砂漠の国を守る者

 

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空は澄み渡り、星も月も世界を照らさんばかりに輝いている。グランバニアからメッキーのルーラでひとっ飛びに移動してくる最中、世界は昼から夜へと様相を変えた。辺り一面の砂漠の景色は月明かりに照らされ幻想的で、空から見下ろす限り広大な砂漠の中に魔物の大群を見ることはなかった。風の影響を受けて徐々に、時には瞬時に文様を変える砂漠の風紋を見ても、何か異常があるようには見られなかった。
着地と共にまるで地面が揺れるように響いたのは、巨体ゴレムスの影響ばかりではない。ティミーが半ば強引に連れて来たロッキーにアンクルもまた、砂漠の砂の中にめり込む勢いで着地をした。その中でミニモンだけが一人、宙に飛んで地面衝突の衝撃から辛うじて逃れていた。
「メッキーのルーラはちょっと力強いよね」
「ッキッキ」
「お前の親父譲りだとよ」
「お父さん? うーん、お父さんのルーラはこれほど乱暴じゃなかったと思うけどなぁ」
メッキーと共に砂まみれになったティミーもまた砂漠の地面に転がされた一人だ。衣服や髪や装備品についた砂を払い立ち上がると、すぐ傍に堂々と建つテルパドールの城を見上げた。
グランバニアを出る直前、ティミーはメッキーにしがみついて飛び回る中、国の外に出る際の準備として天空の剣、盾、兜を身に着けて来ていた。特に勇者伝説を語り継いできたテルパドールという国に対しては、自身は勇者として行くことが正解なんじゃないかとティミーなりに考えてのことだった。女王アイシスを初め、テルパドールの人々にとって世界を救う勇者の存在は生きるための拠り所とも言えるほどに大きな存在だ。そんな人々を、自分が勇者として救ったらカッコイイに違いないという思惑があったのも事実だった。
しかしテルパドールの城はただ月明かりを浴びて静かに青白く浮かび上がるばかりで、そこにはただただ普段の平穏があるようだった。元はと言えば、ティミーが勝手に勘付いたことなのだ。グランバニアが魔物の襲撃を受け、その際に二方向へ飛び去ったメイジキメラの行き先の一つはテルパドールに違いないと当たりをつけ、近くにいた魔物の仲間たちを強引に連れてきた。恐らく父リュカにもティミーの行動は知れているに違いない。最も大きな仲間ゴレムスを連れてきてしまっているのだから、グランバニア中にティミーの突拍子もない行動が知れ渡っているかも知れない。
「ま、何にもなければそのまま戻ればいいんだもんね」
「オレたちがちょっくら周りを調べて来てやろうか?」
「オレも飛べるからなー。こんな見やすいトコだったら、上に上がっただけで全部見えるぞー」
そう言いながらミニモンはティミーの目の前から垂直に飛び上がり、月明かりに照らされた蝙蝠の影よろしく悪魔のような羽をばたつかせている。アンクルもまた同じように宙に身を翻し、ミニモンとは別の方向へと目を凝らす。いくら勇者とは言えただの人間に過ぎないティミーには、自由に空に舞い上がることもできないし、遠くにいるかも知れない魔物の気配に気づくこともできない。今では魔物の仲間たちがいるのが当たり前のグランバニアの人間として、人間だけで国や町などを守ろうとすることがいかに弱い守りなのかに気付かされる。
宙からミニモンとアンクルが同時に降りて来る。ミニモンは相変わらず大きな舌を出してふざけた顔つきをしているが、アンクルの表情を見れば確認した景色の内容をすぐに想像できた。
「……あっちだな。この城の向こう側にある岩山に、やたらといるぜ」
「なかなか強そうだぞー。勝てないかもなー」
「でもボクたちだったら行けるんじゃないかな。やってみてダメそうだったら、その時考えるってことで」
「ッキー……」
特別な策など何もないティミーの言葉に、メッキーが呆れたような声を落とす。
「オレはそういう勢いに乗る感じは好きだぜ! よっしゃあ、いっちょやってみるかぁ!」
「呪文でガンガン行くぞー」
アンクルとミニモンがすっかりやる気になる一方で、言葉を発しないゴレムスが静かに抗議の意図を伝えるべく、アンクルの頭を上から押さえつけ、ミニモンの小さな身体を潰さぬよう片手に収めてしまった。そしてゴレムスはそのまま砂漠を見渡すのではなく、すぐ傍に建つテルパドールの城に顔を向けている。父や妹ならばゴレムスの言いたいことをすぐさま感じ取ることができるのかも知れないが、生憎とティミーには言葉を持たない仲間の意思を感じ取るのに時間がかかる。そして挙句、意思を読み違えることもしばしばだ。
「あ、そっか。この辺りでいきなりボクたちが暴れ出したら、みんな起きちゃうよね。朝まで待った方がいいかなぁ。もうちょっとしたら朝になりそう?」
「いや、ティミー、違う違う。ゴレムスは『テルパドールの人にも協力してもらえ』って言ってるみたいだぞ」
「えっ、でも今は夜だよ。きっとみんな寝てるよ。起こしちゃうのも悪いよね」
「悪いよねって、この国が危ないって知らせるののどこが悪いんだよ。とりあえず国の王様かなんかにでも知らせてやればいいんじゃねぇの?」
「ティミーは勇者だろー。ここは勇者が好きなんだよなー」
勇者伝説と共に続いてきたと言っても過言ではないこのテルパドールにて、勇者ティミーの存在は既に広く知られている。たとえ夜中だろうと明け方だろうと、時間など関係なく勇者ティミーの訪問であればテルパドールは国を挙げて歓迎の意思を表してくれるに違いない。ティミーは自分の勇者と言う立場に甘えることにした。
「うん、わかったよ。じゃあちょっと行ってくるね。……でも、ボク一人でお城に入るのはちょっと緊張しちゃうな~」
勢いでテルパドールに来てみたものの、グランバニアではない場所を大人の付き添いなしで訪れることは初めてに等しい。唯一、ラインハットへはポピーと二人で勝手に訪れたことはあったが、それも国同士の親交を深めてからのつい最近の話だ。グランバニアにいる時には国の人々が温かくティミーを王子として見守り、ラインハットではティミーが友達と思っているコリンズがいて、彼の父母もまたティミーを我が子のように可愛がってくれる。そして今、さほど馴染みのない土地に一人で向かうことに、ティミーは普段どれだけ周囲の大人たちに守られているのだろうかと実感した。
しかし彼の背中を後押しするのは、やはり勇者という唯一無二の立場だ。しかもこのテルパドールは勇者である自分に絶大な信頼を寄せてくれている。代々受け継がれて来た天空の兜も護り続け、今その兜はティミーの頭部を護る役目を果たしている。自身は勇者なのだと一つ鼻息を外に吹き出せば、魔物の仲間たちにはここで待っていてと言い残し、軽やかに砂漠の地を走ってテルパドールの城へと向かった。



