信じるものの先

 

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闘技場を囲む観衆の声は、凡そ全てが国王であるリュカを応援しているのではないかと思えるほどに、一方的で圧倒的な歓声が響いている。その重圧たるや凄まじいものだが、その重圧を味方につけて何が何でもこの試合には勝利せねばならないと、リュカは対戦相手のトレットを見つめる。
トレットの表情は非常に澄み切ったものだ。空は相変わらず曇天に覆われているが、その上に広がる雲一つない青空を思わせるような清々しい顔つきをしている。何かあさましい野望を持つ者の顔ではない。まるで胸に大望を抱き、それに向かって一心に成し遂げようとするような希望に満ちた者の表情だ。
この国の王であるリュカを見れば、彼は当然のように緊張した面持ちでぎこちない笑みを浮かべる。その姿も年相応に見え、彼のどこをとっても不審なところは見当たらない。明らかに光の教団に属すると思われるトレットだが、彼自身に教団の闇の部分は見られなかった。
「お二人とも、準備はよろしいでしょうか」
審判の兵士がリュカとトレットに質すと、トレットは緊張した面持ちのまま小さく頷き、リュカも一つ息を吐いて覚悟や諦めの気持ちで「いいよ」と伝えた。二人が向かい合って一度礼をすれば、闘技場を囲む観客席からは再び大きな歓声が上がった。
あっさりと始まった第二戦目の闘いに、リュカは未だ蟠りを胸に抱えている。ただの旅の武闘家が、グランバニア新年祭のこのタイミングでこの地を訪れ、新年祭恒例行事となった武闘大会に出場すること自体はあってもおかしくはない。魔物が多くなってきたこの世界を旅するほどの強者だ。旅の途中で立ち寄った国で行われる武闘大会に出場して腕試しをしたくなる気持ちにも一定の理解はある。ましてや大会の優勝者には賞金が与えられるとなれば、旅の資金の足しにするにも都合が良い。
運良く優勝して、賞金を得られれば、それをそのまま光の教団への寄付に回すこともできる。それが狙いなのだとしたら、尚のことリュカはこの勝負に負けることはできない。光の教団の信者は今や各地に散らばっていると言っても過言ではない。このグランバニアでも、大っぴらにではないが教団の信者となり、自身の稼ぎから一部を寄付に回している者もいるとリュカは聞いている。
しかしそのような者はどこか必死さが雰囲気に見て取れるのだ。光の教団を信じるあまり、是が非でも寄付をしなければならないと思い込んでしまうのか、自身の生活を削り取ってでも寄付の金へと回してしまう。今のリュカの目の前にいるトレットには、その必死さが感じられなかった。彼には教団への寄付に頭を支配されるような小さな思いに囚われている様子はない。
リュカの脳裏に様々な考えが去来するのに対し、トレットは確りと今の対戦に集中している。足元をすくわれたリュカが地面に背中を叩きつけるや否や、トレットは上からのしかかり、リュカの身体を抑え込もうとする。外の世界を旅する際に、戦いの相手になるのは魔物だ。魔物を相手に固め技などを出すトレットではない。しかし今はリュカと言う一人の人間を相手にしていると、人間用に力も技も調整しているのが分かり、リュカは慌てて地を蹴ってトレットの手から逃れた。
一方でリュカは普段魔物を相手にしている際の戦いを思い起こさなくてはならなかった。トレットの拳も蹴りも、早くて目では追いつかないのだ。今は彼の素性について考える時ではないのだと、リュカは見張り台の様子を確かめるような余所見をすることなく、目の前の相手に完全に集中することにした。
たとえ集中しても、トレットの動きは一流と呼べるもので、とにかく目では追いつかない。目で見て判断してからでは、動きが遅すぎる。トレットには決まった構えと言うものがない。と言うのも、常に身体の力を抜いて、いつでも身体の芯が何処へでも対応できるかのようにしなやかに動いているのだ。
それならばと、リュカもできるだけ彼の真似をしてみることにした。付け焼き刃で到底技術の追いつくものではないが、リュカにもまた決まった型などないのが事実だ。物心つく前から父と世界を旅して、幼い頃に父を喪ってからは生きるために必死に身体の動かし方を考えた。それは生きる本能そのものとも呼べるものだが、それこそがリュカの原動力となるものだ。誰よりも命を投げ出しても良いと考える一方で、生きる目的があるうちは死ぬわけには行かないという矛盾した思いが、リュカの心の中には常に存在している。
子を持つ父となれば、子供たちのために成し遂げなければならない思いが最も強い。それはかつての父もそうだったに違いない。当時の父の思いを今のリュカは確かに理解している。
観客の声援は凡そリュカを応援するものだ。戦い辛いのはトレットの方だ。そしてリュカの背には、二人の子供たちの明るい声援も届いている。その高らかな二人の声が、リュカの大きな力となる。
体格はほぼ同格、これ以上の相手もいないだろうと思われる人物だ。トレットはリュカの攻撃をまともに食らわないように身体の芯をずらして避ける。お陰で身体に拳や足が当たっても、大した攻撃にはならない。同時に反撃を繰り出してくるため、リュカも同様の動きで避けようと試みる。それは成功したり失敗したりだが、徐々に成功の確率は上がる。身体の動きが実戦の中で分かってくる。
一度、間合いを取って呼吸を整える。リュカは肩で息をしているが、トレットは一度深く息を吐けばもう呼吸を整えてしまった。観客席からの応援の声が上がる。リュカ劣勢の状況を当然のように観客席も感じている。王族観覧席にいるティミーもポピーも、観客席からの応援の声に混じってリュカを応援する声を向ける。王子王女が父である国王を応援する姿に感化される観客らもまた、相乗効果のようにリュカに声援を浴びせる。
「とても人気がおありの国王様ですね」
トレットが一時休戦とばかりに、歓声の沸く人々の熱のこもる表情を見渡す。
「正直、とてもやりづらいです」
「……そうですよね。お察しします」
リュカはもし自分が今のトレットの立場ならば、心が挫けそうなほどに味方のいない状況に逃げ出したくなるかも知れないと思った。しかしあくまでも旅の武闘家トレットは、そんな素振りなど微塵も見せずに、やはりどこか清々しい雰囲気さえ漂わせて話し続ける。
「この城もとても頑丈な造りで、初めに見た時は驚きました。まさか城下町が中に丸ごと入ってるなんて」
戦いの最中だということを忘れさせるような穏やかさで話すトレットに、リュカは今のうちにと呼吸の乱れを調える。素手で、武闘家としての戦いにおいて、リュカは今のところトレットに勝機を見い出せない。いくら攻撃をしかけても、まだ一度もまともに相手に当たっていないのだから、リュカの自信は密かに大きく揺らいでいた。
「この国は国の民を非常に大事にしているのだろうなと、この城の造りを見るだけでも伝わってきます」
かくいうトレットこそ、今が武闘大会であることを忘れて話しているようにも見えた。今彼はこの国の代表である国王リュカと対面し、グランバニアと言う国に賛辞を贈っている。国の周囲に棲む魔物の脅威は、他の地域に比べても強いものがある。その中で国を守るために、国を支える人々を守るために、城下町ごと城の中に収めてしまうという方法に彼はこの国の主の考え方が素晴らしいものであると心から褒めているのだ。
その言葉を手放しに喜ぶほどに気を抜いているリュカではないが、人間褒められれば悪い気はしない。またトレットが単に世辞を述べているわけではないということも、その表情に見て取れた。世界を旅している武闘家トレットは、様々な地域を巡る中で、魔物の脅威から民を守るための方法としてグランバニアの取る城の造りは良いのだと素直に感心している。
リュカが素直に礼を述べようと口を開きかけたところで、トレットは話を続ける。
「しかしこれでは、真っ先に城が攻撃を受け、運が悪ければ一斉に全滅です」
国の防衛においては様々な方法があるだろう。例えばラインハットは王族らが住む城を堀で囲み、外敵との距離を置いている。いざとなれば城を解放し、民たちを避難させ、敵から国を守るのだろう。しかしもし避難が間に合わなければ、堀に架ける跳ね橋を上げ、避難の間に合わない者たちを切り捨ててしまう非情さも持ち合わせているのかも知れない。今のヘンリーやデールがその方法を好むかどうか分からないが、城の造りとしてはそのような状況を想定しているのが見て取れる。
テルパドールは敢えて砂漠と言う生物の好まない土地に住まうことでそもそも外敵自体が少ない環境だ。しかしテルパドールの国民自体がそもそも多くはないために、もし敵の数が圧倒的に多ければ、いくら砂漠の国でも守り切れるかは定かではない。戦える兵の数がグランバニアやラインハットに比べて圧倒的に少ないのだ。
「多くの人々を守るというのは非常に難しいことです。守り切れるかどうかなんて、誰にも分かりません」
「……何が言いたいんでしょうか」
トレットの言葉に僅かな不穏を感じ、リュカはごく小さな声で続きを促す。同時に、思い出したように戦いの構えを取る。トレットにはまだ闘いの意思は見られないが、リュカが目の前の男の信じるものに対して、心底からの嫌悪を持っているのは確かだ。
「国を丸ごと……ではなく、世界に救いの手を差し伸べているんです、私たちは」
「あまり興味がないんですよ、僕。その手の話は」
「しかし一国の王である貴方はぜひとも広く耳を傾けるべきだと思います。初めから突っぱねてしまうのは視野を狭めてしまうんじゃないでしょうか」
「でも僕にはその話を突っぱねる理由があります。詳しくは話せませんけどね」
会話を交わしながらも、リュカは観客席から戸惑いの声が上がるのを感じていた。武闘大会の第二戦目と言う舞台で、国王自らこの場に立っているというのに、試合が一向に進まなくなってしまったことに、観客となる人々からざわめきが起こっている。
「この世界には闇が迫りつつあると、私は色々なところでそう聞いてきました」
「闇あるところには光もまたあるとも聞いたことがあります。だから僕たちの世界は今も続いているんじゃないでしょうか」
「貴方はまだ、本当の闇を見たことがないんじゃないでしょうか。一国の王の立場の方が、庶民の間に広がる闇など、見る機会もないでしょう」
そう言うトレットの表情に初めて暗いものをリュカは感じた。一見穏やかな笑みを浮かべているようだが、つい先ほどまで光を湛えていた瞳に影が差している。
「世の中にはどうしようもないことがあるんですよ……どうしようもないことが」
そう呟くトレットの脳裏には、彼の記憶にあるいくつかの風景が束の間過ぎ去っていく。

