもらってもいいですか?」
「どうぞどうぞ。外から戻ったばかりだものね。お腹が空いてるでしょう。……まあ、天空人の私にはよく分からないのだけどね、空腹ってどういうものなのか」
「お腹が空かないってどういう感じなのかしら。ずっとお腹がいっぱいってこと?」
「お腹がいっぱいというのも良く分からないのよね。ただ、人間が作るパンが美味しいってことは分かるから、それだけでいいのよ」
「美味しいって言うのが分からないのは辛いだろうなあ。この世の楽しみの半分くらいがなくなっちゃうよ」
「この世の楽しみの半分って、お兄ちゃんは大袈裟よ。ねえ、お父さん」
「うーん、でも人間の三大欲求って言うのもあるし、そんなに間違いでもなさそうな気がするよ」
「何それ、人間のサンダイヨッキュウ? 初めて聞いたよ、ボク」
「どういうものなの、お父さん?」
「…………君たちがもう少し大きくなったらちゃんと教えるね」
リュカはそれだけを言い、パンを渡してくれた天空人の女性に問いかけようと振り向くと、女性はリュカを憐れみの目で見つめていた。
「酷い格好ね。何があったの? あちこち焼け焦げちゃって。パンが焼けるのは分かるけど、人間はそんな風に焼けたりしないでしょ」
旅から戻ったリュカたちの格好は凡そ綺麗なものではなかったが、その中でもリュカの格好には目を覆いたくなるものがあった。回復呪文は人間の怪我を治すことはできるものの、身にまとう衣服や髪の毛までを戻すことはできない。天空城に戻るまでは魔物も潜む険しい山岳地帯を進んできたために、リュカの悲壮な姿も紛らすことができたが、平穏に包まれている天空城の中でのリュカの姿は悲惨を物語っていた。天空城の中を歩いている時にも、リュカは何度となく天空人に話しかけられ、その姿を憐れまれた。
「ははは、結構大変だったんですよ、今回の旅は。でもここまで戻ってこられたのでもう大丈夫です」
リュカは彼らに詳しい話など一つもせずに済ませていた。傍には子供たちがいる。事細かに話すことで、子供たちにその時の記憶を呼び起こすのは危険だと感じていた。父が巨大な火の球に飲まれていたその時の光景を、その時から既に二十年近くも過ごしているリュカでさえ鮮明に思い出せるのだ。双子にとってはまだ新しいその時の記憶を、リュカはできれば封印してしまいたかった。二人から遠ざけるために、できる限りボブルの塔での話題を避けていた。
「ところで奥におじいさんはいますか? 借りたロープを返しに来たんです」
「ええ、いるわよ。ちょうど良かった。奥のおじいさんにもこのパンを持って行ってくれるかしら? 焼き立てのまだ柔らかいパンの方がおじいさんも食べやすいでしょうからね」
リュカは天空人の女性からどっさりとパンが入れられた両手籠を渡されると、子供たちを連れて奥の大きな暖炉へと向かう。一見、暖炉と見えるその奥には扉があり、奥まったその場所には窓も何もない部屋がある。
リュカたちが部屋に入ることを分かっていたかのように、一人の老人が扉を開けて入るリュカを優し気に見つめていた。城の中で何人もの天空人と行き会ったリュカたちにとって、やはりこの老人は異質だと感じる。背中に羽の無い彼はリュカたち人間と何も変わらないように見える。しかし彼もまた間違いなく天空人の一人だ。この閉ざされた部屋の中で好き好んで暮らしているものの、城の中にいる他の天空人たちにはその存在を認められている天空人の一人なのだ。
「おじいさん、このロープ、ありがとうございました」
リュカがそう言いながら手でぐるぐると巻いたフック付きロープを手渡すと、老人は椅子に座ったまま奥にある引き出しを指し示す。
「悪いがそこの引き出しの一番下の段に入れておいてくれるかの」
言われた通りリュカは引き出しに収まるようにロープを再び巻き直すと、引き出しの前にしゃがんで一番下の段にロープを戻した。ロープを収めた段には他には何も入っていなかった。
「このロープの不思議な力のお陰でどうにか手に入れられました」
老人が着く席の前まで歩きながら、リュカは道具袋から神の力が宿るドラゴンオーブを取り出そうとしたが、老人が目を見張りながらそれを遮る。
「やたらと表に出さん方がいい。マスタードラゴンの力を軽んずることになってしまう」
そう言う老人はまるで目にしてはいけないものが飛び出すのを恐れるように、両手を顔の前に翳した。リュカの魔物の仲間たちはドラゴンオーブの放つ光があまりにも強く、直視できないようだったが、もしかしたら天空人である老人にとってもまたこの光は強過ぎて直接見ることができないのかも知れない。