夜中とは言え、テルパドールの城を守る兵の姿はちらほらと見られた。その全てがティミーの小さな姿を見るなり、初めはこんな夜中に子供が城にと追い出しかねない様子で近づいてきたが、月光を浴びる中で天空の剣を背負い、天空の盾を肩に掛け、頭にも特徴的な翼の生える天空の兜を身に着けたティミーと分かるや否や、驚きの余り束の間その場で立ち尽くした。そして慇懃な態度をもってティミーと言う少年勇者を城の中へと招き入れた。
「剣とか持って来ておいて良かった~。これがなかったら城の中に入れてくれなかったかも」
勇者信仰のあるテルパドールにおいて、天空の武器防具はそれだけで関所の通行手形のようなものだった。世界においてもただ一人しか身に着けられないとされる天空の武器防具に身を包む者を、この国は決して拒みはしない。
月明かりがやたらと明るく感じるのは、それだけ夜が更けているからだ。ティミーの目にもテルパドールの城の陰影がはっきりとわかる。兵の案内によれば、アイシス女王はこの時間、玉座の間にて星読みをしているという話で、ティミーは本来は閉ざされているはずのテルパドールの城の中で寄り道する気にもなれず、真っすぐに玉座の間へと元気に走って行った。
玉座の間には、アイシス女王の他にも女王の侍女が数人、それに当然女王を警護する兵の姿があった。ティミーが姿を現したことに驚く者はいない。ティミーがこの国を訪れたことは既に女王アイシスの知れている所だったのだろう。
「勇者様、お久しぶりでございます」
「うん……じゃなくて、はい、お久しぶりです」
「このような時間にお一人で来られるとは……何か急用でしょうか」
女性の中では背の高いアイシスに見下ろされるように視線を向けられると、ティミーは一瞬その威圧感にたじろいでしまう。未来を予知する能力を備えるアイシスには、他の人間にはない神秘の力が感じられる。父と同じような黒い瞳だが、その目が見通すものは今の世界ではなく、未来の世界だと言われている。その女王が落ち着いているという状況は、この国も危機に晒されている状況ではないのだと、ティミーは女王の能力を信じて話し出した。
「あっちの岩山に魔物がいるみたいで……」
「ええ、そうですね。前から少し、気になってはいました。その状況は私も把握しております」
「あっ、そうなんですね。なら良かった」
そう言うティミーの視界の端に、月明かりに照らされ浮かび上がる魔物の影が映り込み、思わず肩をびくつかせた。何のことはない、それは仲間のアンクルとミニモンの姿だった。しかし彼らが背中に生やす翼の形はあまりにも禍々しいものがある。テルパドールの兵たちもまた、夜の見張りを続けており、近くを警戒心なく不用意に飛ぶそんな魔物の姿を見つけるや否や、俄かに城の周りがざわつき始めた。
「あっ! あれはボクの仲間たちなんです! あの、攻撃しないでもらいたいんですけど」
「私はリュカ王から話を聞き存じておりますが、一部兵たちには話が行きわたっていないようですね。急ぎ知らせるように致します」
「ありがとうございます! じゃあ、ボクはこれで」
「勇者様はあの岩山に魔物が潜んでいることを報せにわざわざテルパドールへお越しいただいたのですか?」
アイシス女王に呼び止められなければ危うくあっさりとテルパドールの城を後にしようとしたティミーは、自分で思っているよりも女王の前で緊張していたのだと知った。妙に大きな緊張は忽ち頭の中を空っぽにしてしまう。
「あの場に潜む魔物どもが動くを察知して、駆けつけて来て下さったのではないですか」
「えっと、そうなんです。でもそんな細かいことはよくわからなくて、ただテルパドールも危ないかも知れないってそう思ったんで……」
「テルパドールも? と言うことは勇者様のお国も今、危機に面しているのですか」
「うーん、そうかも知れないんですけど、グランバニアはお父さんが絶対に守ってくれるので大丈夫です!」
胸を逸らすようにして自信満々に話すティミーに、アイシスはただ真剣な目を向けている。周りの侍女や兵たちは勇者であるティミーに、彼が子供でありながらも期待の眼差しを向けるのを止められない。テルパドールの勇者信仰の深さが窺い知れる。ティミーはそのような期待の眼差しを決して嫌だとは思わない。むしろ期待されればそれだけ力が漲るのを感じる。
「グランバニアにお戻りください」
自分に向けられる勇者への期待に応えたい心持ちになっていたティミーの胸を、アイシスの冷たい一言が突き抜ける。周りの人々がいくらティミーに期待を抱いていても、国の頭である女王がそれを打ち消してしまえば、それで終いだ。急激に萎みそうになる勇者としての心を、ティミーは今一度奮い起こす。
「でもボクなら戦えます! 魔物の仲間たちも連れて来たから、一緒に戦えるんです! 強いんですよ、みんな。だから任せてください!」
「リュカ王の決定ですか?」
「え?」
「リュカ王が、魔物の仲間を連れた貴方をこちらに派遣されたのですかと聞いています」
あまりにも現実的な女王の一言に、元より嘘のつけないティミーは思わず「違います」と素直に応えてしまう。続いて言い募ろうとするティミーを遮るように、アイシス女王は腰を折って屈みこんで、月明かりに照らされたティミーの顔を覗き込んで言う。
「グランバニアの大事な王子をみすみす死なせるわけには参りません。すぐにグランバニアに戻るのです」
「女王様、ぼくは勇者なんです!」
「貴方はリュカ王の大事なご子息ですよ。きっとリュカ王が心配されています。それにグランバニアが今、貴方の力を求めているやも知れません。早くお戻りなさい」
そう言いながらティミーの両肩に置かれた女王の手は、傍目には知れないほどだが、震えていた。砂漠の夜は昼の灼熱地獄を忘れるような寒さに包まれる。今も砂漠の上を吹く風は肌に冷たい。しかし砂漠の国と共に生きて来たアイシス女王がこの寒さに身を震わせるわけはない。彼女の表情は平静を保っているようだが、手の震えは確実に彼女の感じる恐れを表していた。
ティミーは今一度、アイシス女王の目を覗き込む。自分に父のような、人や魔物の心の中に入り込んでしまうような特別な力はないと自覚している。しかし相手と話をする時には、しっかりと目を見て話すのだということはずっと幼い頃から言われ続けている。目には人間にしろ魔物にしろ、どうしても隠せない本音が現れる。アイシス女王ほどの沈着冷静な女王にも、その黒い瞳にはどうしようもない不安があることを、ティミーは微かに感じたような気がした。
「ボク、やっぱりあっちの様子を見てきます!」
そう言うや否や、ティミーは両肩に置かれた女王の手をさっと外し、玉座の間の端に向かって駆け出した。女王も侍女の者たちも、子供の咄嗟の行動について行けず、遅れを取る。止めようとも、勇者ティミーはすぐに次の行動に移ってしまう。
「おーい、アンクル! こっちに来て!」
砂漠の夜の星空を眺め、星読みをするアイシスは毎夜この玉座の間から星空を見上げる。天井もなく、外に剥き出しのような玉座の間は普段、この砂漠の国の周囲の様子を望む場所としても使われ、広く周りの景色を眺めることができる。西の夜空にもいつものような星空が広がっているが、アイシスはその星空の下に尋常ならざる魔物の気配を確かに感じている。
「お待ちなさい! 無暗に向かってはなりません!」
「大丈夫です! マズイって思ったら、すぐに逃げてきます」
そう言う間にも、ティミーの声を聞きつけたアンクルが少々戸惑うような様子で近づいてくる。グランバニアではない人間の国の中に、上空とは言え入り込んで良いものかと思案している様子が窺えた。しかも城の中からは敵襲とばかりに矢を向けて来るテルパドールの兵の姿もあり、アンクルは「あいつに呼ばれてるから仕方なしに行くんだからな!」とおっかなびっくり声を上げてティミーの元へと向かった。
ティミーが玉座の間の壁をよじ登り、その上に立つとすぐに宙に向かって飛んでしまった。勢いだけの考えなしにもほどがあると、アンクルが慌ててティミーに向かって飛び込んでいく。空中でティミーの身体を捕まえたアンクルは、すぐ後ろに来ていたミニモンと共にテルパドールの西に広がる砂丘を見遣る。人間の目では確認できない魔物の群れの気配を、二体の魔物の仲間は確かにその目に捉えているようだ。
「じゃあちょっと様子を見てきまーす」
テルパドールの国の外、すぐ近くでは既にゴレムスがまるで砂の巨人の如く砂漠を歩き始めている。その手にはロッキーが乗り、肩ではメッキーが羽を休ませ体力を温存していた。魔物の仲間たちは既に敵の様子を凡そ確認し、来るべき戦いに備えているのが分かった。こちらの魔物が敵の姿を捉えているということは、当然敵の魔物らもゴレムスやアンクルなど、大型の魔物の姿をその目に捉えているに違いない。
アイシス女王が玉座の間の壁の縁に手をかけ、ティミーに何事かを叫び伝えていたが、彼の耳には届かなかった。
「悪い魔物は、ボクがみんなやっつけてやるぞー!」
そう言いながらアンクルの背に乗り、ゴレムスの歩みに先行するように飛び進むティミーの姿は、テルパドールの民にとって紛れもなく小さな勇者の姿だった。果敢に敵に挑む姿を見れば、勇者の勇気はテルパドールの兵たちにも伝染する。夜中にも関わらず、このテルパドールの国を守ろうと動き始めたティミーの姿に、テルパドールの兵たちは鼓舞されるように国の守りを更に固めて行った。



