娯楽の町で得るもの

 

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「初めに見た時は誰かと思ったよ」
「それくらいでちょうどいいんだよ。俺だってことがバレちゃいけねぇからな」
今、リュカの隣には見知らぬ茶髪の男が並んで立っている。癖のある茶色の髪の毛先は肩口につかないほどに短く、しかし長めの前髪で目元まで隠すような姿は、どこか粗野な旅人を感じさせる。
「コリンズ君もおんなじだね。カツラをかぶってもやっぱりそっくり!」
「オレは変装する時くらいはオヤジと違う姿でいたいのに、こんなおんなじ物しか用意されてないんだよ」
口を尖らせるコリンズもまた父親と同じような変装姿に身を包んでいる。彼らの目の前には賑やかな町の景色があり、町の外壁の内側に入れば、大通りの彼方に昼間でも色とりどりの明かりを放つ巨大な建物が見える。
「ラインハット王にもどこか似ていらっしゃいますな」
「デールの髪を参考にして作られてるからな。だからこれを被って俺とデールが並ぶと、ちょっとは兄弟に見られるんだぜ」
「そうなんです。ですから私も何度か、後姿を見間違えてしまって……国王様に呼びかけてしまったりして……」
「あはは、マリアならそういうことやりそう」
「俺はその度にショック受けてるけどな……」
拗ねるヘンリーに笑いながら謝るマリアを見て、リュカの心は温かくなったり、図らずも僅かに冷えたりする。
「この町って大きいからすぐ道に迷いそう……。お父さん、手を離さないでね」
町に入る前からポピーは人々で賑わう町の様子に少しの怯えを見せ、リュカの手を握る手に僅かに力を込める。魔物の脅威がある外を旅する方がよほど危険と隣り合わせだというのに、ポピーは多くの人々が往来するこの人間の町の方を恐れているのかも知れない。多くの建物が立ち並び、視界を悪くしているのも一つの原因だろう。建物一つの角を曲がって姿が見えなくなれば、それだけで迷子になってしまいそうな危険は確かにある。
「とりあえずどこかで食事をしてから、でしょうか」
「そうだね。ただあんまり食事に時間をかけたら、遊ぶ時間がなくなっちゃうから手早く済ませようか」
ラインハットの城からルーラの呪文で飛んできたオラクルベリーの町は既に昼を過ぎた時間を迎えている。白い雲がぽつりぽつりと浮かぶ空にある太陽はやや西に傾いている。リュカの言葉を聞いたサンチョは「それでは私が目ぼしい場所を探してきましょう」と早足で町の大通りに入り、キョロキョロと辺りを見渡したかと思えば、すぐに右の脇道へと入って行った。
「前にサンチョとこの町に来た時、ボク、スライムレースを見たんだよ。お父さんは見たことある? スライムレースってすっごく楽しいんだよ!」
「なんだ、ティミーはこの町に連れて来てもらったことがあるんだ」
「うん。この町はとても大きな町だから、お父さんやお母さんのことも何か分かるかも知れないからって、サンチョが連れて来てくれたんだよ」
「でもお父さんのこともお母さんのことも分からなかったの。こんなに大きな町なのに何も分からなくって……結局遊んで終わっちゃった」
バツが悪そうに俯くポピーに、リュカは明るく話しかける。
「二人が楽しかったのならそれでいいんだよ。サンチョだって二人が楽しんでくれる方が嬉しいんだからさ」
今よりももっと幼かった二人を連れて旅をするサンチョの姿を想像すれば、外での魔物の脅威も当然あったに違いないが、様々な人間が出入りするこのオラクルベリーの町での聞き込みは思ったよりも捗らなかったのだろうとリュカは想像する。外を旅する時には当然のように魔物の仲間に頼る部分が多くあっただろう。しかし町や村など人間の住む場所に入れば、二人の子供を守るのはサンチョただ一人だった。二人が決して街中ではぐれないようにと、彼らの手を離すことはなかったに違いない。そんな中、サンチョは町の宿でも二人を放っておくことなどできないために、この町の夜の姿を知らないままなのかも知れない。
「俺はたまにお忍びで来ることはあるけどさ、大体カジノに行くだけだから、あんまりこの町のことは知らねぇんだよな」
「何それ、息抜きに遊びに行ってるの?」
「ちげぇよ。あそこが一番色んな情報が飛び交ってるんだよ。それに人がごちゃごちゃいて紛れやすいしな」
「でもオヤジ、『今日は勝ったぜ!』とか言いながら帰ってくるときあるけど、あれって何なんだよ」
「やっぱり遊んでるんじゃん」
「そ、そりゃあ少しは遊ばないとかえって怪しまれるだろ」
「国費で遊んでるとしたら大問題だよ」
「んなことするか。俺のお小遣いでチビチビ遊んでるだけだよ」
「一国の宰相にもお小遣いってあるんだね、知らなかった」
リュカたちが他愛もない会話をしながらサンチョの後を追うように歩みを進めていると、ひょこっと姿を現したサンチョが笑顔でリュカたちを手招いている。七人と言う大所帯だが、一行を受け入れてくれる飲み食い処を見つけたようで、サンチョは道を歩いてくるリュカたちの姿をにこやかに見つめて待っていた。
夜には洒落たバーを展開する店で、店内にはいくつもの酒瓶が飾り立てる内装のように並べられている。入ったこともないような雰囲気の店内に、三人の子供だけではなく、マリアもまた物珍しそうに辺りを見回している。店内はちょうど空き始めた頃合いで、遅めの昼を楽しむカップルが一組に、仕事の合間に急いで食事をする町の人が食事の最中で、それに旅の人と思しきまだ年若い男性が一人カウンターに席を取り、恐らく酒の入ったグラスを傾けている。そこへがやがやと一行が入って行ったために、カップルの男女や町の人は一瞬彼らに目を向けたが、リュカたちもまた旅人を装う姿をしているため、すぐに興味を失ったように食事に戻る。
子供たちの気に入ったものをとメニューから選ばせ、次々と料理が運ばれてくる頃には遅めの昼を取っていたカップルと町の人は店を出ていた。残されたのはカウンター席に座る一人の男性だ。リュカがちらりとその男性の様子を見てみたところ、グラスは空になっており、男性はかなり酔った調子で店主に追加の酒を注文していた。
子供たちの食欲は旺盛で、三人とも会話を楽しむこともなく、ただひたすらにテーブルの上の食べ物と向き合っていた。午前中サンタローズに出かけていたリュカたちは子供たちがラインハットで過ごしていたその時の様子を知らない。子供たちと共にいたマリアに聞けば、子供たちがお腹を空かせてはいけないと軽く食べられるものを用意しようとしたが、三人がそれを拒んだという。午後はオラクルベリーの町に行くことが決まっていたため、子供たちは三人とも町で食事を取ることを楽しみにしていたらしい。
城で出される食事の方がよほど良い食事のはずだが、ティミーもポピーも町で食事ができることをただ楽しみ、コリンズは揚げただけの芋をティミーを真似るようにして堂々と手づかみでつまんで食べていた。
手早く食事を済ませ、すぐに店を出ようと思っていた一行だが、カウンター席に座る男性から漏れるすすり泣きに思わずそちらに目を向ける。リュカが目を向けた時にはちょうどカウンター越しの店の主人と目が合い、彼が困ったような顔つきになっているのを見て、リュカは静かに席を立つ。