住む町で勇者の話を聞いた。世界が闇に覆われようとする時、必ず勇者が現れるという伝説を語る人の話を、幼いトレットも当然のように信じた。勇者は世界の光であり、希望であり、世の子供たちの夢であった。
町で漁師をする父の船が、魔物の襲撃に遭い、沈んだ。海にも魔物が出るのは知っていたが、まさか自分の父が犠牲になることなど考えたこともなかった。病気がちだった母も父を喪ったことで気を弱くし、後を追うのはあっという間だった。魔物さえいなければと、悔やんでも悔やみきれない思いが胸に広がった。
独りになれば、町に住み続ける理由は薄くなった。外では度々、魔物による被害の話があった。世界を救う勇者はまだ現れないのかと、幼い頃に夢見ていた勇者の存在を未だ信じつつも、いつの間にか成人の年齢を間近にしていた。少々腕に覚えのある彼は、町の自衛団に所属し、町を守る役に一役買っていたが、彼の目は世界を見ていた。
思い立てば、目的に向かって一直線に行動するのが彼の性格だった。信じるものに向かって寄り道はしない。腕に覚えはあり、町の周囲の魔物ほどであれば、己の武闘の技で倒すことができた。たとえ旅の途中で自身が尽きようとも、誰も困るものなどいないと言うのが彼の強みだった。成人の年を迎えるや否や、彼は世界を自分の目で見るのだという思いと共に、旅に出た。
魔物の脅威になど怯えずに平和に暮らしている町もあれば、常に周囲の魔物に目を光らせ怯えている集落もあった。ある程度の大きさの町や村になれば、人々が協力し合って魔物に対抗する術を持つが、小さな集落では一度魔物の襲撃を受ければひとたまりもない。そのような場所で彼は旅の最中で磨きをかけた武闘家としての腕試しをするように、集落を魔物の脅威から守った。心の中に英雄気取りの気分があったのは、自身でも認めていた。
しかし所詮は一人で戦ったところで、守れるものなどたかが知れていた。行く先では既に魔物の襲撃を受けて、滅んでしまっている場所も当たり前のようにあった。世界に勇者の噂も聞かず、一体この世の救いはどこにあるのだろうかと希望を見失い、心が落ち込んでいくことが多くなった。
そんな時に出会ったのだ。光の教団は世界の救済を願い、世を荒す魔物に対抗する体制を整えるべく強者を募っていると耳にした彼は、一も二もなく教団に入信した。一人旅をして、一人で世界の平和を願っても詮無いことだと考えるようになっていた彼に、教団の思想は見事に当てはまった。この世の本当の救済を考えるならば、やはり組織に入らなくてはならないと、以来彼は光の教団の信者としての役割を負うようになった。
武闘家としての経験を買われた彼の役割は、魔物の討伐だった。言わば傭兵のような立場だ。行動は今までと変わらないが、組織に属している強味が彼の人生に意味を与えた。それまではぼんやりと形を成していなかった世界を救いたいという思いが、世界を見据える組織に属することで思いは形を成したのだと感じていた。
様々な場所に派遣されていた彼だが、その凡そは彼自身が今まで旅の中で立ち寄ったことのある場所だった。目新しいものは特別なかったが、自身の信じる組織からの指示に従い行動することは、人生の意味そのもののように思えた。
その中で今回はグランバニアと言う大国に初めて遣わされることになった。武闘家としての腕を買われている彼は、かの国の武闘大会に出場し、群衆の前で公に光の教団の存在を知らしめよと言うのが今回の彼の為すべきことだった。
教団の思いに共鳴している彼は、大役を与えられたことに対する喜びの思いで満たされていた。相手は一つの王国だ。それまではほんの小さな集落や集落にも満たないようなこじんまりとした群衆の守りに遣わされてきたが、ここで国を相手に光の教団の持つ理想や希望を知らしめることができれば、より多くの人々を救うことができるのだと、彼は信じて疑わない。それ故に、教団の指示にも何一つ疑問を抱かないでいる。