普段はこの広大な砂漠に点在しているはずの魔物が、一か所に集結することなどあるはずもなかった。魔物には多くの魔物を統率するような能力はないと言っても過言ではない。
群れも群れ、西の砂丘を進軍してくるような魔物の群れはまるで砂丘の一部が滑り落ちてくるような景色に見えた。今日は月が明るく、魔物の群れの姿はティミーの目にもよく映った。
「ちょっと多過ぎやしねえか?」
「負けたらどうするー?」
「そういうエンギでもないことは言わない方がいいよ~、ミニモン」
「メッキッキ!」
「ほら、メッキーだってそう言ってるじゃん」
「いや、違うって。メッキーの奴も『これはマズイぜ、ティミーのアニキ!』って言ってるんだよ」
「えっ? メッキーってボクのことアニキって呼んでるの? それ、なんかいい感じだなぁ」
「……いや、言ってない。オレがちょっと勢い乗せて言っただけだ。そこは気にすんな」
ティミー達が敵の軍勢に近づいている最中、敵の中に妙な動きが見られた。砂丘を降りて来る魔物の数が僅かではあるが、少しずつ減っているように見えるのだ。まるでふるいにかけられ、網に引っかかった者が砂丘の只中で立ち止まり、動かなくなるように見える。そうして進む軍勢の数が徐々に減らされて行っているのは確かだった。中には、突然敵同士で戦闘が始まっている所も見られた。
「あっ、あれってもしかして……」
そう言ってティミーはアンクルの背に乗りながら後ろを振り返る。既にテルパドールの城は遥か後方に遠ざかり、その城の中のいるはずのアイシス女王の姿を目に捉えることはできない。しかし遠くの魔物の姿や城にいるテルパドールの人々の姿を細かに捉えられなくとも、ティミーには城から放たれる鋭い魔力を感じた。
「女王様が遠隔呪文を使ってるんだ!」
「なんだ、そりゃあ?」
「すっごい遠くからでも魔物に呪文を放てるんだよ」
「はあ? あんな距離から呪文を撃ってるのかよ!? 届くわけねぇだろ、そんなの」
「女王様はそれができるんだって。ポピーも何度かできるようになってるんだよ。練習してたんだ」
「お前は?」
「……ボクは剣の稽古で忙しくってさ~」
「勇者サマ、しっかりしてくれよ~」
徐々に近づく魔物の軍勢は今や半分以下にまで減っている。しかし途中途中でアイシスの遠隔呪文を受けた魔物らも、眠りから覚めたり、混乱から立ち直ったり、幻惑の世界から解放されたりすれば、再び戦線復帰してくるのは目に見えている。そうなる前に、前線で向かってきている魔物らを先ずは倒さなくてはならない。
魔物の軍勢が目前に迫り、いよいよ戦闘開始になろうとする頃、ゴレムスが歩みを止めた。先行して進んでいたティミーとアンクル、ミニモンがその様子に気付き後ろを振り返る。するとゴレムスが手にしていた爆弾岩のロッキーをまるでボールか何かのように、敵に向かって勢いよく投げてしまった。見事な放物線を描いて砂漠の夜空を背景に飛んでいくロッキーの表情は、相変わらず不敵な笑みだ。言葉を持たない者同士、密かに意思疎通を図っていたのか、唐突に投げられたロッキーには驚いた様子もない。
一体の爆弾岩が落とされた敵地に、どよめきが起こる。そして敵の中の一体、命知らずの魔物が飛んできたロッキーに向かって攻撃をしかけた瞬間、ロッキーの身体は敵軍勢を崩してやるのだと言わんばかりに、その場で大爆発を起こした。あまりの光景に、ティミーは声も出せずに弾け飛んだロッキーの勇姿を目に映しているばかりだ。
「ロッキーのヤツ、派手にやったなぁ」
「え? え? どういうこと? ロッキーが……そんな……」
「ティミーがいるからロッキーはあれができたんだぞー」
まるで何も特別なことは起きていないのだと言わんばかりにそう言うと、ミニモンは敵陣の中へと先に飛び進んでいく。ゴレムスの肩に乗っていたメッキーもまた同じように敵陣を目指して飛んでいく。
「すぐにミニモンとメッキーがロッキーの身体を集めて来るから、お前はあの呪文でロッキーを生き返らせてやれよな」
「あの呪文って……」
「あん時、リュカを生き返らせてたじゃねぇか。……ま、集まるまではオレたちも攻撃あるのみだ。せっかくロッキーがあっちの陣を思いっきり崩したからな。行くぜー!」
予想しなかった展開に、ティミーは飛ぶ勢いを増したアンクルに必死にしがみつくばかりだ。ロッキーがあっさりと自爆を仕掛け、敵の軍勢の足を止めた。あまりにも呆気なく、命を散らした。それが爆弾岩の攻撃の強みとは言え、これほどあっさりと爆発してしまうロッキーの胸中がティミーには微塵も知れない。
「ちょ、ちょっと待ってよ! ボクがロッキーを生き返らせるの!? そんなの、お父さんとかスラりんにしかできないよ!」
「何言ってんだよ。誰がリュカの息を吹き返したんだよ。あの時お前の唱えた生き返らせ呪文の方がよっぽどすごかったぜ。オレ、この目で見たし」
「そんなこともあったかも知れないけど、ボク、あの時必死で必死で……何をどうやったかなんて分からないんだよ!」
「マジかよ。……じゃあ、まあ、仕方ねぇ。とにかく、攻撃あるのみだ!」
もう敵は目前だ。悩んだり考えたりしている場合ではない。為せば成ると同様に、なるようになるというのもティミーの信条の一つだ。混乱している敵陣の中に素早く飛んで入り込み、ロッキーの破片を拾っては投げているミニモンとメッキーに、それを受け取り一か所にまとめて積んでいるゴレムス。徐々にロッキーの破片は集められていくのを後方にちらと見て、ティミーはアンクルと共に敵の中へと斬り込んでいった。
アンクルの飛行は荒っぽいものだが、ティミーは一度アンクルの背に乗りながらの戦闘に挑んたことがある。サラボナを襲おうとしていたブオーンと言う巨大怪物との戦いの際、今と同じようにティミーはアンクルと共に戦った。彼とは息が合う。恐らく勢いに任せた心根が合うに違いない。敵に向かうとなれば躊躇しない。それでいて、ティミーよりは冷静な部分もある。ティミーは彼をまるで共に戦う騎馬のように乗りこなしながら、敵の中へと剣を振り上げ突っ込んでいく。
その直前に、アンクルが雄たけびを上げ、敵の動きを瞬間的に止める。その隙を縫い、ティミーが敵に斬りつける。近づいて気づいたが、敵は全て背に翼を持つ飛行できる者たちだ。月明かりに照らされる敵の魔物たちの姿を見れば、その者たちが以前にも出遭ったことのある魔物らだとこの時になってようやくティミーは気づいた。
「この魔物たち……みんな見たことある!」
「オレも多分、あのガチャガチャうるせえ奴には会ったことあるぜ。それに、オレもいるしよう。やりづれぇなぁ」
今ティミー達が対峙している魔物の群れは、本来この砂漠地帯に生息しないはずの魔物だった。この砂漠の大陸の西に存在する、岩山に囲まれた人々など寄せ付けない大陸、そこには神の力が封印されていたボブルの塔が建っている。そのボブルの塔で遭遇した魔物らが今、何故かティミー達の目の前に現れているのだ。
シュプリンガーにアンクルホーン、ゴールデンゴーレム、そしてメタルドラゴンと言った強敵揃いだ。アイシス女王の手が震えていた理由をティミーは今になって知った気がした。テルパドールの守りでは到底追いつかない相手だということを、アイシスは遠くにも認めていたのだ。
その中でもティミー達の目の前に多く存在しているのは、全身を金属に守り固めたメタルドラゴンだ。砂丘の上手では今もまだアイシスの遠隔呪文で足止めを食っている敵の魔物らがいるが、このメタルドラゴンにアイシスの呪文は効かないのだろう。眠りに落とすラリホーにしても、幻惑呪文メダパニに幻覚を起こさせるマヌーサなどの呪文は、生物に対してはある程度有効だが、機械仕掛けの魔物には効きにくい、若しくは全く問題としない性質を持っているのかも知れない。