「こんにちは。どうしたんですか、こんなにお酒も飲んで……」
リュカがカウンター席に座る青年の隣に腰かけると、横から様子を窺うように話しかける。青年は長い赤みがかった茶髪の髪を真っすぐに横顔に垂らし、リュカからはその表情を見ることができない。ただ彼の前に置かれている酒瓶は既に底をついており、かなりの酒量を腹に収めているのが分かる。その上彼は何も食べ物を口にはしていないようだった。リュカが話しかけても返事のない青年を見兼ね、カウンター越しから店主がリュカにそっと話しかける。
「そこの詩人さん、毎日飲んでっけど大丈夫なのかなぁ」
「毎日? 毎日こんなにお酒を?」
「あんまりお酒を飲むとノドを痛めるって言うけどねぇ」
そう言いながら店主は洗い上げたグラスを布で拭き続けている。今はちょうど昼と夕の合間の時間で、今の内に夕方から夜に訪れる客のためにと準備を始めているのだろう。料理の仕込みもある店主はそれだけをリュカに言うと、後は任せたと言わんばかりに店の奥へと姿を消してしまった。
リュカの隣では依然として詩人の青年が静かに泣いている。時折何かを思い出すのか、大きく嗚咽しそうになるのを堪えるように顔を両手で覆ったりする。余程悲しいことがあったのだろうと、リュカは特別青年に理由を問うこともなく、ただ彼の背中を優しく擦ってやった。
「やっと運命の女性と巡り合えたと思ったのに……」
振り絞るような青年の声が聞こえた。涙声に震える彼の声は聞き取りづらい。しかし詩人と言われた彼の声は話し声も澄んでいるものだとリュカには感じられた。この声で詩を奏でればさぞかし美しい音色になるのだろうと思える。
詩人の青年は再び込み上げる悲しみに嗚咽する。詩を作り、歌として奏でる生業の彼は恐らく人一倍感情豊かなのだろう。彼の言う運命の女性とは結ばれない運命となってしまったのかもしれない。失恋の痛手に、彼はその痛みを紛らすためにこの場で酒に溺れる毎日を暮らしているのだろうか。
リュカには実際の失恋の経験はない。しかし失恋の痛みは束の間経験した。サラボナの町で結婚を決めなければならないとなった前夜、リュカはビアンカに『弟のお守りはごめんだ』と突っぱねられた過去がある。覚悟していたつもりでも、いざ言われれば文字通り胸の中にぽっかりと穴が空いたような気になった。彼女がその時、自分を受け入れてくれるかもしれないと心のどこかで期待していただけに、彼女のその一言はリュカを打ちのめすには十分な威力を持っていた。泣きたい気持ちもよく分かる。自分もあの時、これからどうやって生きて行ったらいいのかを見失いかけた。
「なぜあんなに早く神に召されたのか……」
青年の背中を擦るリュカの手が止まる。静かな店内で、詩人の青年の声は皆にも聞こえた。子供たちの食事の手が止まり、ヘンリーが席を立った。サンチョがティミーが食べ散らかしている食べかすを集めて皿にまとめ、マリアは夫を追うように席を立つ。
青年の背中に当てられたままのリュカの手をヘンリーが静かに外すと、彼は詩人の青年とリュカの間に割り込むように身体を入れた。立ったまま背中を見せるヘンリーを見上げると、慣れない癖のある茶髪の髪が揺れていた。その姿が他人の様で、リュカは思わず席を立ち、他人のようなヘンリーに青年の隣の席を譲り、自分はその隣に再び腰を下ろす。
「それは辛かったな。酒を浴びるように飲んじまう気持ちも分かるよ」
リュカの代わりにと、今度はヘンリーが青年の背中に手を当てる。また反対側にはマリアが立ち、同じように青年の腕を支えるように手を添えている。
「本当に、本当に、僕の全てだったんです、彼女が。彼女が笑ってくれるから、こちらを向いてくれるから、傍に居てくれるから生きていけるって、そう思ってたのに……」
青年の言葉一つ一つがリュカの胸に否応なく刺さる。カウンターに落ちるリュカの視線が揺れる。彼の言う通りだ。彼女が笑ってくれるから、こちらを向いてくれるから、傍に居てくれるから、自分の世界の全てが色づいて見えるというのに、彼女のいない世界にはどうしようもないほどに色が足りない。
「僕では彼女を救うことができなかった……本当に無力で、どうしようもない……」
青年の言葉はそのままリュカの言葉になる。今もどこかで彼女は助けを待っていてくれているとリュカは信じている。しかし現実はどうだろう。妻の行方は依然として知れず、果たして石の呪いを受けたままなのか、運良くリュカのように石の呪いを解き、人間としての時を過ごしているのか、はたまた既にこの世から消えてしまっているのか。詩人の青年の悲しみがリュカをも襲う。生まれて間もない子供たちを守ったビアンカは強い女性だ。しかし人間の命と言うのは信じがたいほどに脆い。リュカの父パパスもまた敵の炎に焼かれこの世から去ってしまった。百戦錬磨を絵に描いたような父でさえ、死ぬときは呆気ない。
彼女の無事を信じる心を持ちたいリュカだが、見知らぬ詩人の青年の言葉でこれほど動揺してしまうのは、常に胸の内に不安が渦巻いているからだ。少しでもつつけば溢れ出しそうになる不安は、彼女が無事に戻ってきてくれるまで持ち続けるのだろう。
もし戻らなかったら、その時はリュカ自身も今の詩人の青年のように我を失う時が来るのかも知れない。
青年の深い悲しみに、隣に腰かけるヘンリーもかける言葉が見つからない。ただ悲しみに暮れる青年の心に寄り添うのが精いっぱいだ。彼自身も、もしマリアを失えば、と言ったことを想像しているに違いない。十年経っても妻を底なしに愛する彼のことだ。想像するだけで耐えられないような思いを感じているのだろう。相変わらず親分は優しいなと、リュカの心が僅かに和む。
「詩人さん、泣かないで……。きれいな女の人が心配してるよ」
いつの間にかリュカの近くに来ていたポピーが、彼らの座る席の後ろからそっと声をかける。暗い思考から引っ張り出されたリュカは、近くに来ていたポピーの顔を振り向き見る。彼女はリュカを見るでもなく、ヘンリーや詩人の青年を見るでもなく、マリアを見上げている。しかしどこか焦点の合っていないポピーの目は、マリアを透かして何かを見ているようにも見える。
「女の人も、悲しいんだね。とっても辛そうだもの……」
ポピーの口調は明らかにマリアのことを言っているのではなかった。彼女の視線は詩人のすぐ傍の中空に留まり、そこにリュカたちには見ることのできない一人の女性の姿を見い出している。女性の表情をそのまま映したかのような悲し気な様子が、ポピーに見ることができた。
後姿を見せているポピーに視線を向け、テーブル席に着いたままのティミーとコリンズがこそこそと話す。
「おい、ティミーには見えるのか?」
「見えるって、何が?」
「何がって、そりゃお前、アレだよ、アレ。察しろよ」
「ああ、ユーレイ? ボクには見えないけど、きっとそこにいるんだろうね。ポピーにしか見えてないなんて、ちょっとズルイよね」
「うおっ、お前、よくそんな平気な感じで言えるな、ゆ、ゆうれ……うぐっ、無理だ、オレには言えない……」