トレットから暗い表情が消え去り、彼の目には再び光が宿る。それは彼の信念であり、希望を失わないでいられる強さだ。その背景に、彼の心を支える光の教団の存在がある。リュカは目の前のトレットの様子に、一つも怪しむべき部分を見つけられない。彼自身が悪者ではないことが、まるで邪心の感じられない態度にそう感じる。
トレットが完全に闘いの構えを解いた。彼の目的はもはや戦うことではない。この国の王であるリュカを目の前に、光の教団の素晴らしさを伝え、ここに多く集まる観客たちにも知らしめることが彼の役割なのだ。
「私は光の教団に希望を見い出しているんです。世界を見据えて広く平和のための活動を行う組織を、他に知りません」
ざわめきが落ち着いている会場に、トレットの声ははっきりと響き渡った。その言葉の内容に、観客席からは明らかな戸惑いの様子が窺える。人々はこの武闘大会を楽しみに集まっており、第二戦目となる国王の闘いにおいてはひと際興奮状態を示している。
「この下界に生きる限り、魔物の脅威にさらされるんです。だけどあの場所ならば……」
「下界って何? 僕たちが住んでいる場所をそんな風に思ってるの?」
トレットの言葉の端に、リュカの気持ちの端が引っかかった。思わず視線が鋭くなるのをリュカは自身で感じたが、止められようもなかった。光の教団への反抗心がじわりじわりとリュカの心の中で大きくなる。
「悪い意味で言っているのではありません。でもこのまま魔物が多くなれば、地上と言う下界に住み続けるのは危険なだけだと、そう申し上げたいのです」
「どこまで逃げれば安全かな。逃げて逃げて、逃げまくって、行きつく先はどこなんだろう」
「もちろん、光の教団の本拠地であるセントベレス山です。あの場所ならば魔物に襲われる心配もなく、全ての不安や恐怖から逃れることができるはずです」
「君はそう言われて、それを信じてるんだね」
「信じない理由がありません。私は教団に人生を救われたも同然ですから」
光の教団が何人もの人生を救っているのは現実に起こっていることなのだろうとリュカは思っている。しかし教団の本当の目的は、更に奥にあるのだ。教団の手先として利用できそうなものに近づき、その者の人生を救う傍ら、その者の人生を利用し始める。当人にとっては何も悪いことなど起きていないため、路頭に迷いそうなほどに困窮したような者にとっては命の恩人にも等しいほどの神にも類するような存在となるだろう。現にこの国で暮らし始めたカレブとマリーの兄妹にとって、一時期光の教団は救い主のようなものだった。恐らくラインハットに暮らすマリアも、その兄ヨシュアもだ。
考えるほどに小賢しいやり方だとリュカは顔をしかめる。世を蝕もうとする魔物らがそのような考えに至るのだろうかと考えると、リュカはそんな小賢しい方法で世界を牛耳ろうとするのは、まるで人間のようだと思い至ったところで、思わず驚きに目を見張り、小さく首を横に振った。
「悪いけど、僕たちは、この国の人達は光の教団には靡かないよ。僕がそうみんなに言ってるから」
この国の王たるリュカが光の教団に完全に異を唱えているのだと、明確にトレットに伝える。彼の信条を踏みにじるようで気は進まないが、リュカにはこの国の人々を守る義務がある。リュカの声を後押しするように、観客席から歓声が上がると、トレットは悲し気な表情を隠しもせずに客席を見渡し、しかし再び生気を取り戻したような目をリュカに向ける。
「私もこの国の方々を救いたいんです。それは本心です」
「うん、それは分かってるよ。君は何も嘘をついてないって、分かるからね」
「しかし信じていただけないのですね」
「君のことは信じてる。だけど、君の信じてるものを信じていないだけだよ」
リュカ自身も、光の教団の根本にある思想がどのようなものなのかを知らない。それこそ初めは、本当に世界の救済を求めて立ち上げたような組織なのかも知れない。しかしリュカの知っている教団の実情は、あくまでも人を人とも思わぬ、人の命を使い捨てのように扱う場所だということだ。セントベレスの頂上に大神殿を建造するために、幾人もの奴隷を働かせるような非情な集団であり、奴隷が減ればどこからか人を攫ったり唆して連れてきたりして、まるで人形のように働かせる。たとえ崇高な思想を持っていようが、実際にやっていることは罪以外の何物でもない。
「私は、本当にこの国の皆さんを……」
そう言いながら、トレットは腰帯の内側に潜ませていたものを取り出す。彼の手の平に乗るのは一つの小さな石だ。それを見て、武器の所持と認めた審判がトレットの敗北を宣言しようと手を上げかけたが、リュカがそれを止める。
「これは教団の方が渡してくださった有難い魔法の玉です。これを空に投げれば、たちまち教団の光がこの国を包むのだと、そう仰ってくださいました」
そう言ってぐっと握り込んだトレットの手の内側に収まった玉を、リュカはもう見ることができない。リュカが止める間もなく、トレットは自分の信じるものに全てを託すように、手にしていた小さな玉を空中高くに放り投げた。
彼は新しい光の扉が開くのだと、それくらいの夢を脳裏に描いていた。光の教団は自身の人生を救ってくれた。世界を救済に導く理念を描く光の教団に、できないことなどないと、そこまで彼の思考は偏りを生じていた。
空中に放たれた球が閃光のような光を放つ。空を見上げた皆が、光の眩しさに目を背けたり手で顔を覆ったりする。一見、神々しいまでの光だった。光の教団を否定する者たちにも、これが神の光なのかと思わせるほどの閃光だった。
しかし相変わらず空には曇天が広がり、冷たい北風がそよいでいる。光は一瞬、空を照らしただけですぐに何事もなかったかのように止み、リュカの視界の端には城の見張り台の旗がはためく。ピエールが訴えかけるように、何度も旗を揺らしていた。
同じく見張り台にいたメッキーが空から滑空して、武闘大会の会場上空で高らかに鳴いた。それは警戒の声であり、メッキーが北の方角を鋭く見るのを、リュカはすぐさま認めた。
「城内に避難しろ!」
リュカの指示により、予め事態に備えていた兵士らが一斉に動き出す。観客席には戸惑いや不満などの声が上がっていたが、兵の落ち着いた誘導により、ざわつきながらも移動を始める。