メタルドラゴンはその金属の身体に月明かりを受け、存在を主張するかのようにきらりと光っている。それが十二体、あちこちに浮かび上がっている。その光景を見るだけで、ティミーの背筋に冷や汗が流れ落ちた。勢いだけで勝てる相手ではないかもしれないと、僅かに心が萎みそうになる。
何せ今、ここに父はいないのだ。
そんなティミーの心に火を灯すように、月夜の砂漠に激しい炎が上がった。ロッキーの破片を拾う傍ら、ミニモンがメラミの火炎を敵の群れに投げつけたのだ。味方の灯すその明かりに、ティミーは素直に心を明るくする。
「アンクル! ボクが落っこちても、絶対に拾ってね!」
「おうよ、任しときな! オレが拾い損ねても、メッキーもミニモンもいるからな。安心しろよ!」
この場に仲間の魔物たちを半ば強引に連れてきたのはティミーだ。ただその時近くにいたという理由だけで連れてきてしまった。しかし彼らはティミーを信じてついてきた。勇者ティミーを信じているテルパドールの人々とは違う。リュカの息子であるティミーを信じ切っているから、守りたいからついてきたという真実がある。
向かってくるメタルドラゴンに向かい、ティミーは呪文の構えを取る。どこからともなく空には雲が集まり、月も星も翳り、砂漠には暗闇が訪れる。しかしそれも束の間、集まる雲の間から閃く小さな光が徐々に大きくなり、ティミーの天空の剣が振り下ろされる合図と共に、砂漠は一瞬光と言う光に包まれた。光に弱い敵の魔物らは一瞬、視界を奪われその場に止まる。どさりと砂の上に落ちる一体。ティミーのライデインの直撃を受けたメタルドラゴンが煙を上げて砂漠の地に倒れた。
残る十一体がティミーとアンクルに向かって襲いかかってくる。この小さき者を先ずは退治しなくてはならないと、メタルドラゴンの機械の頭脳が判断したのだろうか。戦闘用に生み出された機械仕掛けの魔物は今や、危険信号が発せられたティミーだけを標的としていた。
その動きにゴレムスが反応する。ティミーを守るべく、文字通り身体を張って敵の動きを止める。ティミーが防御呪文スクルトを唱える間に、アンクルは敵を牽制するための火炎呪文ベギラマを放つ。そしてゴレムスの背から飛び出し、魔物の群れに飛び向かう。
ゴレムスがメタルドラゴンの攻撃を一挙に引き受けると言わんばかりに、両手を広げて自身の存在を主張する。しかしこっちに来いと誘われて来た敵は、ゴレムスの足元に巨大な斧を振りかざすゴールデンゴーレムらだ。力任せに斧を振るわれ、ゴレムスの両足が削られて行く。それを横目に見て、ティミーがもう一度スクルトを唱えた。
突然目の前に現れたアンクルの姿に、ティミーは一瞬混乱した。自身が幻惑の呪文にでもかかったのかと思い、反応が遅れた。アンクルの身体が思わぬ方向へ動き、ティミーは彼の背の上で後れを取る。ふわっと浮いたティミーの身体に、敵のアンクルホーンの放つベギラマが襲い掛かる。咄嗟に身を守るように両腕を前に出すティミーの左手には、天空の盾。勇者の身を守るべく、盾から神々しい光が飛び出し、ティミーを守る光の壁が発生するが、一足遅かった。ティミーは火炎呪文を全身に浴び、そのまま力なく下へ落ちて行く。
ティミーの身体を拾うのは、素早く飛び込んできたミニモンだ。小さな身体だが、ティミー一人を捕まえ持ち上げるほどの力は魔物として有しているミニモンは、空中でティミーの身体をしっかりと抱きとめると、一度魔物の群れから彼を引き離した。
「ケガ治せよー」
軽く言うミニモンだが、ティミーとしては呪文の連発は予想以上の身体への負担となっていた。それもこれも、ここ最近はグランバニアで戦闘のない日々を過ごし、身体が思ったよりも鈍っていたのが原因だ。城で剣の稽古を続けていたのは本当のところだが、外でこうして本当の魔物の敵と対峙し戦うような状況がなかったのは、即ち危機感に欠ける生活を送っていたということだ。
焦げ付いた自身の怪我を治すべく回復呪文を唱えるが、それを待つミニモンに焦りが生じているのを感じた。早く戦線に復帰しなくてはならないのに、たかが回復呪文一つで足止めをしてはならない。
「ねえ、ロッキーは?」
現実逃避のような言葉が出たことに、ティミーは自身の気持ちが弱っているのだと感じた。
「もうほとんど集めたぞー。あそこにいるだろー」
ミニモンが武器である巨大フォークで指し示す方向に、砂地の上に詰まれた岩の破片が見えた。空に集められていた雲は既に広い夜空に散り、今はまた月夜に照らされた広大な砂漠の景色が広がる。その月明かりを受け、メガンテに散ったロッキーはティミーに蘇生される時を今かと待っているようだった。
「あんまり細かいのは集めらんないからなー。元よりはちょっと小さくなるかもなー」
「そ、そんなので大丈夫なのかな?」
「平気だろー。オレたち、生きてお前たちのそばにいるだけでキセキだからなー」
ミニモンの表情はいつも通り大きな舌をだらりと垂らし、口角を上げたようなふざけたものだというのに、彼の言葉には途轍もない命の重みを感じた。その重みを知らないわけではない。
ティミー自身、目の前で父を喪った瞬間があった。ポピーが怒りに我を忘れ、まるで鬼の形相で敵に強大な呪文を放った。ティミー自身も、あまりの喪失感に心臓を握りつぶされ、そのまま滅されるような感覚を味わった。勇者だというのに、敵に人質として取られ、そのせいで父を喪う羽目となった現実が彼を押しつぶしかけた。
生きて傍にいられるだけで奇跡なのだ。ミニモンの言う通りだ。その奇跡を、自分は起こす役目を負っているのだと改めて世界における勇者の役割を深く理解すれば、その奇跡を起こす自分自身を信じる心が沸きあがる。
奇跡を待つのではない。勇者たるもの、奇跡を起こす存在だと、自分を絶対的に支えてくれる父、妹、魔物の仲間たち、サンチョにオジロンにドリスにと考え始めればキリなく思い浮かぶ周りの人々の顔に、ティミーは応える。
ティミーとミニモンの間を裂くような大剣が振り下ろされた。シュプリンガーが目の前まで迫ってきていた。ティミーを突き飛ばしたミニモンの羽が一部斬られた。しかしティミーがすかさず回復呪文を当て、傷を回復してやった。
「よっし! 調子が出て来たよ! ありがとう、ミニモン!」
「お前は死ぬなよー」
砂漠の地は歩きづらいし走りづらい。砂に足を取られる。それゆえの空中戦だ。敵も翼を持つ者ばかり。ティミーがミニモンの小さな背に乗ると、すぐさまミニモンは宙に翻った。シュプリンガーの群れが追ってくる。どうやら敵は種族ごとのまとまりがあるようだが、その内の指揮をとっているのがこのシュプリンガーのようだった。人語を解しているのはアンクルホーンだが、シュプリンガーの指揮には従っている様子が窺えた。
そのシュプリンガーの内の一体と、ティミーは束の間目が合うのを感じた。敵意を感じるはずの敵の目に、一瞬戸惑いが浮かんだような気がした。遠隔呪文を唱え続けるアイシスの呪文が効いたのかと思うようなものだったが、相変わらずシュプリンガーはティミー達に向かい大剣を振りかざしている。
敵の猛攻が始まると、途端に辺りは砂嵐に襲われた。ゴールデンゴーレムの唱えるバギクロスが辺り一面の砂を巻き上げ、視界を閉ざす。防御一辺倒では敵を倒す機会を作れないと、ティミーは薄目を開け、近くに仲間の気配を感じると、ミニモンから飛び降りる。飛び移ったのはゴレムスの手の上だ。ミニモンの小さな身体に、子供とは言え成長したティミーの身体は重荷だった。
広いゴレムスの手の上に立つティミーにもまた敵の唱える呪文の嵐が襲い掛かる。ゴレムスが手の中にティミーを包みその身を守ろうとするが、敵は呪文の使い手が多く存在する。味方のアンクルもまた呪文で応戦するが、敵対しているアンクルホーンは悠に十体を越える。威力が桁違いだ。まともに食らい続ければ、こちらが圧倒的不利なのは目に見えている。
「ッキッキッキー!」
「ええっ? 何? 今戦えって言われても、ちょっと難しい……」