「残す方も残される方も、思いを抱えたままでは動けなくなるのかも知れません」
そう言いながらサンチョはふと辺りを見渡してみたが、僅かばかり望んだ気配は当然のように感じられない。たとえこの世に思いを残していたとしても、それを思いを残す当人に伝える力を得られる者と言うのは非常に稀なのかも知れない。リュカがその気配を感じていないとすれば、ましてや自分になど感じられるものかと、サンチョは自嘲気味に小さく笑う。
「ポピーちゃんには女の人が見えているのね?」
「……はい。マリア様に重なるように立って、詩人さんの肩に頭を乗せて……」
亡くなった女性もまた、この詩人の青年を運命の人と信じ、これからの人生を歩んで行こうとしていたのだろう。どのような理由で女性が亡くなったのかなど、リュカたちは知らなくても良いことだ。ただ、二人の恋人が生死を持って道が分かたれたという事実が、耐え難い苦しみに襲われることだということ、それだけが分かれば十分だ。
「僕の肩に? ……どうして僕には彼女が見えないんですか」
青年が自身の肩に目をやるが、当然彼の目に映るのは自分の肩だけだ。そこに愛した女性の姿など欠片も映り込まない。その現実にまた彼は自棄を起こしたように、目の前に置かれるほぼ空のグラスを手に取る。しかしそれをヘンリーが上から押さえつけて止めた。
「マスターも言ってただろ。あんた、詩人なら自分の喉を大事にしないと」
「僕は彼女がいたから歌えたんです。彼女のいない世界で歌を歌うなんて、そんな意味のないことを……」
「あんたが歌を辞めたら彼女だって悲しむんじゃないかな」
「僕が歌を続けようが辞めようが、もう聞いてくれる彼女がいないなら、どちらでも同じことです……」
「どっちでも一緒だってんなら、自分を大事にするんだ」
「あなたには関係ないでしょう!? 酒を飲めば、飲んでいる間は、辛いことも悲しいことも忘れられるんです。僕の身体がどうなろうが、別に、どうでもいいことです」
そう言いながら再び彼はカウンターの向こう側に姿を消している店主に追加の酒を注文する。顔は真っ赤で、呂律も怪しい。意識は保っているが、今この時の記憶を後に持っていられるかどうか定かではない。
自分を失くしてしまいたい気持ちをリュカは理解していた。自分が苦しみも悲しみも分からないほど無くなってしまえば、全てから解放されて楽になれると、人生の苦しみの場に立つたびにそんなことが頭を過った。しかしそれでも、リュカは今生きている。
「それでも、自分で死ぬ勇気も沸かないなら、君はこれから生きることを考えないと」
目の前のカウンターに視線を落としながら、リュカがぽつりとそう言った。隣に座るヘンリーが小さく息を吐くのが聞こえた。マリアがカウンターの上から視線を向けて来るのが分かった。ポピーがカウンターの上に乗るリュカの腕に手を乗せた。彼女の暖かな体温を感じた。
「綺麗ごとでも何でもなくてさ、残された人は、生きるべきなんだと思うよ」
父パパスを喪い、奴隷の身に落とされた時に絶望を味わい、石の呪いを受け、為す術もなく妻ビアンカはどこかへと連れ去られてから八年の時を無為に過ごし、一体自分は何のために生きているのかと自問することにも飽きるほどだった。年月が全てを解決するわけではない。あの時受けた悲しみも苦しみも、今起こったことのように思い出すことができる。
しかし自分の周りに流れる時間は止まってはくれず、子供たちは知らぬ間に赤ん坊から少年少女に成長を遂げていた。成長した彼らが自分を「お父さん」と呼んでくれた時、リュカはいくら絶望しても、生きていればまた新たな希望が迎えてくれるのだと信じることができた。もしあの時に死んでしまっていたら、二つの光に会うことはできなかった。
「それに亡くなった恋人があなたのことを本当に思ってたら、きっと、生きていて欲しいって思うんじゃないかな」
パパスが敵の炎に焼かれ息絶えようとしている時、何を思っていたのかはリュカには分からない。しかし父は自身の最期を見定めた時に、リュカを絶望させないための言葉をかけた。父が死んでも、母はどこかで生きている。その一言で、リュカはこれからも生きて行かなくてはならないのだと思うことができた。父のためにも、母のためにも、自分のためにも、これから何としてでも母を捜すのだと、幼心にもそう決心した。
無責任だなとも思う。自分がいなくなった後も頑張って生きて欲しいと願うのは、共にいる責任を放り出しているじゃないかと愚痴りたくもなる。しかしそれが純粋な愛の形なのだろうと気づく。たとえ自身がこの世から消え去る時があっても、愛する者に後を追って欲しいとは思わない。自分との幸せがそこで途切れても、愛する者には生きた世界に残っていて欲しい。その世界が果たして善か悪かなど誰にも分からないが、その中でも残された者の幸せを願うのが去りゆく者の思いであり、愛の形なのだろうと思うと、リュカの脳裏には自然と父と過ごした幸せな日々が映し出される。
「詩人さん、歌を歌ってあげたらいいと思う。歌ならきっと聞こえると思うもの」
ポピーはそう言いながら、やはり詩人の青年の肩に視線を向けている。彼女の目には相変わらず詩人の肩に頭を傾けている女性の姿が見えている。
「思いのこもった歌や祈りは、どこまでも届くでしょう。貴方の大事な人もきっと、待っているのではないでしょうか」
「彼女のために歌える歌があるんだろ? 今すぐは無理でもさ、そのうち……な」
マリアとヘンリーの言葉に、詩人の青年は虚ろな目をカウンターテーブルに落としたまま、酒精中毒になりかけた頭の中で愛する女性の姿を思い出す。どういうわけか、まだ十歳ほどの少女には彼女の姿が見えているという。すぐ近くにいてくれる彼女は今も自分のことを想ってくれているのだと思えば、青年の沈み切っていた心は僅かばかり浮上した。
ヘンリーが店主に頼んだグラスの水を飲み始めた青年を見て、リュカは彼も時間をかけながらもこれから生きることへ歩み出すのだろうと思えた。大事な人を喪うことは耐え難い悲しみ苦しみに襲われる。しかしそれは人間ならば多くの人が通って行かねばならない道でもある。それほどに人間の命は儚いもので、詩を生み出す青年ならばその真実を確かに受け止めることができるのではと思う。
青年を店に残して先に立ち去ることには気が引けたが、リュカたちにも大した時間はない。正気を取り戻したように落ち着いた青年が、静かな口調でカウンター越しに店主とぼそぼそと話をし始めたのを見計らい、リュカたちは店を後にした。店主も自棄酒を止め、まともに話し始めた青年を相手にしながら、リュカたちに小さく礼を述べて送り出してくれた。店主の仕事を労うようにヘンリーが多めの代金をカウンターに置き、マリアは今も涙の止まらない彼のためにとハンカチを差し出し、カウンターの上に置いておいた。ポピーの視線は依然として青年の肩の辺りを彷徨っていたが、娘がふっと微笑んだ瞬間を見たリュカは、きっと何か良いことがあったのだろうと青年の今後が開けることを願いながらその場を立ち去った。