ゴレムスが自身に乗せていた人々をゆっくりと地上に下ろすと、皆を守るように背中を向け、北を見据える。その巨大な後姿の更に上を、こちらに向かって飛んでくる一つの塊がある。あり得ないと思いつつも、その黒い影が一体の爆弾岩であることに、リュカは思わず息を飲んだ。
激しい爆発音と共に、ゴレムスの巨体がその場で蹲る。両膝を着くと同時に地面が揺れ、爆発の衝撃も相俟って周囲には人々の悲鳴が響き渡る。
動かなくなったゴレムスに向かって、追いかけるように二体の爆弾岩が襲い掛かってくる。遠くから放られるように大きな放物線を描いて飛んでくる爆弾岩の姿は、人々に途轍もない恐怖を与えてしまう。人々の視界から遠ざけるようにと、二体の爆弾岩に向かって、キングスとベホズンが揃って向かっていく。巨体の弾力をもって爆弾岩を弾き返そうと試みるが、間近で爆発されれば無傷では済まされない。空中で弾ける爆弾岩の強烈な攻撃を食らい、キングスもベホズンもその場で力なく倒れ、そのまま気を失ってしまった。
「お父さん! 何なの、これ!?」
兵士の誘導に逆らうようにその場にとどまっていたティミーが大声でリュカに呼びかける。しかしリュカは返事をする暇もなく、爆弾岩の攻撃をまともに正面から食らい倒れたゴレムスに、ザオラルの呪文を唱える。
「メッキー、回復呪文をキングスとベホズンに!」
「ッキー!」
兵士の誘導がなければ、人々は我こそ先にと混乱した状態で城の入口になだれ込んでいただろう。しかし事態を予測し、城への避難を想定していたために、速やかに人々の避難が続いている。
「お父さん!」
「お前たちも城に入るんだ!」
「リュカはどうすんのよ!?」
驚きで声も出ないポピーに代わり、ドリスが良く通る声でリュカに叫ぶ。リュカはザオラルで息を吹き返したゴレムスを見て一息つき、振り向かないままドリスに返事をする。
「僕たちはここで敵の侵入を止める!」
「何バカなこと言ってんの? 相手は爆弾岩だよ!?」
「爆弾岩はすぐに弾切れになる。本番は多分、その後だ」
「リュカ王よ、武器を取れ!」
武闘大会出場者が控えていたテントには既に武器を用意していた。事態を素早く見極め、一足早くテントに戻っていたオジロンがリュカに武器を投げ渡す。両手に受け取る武器は、父の剣とドラゴンの杖。それを渡すや否や、オジロン自身も右腕に炎の爪を装備した。
「オヤジ……?」
「ドリスよ。王子と王女を連れて、城の中へ入っておるのだ。これは命令だ」
言葉を交わす余裕は無いに等しい。見張り台で城の周りの状況を確認しつつ、リュカとオジロンは既に城の北西へ向かっているパピンたちの後を追おうとする。その間にも曇天の空を背景に、二体の爆弾岩が空気を切り裂く高らかな音を響かせて城を目がけて飛んでくる。爆弾岩はそのまま城の壁面にぶつかり、爆発音を轟かせて散った。激しい爆発の威力に、グランバニアの城の壁に堪え切れない穴が空く。
唖然と立ち尽くすティミーとポピーを、ドリスは連れ去るように城へと引っ張って行った。ティミーはドリスの力に抵抗しようとしたが、護衛の兵士にも押さえ込まれ、不本意ながらも城の中へと引き下がる事態となる。
「あなたも城に避難してください」
この事態を呆然と見ている者がもう一人、リュカの対戦相手であったトレットだ。人々が次々と城の中へ流れ避難していく様子を、まるで異世界で起こっている出来事のように焦点の定まらない目で眺めている。
「私は、本当にこの国の人たちを……」
「分かっています。あなたは悪くない」
「この国には恐らく災いが降りかかる運命にあったのだと……」
「……そんな運命なら、こちらから蹴散らしてやります」
「きっと、間もなく光の教団の力でこの国にも幸いが……」
「そんな得体の知れない幸せなんて、来ない方がいい!」
リュカの怒号にトレットの身体が震えた。光の教団の上から下まで信じているようなトレットにも、リュカの心からの叫びの声は届いた。ほとんど同じほどの身長のトレットの目を鋭く覗き込み、リュカは一言彼に告げる。
「もし戦えるなら、僕たちと一緒に国を守るのに手を貸してください」
人々の避難が恙なく行われている。また一体の爆弾岩が宙に放り投げられるようにして、グランバニアの城壁を酷く破壊した。ゴレムスとキングス、ベホズンが人々の盾となり守る。この国には国を守る魔物がいる。人間と魔物が共存し、互いに信頼し合って暮らしている。
この国に当然のようにあるこの風景を、トレットは気にも留めていなかった。彼は教団の一信者として、信者の務めを果たすことだけを考えてこのグランバニアを訪れた。その結果、俄かには信じられないが今、グランバニアは魔物の強襲を受けている。考えても分からないことだらけだが、人間と魔物が手を取り合い共存しているこの国を失うことだけは避けるべきだと、トレットの本能の欠片が訴えた。
「魔物と戦うには武器を取りに……」
「これで良ければ使ってくれい。ドリスのだが、中の革紐を調節すれば着けられるだろう」
そう言ってオジロンがもう一つの炎の爪を差し出し、トレットに渡した。彼は受け取るや否や、手慣れた様子で素早く炎の爪を右手に装備し、精神を統一する。その様子から、彼がこれまでに世界を広く旅をして、武闘家としての経験を多く積んできたことが窺える。
見張り台には今もピエールの姿があり、旗の先を北西へと向けている。どれほどの魔物が押し寄せてくるのかも、ピエールの旗を振る回数で知れた。魔物とは言え、ピエールも敵全ての様子をその目にすることはできない。見ているのはグランバニアを囲む広大な森なのだ。その中に蠢くように動く敵のおおよその数を、二度旗を振って報せる。敵は二百以上とリュカもオジロンも把握した。
「思ったよりも少ないかのう」
「この国を亡ぼすような目的じゃないんでしょう」
「我が国に痛手を負わせるのが目的か」
「城はちょっと壊れるかも知れませんけど、みんなは絶対に守ります。一人残らず」
城壁沿いに兵たちが守りを固めている。ゴレムスやキングス、ベホズンもまた、同じように城壁沿いに立ち、敵が来るのを待つ。敵が向かってくる北西方向の守りを厚くし、そこで迎撃戦を想定しているのだ。
「行きますよ」
リュカはそう言うなり、北西地点へと向かって駆けだした。オジロンもまたその後に続く。炎の爪を装備し、本来の武闘家としての血が騒ぎ始めたトレットも、まるでこの国を守る兵士の志を持つように、二人の後に続いた。