「だーっ! 違えだろ! お前、呪文封じの呪文を知ってんだろうが! さっさとやってくれ! こんなの食らい続けてたら、さすがのオレたちも持たねぇよ!」
「あっ……」
敵をいかに攻撃することばかりに囚われていたティミーは、自身の使用できる呪文の中で最も初めに覚えた呪文の存在を忘れていた。ゴレムスの大きな手が敵の呪文を受けボロボロと崩れ始めている。仲間の魔物たちも敵の呪文の猛攻を受けて、たまらず防御に回っているが、それでも当然怪我は免れない。回復呪文ベホマラーを唱えるメッキーの魔力も、じきに底をついてしまう。長期戦になれば確実に負けかねない戦いの流れを変えるべく、ティミーは崩れかけるゴレムスの手の中でマホトーンの呪文を唱え始めた。
一度唱えた後、効果は分からなかった。しかしティミーは続けざまにマホトーンを唱える。敵は多数だ。連発してようやくその効果が知れる。三度、四度と唱える内に、敵の呪文の威力が弱くなってきたと体感した。
ゴレムスが動き出した。敵の呪文に耐えられると判断し、敵の群れに向かって歩き出す。ティミーは開くゴレムスの手の中から、まだ小山と積まれたロッキーの姿を目にし、大きな手から逃れるように下へ下りようとしたところへメッキーが飛んできた。
「メッキ?」
「ロッキーを……」
「メッキメッキ!」
相変わらずメッキーの言葉が分からないティミーだが、意思が通じたのは感じた。すぐさまメッキーの背に乗り、ロッキーの元へ向かう。その際にもティミーは未だ呪文を唱える敵の群れに向かいマホトーンの呪文を唱える。全ての敵の呪文を封じてやると言う勢いで、ティミーの手から次々とマホトーンの呪文が放たれる。あまりの連発に、ティミーの身体はすさまじい魔力の消費について行けないと力が抜けそうになる。
戦線を離脱するかのような動きを見せるティミーを、アンクルホーンの群れが追撃してくる。アンクル同様、敵もまた怪力且つ様々な呪文の使い手だ。後ろから火炎呪文に合わせて真空呪文が放たれ、まるで炎の大蛇がうねるように向かってくるのが見えた。
ティミーは必死にメッキーの首に右腕でつかまりながら、左手で今一度、天空の盾を構えた。天空の盾はあの時、ボブルの塔での戦いの際に、ティミーの身体を巨大な火球から守った。その能力は奇跡やまぐれなどではないと、ティミーは勇者の持つ盾の力を、勇者としての自分の力を信じ、自身とメッキーの身体を守れと命じるように盾を火炎の大蛇に向ける。
伝説の盾が割れたかのような美しい音が響き、火炎の大蛇はまるで新たな敵を見つけたと言うように、呪文を放ったアンクルホーンの群れへと跳ね返って行く。空中で慌てふためく敵の群れは、そのまま自身らの放った火炎に焼かれ深い痛手を負ったようだった。
ティミーはメッキーに乗せられ、ロッキーの欠片の集められた砂漠の地に降り立った。考えている暇はない。すぐさまロッキーを蘇生させなければならない。今は父もスラりんもいない。自分にしかできない。自分にならできるのだと、ティミーは集中してロッキーの命を思った。激しい戦闘の音が後ろで鳴り響いているが、今はそれを気にしてはいけない。
積まれた岩の破片だけを見れば、それがロッキーだったかどうかも怪しいと見えるほどだ。しかしこの欠片の集まりは間違いなく命ある魔物の仲間だった。爆弾岩なんて恐ろしいだけのものかと思っていたグランバニアの人たちにも今は馴染み、特にゴレムスと共にいることが多い。言葉を持たない二体だが、同じ無機質なものから生み出された理解があるのか、ゴレムスはよくその手にロッキーを乗せている。
ただの砕けた岩の残骸であっても、それが確かにロッキーなのだと思うことができる。ロッキーにしてもゴレムスにしても、他の魔物の仲間たちにしても、皆ティミーを信じているからこのような突飛な攻撃方法をいきなり仕掛けられたのだ。
人間でも魔物でも、どのような生き物でも恐らく、仲間に信じられることがそのまま力になる。特にティミーは、仲間たちの信じる心を、何倍にも増して自身の力に変えることができる。自分を信じてくれる者には、それ以上のことを為して期待に応えたいと思うのがティミーの精神だ。
目の前の岩の欠片はロッキーだ。ティミーは今や、蘇生呪文ザオリクを確かなものへと昇華した。もう彼の蘇生呪文に危うさはない。ザオリクの呪文は確実に、仲間をこの世へと呼び戻し、しっかりと栄養と休息を取った後のような充足感すら与える。
「……あー、でもちょっと元よりちっちゃいかな」
生き返ったロッキーの姿に、ティミーは思わずそう零した。ロッキーのごつごつした身体に抱きついた感触が、彼にそう思わせた。しかしロッキーは何やら分からぬ顔つきで、ティミーを見つめるだけだ。
「アンクル!」
「よしきた! よくやったな、お前! さすが勇者サマだぜ!」
元気に言葉を返すアンクルだが、その見た目はかなりボロボロにやられている。メタルドラゴンの猛攻にどうにか耐え抜いた結果だが、主に逃げ惑っていたために敵の数はさほど減っていない。メッキーの回復呪文が追いついていない。ティミーはすぐに自身も回復へ回らねばならないと、皆の様子を瞬く間に窺う。
ティミーを拾い、宙に飛ぶアンクルの傷をまず癒す。しかし傷を癒しても、アンクルが消耗した魔力まで回復させることはできない。ミニモンも呪文を数多仕掛けるが、小さな身体を生かして敵の中を逃げ回る行動が目立つ。その中でも敵に攻撃され、否が応でも怪我をするのでメッキーの回復を要している。
マホトーンを唱え続けたティミーもまた、魔力が底をつきかけている。ゴレムスが再びロッキーを手に乗せ、敵陣にロッキーを投げ込もうとするが、ティミーがそれを制した。次に誰かが命を落としても、蘇生呪文ザオリクを唱えるだけの魔力が残っていないのだ。
万事休す。いくらか敵の軍勢を倒し、砂漠の地にその身体は転がっているが、それはまだ二割程度と思われた。残り八割の敵の群れを、これから仲間たちと力を合わせて倒すという想像が、ティミーのみならず他の仲間たち誰の頭にも思い浮かばない状況だ。
「……逃げるか?」
アンクルが新たな道を指し示す。ティミーの頭の中には存在しない、逃げるという手段。勇者たるもの、敵前逃亡などしたら笑われてしまうと心を奮おうとするが、現実的に勝てる情勢ではない。
「砂の女王サマも、お前のこと責めないと思うぜ。だってよ、本当だったらオレたち、今はグランバニアにいるはずだもんな」
「そうだけど……」
そんな会話をしながらも、アンクルは回復した体力で宙を飛び回り、どうにか敵の猛攻を逃れている。しかし全てを避け切れるわけでもなく、翼をシュプリンガーの剣で斬りつけられたり、メタルドラゴンに突進されれば、アンクルもティミーも共にただでは済まされない。
「メッキー!」
仲間たちの窮地を救うべく、メッキーが回復呪文ベホマラーの呪文を唱える。アンクル、ミニモン、ゴレムスの傷を癒す一方で、ティミーとメッキーはその呪文を光の壁で跳ね返してしまった。呪文反射の効果を未だその身に受けている彼らには、呪文と言う呪文が届かない。跳ね返した回復呪文はそのまま敵陣の中へと飛び込み、二体の敵の体力を回復してしまう。
「ウソでしょ?」
「おい、そんなのアリかよ」
余りの絶望にそんな言葉しか出てこないティミーとアンクル。回復されるはずだった自身の体力が回復されない事態に、ティミーの精神力が一気に沈む。がっくりと力を落とすティミーの身体を、アンクルがどうにか背中に支える。
敵陣の中を飛び回っていたミニモンが体力が尽きたように宙にふわりと浮かんだ。その瞬間、ミニモンの身体にゴールデンゴーレムの大きな斧が襲い掛かり、斬られるがままミニモンの身体は砂漠の地に叩き落された。回復に向かうメッキーから放たれるはずの回復呪文が、出ない。メッキーもまた魔力が底をついてしまったようだ。ティミーもまたマホトーンの連発やザオリクの使用で、既に魔力は尽きかけている。
