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地下神殿の祭壇の只中で、息絶えようとしている大教祖イブールの姿を見ながら、リュカの胸には様々な思いが去来していた。ベホズンの身体に揺蕩う濃紫色の包みに眠る彼の魂も、これでようやく浮かばれるのだろうかと考えても、決して彼自身がこの世に戻ってくるわけではない。時は戻せない。それはリュカ自身、よく心得ている。
敵の気配がみるみる弱まって行く状況に、金の竜と化していたポピーの身体がその役目を終えたかのように縮み、元の少女の姿に戻った。意識もしっかりしており、この戦いで起こったことも全て彼女は理解している。その上で兄ティミーの隣に並び、祭壇の床に血を吐くイブールを厳しいような憐れむような顔つきで見つめていた。
「こ、これが……こうなることが……運命だったというのか……」
湧き出るように止まらない血を吐きながら、イブールは床に伏しつつも言葉を口にする。鰐のいかにも獰猛で凶暴な見た目とは異なり、大教祖としての地位を守ってきていた彼の言葉は理性的で落ち着いたものだ。しかしその目にはやはり隠し切れない荒々しさがあり、そして正誤など考えない、一つのものを信じ切るような狂気に触れる信条が窺えた。鰐の口は悔しさに歪むのではなく、死を前にしても尚、自身の信じるものは間違っていなかったのだという喜びを滲ませている。
大教祖という立場にいながらも、イブール自身がこの光の教団の信者の一人に過ぎなかったのかも知れない。
「すべては我らが神、大魔王ミルドラース様の予言通り!」
喉をがらがらと鳴らしながら血を吐き言葉を口にするイブールだが、その言葉だけは広い祭壇の間に響き渡った。イブールが敬称で呼ぶその名を、リュカは以前にもどこかで耳にしたことがあるような気がした。神でもあり、大魔王でもあるミルドラースという存在に、イブールが心酔していたのが見て取れた。たとえリュカたちに敗れるようなことがあっても、それもまた大魔王ミルドラースの予言とあれば、イブールはこの運命を受け入れることができると言わんばかりに、その声には清々しささえ感じられた。
「リュカよ」
イブールはリュカを名で呼ぶ。この世にたった一人しかいないリュカという人間を、イブールは確かに知っている。それはラマダもまた同様だった。彼らはリュカの母マーサを通して、リュカと言う人物を知り得ているのだ。
「お前の母は暗黒の魔界ミルドラース様の元にいる。母を助けたくば魔界にゆくが良い」
リュカの旅は、父パパスと共に、まだ物心つく前から始まっていた。幼い頃は父が何故世界を旅しているのかなど分からず、ただ父と共にいられればそれで良かった。子供の自分の世界はとても狭かった。
しかし狭い世界に延々と浸ることなどできなかった。運命だか宿命だか何だか分からないが、リュカの生きる世界から父は姿を消し、自身が大人になってようやく父が旅していた理由を知った。父の手紙を見つけた時から、リュカの未来は自身で運命づけたのだ。必ず父の遺志を継いで、魔界から母を救い出す。そうしなければ、いざ自身の命が尽きる時に父に合わせる顔などないと、幼い自身のせいで命を失くした父に二度と会うことなどできないと、リュカはイブールの言葉に改めて自分に課した運命を思う。
「しかしそこでお前とその一族は滅びることになるのだ」
それがイブールの心酔する大魔王ミルドラースの予言なのだと、鰐の口に笑みさえ浮かべてそう語る。その言葉はそのまま呪いの言葉のように、リュカの身体に染み込んでいく。光の教団の大教祖であった彼の声、言葉には、強い呪いの効果があることを、リュカは身をもってその力を知ったような気がした。