普段暮らしを営む空間に戻るだけの国民らは、初めの内は特別な混乱なども見せずにいたが、城の一部が爆弾岩の爆発により欠損するのを見ると、一気に不安が広がった。ざわつく城内を収めようとする兵士に食ってかかる人も現れ、城内には俄かに不穏な空気が漂い始める。
その様子を見るや否や、ティミーとポピーを連れて城内に入っていたドリスが、声を張り上げる。
「落ち着きなさい! みんなはここで大人しく避難していて! 絶対に外へ出てはダメ!」
「ドリス様! 一体何が起こっているのですか!?」
「あたしも知らないんだよ! だからこれから上に行って状況を確認します! 分かったらみんなにも知らせるから、それまでここで待っていて!」
それだけを言うと、ドリスは先に行こうとするティミーを追うように、ポピーの手を引き、見張り台に続く階段を駆け上がって行った。
「ドリスも何も知らないんだね?」
屋上庭園を囲む回廊を駆けながら、ティミーが息を切らしそう問いかける。
「知らないよ。リュカのヤツ……あたしまで子供扱いしちゃってさ、腹の立つ……」
ドリスが状況に気付くのは早かった。城内への誘導は速やかだった。闘技場にいたはずの兵士長らは、いつの間にか武器を携え、早々にこの場を立ち去っていた。戸惑うのは何も知らされずに新年祭に興じていた国民や、ティミーにポピー、そしてドリスだけと言っても過言ではない。父オジロンが炎の爪を探していたのにも、確かな理由があったのだと今になって気づく。
「ポピー、大丈夫?」
息せき切らしながら走り続ける中、ドリスは後ろから駆けて来るポピーに目をやる。てっきり体力が持たずに遅れを取っているだろうと思って慮ったドリスだが、ポピーは伊達にリュカたちと共に旅をしてきたわけではない。同じく息を切らしながらもしっかりと後をついている。
「魔物のみんなも、知ってたのよね」
ポピーの脳裏には先ほどゴレムスが爆弾岩の攻撃を受けて倒れた姿が浮かんでいる。キングスにしてもベホズンにしても、明らかに敵の攻撃を想定したような動きを見せていた。爆弾岩が放物線を描いて飛んでくる前に、彼らは静かに自分の身体に乗せていた武闘大会の観客たちを下に下ろしていた。
「僕だって戦えるのに! どうして教えてくれなかったんだよ、お父さん!」
悔しい思いを全面に出してそう吐き捨てるティミーに、ドリスは何も言うことができない。ただでさえ勇者と言う肩書を背負うまだ小さな少年に、リュカは父として頼ることができなかったのだろう。何もかもを我が子に背負わせるような非情さを持ち合わせるリュカではない。むしろ彼から勇者の肩書すら取り去ってしまいたいと思っているほどなのだ。
体力の有り余っている三人が見張り台に到着するのはあっという間だった。途中、警備をする兵士の制止をドリスが一言「通しなさい!」と声を張り上げ圧倒し、突破してしまった。
見張り台にいたのは三人の兵士と、ピエール、メッキー、ガンドフ、それにスラりんにサーラまでがこの場に集っていた。普段、見張り台の任務に就くこともある魔物の仲間たちだが、その内の五体までが揃ってこの場にいることはまずない。
「なんであんたたち、こんなにいんのよ……」
ドリスの声にサーラが厳しい表情のまま振り向き、一言「城内にお戻りください」とだけ伝える。その突っぱねるような言い方がドリスの癇に障ったが、今は喧嘩をしている時ではないと彼女は自身を鎮めるべく息を吐く。
「何が起こっているのか、教えなさい」
「グランバニア城に敵が迫っています。私たちも機を見て戦いに加わる予定です」
そう言いながらサーラが目を向ける方角に、ドリスとティミー、ポピーも目を向ける。グランバニアの森を揺るがすような光景がそこにあった。城より北西の位置に敵の群衆と思われる動きが見られた。森の中を蠢く魔物の群れは、まるで森の一部が動いているようにも見えた。その中から時折、大岩が発せられているのだ。宙を飛んでくる爆弾岩は敵の群れから、敵の手によって投げつけられている。それと気づいたグランバニア側は、空中に飛ぶ爆弾岩に向かってミニモンがメラミを投げつけ宙で誘爆させたり、怖いもの知らずのマッドが爆弾岩に突っ込んで行って蹴り飛ばし、近くの森に落として爆発させている。
「敵の数はそこまで多いものではありません。我々にお任せくだ……」
皆が目を向けている北西の空高く、未だ曇天に包まれる灰色の空に、敵の姿が二体浮上した。ドリスやティミー、ポピーには豆粒のようにしか見えないその魔物だが、サーラ達はその魔物が何者かすぐに捉えた。メイジキメラと呼ばれるキメラ属の一種で、二体のメイジキメラは互いに顔を見合わせるように向かい合うなり、まるで姿を消すように曇天の空を飛び去って行った。その素早さや一直線の軌道を目にしたポピーが思わず呟く。
「まるでルーラみたいだわ」
「ピエール殿、本当によろしいのですね」
「リュカ殿の決定です。ラインハットに向かえと……」
メイジキメラの飛び去った軌道から、二体は各々全く異なる地へ飛んで行ったのは自ずと知れた。一体は遥か北に位置するラインハット、もう一体は遥か南西にある砂漠の王国テルパドールだとピエールもサーラも見当をつけていた。
「ラインハット? ラインハットで何かあるの?」