「オヤジ、いつもこんなところに来てるのか?」
「いつもじゃない。たまにだろ。いつもは城にいるじゃねぇかよ、俺」
オラクルベリーの町の中心に位置する、町のどこからでも目にすることのできる巨大施設カジノを目の前にして、コリンズが口を開けたまま建物を見上げている。日が傾き、日差しが柔らかくなってきた時分で、施設の看板である色とりどりの照明は既に煌びやかな明かりを放っている。その巨大施設に出入りする人が後を絶たない状況を見て、コリンズは「城より人が多いんじゃないのか?」と初めて見る、まるで怪物のような巨大な施設に恐れをなしている。
「ヘンリーはどれくらいここには来てるの?」
「あ、言っとくけど、外では俺は『ハリー』って名前で通してるからな。呼ぶときはそう呼べよ」
「ええ? 変装してるのに、その上名前まで変えてるの? もうヘンリーじゃないじゃん」
「そうしてるんだからそれでいいんだよ。何を言ってるんだお前は」
リュカは友人家族とのんびり旅行の気分でオラクルベリーの町を訪れた気になっていたが、オラクルベリーからそれほど離れていないラインハットの宰相が堂々とこの町で遊ぶことなどできないということを改めて知った気がした。変装して、自分ではない誰かになって行動する窮屈さにリュカは友人に同情したが、当の友人は別人になって行動することにどこか楽しみを感じているようにも見える。
「主人は月に一度はこのオラクルベリーの町に視察に行くんですよ」
先ほどのリュカの問いかけに答えるように、マリアがリュカの後ろから話しかける。修道女の印象がまだ色濃く残るマリアがこのカジノの前に立っていることに違和感を覚えるが、彼女自身は大して動じていない様子だ。容姿こそまだ幼さを残すマリアだが、ラインハットの宰相の妻としての立場に、コリンズと言う息子を産み育てる中で、確実に肝が据わった様子が見て取れる。
「その時はマリアも一緒に行くの?」
「いいえ、私とコリンズは国で留守を預かっています」
「じゃあヘンリー一人で羽を伸ばしてるんだ」
「誤解を生むような言い方すんな。俺は仕事してんの、仕事を」
そう言いながら慣れた様子でカジノの施設に入って行くヘンリーの後姿を、リュカは訝し気な目つきで見つめる。
「まあ、ここは折角ですから皆で楽しいひと時を過ごしましょう、坊っちゃん」
「このオラクルベリーの訪問はヘンリーが誘ってくれたんだから、ヘンリーのおごりでいいんだよね?」
「この前、主人がこの町から戻った時はとても上機嫌でしたから、恐らく大丈夫だと思いますよ」
「それはさぞかし勝ったのでしょうなぁ」
マリアの言葉にサンチョが笑い、ヘンリーはそれとは知らずにいち早くカジノの中へと足を踏み入れた。怖気づくようなコリンズの背中を押すようにティミーが意気揚々と歩いて行く。ただポピーは一人、顔をしかめつつリュカの隣を歩く。
「私、カジノあんまり好きじゃないの。だってうるさいんだもん」
ポピーの言う通り、カジノの施設の中は機械が生み出すガチャガチャとした音や、酒の入った人々の大きな声で交わされる会話などの音で溢れかえっている。近くの人と話をするにも大きめの声を出さないと聞こえないほどだ。
「ああ、確かにね。僕もそういうところはあんまり好きじゃないかも」
「あっ、でもね、ここってお芝居もやっててね、それは見てみたいなぁって思ってたの」
以前にこの町を訪れた時には、兄のティミーがスライムレースという遊戯に興じてしまい、そのせいもあって芝居を見る時間が取れなかったという。今回の視察と言う名のただの旅行にもそれほどの時間はない。子供たちを夜遅くまで遊ばせるわけにもいかず、第一夜のカジノに子供たちを連れて来てはならないとリュカの本能が判断している。
「どうしようか。今の時間からだと、きっと芝居も遊びもって、全部を楽しむのは無理だよね」
「それならば別行動にしましょうか。私がポピーちゃんと一緒にお芝居を見てきますよ」
「ポピーとマリアを二人で放っておくわけにはいかないよ。やっぱり僕も一緒に……」
「実は私も一度、お芝居と言うものを見てみたかったんですよね。ですから私がご一緒しますよ。それならば坊っちゃんも安心でしょう」
サンチョの言葉には気遣いと言うよりも、単純に芝居を見てみたいという興味の方が強く感じられた。それに彼はこの場で遊びに興じるよりも、本当はゆっくりと過ごしていたいという思いがあるのかも知れない。リュカはポピーとマリアの二人の護衛としてもサンチョは適任だと思い、素直に彼に任せることにした。芝居が終わる頃に一度、カジノの入口で待ち合わせをすると打ち合わせ、リュカは三人とその場で別れた。
先にコイン交換所へ行っていた見慣れないヘンリーの姿を見つけると、リュカは踵を返すようにして彼のところへ向かう。彼の両脇にはティミーとコリンズが辺りをキョロキョロと見渡しながら落ち着かない様子を見せている。
「おお、リュカ。……あれ? マリアたちは?」
「お芝居を見に行きたいってポピーが言うから、一緒に行ってもらっちゃった。サンチョも一緒にね」
「ああ、そうなんだ。まあ、サンチョさんがいてくれれば問題ないな」
「マリアってここでお芝居見たことあるのかな。何だか初めてって感じしなかったけど」
「ん? あー……、そうかもな。ほらよ、お前にはこんだけ預けといてやるから、夕方までには倍にしろよ」
「……相変わらず無茶な約束させようとするなあ」
「どうせお前は一銭も持たされてないんだろ。ありがたく俺のコインを分けてやるって言ってんだから、それくらいは礼として当然だよなぁ」
今回のラインハットから始まる周辺地域の視察で、ヘンリーの言う通りリュカは一銭の金も持たされてはいない。リュカたちの財布役はサンチョが一手に担い、今もサンチョが懐に財布を収めたままポピーたちと共に芝居が行われる一角へと向かって行った。
「わーい! お父さん、スライムレースやろうよっ! ボク、予想してあげる!」
先ほどポピーが愚痴っていた通り、ティミーは余程この場でスライムレースという遊戯を楽しんだらしい。その時の記憶は鮮明に残っているらしく、ティミーはリュカの手を引いて真っ先にその場所へと向かおうとする。どうやらその場所はこの真下、地下にあるらしい。
「オヤジ、なんでここにはハダカみたいな女の人がたくさんいるんだ?」
ラインハット城の中で常に慎ましやかな服装に身を包む女性を見慣れているコリンズにとって、カジノで働くバニー姿の女性たちは奇妙なもので、思わずその姿をちらちらと見てしまう。
「まあ、その方が男の客が金を落としてってくれるってことだよ」
「ヘンリー、その説明はちょっと難しいと思うんだけどな」
「あの女の人がウサギの魔物だったら、ボクだってびっくりしてお金を落としちゃうかも」
「そういうことなのか? あの女たちはみんな、魔物なのか……?」
「まあなぁ、ある意味マモノ?」
「僕に聞かないでくれる?」
中身のないような会話をしながらも、ティミーの手がぐいぐいとリュカの手を引き、彼らは揃って地下へと潜る。この施設には魔物たちが戦いを繰り広げる闘技場も設けられている。かつてはそこでリュカも少々の遊びに興じたこともあるが、地下に別の遊戯場が広がっていることは知らなかった。
リュカは見たこともない色のスライムがそこらで跳ねている光景を目を丸くして見ていた。通常の水色のスライムだけではなく、黄色に赤に緑にと、様々なスライムが自由にそこらを移動しており、この場所を訪れる客が自由にスライムに触れることも可能だ。足元に近づいてきた赤色のスライムの前でしゃがみこんだリュカが、その身体を両手に乗せて顔を近づけると、スライムからは仄かに苺の匂いがした。ここにいるスライムたちは食べ物によってその色を変えているらしく、緑のスライムからは葉の香りが漂い、黄色のスライムからは何とも言えない異国の食べ物の匂いがした。
「スラりんも葉っぱばっかり食べたらこんな色になるのかな」
「でもピエールは別に葉っぱばっかり食べてあんな色になってるんじゃないよね、お父さん」