「でもおじいさん、神様の力の封印を解くにしたって、その神様はどこにいるのかなぁ」
「もしかしてこのキレイなオーブの中から飛び出してくるのかしら」
「あ、それ、何かカッコイイ! でもこの小さなオーブから出てくるなら、神様ってそんなに大きくないのかな」
「それにオーブから出てくるなら、出てくるきっかけがいるのよね。何か特別な呪文を唱えるとか……」
「ポピーは呪文が得意なんだから、そういうのも知ってるんだろ?」
「そんな呪文、知ってるわけないでしょ。天空人の誰かならもしかしたら知ってるのかも知れないけど……おじいさんは知ってますか?」
まだ十歳にもならない人間の子供を見る老人の目はこれ以上ないほどに優しい。まるで生まれたばかりの赤ん坊を見るのと変わらないような、何もかもを許すような優しさに溢れている。
「宝玉にはマスタードラゴンの力が封じ込められているだけじゃ。マスタードラゴンそのものが飛び出してくるわけではない」
「なあんだ。このオーブからズバババーンって神様が出てきたらカッコよかったのに」
「宝玉の力を解放できるのは、マスタードラゴンだけじゃ。他のあらゆる天空人にも人間にも魔物にも、その力を解放することは出来ん」
「でもマスタードラゴンは遥か前に姿を消したって……じゃあ今度はマスタードラゴンを探しに行かなきゃいけないの?」
ようやくこの天空城と言う安全地帯に戻れたというのに、再び神様探しに出なければならないと考えると、ポピーの全身に忘れていた疲れが戻って来た。神様がどこにいるかなど、何も情報を得ていない。まるで振出しに戻ったような状況に、ポピーだけではなくリュカもまた「嘘だろ……」と思わず呟いていた。
脱力した彼らの耳に、部屋の外で騒ぐ人の声が聞こえた。「キャー」という悲鳴が聞こえたが、その声は女性のものではなく男性の高い声だったことに、激しい違和感を覚えた。その後を男性の野太い声が追いかける。平穏に包まれている天空城の中ではあり得ない不穏な雰囲気に、リュカたちは一斉に暖炉の扉へと目を向けた。
「お父さん、何だか変だよ。行ってみようよ!」
「天空人の人たちに何かあったら大変よ。もしかしたらこのオーブを狙って私たちの後をつけてきた魔物がいたのかも……」
ポピーがリュカの道具袋を指でつつくと、リュカもまたその考えに囚われた。ボブルの塔という天高く聳える塔の中で厳重に守られていたドラゴンオーブをひとたび外に出せば、それを狙う魔物がいても何らおかしなことはない。実際、あの塔にはゲマとゴンズという憎き敵がいたのだ。魔物の中でも屈指の強さを誇る奴らがあの場所にいたと言うことは、魔物の側でも神の力の封印が解かれることを恐れる状況があったに違いない。
「おじいさん、また後で来ますね」
「ああ、待っとるよ」
リュカは子供たちを連れて部屋を出ると、部屋の扉から廊下を覗き見ている天空人の女性に声をかけた。廊下を慌ただしく駆けて行く一行を見たらしく、その一団は廊下を右から左へと走って行ったという。リュカは部屋を出ると子供たちと共に迷わずその後を追った。



広い天空城の中で、リュカは怪訝な顔つきをしている何人かの天空人に話を聞きながら進み、行き着いた先にはだだっ広い玉座の間があった。そこには数人の天空人と共に、魔物の仲間たちもまた駆けつけていた。仲間たちもまた、この平穏な天空城に似つかわしくない騒動の音を聞いて後を追ってきたようだった。
巨大な玉座を前にすれば、全ての者が非常に小さな者たちだった。最も大きな身体のアンクルでさえそれほど大きくないように見えてしまうのは、この部屋の広さと、度肝を抜かれる大きさの玉座の圧倒的存在感が原因だった。
「どうしたんだろう? なんだかモメてるみたいだけど」
その玉座の前で、天空人の兵士らはある一人を取り囲んでいた。取り囲まれる中心で縮こまっている人物を目にして、リュカたちは揃って目を丸くする。この天空城に最も似つかわしくないと言っても過言ではない、プサンの姿がそこにあった。天空人に追われていたのはプサンだったようだ。自分よりも身体の大きな天空人の兵士らに取り囲まれ、プサンは見るも明らかに怯えた様子を見せている。
「やや、リュカ殿! いいところに来てくれました。実はこの城に怪しい男が潜んでいたのです」