今、この場においてイブールが話しかけているのは、勇者ティミーではなく、マーサの子であるリュカだった。敵であるリュカが滅びる運命を語りながらも、イブールの表情はどこか虚ろだ。命の限りを間近にして残りわずかな体力で声を出している状況だからとは思えなかった。
床に這いつくばりながらも、イブールは重い首を苦し気に上げてリュカを見上げる。通常は敵の目に、しかもこれほど多くの人々を苦しめ痛めつけて来た憎き敵に同情する心など微塵も持ち合わせない。そのはずだが、リュカを見上げるイブールの目からは、それまでずっと存在していた邪の心が取り払われていた。
鰐の目に、涙が浮かんでいた。それは決意の涙のようにリュカには思えた。リュカはこのような魔物の目に、これまでにも何度となく出会ったことがある。
今までリュカの仲間になって来た魔物たち。スラりんにピエールにマーリンにと多くの魔物たちが、エルヘブンの血を引くリュカが魔物と心を通わすその心に惹かれ、今では心身ともに支え合える仲間となっている。そしてイブールもまた、彼らと同じような目をリュカに向けているのだ。
しかしリュカは分かった。イブールがその目に見ているのは恐らく、リュカではない。リュカの面影に映る、母マーサを見ているに違いない。魔界に連れ去られて二十年余りの時間が経っているにも関わらず、母の身の安全をイブールは口にしていた。もしかしたら母の身の安全はこのイブールが守り続けていたのではないだろうかと、リュカは思わずイブールの前に膝をついた。
「母さんは……」
リュカの言葉の続きを許さないと言うように、イブールはその手から魔力を放出した。もうイオナズンほどの威力などは出せず、せいぜい強い風を起こしてリュカを遠ざけることしかできない。爆風に煽られ、リュカは後退る。イブールは自身の周りに何者もいないことを感覚に察知し、ふっと安心したように息を吐いた。
「今、このわしが魔界への道を通じさせてやろう」
イブールが床に手をつき、ふらつく身体のまま、その場に立ち上がる。イブールの身に着ける法衣が血に塗れている。前身においてはもはや元の色など分からない状態だ。リュカが斬りつけた腹部からの出血がとめどない。そのせいで口から吐き出される血もその量を増す。しかしイブールは、ただ精神の力のみで、その場に立ち上がっていた。
イブールが心酔するのは大魔王ミルドラースであり、その予言の通り、リュカたちが滅びることを信じて疑わない。しかしその一方で、イブールの心の底に残るものは、母マーサに開きかけた心だった。最期に、母と子を会わせるくらいのことをしても罰は当たらないだろうと、イブールはその道を通じさせるべく、強く祈り始めた。イブールの周囲の空気が圧縮されたように歪み、そこに熱が集まるのをリュカは感じた。
これまでにもリュカはその扉が空間に開くのを見たことがある。憎き仇ゲマが、幾度となくこの世界と魔界とを繋ぐ闇の扉を開き、行き来していた。特別な立場の魔物とあっては、魔界とを行き来できる力を与えられているのだろう。当然、この人間の世界を滅茶苦茶にしようとしたイブールにも、その力はある。
「大魔王ミルドラースよ! このわしに最期の力を与えたまえっ!」
歪む空間にイブールの残りの魔力が集まる。鰐の口からはとめどなく血が流れているが、残りの命を感じながらもイブールは魔界への扉を通じさせるために力を注ぐ。
しかし歪む空間はイブールの最期の力を弾き返してしまった。空間に現れかけていた闇の扉は静かに閉じ、何事もなかったかのように静まり返った。戦いの痕が残る広い祭壇にはただ呆然と立つイブールと、今まで僅かに現れていた闇の扉があった虚空を見つめるリュカたちの姿だけがあった。
「そ、そんな……バカな……」
イブールは力なく床に膝をついた。これまでにも幾度となく、さも容易なことのようにこの世界と魔界との行き来を繰り返してきたはずだ。それほどの立場の魔物には違いない。しかしここでイブールは、魔界との道を閉ざされた。心酔する大魔王ミルドラースに確かな拒絶をされたイブールに残されたものはもう、何もない。