耳聡くピエールの声を聞いたポピーが声を張り上げて問い詰める。グランバニアが魔物の強襲を受けている最中に、二体のメイジキメラがグランバニアとは別の場所へ向かう状況が、決して好ましくないものだということにポピーはすぐに思い至る。
「まだ分かりません。ただ状況を確認する必要があります」
「じゃあ私が行く!」
ポピーの即断に、周りの皆が唖然とする。
「私なら何度もラインハットに行ってるから、お城の様子もよく分かるもの! だから私が確かめに行きます」
「そんなわけには参りません。ご安心ください、我々だけで様子を確認して参りますので」
「でもさっきのがルーラだとしたらさ、あのメイジキメラは別々のところに行ったんだよね。ラインハットだけじゃないんだよね?」
いつもは天真爛漫、子供を絵に描いたような腕白な行動を見せるティミーだが、緊張状態の中での彼は途端に感覚が鋭くなる。その冷静さはある意味父親譲りなのだろうかと、サーラは内心舌を巻く。
「さて、私にはちと分かり兼ね……」
「あの方角はきっとテルパドールだよ」
即座に言い当てられ、サーラだけではなく誰もが言葉を失った。的外れな言葉でも返してくれれば、それに乗じて気を逸らすこともできたが、唐突に言い当てられてしまえば咄嗟には反応できなくなってしまった。
「世界の三つの国に、同時に魔物が攻撃? そういうこと?」
世界を救うべく生まれた勇者とはこのような者のことを言うのだろうかと、今年十歳になろうとしている少年勇者を皆が一斉に見つめる。誰に何を言われることもなく、彼の脳内には自然と世界地図が描かれ、グランバニアの王子としてこの国にのみ目を向けるのではなく、勇者として世界の状況に思いを馳せることができる。
「王はテルパドールは崩されないとお思いです。しかしラインハットは……」
「ヤダ! どうしてそんなことを言うのよ! 私、一人でも行くわ。ラインハットに行って……」
そう言いながらもポピーはすぐにルーラの呪文を唱え始めた。彼女を止めようとサーラが呪文封じのマホトーンを唱えるが、間に合わない。彼女の身体がルーラの光に包まれるのを野放しにするわけにも行かないと、サーラが近くにいたスラりんを肩に乗せるガンドフを捕まえ、王女のルーラの呪文に身体を預ける。リュカの指示が頭の中にあるピエールもまた、ポピーの唱えるルーラの呪文の輪の中に入り込む。とにかくラインハットの状況を見てこなくてはならないと、それだけを思いポピーは魔物の仲間たちを引き連れるようにしてグランバニアの見張り台から飛び去ってしまった。
「ッキー……」
本来ならば自分が魔物の仲間をラインハットまで連れて行くはずだったメッキーが、呆然とした様子で北西の空を眺めている。宙に浮かび飛んでいるメッキーの蛇の尾のような身体の先を掴む者がいる。
「メッキー、僕たちも行くよ」
嫌な予感がしてたまらないメッキーは、尾をぶんぶんと振ってティミーの手から逃れようとするが、意地でも離すものかとティミーはもはやメッキーに抱きついている。
「近くにいる誰かを一緒に連れて行こうよ。向かうのは砂漠だから……キングスやベホズンは嫌がりそうだよね。ゴレムスとか、どうかな」
「メッキ!?」
「そうでしょ? いい考えでしょ? よーし、じゃあゴレムスを見つけて……って、あそこにいるよ! それっ、行くぞー!」
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ! あんたまで行っちゃったら、リュカが何て言うか分かんないじゃない」
ドリスが急にティミーの束ねた髪を強く引いたために、ティミーは首をおかしくしそうだった。
「いてて……。でも、ボク行かないと」
「どうしてよ」
「だってテルパドールはボクを信じてくれてるんだもん」
長年に渡り勇者再来を願って止まなかったテルパドールの民に、ティミーは勇者として応えなければならないと感じている。万に一つもない可能性かも知れないが、ここでテルパドールが崩れるようなことがあれば、ティミーは勇者として砂漠の国を裏切ったような心持ちになると確信している。グランバニアでじっと守られたまま過ごすことなどできないと、ティミーはドリスもたじろぐような強い目を向けている。
「大丈夫だよ。ちょっと様子を見に行って、何にもなければすぐに戻って来るしさ。ルーラってホント、便利だよね~」
気楽な調子でそう言いながら、ティミーはメッキーの背によじ登り、飛行体勢を整える。
「グランバニアを放って他の国に行っちゃう王子と王女なんて……どうかしてるわ」
「うーん、でもさ、グランバニアは絶対にお父さんが守ってくれるから、大丈夫だよ。うん」
後はよろしくと言わんばかりに明るく手を振って、ティミーはメッキーの首にしがみつきながらゴレムスを指差す。メッキーも諦めたような力ない声を出し、ティミーの指示通りにゴレムスのいる場所目指して飛んで行ってしまった。残されたドリスは深い溜め息をつき、為す術もなく状況を見届けていた三人の兵士に引き続き見張りを怠らないようにと一言言い添えておく。
「はあ……国王もぶっ飛んでると思ってたけど、やっぱりその血を引く子供もぶっ飛んでるわよね……」
常識としては全てが間違っていると思うドリスだが、そう思ったところで事が進んでしまえば後戻りはできない。またしても体よく留守番をさせられたような気分になり、納得の行かない思いを抱えながらも、城下に集まる人々への説明をどうするか頭を悩ませながら見張り台を後にした。