砂地に倒れたミニモンが、むくりと起き上がる。武器の大きなフォークを支えに立つミニモンだが、その顔はいつも通り人を小馬鹿にしたようなふざけた顔つきだ。そして彼は皆に確かめる。
「やるぞー?」
何を、と問いかける余裕もない。ミニモンには既に敵の魔物の群れが襲い掛かっている。助ける手も差し伸べられない距離だった。
「知らないからなー!」
それだけを言うと、ミニモンの小さな身体が突如、七色の光に包まれた。神々しい光とは異なる、ヘンテコで芸術的な光だ。楽しいことが起こりそうな、砂漠中が怒号に包まれそうな、全世界が悲しみに包まれてしまいそうな、喜びに満ち溢れた世界が訪れたような、何も分からないような光が辺りに広がる。敵も味方も、誰もがその光景の醸す雰囲気に、その場で棒立ちになる。
この砂漠のどこからかなのか、天から下りて来たのか、はたまた地獄のそこから這い上がって来たのか、何も分からない何かが現れた。何か、としか言いようのないものだ。それが生き物なのか物体なのか景色なのか、心底何も分からない。ただ、周囲にいる者たちへ与える影響は一つだった。
途轍もなく恐ろしいもの。
それを目にした敵の魔物の群れは、勝利目前に迫っていた戦いのことなど頭の中から吹き飛び、降りて来た砂漠の丘を駆け上がるように逃げ出した。敵の戦意を一瞬にして喪失させたのは明らかだった。手にしていた大剣や斧などの武器すらその場に捨て、這う這うの体で逃げ出す敵を、ティミー達もまたどうしようもなくそのままにするだけだ。
と言うのも、ティミー達もその恐ろしいものの前に、ただ立ちすくむばかりだったのだ。敵でも味方でもないその恐ろしいものは、ティミー達にもほぼ同様の恐怖を与えた。ティミーはアンクルの背に乗りながら全身を震わせ、アンクルもまたその恐怖の前に歯の根が合わない状態に陥った。メッキーに至っては宙に飛んでもいられず、砂漠の地に落ちて気絶してしまっている。ゴレムスもこの世に魔物としての生を受けて初めて感じた底知れない恐怖に、両手で大事にロッキーを包みながら大きな身体を縮こまらせている。パルプンテを唱えた張本人ミニモンもまた、立ったまま白目を剥いて失神していた。
砂漠の地に平穏が戻った。
わけではない。それほど単純なものではなかった。途轍もなく恐ろしいものが、魔物の群れをどこか訳の分からない場所へでも連れ去り放り込んでくれでもすれば、万事解決と言ったところだが、単に敵の群れが敗走しただけだ。敵の群れはいずれまた時を見て、テルパドールを襲いかねない。
「と、とと、とにかくテルパドールに一度戻ろうか」
まだ震えの止まらないティミーが、砂漠の地の上に気絶しているメッキーを起こしにかかる。四つん這いで近づき、揺り動かすと、メッキーはすぐに目を覚ましたが、夢の中でも恐ろしいものに出遭っていたのか、目を覚ますや否や全身を震わせている。
「メッキー、ルーラでテルパドールへ……」
「ッキー……」
「そりゃあ近いけどさ、でも今のボクたち、あそこまで歩いて帰る体力がないよ」
「いやいや、そうじゃねえよ、ティミー。メッキーも魔力が尽きてんだ」
「あ、そっか」
広い砂漠の景色にテルパドールの城は目に見えているが、遠い。それをこれから歩いて帰るのかと思うと気が重い。仲間たちは皆が皆、体力の限界を迎えていて、魔力も底をついた状態では体力の回復も図れない。メッキーが立ったまま気を失っているミニモンを目覚めさせたところで、ティミーは皆に声をかけテルパドールに向かおうと、月光に照らされる砂漠の城を目指して力なく歩き出した。灼熱の真昼の砂漠でなかっただけありがたいと、ティミーは思うことにした。
ふとその後ろを、様子を窺うようについてくる何者かがいる。魔物の仲間が立ち止まり後ろを振り返った後に、ようやくその気配に気づいたティミーが同じように後ろを振り返る。それが再び魔物の群れの様相を呈していて、ティミーは改めて望みを絶たれたような心持ちになりながらもどうにか剣を取る。
敵の群れは先ほど逃げて行った魔物の群れの一部だった。背中に竜の羽を生やし、右手に大剣、左手に盾を構える竜人族の戦士シュプリンガーだ。それが五体。先ほど武器も盾も捨てて逃げ出したことを恥じるように、おずおずと現れた魔物らだが、その手には砂漠の地に置き去りにしていった剣も盾も元の通り装備されている。投げ出し捨て置いた武器防具を取りに戻って来たのかと、ティミーは思わず首をかしげる。
敵の魔物の群れも未だ、途轍もなく恐ろしいものの影響から逃れ切れていないように、砂漠に立つ両足はどうにか立っていられるような状況だ。しかし他にも用事があるのか、ティミー達を見つめたままその場に立ち尽くしている。
「ティミーに用があるって感じだぞー」
「キッキ」
「えっ、ボクに? 何かなぁ。ボク、もう戦えない気がするんだけど」
つい弱気な言葉が口をついて出るティミーだが、もし敵が戦意を見せればどうにかしなければならない。最後の力を振り絞るように、剣を握る手に力を込めた時、ティミーの足元に敵の手により何かが投げ落とされた。
乾いた砂の上に落とされた葉の束を見て、ティミーは目を瞬く。そして敵の意図を確認するように、自分の二倍の背丈は有りそうなシュプリンガーを見上げた。
「これ……薬草だよね。くれるの?」
ティミーが窺うようにそう問いかけると、人語を解さないシュプリンガーは竜人族の言葉らしき声でティミーに身振り手振り伝えようとする。
「前に助けてもらったって言ってるみたいだぞー」
ミニモンがそう伝えるなり、他の四体も身に潜ませていた薬草の束を取り出し、ドサドサとティミー達の前に投げ落としていく。満足そうに頷いているシュプリンガーの様子を見ながら、ティミーは以前彼らと遭遇した時のことを思い出した。
彼らを助けたのは、父リュカだ。ボブルの塔を探索していた際に、シュプリンガーの群れとの戦闘になったことがあったが、父は無駄な闘いを避けるべく逃げの一手を打ち、その際に斬りつけてしまった敵の傷を癒すのに薬草を投げて渡したことがあったのだ。今、ティミーの目の前にいる五体のシュプリンガーはその時の彼らであり、敵であるリュカに薬草を渡されたことに対して深い恩義を感じていたらしい。竜人族の中でも強者の彼らには、一般の魔物とは異なる礼節が備わっているようにも思えた。
「ボクのことも覚えててくれてたんだ。良かったぁ」
戦う必要がないと分かった瞬間、再びティミーの身体から力が抜ける。そして砂漠の地に腰を下ろすと、目の前に投げ置かれた薬草を手に取り、千切ってそのままむしゃむしゃと食べ始めた。
「うう~、マズイよね、これ。だからあんまり薬草は食べたくないんだよ」
顔をしかめながらいかにも不味そうに薬草を食べるティミーに同意するような頷きを見せて見下ろすシュプリンガーの群れ。先ほどの敵の軍勢を指揮していたのは、このシュプリンガーたちだ。指揮を離れた魔物の群れが、再び大挙してテルパドールを襲うこともないだろうと、ティミーは薬草の苦味に苦笑いしながら少しずつ自身の体力の回復に努めた。
仲間の魔物らも薬草の恩恵を受け、いくらか体力を回復したところで、やはり一度テルパドールに戻るとティミーが五体のシュプリンガーに伝えると、彼らもついてくるという意思表示をした。ティミーはまるで自身が魔物を仲間にしたような特別な感覚に陥り、すぐに有頂天になりながら、新たに仲間になった五体のシュプリンガーと共にテルパドールの国を目指して歩き始めた。シュプリンガーが竜人族の言葉で何事かをティミーに言えば、ティミーは明るく「ありがとう! これからはテルパドールを守ってくれるんだよね!」と自己解釈したところで、アンクルが「……改めて礼がしたいから今度リュカに会わせろって言ってんぞ」ときっぱりとティミーの見当違いの解釈を訂正していた。