その時、イブールが開きかけた闇の扉とは別の空間で、いとも簡単に姿を現す者がいた。イブールの背後に、静かに闇の口を広げ姿を現したその者を、やはり死神のようだとリュカは思った。
「ほっほっほっほっ……。いつまで大教祖のつもりでいるのですか?」
剣を握るリュカの手に力が入る。高らかな笑いには非情しか感じられない。広い祭壇の上に響くその声に、リュカの背筋が凍りそうになり、同時に胸の中には憎しみの炎が沸き起こる。
「……むっ? お前はゲマ! わしに対してそのクチの利き方はなんだ!」
光の教団という組織を率い、この人間界を混乱させていたイブールは当然、その立場はゲマよりも上なのだろう。自身が代表となり、表立って人間の世界を混乱に陥れたのがイブールであるのと対照に、ゲマはその身をひた隠しにしながら裏で人間の世界を絶望に陥れて来た。どちらも許すことのできない罪を重ねているのは変わりないが、卑劣さで言えばゲマはイブールを上回っているのは想像に難くない。
それはゲマの態度に現れている。
「おや、まだ分かっていないようですね。あなたにはただカタチだけの教祖として人間たちを集めるお仕事をしてもらっただけですよ」
結局イブールもまた大魔王の駒の一つに過ぎないと、ゲマはさも愉快そうに告げる。光の教団という組織に多くの人間を取り込み、人間の世界を大混乱に陥れる役目を与えられたイブールは、いつしか多くの人間に担がれる自身の立場を誤解し、過信するようになっていた。自身が大魔王に代わり、この世界を治めることができるのではとまで、心のどこかで思うようになっていた。
「しかしその役目ももうお終いでしょう」
ゲマがイブールの背後で、宙に不気味に浮遊している。その手に持つのは死神の鎌だ。祭壇の周りに灯る火台の明かりを受け、死神の鎌はきらきらと美しいほどまでに輝いている。鎌そのものが、獲物を前に舌なめずりをしているようだ。
イブールの目に、ゲマの持つ死神の鎌が映る。その鎌の刃に、戦いに敗れた鰐の顔をした魔物の顔が映り込んでいる。
「そっ、そんなはずは! ミルドラース様は……」
イブールの目的は、この世界に住まう人間たちを混乱に陥れることだった。人間の世界は徐々に教団の力に染まりつつあったと、イブールはセントベレスの大神殿に集めた人間たちを見て確信していた。地上に住まう人間を減らすのと同時に、地上に棲みつく魔物の数は増えて行った。着実に人間の力は弱まっているのだと、自身を大教祖と崇める人間たちを見て、そう思い込んでいた。
しかし現実に、イブールは人間界に残る三国のどれをも、壊滅させることはできなかった。テルパドールは訳の分からない大魔神の力で魔物らは潰走させられたと報告を受けた。ラインハットは敵の自爆により形勢逆転となり、持ち堪えられてしまった。グランバニアは恐ろしい黒竜の守りを突破することができず、敗走となった。
イブールが想定するよりも、結集した人間たちの力は強かった。運も人間を味方した。そして今、イブール自身もまた、リュカたちの戦いに敗れた。全てにおいて惨敗だと認めざるを得ない。
これまで長く、人間界を混乱させ、苦しめてきたのは自分なのだと、イブールは大魔王ミルドラースに縋る思いで再び祈りを捧げようとした。まるで神に祈るかのように、純粋なる目で、一心に祈りを捧げようとするイブールに、ゲマは汚らしいものを見るような目を向ける。
リュカたちが入る間もない。ゲマの手から離れた死神の鎌は、それ自身が意志を持ったように空を切り裂くと、そのままイブールの首に深く刺さった。イブールの断末魔が、大教祖のために造られた広い祭壇の間に響き渡った。重々しい音を立てて、イブールの身体が再び床に倒れた。鰐の目から、既に命の灯は消えていた。