Comment

  1. ケアル より:

    bibi様。
    いつも執筆ありがとうございます。
    コロナ大爆発中です。どうかbibi様、ご家族の皆様、御自愛ください(願)

    せっかくの新年祭が~…(汗)
    武闘大会も今年はお開きになるんですね…(泣)
    最近、デモンズタワー関連の話がちょくちょく出て来るから、いつかデモンズタワーの逆襲が起きるのではと、うすうす感じていました。今年の新年祭の前話でもフラグが多久さんあったので間違いなく、新年祭にデモンズタワー逆襲戦があるとは感じていました。
    いましたが…しかし、まさかトレットが騙されて理容され引き金になるとは想定外でありました。
    トレットの心中は複雑なんだろうなぁ…まだこれでも光の教壇を信じ抜くのか…理容されたことを受け入れるのか…気になるところです。

    今思えばbibi様、天空城で大神殿に喧嘩売る前に、デモンズタワーの様子が可笑しいという話をUPされていましたよね?
    たしか…青年時代4」周辺情勢調査」
    魔法の絨毯でロッキーを仲間にした話。
    bibi様、あの時から、この襲撃話を考えていたということでしょうか?(驚)
    このロッキー仲間話がフラグになっていたということになりますよね?
    ん~~!一本取られました~!想像できませんでしたよ~(拍手)

    リュカ、ティミー・ポピーにラインハットとテルパドールのことバレないと思っていたんでしょうか?
    ポピーがルーラ使えるんだから、子供たち対策はナイショだけでは難しいですよねリュカ。リュカはポピーがラインハットに行ったことは知らないけど、ティミーはメッキーの上にいるから、まだリュカの目に入るはず…はたしてリュカはティミーに何を言うのか?