「うーん、どういうことなんだろう。キングスもベホズンも食べてるものは変わらないと思うんだけど……でも今度試してみようか。グランバニアの近くだったら苺に近い実はたくさん採れるよね」
「赤いキングスって強そうだよね! 見てみたいなぁ」
「……なあ、お前らって本当に仲間のこと、大事に思ってんのかよ」
「オレ、たまにティミーが怖いよ」
リュカとヘンリーは各々子供たちにどのスライムが勝つかを予想させ、リュカは黄色のスライムに、ヘンリーは緑のスライムにコインを賭けた。ティミー曰く、「あんなに強烈なニオイがするんだから勝つに決まってるよ!」と即決し、コリンズは「あいつならどんな手を使っても勝つ気がする」と不敵な笑みを浮かべて決めた。
カジノ施設内でもこの場所は子供も楽しめるような和やかな場所で、他にも親子連れでゲームに興じる者たちの姿もあった。子供たちのはしゃぐ声に、出走を決めているスライムたちは各々反応をする。
ゲームが始まった瞬間、リュカはその光景に口をあんぐりと開けた。色とりどりのスライムたちは用意されたレース用のレーンを、もったりぺったりのったりと、自由気ままに跳ねて進む。途中、勢いよく跳ねた黄色スライムがリードを広げるかと思えば、地面に思い切り顔を打ち付けて目を回している。その姿を横目に通り過ぎる緑スライムが先頭になり、横に並ぼうとする赤スライムの邪魔をしようと頭のトンガリを突き出して見事転ばせた。スライムのすることだからと、特別厳しいルールはないようで、緑スライムの反則技も見逃される。しかし天罰が下されるように、その後勢いづいた緑スライムは調子に乗って高く飛び上がり、地面に激突して自滅した。
そしてそのレースは、最も無難な走りを見せていた青スライムが何事もなかったかのように先頭でゴールを決めた。ティミーもコリンズも悔しがり、もう一度挑戦すると父にせがむ。
「あれってさ、うちのスラりんを出場させるのは……」
「ダメに決まってんだろ。一瞬で勝負がついちまう」
「じゃあスラぼう」
「もう一匹いんのかよ」
結局三度のレースに挑んだが、ティミーもコリンズも一度も当てることができなかった。レースに出るスライムたちは何とも気ままで、直前まで調子が良さそうな様子を見せているスライムでも、レースが始まれば途端に緊張に押しつぶされるように蹲ってしまったり、直前には今にも気絶するのではと思うほどに緊張しているスライムが、本番のレースではとてつもない勢いで走り抜けてしまったりと、見事に皆の予想を裏切ってくれるのだ。それならばと裏をかいて賭けてみれば、順当なレースを繰り広げたりする。予想などあってないようなものだと、直前のスライムの様子など確かめずに当てずっぽうで賭けたらそれが当たったりする。特別考えさせないような遊びゆえに、子供たちからの人気が高いのかもしれないと、リュカはこのレースが一定の人気を持っていることに何となく納得していた。
「ティミーは勇者なんだから、こういうレースも分かるんじゃないのかよ」
「勇者がゲームに強いなんて聞いたことないよ」
「なんだよー、もっと何でもできるようになれよな」
「ムチャクチャ言うなぁ、コリンズ君は」
まだゲームをすると粘りそうになる子供たちを諫め、リュカたちは地上階へと戻って行った。遊ぶ時間は限られている。ティミーはこの場所に来たことがあるとは言え、カジノ施設全体で遊んだというわけではない。コリンズに至っては、このような場所に出入りすること自体が初めてだ。
今回のオラクルベリー視察の大きな目的は、単に子供たちを思う存分遊ばせることが主だったものだった。ティミーやポピーには普段の厳しい現実から離れて、ただ純粋に子供としての楽しみに興じて欲しい、コリンズは城での生活では経験できない庶民の遊びを経験させてみたいと、リュカやヘンリーだけではなく、グランバニアとラインハットの者たち皆がそう思っており、この機会を設けたのだった。とは言え、たった一日だけだ。時間は明日の昼までのため、その時間を無駄にしてはならないと、リュカたちは一階にある闘技場に向かう。
「あっ、こっちならお父さんが予想すれば絶対に当たるよ!」
「ティミー君、分かってないな。君の親父さんは魔物と仲良くできても、こういうのはポンコツだったりするんだぜ」
「僕のことをポンコツ呼ばわりしないでくれる? じゃあそういうヘンリーはどうなんだよ。まあ、君は魔物の気持ちなんて分かろうとしてないもんね。未だにスラりんにも抱っこを拒否されるし」
「はあ!? あれは拒否されてるんじゃねえからな。ただマリアの方がいいだろって、俺は敢えて譲ってやってんだよ。むしろ俺の方が魔物の気持ちが分かってるかもなぁ!」
「うわぁ、すごい強がり! じゃあ魔物の気持ちが分かるなら、僕とヘンリーでどっちが勝つか勝負しようよ」
「おう、望むところだ! お前、ズルするんじゃねえぞ」
「そんなこと、ヘンリーに言われたくないね」
「俺の名はハリーだって言ってんだろ! もうちょっと協力しろよ!」
「こんな普通の町の人みたいな君を、誰が王族って疑うのさ! 自信過剰だよ!」
「んだと!? お前なんかいっつも小汚い格好しやがって、少しは自分の立場を考えろよな」
「今は旅人なんだからこれくらいでいいんです~、小汚いくらいでちょうどいいんです~」
舌戦の終わらない互いの父を見てから、ティミーとコリンズが目を見合わせる。
「……なあ、ティミー、お前の親父さんって……」
「うん、そうだね。……ポピーには黙っておいてくれる?」
子供たちが黙り込む横で、本気で対戦表とにらめっこを始めるリュカとヘンリー。そして闘技場に姿を現し、準備運動を始めた次の順番の魔物たちの様子をしっかりと見るように目を細め、リュカはメイジキメラに、ヘンリーはドラゴンマッドにコインを賭けた。
「うちのメッキーも回復呪文が使えるから、メイジキメラも回復できるはずだよね」
「回復なんかさせねぇうちに倒しちまえばこっちのもんだけどな」
「マッドは力は強いけど、ちょっと戦略的に……あんまりオススメしないよ」
「空も飛べるし、力だって強いだろ。圧勝だな、これは」
「と言うか一番倍率の低い魔物に賭けるなんて、親分手堅くなったねえ」
「うるせぇ、人をチキン野郎みたいに言うな」
「そういうことじゃなくて、おじさんになって落ち着いたって話……」
「あっ! ほら、もう始まるよ!」
「うわ、すげぇ……何アレ、あんな魔物見たことないぞ」
人々の歓声が響き渡る闘技場で、対戦する魔物たちが互いに闘志に燃えるような視線をかち合わせる。普段は外の世界の魔物を怖がる人々も、この闘技場で戦いを繰り広げる魔物たちに対しては単に娯楽の対象として存分に歓声を浴びせている。人間の歓声を向けられる魔物たちも、各々その声を力にして戦うのだから、この場所には唯一無二の独特な雰囲気が漂っていると感じる。それもこれも、この町に住むモンスター爺さんの力のお陰だ。魔物たちを自身に懐かせる彼の力はもしかしたらリュカの母の故郷エルヘブンに通じるものなのではないかと、リュカは密かに思っている。
魔物たちの戦いが始まると、ティミーは周りと一緒になって歓声を上げ、コリンズは恐る恐るその戦いを見る。初めはメイジキメラが優勢だった。多彩な呪文を操るメイジキメラはギラやヒャドを唱え、相手の魔物を翻弄する。しかし宙を飛び回りながら呪文を唱えまくるメイジキメラを鬱陶しいと言わんばかりに、ドラゴンマッドが同じように宙に飛び上がると、力任せに尻尾でその身体を打ち付けた。地面に叩きつけられたメイジキメラはすかさず自身にホイミをかけようとしたが、寸前にベロゴンロードの大きな舌に絡めとられる。気分が悪くなったようにぐったりしたメイジキメラに追い打ちをかけるように、ベロゴンロードが更に舐めまわす。その光景に観客席からも気分の悪そうな低い声が上がった。
すっかり竦んで動けなくなったメイジキメラの身体を、ドラゴンマッドががぶりと大口を開けて咥えると、そのまま放り投げるように闘技場の隅に飛ばしてしまった。目を回して気を失ったメイジキメラは戦線から離脱し、回復役として控えているホイミスライム数匹に手当てを受け始めた。