玉座の間に入って来たリュカに気づいた天空人の兵士の一人が、少々興奮した様子で話しかけてきた。どれだけ必死に追いかけていたのだろうか、立派な白い翼を持つ天空人の兵士が息を切らしている。片や翼も何も持たないただの人間に過ぎないプサンはただ怯えているだけで、彼に疲れた様子は見られないのが不思議だった。第一、ただの人間が翼を持つ天空人から逃げ切れるわけがないのだが、どういうわけかプサンはこの玉座の間まで逃げ切ってしまった。その時の様子を想像してみれば、彼が一見不器用そうに見せて器用に天空人の手から逃げ切ってしまえる姿が想像できてしまうのだから、プサンという人物は本当に底が知れない。
「プサンとか言ったな! お前は何者だっ!? 我々天空の民にはプサンなどという名前の者はいなかったぞっ」
そう問い詰める天空人の言葉を聞いて、リュカだけでなく子供たちも、魔物の仲間たちも一斉に口をあんぐりと開けた。プサン自身、自ら天空人を名乗っていたというのに、仲間であるはずの天空人たちはプサンを天空人と認めていない。外見だけを見れば、天空人の言葉が正しい。プサンの外見に天空人の要素は一つもない。その姿は地上の町や村にある酒場で働くような中年の男性そのものだ。
しかしリュカたちは今までにプサンの人間離れした能力を目にしてきた。地下洞窟の中をトロッコで突き進む先、深い湖の中に突っ込む時にも、リュカたちは一様に死を感じるほどの息苦しさを感じていたというのに、彼は最も身体の異常を感じずに沈む天空城にたどり着いた。ずぶ濡れのリュカたちの衣服を妙な力であっという間に乾かしてしまった。湖の水の中に空気の通り道を作り、リュカたちをそこから湖の外へと送り出した。何の変哲もない赤の蝶ネクタイに魔力を込め、湖に沈む天空城へとリュカたちを導いた。そのどれもが、彼が普通の人間ではないことを物語っている。
プサンを取り囲む天空人の兵士らの間からリュカが姿を現すと、リュカはふと彼の瞳に囚われたような気がした。黒縁眼鏡の奥に光る明るい琥珀色の目を、リュカは今初めてしっかりと正面から見つめた。天空人の兵士らに囲まれ怯えていたプサンの姿が見せかけのものだと、本当はまるで怯えていない瞳の強さに知らされた。
しかし腕を強く掴まれ、為す術なくその場に立たされているプサンは必然と憐れみを誘った。天空人たちはこの天空城を、マスタードラゴンが戻るその時まで死守しなければならない。そのためにこの城に危害を加えるような存在があれば、それを排除しなければならないというのは、グランバニアの王を務めるリュカも理解できるところだ。
「お父さん! プサンさんは悪い人じゃないよ! なんとかしてあげないと!」
ティミーの言う通り、プサンが悪い者でないことはリュカにも分かっている。しかし善い者であるかと問われれば即答はできない。リュカにとってプサンは自称天空人であり、見た目は人間そのものであり、不思議な力を発揮することもあれば、今は天空人の兵士に腕を掴まれて萎れてしまっているような、何も分からない正体不明の者なのだ。行きがかり上、彼に協力する形で旅を続けてきたが、果たしてこれが合っていたのかどうかも分からない。
「リュカ殿。この怪しい男を調べるのにどうかご協力ください」
落ち着いた様子でそう話しかけられたリュカは、居並ぶ数人の天空人の前に進み出て、プサンの真ん前で足を止める。ティミーとポピーも付き従うようにリュカの両隣に進み出て、プサンの顔を心配そうに見上げている。魔物の仲間たちは玉座の間の壁に寄り、遠巻きに様子を見ている。
「プサンさん、今までどうやってみんなを騙していたんですか」
天空城が湖の底から浮上しここに来るまで、かなりの時間を要している。その間プサンは他の天空人らと共にこの城の中で過ごしていたが、彼らとの間に諍いが起こったことは一度もなかった。それ故に彼は天空人たちからも認められた天空人なのだとリュカは思っていた。それが何故、今になって彼が天空人ではないと露呈したのか、リュカには訳が分からない。
「騙していただなんて、そんなひどい……」
「言い方が悪かったなら謝ります。だけど自分で天空人だって言ってたじゃないですか。それが天空人じゃないということになると、もう僕たちを騙していたことになりますよ」
「騙すつもりではなかったんですよ。ただ、まあ、なんと言うか、便宜上そうするのが一番かと思っていたもので」
彼が考えながら言うその言葉が嘘ではないと感じるが、全てが本当でもない空気を感じるのがプサンの曲者ぶりを表している。
リュカがどこかで見たことのあるような明るい琥珀色の目を探るように見つめていると、プサンの視線がふと外れた。黒縁眼鏡の奥の目がリュカの顔から下り、腰のあたりで止まる。人間の町や村にいくらでもいるようなありふれた姿かたちをしているプサンだが、今のプサンの鋭くも緩やかな表情にリュカは彼の中にある別の生き物を垣間見た気がした。