死神の鎌に命を奪われた者の行方は、天国でも地獄でもない。永遠の闇を彷徨う運命が死後に待ち受ける。床に倒れたイブールの身体が、徐々に周囲の空間に蝕まれて行くのが分かる。その身をこの世に残すこともなく、イブールはこの世に存在しなかった者のように、完全に存在を消されてしまう。加速度的に消えていくイブールを、リュカたちはどうすることもできない。床に流れていた血ごと、イブールはこの祭壇の上から姿を消してしまった。
「ふん。役立たずは最後まで役立たずですね……」
死した者へも容赦なく侮蔑の言葉を吐くゲマに、リュカは構える。今までイブールと死闘を交えていたことなど忘れ、ただこの憎き魔物を討たねばならないとだけ思う。今はこの心だけで、敵ゲマを討ち取ることができると思えるほどに、リュカは冷静ではなかった。
戦いに疲れ切ったリュカの動きを、ゲマはまるで憐れむように見切った。そして躊躇なく、リュカの首に死神の鎌の先をあてがう。ティミーもポピーも、声を出すこともできなかった。ガンドフもベホズンもスラりんも、リュカとゲマの戦いに加わることはできなかった。そしてリュカの首が死神の鎌に狙われれば、誰一人、指一つ動かすこともできなかった。
「リュカとその仲間たちよ」
ゲマはリュカの首に鎌の刃をぴたりと当てながら、話し始める。
「今は好きにするがいいでしょう」
この場でリュカの命を奪う意思はないのだと、ゲマはその言葉に含めて言う。しかし相手の動きを冷静に制御するべく、鎌の刃はリュカの首から離れない。ゲマの気が変われば、その鎌はあっさりとリュカの首を斬り落としてしまう。皆が皆、固唾を飲み、ただその場に立ち尽くすことしかできなかった。
ゲマは自身に向けられる人間や魔物らの顔つきを、いかにもつまらないと言ったように見渡した。恐怖に引きつるでもなく、苦しみに顔を歪めるでもない。ただひたすら強い敵意だけが向けられている。魔物の中でも最も弱いとされるスライムですら、生意気にも強い敵意を剥き出しにしているのだ。
「その方が後で一層悲しみを味わうことができますからね」
喜怒哀楽の感情を持つ人間の、哀だけを愉しむのがゲマの趣味ではない。人間は全て、幸福であるべきだ。幸福であればあるほど、絶望はそれだけ深くなる。光と闇は表裏一体。強い光があれば、そこには必ず濃い闇があるのは、自然の中でも定められたことなのだ。
ゲマはその、光から闇に落ちて行く者たちを眺めることに、愉悦を感じる。芸術と思う。その為には、今は光を強くする時なのだと、リュカたちにその時間を与えたのだ。
リュカの首から死神の鎌が消えた。その瞬間に、リュカは手にしていた剣を、宙に浮かぶゲマに投げつけた。リュカの執念を感じながら、ゲマはその剣をローブをはためかせ、足で蹴飛ばした。床に叩きつけられた剣が、激しい音を立てて転がった。
特徴的な高らかな笑いを響かせながら、ゲマはやはり闇の空間の中へ姿を消した。イブールとの戦いに力を使い果たしたも同然のリュカたちがまともに戦って勝てるような相手ではないことは分かっていた。しかし今ここに、そのような現実を推し量る気持ちなど不要だった。ただ一生を賭けてでも許せない敵が目の前にいた、それだけだった。
リュカたちの目の前に口を開けていた闇が瞬く間に収縮する。開いた空間が閉じれば、そこには当然元の通りの広い祭壇の間の景色があるだけだ。しかし暗闇の空間は最後の僅かな間を完全に閉じる寸前、何かを吐き出すようにリュカの前に落とした。
自分の足元に転がる小石ほどのものを、リュカは床に膝をつき見つめた。今も変わらず燃え続ける火台の明かりに照らされ、その小石はまるで生命を帯びたかの如く煌めいている。
「指輪……」