Comment

  1. ケアル より:

    bibi様。
    いつも執筆ありがとうございます。
    今年の恵方巻は北北西だそうです。しかし、自分は間違えて南南西の方を向いて食べてしまい…(汗)
    途中で気がついて北北西の方を向いて食べ始めましたが残り少なく…(汗)
    神様の恩恵がないかもと悲しい気持ちになってしまったケアルです(苦笑)

    ティミー、武器防具ちゃんと持って行ったんですね。問題はポピー…マグマの杖が無いのにどうなるのか?…気になるところです。

    bibi様、今回も伏線回収ですね。以前アイシスが西の方から禍々しい気配が感じると言っていましたよね。そん時に遠隔ラリホーマをしたあの話。やはりボブルの塔からの襲撃でしたか。

    遠隔呪文、ポピーさりげなく習得しつつあるんですね。このフラグがきっと次回のポピーラインハット戦に関係してくるんだろうなぁ(笑み)

    シュプリンガーの薬草、まさかここで薬草の恩返しとは…。まさか、あの時リュカが放り投げた薬草が伏線になっていたとは…びっくりしました(笑み)
    でもbibi様、シュプリンガーはティミーたちに攻撃していて…。戦闘が終わるまで、リュカといっしょにいたティミーだったことにシュプリンガーは気がついていなかったということでしょうか?

    bibi様、一つ教えてください。
    メッキーがベホマラーを使った時、天空の盾の効果でマホカンタ状態だったんですよね?
    天空の盾を持ったティミーといっしょにいたアンクル、アンクルにもマホカンタがかかっていたんですよね?
    bibi様の本文には、メッキーがベホマラーを使ったけどティミーとメッキーが天空の盾マホカンタで回復できなく敵に撥ね返したと書いてます。ティミーとメッキーで間違えありませんか?
    自分の解釈違いなら申し訳ないです。

    ロッキー、ザオリクで生き返れて良かったですね、しっかしとんでもない作戦を五レムスとロッキーは考えますね(汗)
    特攻隊宜しくと言った感じで!…。
    いやはや、ロッキーどんどんメガンテ使ったら、しまいの果てには、手のひらサイズのミニロッキーになっちゃうかも?(笑み)

    パルプンテの描写、どうするのかと思ってたら、ここで使いましたか。
    色々な効果があるパルプンテ、何の効果にするのかと思っていました。
    ゲーム中で割合発生が高い「恐ろしい者」でモンスター逃走で戦闘終了、bibi様、この描写にしたんですね。
    パルプンテの描写、まだまだできそうですか?楽しみです。

    次話はポピーラインハット戦。
    ティミーは瀕死になりながらでも、ミニモンのパルプンテで一時は危険を回避しました。ポピーはスラりんとピエールでラインハットをどうするのか楽しみです。
    グランバニアはデモンズタワー、テルパドールはボブルの塔、ラインハットはどこから襲撃を?
    次話をなるべく早くお願いしますね(笑み)

    • bibi より:

      ケアル 様

      いつもコメントをどうもありがとうございます。
      恵方巻は北北西、でしたね。私も息子が方位磁針で調べた向きで一緒に座って食べていました。年々、太巻きのごはんの量が腹に堪えます・・・お腹いっぱい。恵方巻はまあ、イベントの一つという感じで楽しめればいいかなぁなんて思っています。神様の恩恵は受けられたらラッキー、ということで(笑)

      ティミーはしっかり武器防具を持って行きました。勇者としてあの国を訪れたかったので、その辺りはしっかりと。
      シュプリンガーは仲間にする予定だったんですよ。攻略本を見れば、仲間にしやすいみたいだったので、こいつはきっと竜人族の戦士として礼儀正しいヤツで、恩義深い性格に違いないと、またそんな勝手な設定で今回仲間になってもらいました。

      ティミーのマホカンタは彼自身とメッキーにしか効いていない状態です。アンクルホーンの猛追から逃げる際にティミーが天空の盾でマホカンタを発動した時、ティミーとメッキーの身体にマホカンタが発動しています。対して、アンクルには特別マホカンタを発動していないという・・・分かりづらくて申し訳ないです。

      手のひらサイズのミニロッキー! それ可愛いですね~。もはや爆弾岩じゃなくって爆弾石かも知んないですね。懐に入れて持ち歩けるミニロッキー、それいいなぁ。
      パルプンテはここで使おうと、ミニモンを敢えて連れて行きました。というか、ミニモンがいなければ今回の戦いは全滅していますね。パルプンテはきっとまたどこかで使いそうです。面白いですもんね、この呪文。

      次回のお話もなるべく早く書き進めたいと思います。ポピーたちのラインハット戦。凡そは話を決めていますが・・・細かいところをどうするか。来週また考えて行きますね。

  2. ラナリオン より:

    bibi様。
    初めてコメントを投稿させて頂きます。ラナリオンと申します。どうぞ宜しくお願い致します。2年半程前にこのサイトを見つけて以来、更新される度に拝読させていただいております。幼年期のお話だけはリュカやプックル、ヘンリーの辿る運命があまりにも…。結末がわかっているとはいえ悲しいですよね。未だにまだじっくり読めずにいますが毎回いつも楽しく読ませていただいております。bibi様独自の視点や発想から基づき描かれるドラクエ5のストーリーは読む度に心が躍らされるといいますか、新たなドラクエ5の世界観に引き込まれます。当時、ゲームをプレイしながら思っていたのですが本編では描かれなかったストーリーや各キャラの心情に添ってもっと突っ込んで欲しかった部分っていっぱいあったなって思うんですよね。勿論、プレイヤーの想像力を掻き立てるという意味ではそれはそれでドラクエの良さではあると思うのですが…。bibi様の描かれる小説はこの場面の登場人物の心情はおそらくこうであっただろうということをそれぞれ各キャラにフォーカスして事細かく描いてくれているのでお話の内容にも人間味があってついつい感情移入しちゃいます。ストーリーが壮大で完全オリジナル展開も私はすごく好きです。最新話はまだ目を通していないのでこれからじっくりと読ませていただきますね。3カ国同時攻撃…。凄い展開になってきましたね。リュカの持つドラゴンの杖の力がついに明らかに?ティミー&ポピーの新たな能力の覚醒!?、はたまた仲間モンスターついに誰かが名誉の戦死を遂げてしまうのか!?いつか誰か死んでしまいそうで…。ホント色々と想像が尽きないですよね。誠に勝手ながら質問も含め、またコメントもさせていただきたいと思っております。bibi様、ご多忙の中、このコロナ渦の中での執筆、計り知れず大変な御苦労をされているかと思いますが、どうかお体の方もご慈愛下さいね。物語はいつかは終わりがくるのでそれはそれで寂しい想いもありますがご自分のペースで描き進めていただけたらと思います。ついつい長々と長文となってしまい申し訳ございません。