    ていうか…ティミー・ポピー、天空の剣とマグマの杖、持たないで戦闘に入るつもりみたいだけど大丈夫?(汗)

    楽しくなって来たじゃな~い!bibi様。
    これから先のbibiワールドに目が離せません!
    次話をなるべく…なるべく早くお願い致します(笑み)

    • bibi より:

      ケアル 様

      コメントをどうもありがとうございます。
      本当にコロナが大変なことになっていますね。ケアル様もお気を付けください。

      そうですね、今年は武闘大会はこれでお開きに・・・楽しみにしていてくださった方には申し訳ないです。
      トレット君は今後、どうなるでしょうね。彼もまた、救われていない人なので、どうにか救われて欲しいと思います。
      仰る通り、周辺情報調査辺りのお話では既に今回辺りのお話を考えていました。ようやくたどり着けました。途中で放り出すことなくここまで来れて良かったです(笑)

      リュカは結果的には子供たちにも知られると思っていたかも知れないですが、周りの大人たちも子供を守ってくれるだろうから乗り切れると考えていたかも。ポピーがルーラを使えても、ラインハットにもテルパドールにも、そこまでの思い入れはないかなと高を括っていた部分もあったかな。ポピーはリュカがグランバニアを留守にしている間にラインハットを度々訪れ、言わば単独で親交を深めています。それがいずれは・・・という部分もありますが、それはまたずっと先のお話になりますね。
      あ、気づきました? 子供たち、武器を持たずにとっとと現地に向かっています。現地では・・・どうなるかな。

      さて、戦闘開始です。三国それぞれに場面を切り替えて、戦いの様子をお届けする予定です。しばしお待ちくださいませm(_ _)m

  2. 犬藤 より:

    bibi様
    遅ればせながら
    明けましておめでとうございます。
    ドラクエ5の背景にあったであろうオリジナル
    ストーリー、非常に楽しませていただいてお
    ります。

    ティミーとポピーが単独行動。
    どうなることやら笑
    私も子どもの時、ゲームをDSでプレイしながら
    単独のキャラごとにオリジナルストーリーの展開があればいいなぁ なんて想像を膨らませていたものです。
    今後繰り広げられるであろう三国に別れた場面、
    想像力が掻き立てられますね。笑
    場面ごとにストーリーをお考えになられるのは非常にお時間と労力を要するとお察しいたします。
    ご無理なさらず、ゆっくりと書き進められて下さい!楽しみにお待ちしております。

    p.s
    bibi様、私は一方的に作品を読ませていただいているものに過ぎませんが、本年もどうぞよろしくお願いいたします!時は早いもので、ついに就職活動の年を迎えてしまいました・・・。
    bibi様の作品を楽しみにしながら、乗り越えたいと思います。
    楽しい作品をいつもありがとうございます!

    • bibi より:

      犬藤 様

      コメントをどうもありがとうございます。
      背景にこんな話があったのかもな~くらいの気楽な感じでお読みいただければと思いつつ、ほぼ自己満足のためにお話を書いておる次第です(汗)

      単独キャラごとのお話・・・やっぱり想像しちゃいますよね。その辺りの自由度がドラクエの良いところだと思っています。私の書くお話はその内の一つとして受け入れて頂けるとありがたいです。
      ドラクエ4から5に至るまでに、どんな流れがあったのかも想像の余地が大いにあって楽しい所です。国の数が非常に少なくなったよね、とか。そもそも、陸地の形があれだけ変わったのは、天変地異でもあったのかしらと・・・それと同時に世界中の国や町や村がとんでもなく減ったんじゃ・・・なんてことも考えてしまいます。
      私の少ない脳みそで考えるお話なので、ご期待に沿えないこともあるかと思いますが、広ーいお心でお待ちいただければと思います(笑)

      こちらこそ本年もどうぞよろしくお願いいたします。
      就職活動の年ですか・・・! 今は色々と大変な時代ですね。学生もまともに授業を受けられないで、色々なご不便があったかと思います。(私の姪も授業料を返して欲しい、と嘆いていました・・・)なるべく楽しいお話を書ければと思っております。今後も頑張りますね!

  3. ピピン より:

    bibiさん

    この作品の光の教団は、本当にやり口が卑劣で恐ろしいですね。素晴らしい(?)
    魔法の玉を掲げた時は「何をするんだ、やめてくれ!」と焦りました…
    トレットの心境を思うと本当にいたたまれないです。

    • bibi より:

      ピピン 様

      こちらにもコメントをどうもありがとうございます。
      光の教団のやり口は本当はもっともっと卑劣なものと話に含めたいのですが、あまり書いてしまうと読んでいる方々の気分を著しく害してしまう可能性が高いので、ここらへんで留めています。もしこうしたネット媒体ではなく、書籍として販売するとなれば、もっと辛い話にしてしまうかも。
      トレット君はどうにかリュカたちに救われて欲しいと思います。信じていたものに裏切られる辛さを乗り越えて欲しいところです。

  4. ピピン より:

    bibiさん

    あまりリアルにし過ぎても、ドラクエの世界観から逸脱しちゃうかもしれませんしね。
    確かに実在のカルト宗教絡みの事件を参考にすると、もっともっと恐ろしい事を想像しちゃいます…

    • bibi より:

      ピピン 様

      そうなんですよね。あんまりリアルにしちゃうと、ドラクエという世界を崩しかねないというので、一応私なりにバランスを保つようにはしています。・・・それでもかなり、ぶち壊しちゃってるかしら(汗)
      事実は小説よりも奇なり、ですね。作ったお話よりも現実の方がよっぽど、というのは本当のところだと思います。

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