「お前はやっぱり魔物と仲良くできても、こういうのは向いてないよなぁ。わっはっはっ」
「ねえ、あのドラゴンマッドって中に何か違う魔物が入ってたりしない?」
「それってどういうこと、お父さん?」
「だってあんなにまともに戦えるなんて、ドラゴンマッドじゃないみたいだよ。もっと無茶苦茶に戦うと思ってたのに」
「お父さん……マッドには言わないでおいてあげるね」
「ティミーはいつもあんな魔物と戦ってるのかよ。あんなの……見てるだけでも気分が悪くなる」
コリンズが目を向けているのは、相変わらず大きな舌をだらりと垂れているベロゴンロードだ。大きな舌からは絶えず涎が滴っている。一滴でもあの涎に触れたら卒倒してしまいそうだと、コリンズは思い切り顔を歪めながら視線を向けていた。
それは魔物同士でも同じようで、ドラゴンマッドはなるべく相手の大きな舌の餌食にならないように、宙を飛びながらつかず離れずの攻撃を加える。リュカはそんな攻撃方法を見せるドラゴンマッドを見ながら、やはりあの中にはメッサーラ当たりの魔物が入っているに違いないと、この戦いの不正を一人疑っていた。ドラゴンマッドなら何も考えないまま、ベロゴンロードの身体に体当たりでも食らわせそうだと思っていたが、そんなことにはならない。
体当たりでも食らわせていれば、ドラゴンマッドの勝利で戦いは終わったのかも知れない。しかし下手につかず離れずの攻撃を加えることで決め手に欠ける。一見鈍重そうなベロゴンロードが一瞬の隙をついてドラゴンマッドの身体をべろりとひと舐めすれば、その真っ青な身体は気味悪さに地面に落ち、そのままベロゴンロードが飛び上がってのしかかり、勝敗は決まった。倍率の最も高い魔物が勝利を決めたことに、観客席からは多くの低い声が鳴り響いていた。
「この勝負は引き分けだね」
「なんでだよ。俺とお前との勝負だったら、俺の勝ちだろ」
「いや、一番勝つ魔物を当てないとダメだよ。闘技場ってそういう遊びでしょ?」
「コインが減っちゃっただけだもんね。何だか、誰も勝ってない感じがするよ」
「そんなことはないだろ! 父上が賭けた方が後まで残ったじゃないかよ」
次の対戦まではしばしの休息がある。その間に次の対戦カードを掲げた色っぽい女性が闘技場の周りを歩き、闘技場に集まる客の足を留める役割を果たす。その対戦カードを凝視する互いの父を見て、ティミーとコリンズが目を見合わせ、小さく頷き合う。
「お父さん、そろそろポピーたちの方も終わるんじゃないかな」
「んー、そうかなぁ。もう少しくらいは平気だと思うけど」
「父上、あの女の人みたいなのがボンキュッボンってヤツなのですか?」
「おー、そうそう、あれはまさしくそうだな、男の夢が詰まった……って、お前誰からそんな言葉を聞いたんだよ」
「城の兵士が話してた」
「しょーもない話をしてんなぁ、城のヤツらは」
「しょーもない話をしかけた人が何を言ってるんだかね」
「お父さん、あの女の人には男の人の夢が詰まってるの? どういうこと?」
「どうということもないから、ティミーは早くそのことを忘れてね」
「父上、母上に後で聞いてみてもいいですか? 女の人のことだから、母上に聞いた方がきっと分かりますよね!」
「そんな生き生きした目で聞いてきやがって……絶対マリアに聞くんじゃないぞ」
三人の艶やかな女性が大きな対戦カードを両手に掲げ、闘技場内をしゃなりしゃなりと歩いている。ティミーが物珍しそうにその姿を見つめ、コリンズがどこか真剣な様子でその姿を見つめる状況に、リュカもヘンリーも思わず困惑顔で押し黙る。そしてすっかり居心地の悪くなった闘技場を後にし、リュカたちは後に待ち合わせをしていたカジノ施設の入口に向かって行った。
闘技場を出たところで喉が渇いたと言う子供たちに、施設内では無料で配られている葡萄ジュースを二つ手にすると、二人は喜んでジュースを飲んだ。年相応の笑顔を見せるティミーとコリンズを見れば、彼らをこの場所に連れてきて良かったとリュカは思う。勇者や王子などと言う身分に囚われずに、普通の町の子供のように会話をして笑い合って、時には馬鹿な話もすることがどれだけ大事なことなのか、リュカには分かっている。何事も一人で抱え込まないことが大事なのだ。ヘンリーもそのことを心得ているからこそ、今回の小旅行にコリンズを連れてきたのだろう。
「おや、坊っちゃんたちも入口に向かうところでしたか」
後ろから声をかけてきたサンチョに、リュカは振り向く。サンチョのすぐ後ろにはマリアが立ち、彼女はまるで自分の娘のようにポピーと手を繋いでいた。子供がこの場所ではぐれないようにと、マリアは自然な親心と共に彼女の手を取ってくれていたのだろうと、リュカは思わずその光景に微笑んだ。
「どうだった? 芝居は楽しめた?」
「とっても楽しかったの! お芝居なんだけど、本当のことみたいで、お歌も上手で、音楽もすごくって! 本当に全部、すごかったの!」
まるで兄ティミーのような感情豊かな説明をするポピーを見て、リュカは彼女が本当にこの場所で楽しめたのだと感じ、釣られて笑顔になった。
「ポピーを連れてってくれてありがとう、マリアもサンチョも」
「いいえ、私ももう十年ぶりくらいに楽しめました。お礼を言いたいのはこちらの方ですよ」
「なかなか見応えのあるお芝居でしたぞ。グランバニアでもあのような芝居ができれば、今度の新年祭もまた一段と盛り上がりそうですな」
自然と浮かぶようなマリアの笑顔に、思わず弾むサンチョの声に、彼らもまたこの場でのこの時間を楽しんでいるのだと感じられる。楽しければ楽しいほど、リュカの心には色濃い影が差し込むが、子供たちのためならば妻も許してくれるだろうとリュカは笑みを浮かべる。
今日はこのまま町の宿を取って宿泊するのだとヘンリーが言えば、コリンズが驚いたように「予約を取ってないのかよ!」と一人騒いでいた。町で宿を取るなどと言う経験など皆無のコリンズが顔を青ざめさせていると、ティミーがその手を引いて「予約してないってことは色々選べるってことだよ!」とカジノ施設の出口を目指す。その後をヘンリーが「バカ高い宿を選ぶなよ!」と調子づきそうな二人に忠告しながら追いかける。
「何だか、楽しそうだよね」
三人の後姿を追うようにカジノを出たリュカは、夕方の柔らかな日差しに照らされたオラクルベリーの町の景色の中でそう思い、口にした。カジノという大きな娯楽施設を町の中心に据えているこの場所は、外の世界が闇に蝕まれようとしているなどと言う噂とは無関係のように思える。しかしカジノが今もこれだけ賑わっているということは、厳しい現実から逃れるためにこの場所に足繁く通う者も当然いるのだろう。
「お父さん」
今はリュカの手と手を繋ぎ歩いているポピーが、隣で歩きながら呟くように言う。彼女もまた前を行く三人のはしゃいだ様子を見つめている。
「今度はお母さんも一緒に来られるといいね」
彼女のもう片方の手は今もマリアと繋がれている。本来、そこにいるべきなのは、彼女の母親であるビアンカだ。ポピーは今、父と母と手を繋ぐという疑似体験をしている。しかし彼女の言葉は確実に母がこの場にいないことを厳しくも表している。
「そうだね。きっとお母さんならこの場所で一緒に楽しんでくれると思うよ」
成長したとは言え、ティミーもポピーもまだ子供でいてくれる。二人がまだ子供の内に会わせてやりたいとリュカは強く思う。どんなに成長しても二人がビアンカの子供であることには変わりないが、今のこの時を逃してしまうことがどれほど勿体ないことなのかをリュカは今まさに実感している。
この町を訪れた大きな目的、それは子供たちに楽しい時間を過ごしてもらうためだが、リュカにはもう一つ大事な目的があった。その目的はまだ達成されていない。これから宿を取り、夜を迎えた時、リュカはその目的のために一人、この町を歩くつもりでいる。幸い空は晴れ渡り、どこもかしこも夕焼け色に染まる空にはじきに星空が広がるだろう。星空と対話をするかの人と、リュカは会わねばならないと思いながら綺麗に染まる橙色の空を見上げていた。