    • bibi より:

      ラナリオン 様

      この度はコメントを頂きましてどうもありがとうございます。
      二年前よりお越しいただいているんですね。長いことお付き合いいただきましてありがとうございます。
      お時間ある際に、まったりのんびりとお読みいただければ幸いです。

      ドラクエはシリーズ通して好きですが(10と11は未プレイですが・・・)、その中でも私の心に刺さるドラクエ5の世界をお借りして、私なりのお話を書き散らしております。ドラクエって想像させられる余地が沢山あるところに醍醐味があると思っています。後はご自由に想像してください、みたいな余白が大好きです。なので、その余白を私なりに埋める形でこうして長々と書き続けております。これでもやはり、まだまだ余白を埋め切れないので、その余白についてはそれこそ皆様のご想像にお任せします、という感じです。

      現在進行中のお話は完全にオリジナルの話なので、ちょっとなぁ・・・と思われる方もいらっしゃるかも知れませんが、すみません、好きにやらせてもらっています。こんな展開があったかも知れないね、くらいの軽い気持ちでお読みいただければと思います。その割には内容がハードかも知れませんが(苦笑)

      ご質問につきましては、もしかしたら答えられない部分もあるかも知れませんが、できる限りお答えできればと思います。何せ、私自身が過去に自分の書いた話の内容を結構忘れているという有様なので(汗) もう、見返すのが大変で、こんなに書かなきゃ良かったと思っています(笑)

      たまに頭痛に悩まされるくらいで(頭痛体質)、身体はすこぶる元気です。ラナリオン様もこの寒い中体調崩されないよう、暖かくしてお過ごしくださいね。今は特に、少しでも風邪をひくと厄介なので。

      いつか終わりの来るお話(来るかなぁ・・・)ですが、今後もお付き合いいただけましたら嬉しいです。どうぞよろしくお願い申し上げます。

  3. ラナリオン より:

    bibi様。今回も執筆お疲れ様でした。コメントの投稿もありがとうございます。ドラクエ5はシリーズの中でも本当に名作だと思います。逃れられない宿命にあり主人公が度重なる挫折や絶望を繰り返しながらも仲間と共に希望を見いだしていく…。旅の中で自らの運命を切り開くうえで大きな選択を迫られる …。初めてゲームをプレイした頃、当時、小学生だった私にとってこのストーリーは心に刺さりました。天空の剣のキラキラしたデザインがカッコよくてスライムナイトのピエールが大好きで。ゲームでは描ききれなかった余白の部分をbibi様が今日まで描いているのですね。勿論、正解はひとつだけではありませんし、まったく同じとは言い切れませんが、堀井さんや製作者側が伝えたかったことをbibi様が体現されているのだと私は思います。上手く伝えられていないですね。(汗)何分文章が不器用なもので…。質問に関してですが、そんなに深く過去の内容を掘り下げて聞くような内容の質問は致しませんのでご心配なく。(笑)ただ今後の展望とか気になったことをちょっとだけといった感じなので。今回のお話ですが、体力魔力共に底を尽き、まさに万事休すかと思いきやミニモンのパルプンテでどうにか切り抜けたという展開でしたね。これまでの旅の中で多くの戦闘を重ね、経験を積んできた勇者として成長著しいティミーですが、今回の戦いは思いがけずちょっと苦い経験になりましたね。父リュカとティミーとの采配力の差が出たといった感じでしょうか。あの場にリュカがいたのなら敵の特徴を瞬時に把握してスクルトは勿論のことマホトーンやフバーハなどの呪文を即、放つように指示したと思うんですよね。でも多勢に無勢、相手が相手ですしね。リュカやポピーがいても苦戦は必至だったとは思いますが、ルカナンやバイキルトの呪文を唱えられる仲間がいなかったのはちょっと辛かったかなと。いきなりロッキーが砕け散ってしまい、冷静さを失って動揺してしまった影響は大きかったかと思うんですけどやっぱり双子にとって父リュカの存在は大きいですね。背中を預けて思いきって戦えます。戦いの前にティミーがアイシスから軽く苦言というか指摘?叱責?を受けていた場面が印象的でした。ティミーの勇者としての責任、正義感は誰もが認めるであろう見上げたものではありますが、一国の王子が王である父に断りもなく抜け出して来ちゃったわけですからね。(汗)でも彼らが救援に来なければテルパドールどうなっていたのでしょう?多分持ち堪えられなかったですよね。多分。(汗)リンガーがここで仲間になるとは思っていなかったので驚きでした!ティミー達がしばらく動けそうもないので早速グランバニアに救援ですかね。ワクワクします!最後にティミー&ポピーですが今回、子供達がとった行動は想定内だったとはいえ、帰ってきたら今回ばかりはリュカ本気で怒りそうですよね?仲間モンスターを勝手に連れ出したうえに何匹か死にかかってますし。かというリュカも今まで相当ムチャしてますけどね。(笑)私が親だったら本気で怒っちゃうだろうなぁ。(笑)

    • bibi より:

      ラナリオン 様

      このゲームは私の人生を通して影響を与えてくれたものだと思っています。分厚い物語の本を一冊読んだ後のような充実感があったのを覚えています。製作者の側の意図とはまるで別の内容になっているかも知れませんが、こんな解釈もあるのよと、気持ちとしては軽い気持ちで、でも内容を考えるのは結構全力で、書き終わった後にはもの凄い疲労感を覚えつつ、たらたらと書き続けています。

      ご質問につきましては、お答えできる範囲でお答えできたらと思っております。もし答えられない内容でしたらごめんなさい。予め謝っておきますね。

      ティミーの戦いは大抵勢い勝負なところがあります。彼の性格が前面に出る感じですかね。でも戦いの場において勢いは大事なものなので、彼にはこれからも勢いを大事に突っ走ってもらいたいところです(笑) 今回の父のいない戦闘で、彼はまた一つ成長できたかな?

      テルパドールはティミー達が来なければ・・・持ちこたえるのは難しかったでしょうね。勇者様様です。これでテルパドールでは一層勇者信仰が強まるかも知れません。
      リンガーたちを仲間にするのはボブルの塔で考えていて、この場面に繋げようと考えていました。なので、実際に形にすることができて良かったです。やれやれ。

      グランバニアに帰ったら、そうですね、リュカにこっぴどく叱られるでしょうね。恐らくもう二度と城から出るんじゃないと厳命されるかも。自分のこれまでの無茶はさておき。魔物の仲間を信頼しているとは言え、親の立場として、生きた心地がしなかったと思います(汗)

  4. ピピン より:

    bibiさん

    相変わらず死闘を書くのが上手くてヒヤヒヤさせられましたよ。
    ティミーがリーダーとして闘うのも新鮮ですし、
    パルプンテはゲームでも全く使わないので全く頭に無くて「そうきたか」と(笑)
    “恐ろしいもの”って一体なんなんでしょうね…
    FFの世界から来たおぞましい怪物とかだったりして…(笑)

    • bibi より:

      ピピン 様

      コメントをどうもありがとうございます。
      戦いの場面を書くのは結構好きなんですが、辻褄が合わなくなるのが怖いなと、こちらもいつもヒヤヒヤしながら書いています(笑)・・・まあ、合わなくっても見過ごしていただけると助かります(汗)
      ティミーのリーダー役はちゃんとした参謀がついていないと成り立たないですね、きっと。それでもハチャメチャで、運頼りで、でも強運の持ち主なのでどうにか切り抜けちゃうのが勇者たるもの・・・と書くと、あんまりカッコ良くないですかね。同じ状況、同じ場面でパルプンテを出しても、たとえばティミーがいないとまた別の危機に陥りそうです。
      恐ろしいもの、いい響きですよね。この「後はご想像にお任せします」的な存在。FFの世界と連動してたら、それはそれで想像が膨らみますねぇ。そのくらい滅茶苦茶な存在でも良いかも知れませんね~。

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