「待っていました、リュカ」
同じ人物が発した声とは思えなかった。プサンの声は非常に穏やかで、それまで天空人の兵士らに追い込まれていた弱々しい者の姿などどこかへ消え去ってしまっていた。プサンの腕を掴み上げていた天空人の男性も、何かの術にかかったかのように、上の空の状態でその手を離し、ただ虚空を見つめている。彼がまた怪しげな術を使ったのだろうかと、リュカは素直に訝しむ。
「ドラゴンオーブを持って来てくれたのですね。やはりあなた方は私の思った通り知恵と勇気を兼ね備えた人たちです」
酒場で働く中年の男性が口にする言葉にしてはあまりにも威厳があり過ぎる。姿かたちに惑わされれば到底似つかわしくない言動だが、今リュカの前に立つプサンから発せられる言葉としては何故か無条件に納得してしまう強い雰囲気があった。それが善なるものか悪なるものか、リュカには判断ができない。どちらであっても頷ける存在感が確かにプサンにはあるのだ。
「さあ、そのオーブを私に渡してくれませんか?」
天空人の兵士らはプサンが何を言っているのか分かっていない様子だった。それもそのはずで、リュカたちが手に入れたドラゴンオーブはまだリュカの道具袋の中に収まっている。天空人の誰もがまだ、神の力が宿るオーブを目にしていないのだ。
「これは天空人の方々、いや、それだけじゃない。多分、世界中の人たちが望んでいるものだと思います。それをどうして、プサンさんに渡さなくちゃいけないんでしょうか」
先ほど会って話をした天空人の老人も、神の力が宿る宝玉を簡単に誰かに見せたりするものではないとリュカの行動を柔らかく戒めた。この宝玉を渡すべき者はマスタードラゴン以外にはいないはずだ。その存在がこの城にないのであれば、手に入れたリュカがまだ手に持っているべきだと、もっともな理由を頭の中に思い浮かべてプサンの申し出を拒んだ。
「そうですか……。本当ならウデづくでももらうのですが……私は見ての通りの優男」
リュカの返事を聞いたプサンは、途端に脱力したように気の抜けたような笑みを見せ、細い腕を上げて肘を曲げ、非力を表すようにほとんど盛り上がらない力こぶを見せる。決して戦闘に秀でているわけではない天空人の兵士に腕を掴まれ、力だけで抵抗しようとすれば敵わないほどに、今の彼は弱い。
「あなたがたにとても勝てそうにありません。オーブは諦めることにしましょう……」
あっさりと引き下がるプサンを見て、リュカは拍子抜けした。神の力が宿るオーブなのだ。これを欲しいと思うのなら、何が何でも我武者羅になって欲しいと手を伸ばすのが普通だろうと、リュカは無意識に道具袋の上からオーブを手で擦る。そうでなければそもそも、この宝玉を渡して欲しいなどとは言わないはずだ。第一、何故彼が道具袋の中にあるドラゴンオーブの存在を知り得ているのかに疑問を感じるのも当然のことだった。
天空人の兵士に取り囲まれ、プサンが後ろ手に両腕を固定される。プサンは抵抗することもなく、ただ力なく項垂れているだけだ。天空人としてもこの弱々しい人間のような中年男性をこの場で断罪するようなことはせず、とりあえずは捕まえておき、天空城で移動する際に手頃な人間の町や村が見えたらそこへ彼を下ろすと言うようなことをその場で話し合う。
「お父さんっ! プサンさんは悪い人じゃないよ! ボクにはわかるもん!」
どこかへ連れて行かれそうになるプサンを見かねたティミーが、リュカに強く呼びかける。ティミーに何の根拠もないのはリュカにも分かっている。ただ何となく、というのがティミーの本音だ。しかしティミーにおいてはその「ただ何となく」と言う感覚が非常に大事だということもリュカは知っている。息子の中に宿る勇者としての血なのだろうか、彼の中にあるそれこそ神がかる力が宿っているのを日に日に強く感じてきている。
「あの、ちょっと待ってもらえますか」
リュカにはティミーのその直感への信頼がある。それはただ息子だからと言うものを越えた信頼であって、これ以上の信頼の力はないと言って良いものだ。
「プサンさん、どうして僕がオーブを持っているって分かったんですか」
不思議な力を使うプサンにはもしかしたら、袋の中に入っていてもそれを見透かし、中を覗くこともできるのかも知れない。美しくも威厳ある青い宝玉の姿を、その明るい琥珀色の瞳に映していてもおかしくはないと、リュカは思っている。
「ああ、ようやく戻ってきたと、そう思っただけですよ」