オラクルベリーの町は夜でも空に明るさを映す。それは巨大なカジノの施設が照らし出す色とりどりの照明で、あちこちに投げられる七色の照明は夜空さえも彩る。子供たちが見れば喜びそうな煌びやかな光景だが、夜のオラクルベリーの町はあまり子供を連れて歩きたいような場所ではない。
大通りを行く人の数は昼間に比べて少ないものの、一般の町や村のような静けさはない。まるで光を追い求める虫のように、カジノの光を求めて歩き向かう大人がちらほらといる。リュカもその一人となるかのように紛れ歩き、旅装用のマントを身に巻いて大通りを歩いて行く。
宿で二部屋を取り、ヘンリー一家と分かれて宿泊している。初めはヘンリーも誘おうかと思っていた。しかし彼も多忙の中、時間を作り出して今回のオラクルベリー訪問というただの遊びの時間を設けてくれたのだ。彼は彼で大事な家族がある。今後二度と経験できないかもしれないオラクルベリーでの家族との自由な時間を、邪魔したいとは思わなかった。
同室のサンチョの目を盗むために、リュカは一度子供たちと床に就いたフリをした。上等な宿を選び、広いベッドには親子三人で寝られる幅があった。成長したティミーとポピーと寝るには少々窮屈ではあったが、リュカは両脇に眠る子供たちと共にいかにも寝ていると言った深い寝息を立てていた。そのうちサンチョも床に就き、いびきをかき始めたのを見計らってリュカは用心深くベッドを降りた。ティミーが相変わらず芸術的な寝相を見せていたが、彼を抱き上げてベッドに再び寝かせても、深い眠りに就いているティミーが起きることはなかった。ただ心配させないようにと、サンチョの眠る枕の脇に、一枚の書置きだけを残しておいた。『町で有名な占い師のところへ行ってきます』と一言残しておくだけで、サンチョなら理解してくれるはずだと、リュカは子供たちをサンチョに任せて部屋を出たのだった。
大通りを外れ、小道に入れば、夜でも煌びやかに光るカジノの明かりが届かない暗い場所が広がる。明かりが届かないと言うだけで、闇に紛れるのは好都合だと悪さを働く人間もいる。リュカは用心のために腰に剣を差していた。旅装に身を包んでいるため、リュカの格好に首を傾げる者もいない。
酔いどれの客が酒場から出てくると、途端にそこだけが騒がしい声に満ちる。そう言えば昼間に会ったあの詩人の青年はどうしただろうかと思いながら、酒を飲むのも人それぞれの理由があるのだと感じる。その多くは現実の世界から束の間でも良いから逃れたいと思うのかもしれない。良い酒を飲めば、良い夢が見られるのだろうか。しかし所詮は夢で、夢から醒める瞬間が最も怖いようにも思える。辛い現実から逃れようとする気持ちにそのまま従うことは、それだけ辛さが増すのではないだろうかとリュカは鼻歌を歌ってどこかへ帰って行く酔客を見ながらそんなことを思った。
裏道を照らしているのは、月と星と、教会前に灯されている明かり、そしてその手前にもう一つ、指先で灯したようなほんの小さな火が一つ。ゆらりと怪しげに揺らめく小さな火を見ながら、リュカは今その火が自分を導いてくれているような気がして、まるで磁石の力でも感じるように引き寄せられていく。
リュカが求めていた占いババのところには先客が一人いた。しかしリュカが占いババの店の前に着いた時にはちょうど占いを終え、その男性客は夜道の闇の中へと静かに姿を消した。これほど夜も更けた時間に占いに訪れる客もいるのかと、自分のことは棚に上げるようにしてリュカは小さな明かりの灯る占いババの店に入る。
「おや、まだお客さんがおったのか」
驚いたような言葉を発する割には、その表情にはあまり驚きを感じられなかった。占いババの顔は店の中に灯る仄かな明かりでわずかに照らされるだけだが、そこにはリュカを待っていたのではないかと思われるほどの余裕が感じられた。
「占いを、お願いできますか」
そう言いながらリュカは金を持ってくるのを忘れたことを思い出し、思わず「あっ」と声を出す。そんなリュカを狭いテントのような店の中で観察するようにじっと見つめ、占いババは歯の抜けた皺だらけの口元を歪めて「金はいらん。そこに座るがよい」とリュカを客用の小さな椅子に座らせた。
前に来た時、このテントの中は非常に暑かったとリュカは当時の雰囲気を思い出す。しかし今リュカが感じているのは悪寒にも似た寒気だった。身体の周りを冷たい氷で囲まれているかのようなじわじわと忍び寄るような寒さが、徐々に強まりはっきりとリュカを打ちのめそうとする。このテントから出てしまえば、この寒さは嘘のように消えてしまうのだろう。そして目の前にいる占いババはそんな寒気など微塵も感じていないかのように、粗末なテーブルに置かれた水晶玉を静かに見つめている。皺の沢山浮かぶ小さな両手を水晶玉にかざし、リュカには見ることのできない何かの景色をその玉の中に映し出そうとしている。
リュカはガチガチと歯の根が合わない寒さに震えながら、マントを身体に巻きつけて水晶玉を覗き込む。しかしいくら覗き込んでもリュカには見えるのは水晶玉に映り込む部屋の火の明かりだけだった。
占いババは水晶玉をしばらくの間凝視していた。目を細めてみる辺り、彼女にも見辛いものが水晶玉の中に浮かび上がっているのだろうか。そして小さく息を吸ったかと思えば、目をカッと見開いて水晶玉の中の景色を射抜くように見る。
「なんと! 三つのリングがそなたを導くというのが出ておる!」
リュカが何を占って欲しいと言わずとも、彼女には訪れる客の望みが凡そ分かってしまう。リュカが占って欲しいこと、それは当然今も行方の知れない妻の居場所だ。リュカの頭にある願望を読み取り、水晶玉に映し出された景色が三つのリングと言うことに、リュカは思わず首を傾げる。
しかし狐につままれたようなリュカの疑問に思う気持ちは、次の占いババの言葉で途端に現実味を帯びる。
「一つ目は炎のリング」
占いババの視線はいつの間にか、リュカの左手に映っていた。そこには今、彼女自身が口にした炎のリングがある。リュカが肌身離さず着けている炎のリングは今もその赤い小さな宝石の中に魔力のこもる炎を揺らめかせている。結婚指輪として身に着けているこの指輪は、今となってはリュカの身体の一部と言っても良いほどに馴染んだものだ。
「二つ目は水のリング」
この占いババは訪れる客たちの人生をそのまますっかり見抜いてしまうほどの能力を持っているのではないかと思うほどだ。炎のリングと水のリングはその存在が対となるものだ。今もどこかでリュカの助けを待ち続けていると信じるビアンカの左手の薬指に、水のリングは嵌められたままのはずだと、リュカの脳裏には石の呪いを受けた彼女の姿が浮かび上がる。しかしリュカが占いババに尋ねたいことは、その彼女の居場所なのだ。
「三つめは命のリング」
「……三つ目?」
「この三つのリングが合わさる時、そなたにまた別の道が示されるはずじゃ」
「ちょ、ちょっと待ってください。僕はその、命のリングなんて知りません」
「ふむ。まあ、普通は一つも知らんじゃろうなあ」
占いババの口調はあっけらかんとしたものだ。彼女の言葉にリュカは返す言葉を失う。世界にもあるかどうかと言われていた炎のリングも水のリングも、その存在を知る者は世界でもリュカを含めて僅かなものだろう。しかもその内の一つを自身で身に着けているとなれば、既に一つの偶然がここで起きていることになる。
リュカが再び言葉を紡ごうと口を開いた時、リュカの全身を激しい寒さが襲った。まるで自分にだけ猛吹雪が吹きつけてくるような痛みを伴う寒さに、リュカは思わず口を噤んで身を固くする。これだけの突風が吹いて来たら、この店も一溜りもないだろうと片目を細く開けて見てみれば、占いババのテントはそよ風にさえ吹かれている気配はない。
「これはまた、高いところじゃなぁ」
「え?」
「ちなみに命のリングはとても高い所で見つけると出ておるぞ」
「とても高い所って、何ですか。どういうことでしょうか」
炎のリングは自分の手にある。水のリングは今もどこかにいるはずの妻の手にある。しかし命のリングについては初めて今、占い師の口から聞いた。その三つが揃えば別の道が示されると聞けば、進む道を見失っているリュカは是が非でも三つのリングを揃えなくてはならないとリュカは占いババに詰め寄る。
老婆が水晶玉から視線を外した。そしてテントの天井を透かし見るような視線を上に向ける。
「……さて、今日の占いは終いじゃ。月も星も語りかけてこんようになった。空がちと曇ってきたかのう」
占いババが水晶玉に柔らかな布をかけた途端、リュカの全身を襲っていた寒気が嘘のように止んだ。リュカが感じていた突き刺すような寒風など、初めからなかったかのようにテントの中には小さくも暖かな明かりが灯っている。
「わしの占いは人の道を示すものだが、決して完全なものではない。信じて進むも、自身で他の道を探すも自由じゃ」
占い師の老婆はリュカに自由を説くが、今のリュカには示された道以外を選ぶ自由はないに等しい。今はどんな小さなことでも、リュカの行動の指針となるものがあれば迷わずその道を進むべきなのだ。
老婆が静かに商売道具の水晶玉を布に包み、箱にしまうのを見つつ、リュカは礼を述べて彼女の元を去った。占いババの店を出れば、すぐさま真夜中の暗闇がリュカの目の前に広がる。空には薄雲が広がり、月も星も隠されていた。時折冷たい風が吹くが、先ほど占い師の前で感じていたような強烈な寒さではない。マントを前で合わせるほどのこともない。
歩きながらリュカは自分の左手にある炎のリングを見た。リュカの視線や心情を感じ取ったかのように、指輪の宝石の中にある炎が、赤く弾けた。伝説の指輪と言われるような代物だ。ただの結婚指輪に落ち着いてしまっている炎のリングの、本来の秘密に触れたリュカは、宿に戻っても恐らく眠れないだろうと思いつつ、占い師が口にした命のリングについて頭を巡らせ始めていた。