プサンの言う「ようやく」という言葉に、リュカたちは数年数十年と言う時ではなく、数百年と言う年月を彼は待っていたのだと感じた。戻ってきたと話す彼の様子を見れば、今までには感じられなかった真剣な感動があるのが見て取れた。同時に、彼の中に様々な悔恨の念が渦巻いているのも感じられた。
リュカは道具袋の中に手を入れると、慎重に青い宝玉を取り出した。リュカの片手に乗るほどの小さなものだが、その宝玉から発せられる光に天空人たちは一斉に慄き、リュカも子供たちも思わず目を細めた。魔物の仲間たちは遠目に見ているだけだが、やはりこの光を直視できないようで目を逸らしている。
宝玉を手に乗せながら、リュカはプサンを見た。プサンの明るい琥珀色の目は見開かれ、その瞳の中に、ボブルの塔にある青の竜神像にはめた竜の目を見た気がした。竜の目を見た時に感じた既視感が今、結びついた。どこかで見たことのある目だと思っていたのは、プサンの目だったのだ。
「私に渡してくれるのですね?」
「渡します。だけど少しでも妙なことをしようとすれば、僕があなたを手にかけます。いいですね?」
そう言ってリュカは左手にドラゴンオーブを乗せたまま、右手をマントの内側に忍ばせると、後ろに隠すように持っていたドラゴンの杖を取り出した。竜の神の威容を閉じ込めたような杖が発する特別な力に、やはり天空人たちは怖れをなすように一歩後ずさる。リュカが手に持つドラゴンの杖の、竜が抱える桃色の宝玉が、今のこの時を感じるように仄かに光を放っている。プサンはドラゴンの杖を目にして驚きに目を見開くこともなく、ただ僅かに目を細めて杖頭の竜を見つめているだけだ。彼からは一切、神を恐れるという、あらゆる生物に備わっていてもおかしくない絶対的な力に対する感情がないように思えた。
リュカはドラゴンオーブをプサンに差し出した。プサンに畏まるような態度は見られない。リュカが手にするドラゴンの杖が振るわれるかもしれないという恐怖もない。彼から感じられるのはただの感動と感謝だった。
「ありがとうございます」
プサンが青の宝玉を大事そうに両手で包んで胸に抱く。黒縁眼鏡の奥の琥珀色の目を閉じ、真剣な表情で瞑想を始めた。静かな時が流れる。まだ地上に降りたままの天空城の周りには数人の天空人が飛び回り、まるで共に戯れるように鳥も飛んでいる。遠くの鳥の鳴き声が聞こえるほどに、天空城の玉座の間に流れる風の音が聞こえるほどに、静かな時間が過ぎて行く。
「何やら全身にチカラが漲って来るようです」
目を閉じたままそう呟くプサンの両手に抱えられていたドラゴンオーブは、その手から彼の胸の中へと吸い込まれて行った。プサンの白いシャツもボタンもすり抜け、青い宝玉は彼の身体の中へ取り込まれ、彼の一部となった。人間の町の酒場で働くような中年男性のその全身が、青白く輝く光に包まれ、それはみるみる膨らんでいく。目の前で立っていたリュカたちはその光から逃れるように後退る。うっかり光に触れてしまえば、そのまま取り込まれてしまうのではないかと言う怖さがあった。
大きな光が巨大な玉座を覆わんばかりに膨れ上がった。こうなればもう誰も目を開けてはいられない。外を飛び回る天空人もその異変に気付き目を向けるが、あまりに強い光に遠くにいる彼らも目を開けていられないほどだ。リュカは万が一のことに備えてドラゴンの杖を右手に構えていたが、神々しいばかりのその光から子供たちを守るだけで精いっぱいだった。
光が徐々に止んでいく。しかし光の余韻を残す玉座の間では、しばらくの間目を開けて状況を確かめられる者はいなかった。固く閉じた瞼の裏から光の余韻が消え去るのをじっと待つ。恐る恐る薄目を開けて、覗いた景色の中に、皺のよった灰色の分厚い皮膚が見えた。
顔をしかめたまま、その灰色を上へと辿る。巨大な玉座の前で、巨大な灰色の竜がリュカを見下ろしていた。リュカは詰めていた息を吐いた後、呼吸を忘れた。琥珀色の竜の目がリュカをじっと見つめていたかと思うと、竜は頭を上げて耳をつんざくような咆哮を上げた。
「ま、ま、まさか、そんな……!」
「マ、マスタードラゴン様!」
リュカよりも早くに状況を目にしていた天空人の兵士らが見るも明らかに狼狽する。誰一人としてこの状況を予想していなかった。彼らはただ、天空城に居座る不審者を捕まえたと思っていただけだ。
「我が名はマスタードラゴン。世界の全てを統治する者なり……」
灰色の巨大な竜は明瞭な人語を話した。先ほどまでリュカよりも小さな中年男性だったと言うことが信じられないほどの変貌を遂げたが、神は数百年ぶりに元の姿に戻っただけだ。自らをマスタードラゴンと名乗る世界の神は今、リュカたちの目の前でただその神の威容を見せつけるばかりだ。
「あ……お……お父さん! び……びっくりした! 本当にびっくりした!」
「マスタードラゴン……あの……プサンさんが本当はマスタードラゴンだったの?」
リュカがまだ言葉も出せない状態の一方で、子供たちはやはり順応が早かった。ティミーがこれほど驚いているのも初めて見たが、この状況で言葉を発することができるのだからその心は子供独特の強さを持っている。ポピーの言葉は上の空のようにも聞こえるが、それも彼女の心の強さと感じる。非現実的な現実の景色を目の当たりにして、彼女はあくまでも実際に耳にしたことのある現実の知識の中で思考をまとめようとしている。
そんな小さな二人の子供に琥珀色の目を向け、マスタードラゴンは小さく笑うような息を吐き出した。
「よくぞ来たな。伝説の勇者の血を引きし一族たちよ」
巨大な竜が人語を話す時はこういう声を発するのだという想像通りの低く深い声で、マスタードラゴンはリュカたちに向かって話す。言葉を話しているのに、それに応じた口の動きは見られない。実際に声にして話しているのではないのだと、リュカは直接脳に、体内に響いてくる竜神の声に耳を傾ける。
「私が人として暮らす間に再び世界の平和が破られてしまったらしい。魔界の門が大きく開けられ、魔界の王がこちらの世界に来ようとしているのだ」
果たして人語を話しているのかどうかも怪しい。もしかしたらティミーやポピーには違った言葉で同じ内容が伝わっているのかも知れない。魔物の仲間たちには魔物の仲間たちに分かるような言葉で伝わっているのかも知れない。ただマスタードラゴンの伝えようとしている思考がそのまま、リュカたちに受け渡されている。竜神の伝えようとしていることが、等しく天空人にも人間にも魔物にも、行き渡っている。
「しかしそなたたちならそれを食い止められるやも知れん! もちろん私もチカラを貸そう!」
マスタードラゴンが話す言葉には、言葉を挟む余地がない。世界を統べる者に対して返す言葉などないという常識的な畏れの感覚ではなく、どこか自分の与り知らぬ場所で心や思考を操られているかのような感覚に陥るのだ。竜神がそう言うのであればそうなのだろうと、絶大な信頼と共に、力強い竜神に全てを委ねてしまいたくなる。
その感覚が、リュカには気持ちが悪かった。天空人たちがマスタードラゴンに身も心も委ねてしまうのは理解できる。彼らはリュカたちが生まれるよりもずっと前からこの時を待ち望んでいたのだ。その時がようやく訪れ、彼らが竜神の復活に酔いしれ、無意識にも跪いて頭を垂れているのは至って自然な流れだ。
しかしリュカには竜神よりも大事なものがある。
「……チカラを貸すって、どういうことですか」
一言口にしてしまえば、リュカの中から竜神に対する恐怖など一切なくなった。竜神の言葉を鵜吞みにしてそのまま行動を起こせるほど、リュカは単純にはなれない。
「あなたが神様だと言うなら、あなたがこの世界をどうにかしてくれるんじゃないんですか。地上にいる人たちはみんな、そう思っています。困った時には、絶望を感じた時には神様が助けてくれるって。そうやって縋ってみんなどうにか生きてるんです」
そう言いながらも、リュカ自身は父を失って以来、神に縋ったことなど一度もなかった。神様がもしいるのなら、父があれほどの非業の死を遂げるはずがないと今でもそう思っている。こうして復活した竜神を目の前にしてもまだ、リュカには神への疑念が渦巻いている。
「世界が破滅に向かおうとしているのが分かっていて、あなたはこれからその大きな玉座でふんぞり返っているだけなんですか。チカラを貸す? そうじゃなくてあなた自身がチカラを振るうことができないんですか。魔界の王がこちらにやって来そうなら、あなたが、あなた自身が食い止めてくれたらいいじゃないですか」
リュカの語気が段々強まれば、跪いて頭を垂れていた天空人たちが泡を食ってリュカを止めようとする。マスタードラゴンという世界の神に対して何という無礼を、と言ったところだが、今のリュカにはその常識など通用しない。神を畏れるよりも、守りたい大事なものが両脇にいるのだ。
竜神は琥珀色の目を瞬きせずにリュカに向けている。竜神の怒りに触れればどうなるかなど、リュカは考えない。一瞬にして命を奪われることもあるかも知れないが、それでも自分の信念を曲げることはできなかった。
「リュカよ。私のチカラは二つある。天地創造と……破滅だ」
「……破滅?」
「私がひとたびチカラを振るえば、この世は一瞬にして破滅を迎える」