Comment

  1. バナナな より:

    以前(けっこう前ですが)何度かコメントを残させていただきました。久しぶりにコメントさせて頂きますが、いつも更新を楽しみにして読ませてもらっています。

    最近のオリジナル展開はとても楽しいです!

    ゲーム内では語られなかったけど、プレイヤーがずっと気になっていた事が文章化されてとてもスッキリしてきます。

    これから年末を迎え多忙になると思いますが、続きを楽しみにしています。無理の無い範囲で執筆を続けてくださいね。

    ではまた。

    • bibi より:

      バナナな 様

      コメントをどうもありがとうございます。
      オリジナル展開、大丈夫でしょうか。鬱陶しくないですか? 毎度、ドキドキしながらアップしています(笑) お越しくださっている皆様に受け入れられているのかどうか・・・こうしてコメントを頂けると、安心して続きを書けそうです! ありがとうございます。
      ドラクエはプレイヤーの想像にお任せしますな合間が多いと思っているので、そこを好きに補完する形でお話を進めております。楽しいですが、辻褄があっているのかどうか不安になりながらお話を書いています。・・・もし合っていなくても、今更直せない・・・(汗)

      もう年末が近いなんて嘘みたいですね。無理なく書いて行きたいと思いつつ、これではまだ数年かかってしまいそうなので、なるべくペースアップしていければと思います。それもこれも、状況次第ですが・・・。

      コメント、励みになります。どうもありがとうございましたm(_ _)m

  2. やゆよ より:

    bibi様

    ご無沙汰しております。今回も楽しく拝読させて頂きました!!コメントしばらく離れてましたが、しっかりとついていってます!笑

    ここ最近のオリジナルストーリーですが、本作との違和感もなく、それでいてしっかり補完されているので大満足ですっ
    少し戦闘からはなれ、家族で団欒しているシーンが増えてほっこりです!!ビアンカを思い出すようなシーンも増え、高いところに行くような描写もありで、今後も大変気になります。はやく会わせて欲しい反面、bibi様にはたくさん寄り道して欲しいとも思います笑

    また次回も楽しみにしています。一段と冷え込み
    始めましたので、体調にはお互い気をつけましょう!

    • bibi より:

      やゆよ 様

      コメントをどうもありがとうございます。
      オリジナル展開を受け入れて頂いているようで、一安心です。違和感ないですか? 好き勝手やってますが、一応ゲーム内容から完全に逸脱しないように気をつけているつもりです。今は激しい戦闘から離れて、心和む時間を過ごして欲しいと、こんなお話をしばらく続けています。妻と母を救いたいと思いつつも、子供にはなるべく厳しい現実に向かわせたくないという、きっとかつてのパパスも同じ思いを抱えていたんだろうなぁと思いながらお話を書いています。
      まだ暫く寄り道が続くと思いますが、のんびりとお待ちいただければと思います。そろそろ12月ですね。一年が早い・・・。やゆよさんも風邪など引かれませんよう暖かくしてお過ごしくださいね。

  3. ケアル より:

    bibi様。
    執筆ありがとうございます。
    昨日まで溶けたり降ったりで、まだ雪が無かったのに今朝になり外に出たら…真っ白な雪景色!とうとう根雪(この冬もう雪が溶けることがなくなり春まで溶けないこと)になりそうです。

    ポピーには霊感もあったんですか?ゲーム設定?bibiワールド?
    この霊感の伏線、もしかしたら今後行くかは分かりませんがレヌール城に行ったとしたら…というフラグなのでしょうか?

    モンスター闘技場のドラゴンマット、仲間のマットとほんとに違いますね(笑み)
    もしかしたらドラゴンマットに賢さの種をドーピングしているとか?それともマットが本当におバカなのか?
    マットにもあれぐらいの戦闘判断ができればいいのにねえ(笑み)

    ゲーム内でこの時点で占いのお婆さんの所に行くと、三つのリングのことが聞けたんですね忘れてました。
    情報はここから教えて貰えるんだ…でも、命のリングは高い所としか分からなく、セントベレス山の情報はここでないんですね。
    どこから聞けたっけなぁ…(悩)
    bibi様の小説早く読み進めて行きたいですね!

    • bibi より:

      ケアル 様

      コメントをどうもありがとうございます。根雪と言うんですね。言葉の雰囲気はステキですが、実際その土地に暮らす方々にとっては大変な環境ですね・・・。

      ポピーのセリフは実際にゲームにあって、私もびっくりしたんですよ。この子には霊感もあったのかと(笑) 面白いんでここでそんな場面も入れてみました。状況はシリアスですけどね。
      闘技場のドラゴンマッドにドーピング、あのじいさんとイナッツならやりかねない? 仲間のマッドはああいう感じが持ち味なので、あのまま突っ走ってもらえればと思っています(笑)
      困った時の占いババです。何も分からない時は彼女に頼ろうと、来てみました。高いところってねぇ・・・そんな曖昧な占い、あるかいなと思いますが、ゲーム上ではこのヒントで十分だったりしますね。ああ、あそこしかないだろうなって。

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