「どうしてそんなチカラが神様に……神様はみんなを助けてくれるんじゃないんですか」
「リュカが思っている通り、神と言うものは傲慢な生き物なのだよ」
リュカは自分でも口にしていない、心の奥深くに根差している思いを言い当てられたような気がして、思わず口を噤んだ。
「この世界の始まりを私は創った。しかしそれは私の思い通りに行くものではない。私は初めのきっかけを作ったに過ぎない。その後はこの世界を生きる者たちの力で、こうして今の世界が出来上がっている」
相変わらずマスタードラゴンの言葉はリュカたちそれぞれの脳や身体に直接響いている。マスタードラゴンは竜らしく、時折喉の奥で唸るような声を出しているだけだ。
「もしこの世界が魔界に侵食され、魔界の王が地上に手を伸ばしてきた時、私は力を振るう。その時振るうチカラは、破滅のチカラだ。私には、創造と破滅、二つの力だけが備わっている」
全く想像もしていなかった真実に、リュカは元より、子供たちも魔物の仲間たちも呆然とその場に立ち尽くしていた。竜神の語る内容に異を唱えることもできない。それが真実だとしたら、それに従うしかないのだ。現実に抗うことはできても、真実を変えることはできない。
「も、もし私たちが魔界の王に負け……」
「負けるわけないだろ! 何言ってるんだよ、ポピー! バカなこと言うなよ!」
「たとえばの話をしてるのよ。私だって絶対に負けちゃいけないって思ってる。だけど、もしもそうなったら、この世界は……」
「全て無くなる。全て無くなり、再び一から世界を創る。それが私の定めたことだ」
「それじゃあ、僕たちはあなたのゲームに付き合ってるってことですか」
「私はそういうつもりでこの世界を創ったわけではないが、リュカがそう思うのなら、その通りなのかも知れん」
「僕たちが負ければ、全てが無くなって、ゲームオーバー。そう言うことなんですね」
そう言いながら、リュカは自分の口にした言葉があまりにも軽薄で非情なものだと感じた。マスタードラゴンはそのつもりでこの世界を創ったわけではないという意図は理解できた。竜神もまた、この世界を楽しく美しく素晴らしい世界に造り上げたかったに違いない。しかし現実に、今のこの世界は魔界からの魔物の侵入に脅かされようとしている。リュカたち人間が魔界の力に抗い切れない時には、マスタードラゴンの非情のチカラが発動してしまう。それが何をもってしても拒めない真理だと言うのなら、リュカたちはその真理の中で生き続けることを求めるしかない。
「リュカよ、手を出しなさい」
抗ってもどうしようもないマスタードラゴンの声に、リュカは素直に両手を前に出す。リュカの目の前に唐突に現れたのは、一つのベルだ。天空人を思わせる白い翼の装飾が施された、滑らかな白い陶器で作られたような片手に収まるほどの小さなベルが、リュカの手の上にふわりと静かに乗る。
「私を呼びたいときはそのベルを鳴らすがいい」
リュカは片手にベルを持ち、無表情のままベルを見つめる。ティミーとポピーが両脇から覗き込むように、ベルの内側を見つめている。ベルの中にある舌がベルに触れても音が鳴らないのは、呼ぶべき竜神が今まさに目の前にいるからだろう。
「私自身がチカラを下すことはできないが、できうる限りリュカたちのチカラになろう」
竜神の言葉が聞こえると同時に、リュカの身体を柔らかい光が包む。光が止んだ時、焼け焦げていたリュカの姿は元通り、旅に出る前のような姿に戻っていた。その力を感じた時、リュカは竜神の姿に変わったとは言え、人間のプサンだった時のような奇妙な術は使えるのだと力の抜けたような笑みを零した。
「そなたたちの助けがなければ私は非力な人間のままだっただろう。礼を言うぞ! リュカ!」
どこかプサンの調子の良さを残しているマスタードラゴンの様子に、リュカはただ「どういたしまして」と到底世界を統べる者に返すようなものではない言葉を返した。すっかり威厳を取り戻した竜神に対し、リュカはこれまでプサンに対して返してきたような言葉をかけ、今までと変わらない態度を取るだろうということを、その一言に込めた。
リュカの言葉に怒りを感じるマスタードラゴンではない。むしろ灰色の竜神はその大きな頭を寄せて来て、改めて興味深そうにリュカをまじまじとその大きな琥珀色の瞳で見つめるだけだ。リュカが顎の辺りに手を当てて、魔物の仲間にするように擦ってやると、マスタードラゴンが威厳も何もなく目を細めて喜ぶのだから、リュカの刺々しく荒みかけていた心が嫌でも絆されてしまう。同時に、できる限りの竜神の力を貸してもらう心積もりで、リュカは自分の頭ほどもある竜神の琥珀色の目を間近に見つめ、「頼みますよ」と強い口調で伝えた。こき使われるばかりではたまらないと、リュカは恨みがましい目を竜神に向けて、不遜にも大きな溜め息をついていた。

Comment

  1. ケアル より:

    bibi様
    いつも更新お疲れ様です。

    サーラの台詞…
    「自分の生きる意味を見いだせる魔物など世界でもそうそういないでしょうね」
    この言葉、…深いですねぇ…、人間と魔物の宿命運命、生か死か…。
    魔物と人間の関係をこの一言で説明できること間違いないです。

    プサンにどのようにドラゴンオーブを返すのか楽しみにしてました。
    だってゲームでは、オーブを渡すか渡さないかの2択で、bibi様のゲーム台詞描写どおり、「いいえ」にしたらプサンは諦める台詞を言って、ゲーム進みませんからね(笑み)
    bibi様のように、ドラゴンオーブを渡す経緯をスクエニ(当時のエニックス)に、もう少しシナリオを考えて貰いたかったなと、じつはひそかに感じていました。
    不通は拒否したり理由を聞いたり思いをぶつけたりするのが当たり前じゃないですか、だっていきなりプサンに渡すか渡さないかの「はい」「いいえ」ですよ?
    bibi様のように、つじつまと心理は必要じゃん(笑み)
    描写してくださりありがとうございました!

    そして、マスタードラゴン復活した後の描写。
    そう、そうなんですよね、ゲームは、マスタードラゴン復活したが魔王は倒せない、だから天空のベルを揚げるから胃ブール倒して来い!
    みたいな感じで…ここの場面にも、何にも人間の感情と心理のシナリオが無い…。
    ここにも主人公たちは言いたいことや言いたいことや言いたいことがたっくさんあると思うんです(笑み)
    エニックスも、さっきのことといい、このことといい、もう少しシナリオ考えて欲しかったなぁ(笑み)
    せめて、PS2やDSにリメイクした時に、このあたりスクエニも、新たなシナリオにして欲しかったなぁ…って、ひそかに感じてました(懇願)
    bibi様が、こちらもケアルの思いを描写してくださいました、どうもありがとうございます!

    次回はいよいよ寄り道ですか?
    パルプンテ、王者のマント、レヌール城のかけおちカップル、石像の時のオークション会場にも行けるみたいですよ。
    はたまた、bibiオリジナルストーリー?
    次話も楽しみにしています。

    • bibi より:

      ケアル 様

      コメントをどうもありがとうございます。
      人間と魔物の関係性がDQ5のテーマですもんね。そこんところをもっと掘り下げて書いてみたいものです。
      このドラゴンオーブを渡すイベントは本当に、ゲームだとさっくり終わりますね。ゲームらしいっちゃゲームらしい。というか、そういうところがドラクエだなぁとも思います。想像の余地だらけにしてくれるのが、こちらとしてはある意味楽しめると言うか、そんな感じです。
      ドラクエという世界観はある種の強権発動がありますよね、ところどころに。なんせ、初期のドラクエでは王様が復活の呪文を教えてくれたり、「おお、死んでしまうとはなさけない!」とか言われたり、ああ、この世界での王様は最強なんだなと思ったことがあります(笑)そういう無茶苦茶っぽくて、実は現実味がある感じが好きだったりします。
      ドラクエには余白が多いと思っているので、その余白でちまちま遊ばせてもらっているのが私です。余白の中で、色々なパターンがあるって面白いです。私もたまたまこんな感じでお話を進めさせてもらってますが、全く違う世界観でお話を書いてみても面白いだろうなぁと思ってます。
      何となくですが、DQには男性的な、FFには女性的な世界観があるなぁと思ってます。勝手な感想ですが。DQはどっしり一本の柱があって、コミカルで、実は熱いものが秘められている。対して、FFは繊細で感情豊かで、情景美しく、様々な喜怒哀楽に酔うことができる。本当に勝手な感想ですね(笑)どちらも好きな世界観です。
      次はどこへ行きましょう? 一応、決めてはいますが・・・これからの長い寄り道にお付き合いいただければと思います。オリジナルも多々入れ込むことになると思います。

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