拾った指輪には、萌え出ずる若葉を思わせるような、命の輝きそのものを表す鮮やかな緑が内包された宝石があしらわれていた。ごく小さな宝石だが、その中を覗き込めば、宝石の中に小さな世界があった。ゆらゆらと揺らめく緑の中に、次々と弾け生まれる光は、まるで母の胎内に揺れる赤子がこの世界に希望を見い出して生まれてくる瞬間、それが絶えず繰り返されているかのように思えた。
この世に生まれ、生きていれば様々な出来事に遭い、時には生きる自身を見失うこともある。しかしこの指輪の中に生まれる命には、明るい希望だけが見出されているようで、目にしているだけで心身ともに癒されるようだった。見失いかけている希望を思い起こさせてくれる強さがあるのだ。
右手に持つ指輪を見ながら、リュカはふと自身の左手に熱が灯るのを感じた。間近を火に照らされたかのように、実際に熱を感じるのは左手薬指だ。その指には既にリュカの一部になったかのように外すことのない炎のリングが嵌められている。実際に炎のリングに目に見える反応があるわけではない。しかしリュカは確実に炎のリング自体が奇妙な熱を持つのを感じていた。
新たに手にした指輪はゲマの身に着けていたものとは思えなかった。死神の鎌を持ち、人の死を常に望むようなゲマが、この命の輝きそのものを表すような指輪を身に着けているとは考えられない。強い魔力を秘めた、人の命も魔物の命も、全ての命の輝きを願う者が身に着けるべき指輪だとリュカは思う。そしてその者の温もりが今、リュカの手の平に伝わっている。
「……母さん?」
命のリングに残る温もりに、リュカは記憶にない母を想った。ゲマが開いた闇の空間は確実にこの世界と魔界とを繋いでいたはずだ。リュカの母マーサは今も魔界に囚われているのだとイブールは口にしていた。それならば、この命のリングは魔界に囚われている母マーサが息子リュカに贈ったものだと考えることに、不都合はないとリュカは思わず命のリングを強く握りしめた。
「お父さん、きっと、お母さんが……」
ティミーの声に、リュカはふと現実に引き戻された。ティミーが母と呼ぶのは、魔界に囚われた彼女ではなく、石の呪いを受けて時を止められたままの彼女だ。イブールを倒した今、石の呪いを受けている妻を縛り付けるものは一切なくなったはずだ。早く彼女のところへ戻らなくてはならないと、リュカは手にした命のリングを失くさぬよう指に嵌めようとする。初め、リュカの指には到底収まらないと思われたリングの輪だが、伸縮自在の動きを見せて、あっさりとリュカの逞しい指にもぴたりと合った。リュカの左手薬指には今や二つのリングが輝いている。
「さあ、早いところお母さんのところに行こう」
「お母さんの石の呪い、本当に解けてるかな……」
「イブールを倒したんだもん! 絶対に大丈夫だよ!」
ポピーの不安は先ほど姿を現し消えて行ったゲマの印象が強く残っているからだ。しかし教団の信者の話によれば、イブールが妻ビアンカに呪いをかけたのだと確かに言っていた。リュカもまたティミーの希望に溢れた言葉を信じるべきだと、二人の肩を安心させるように擦り抱きながら、地上の大神殿で待つ妻と、彼女を守り続ける仲間たちのところへと足を向けた。



多くの人々を収めていたこの場所では、洞窟などから脱出するための呪文リレミトを使用することができなかった。大教祖イブールを失っても尚、多くの人々の手で造られた大神殿には人々の様々な思いが宿る。その思いが集約したこの場所はもはや、地上の城や町と同じような、人々が生きていく場所だった。たとえ苦しみの中に生きていたとしても、人々はこの場所にすがりついて生きるしかなかった。今は苦しみの中にあっても、いつかは光の教団に救われるのだと信じていた者も少なくなかったに違いない。
リュカたちは静かに来た道を引き返していた。地下神殿に棲みつく魔物の姿は一切見当たらなかった。イブール消滅と共に、地下神殿を守る魔物らも姿を消していた。長年に渡り、多くの奴隷たちの手で造られたこの神殿にはもう用はないのだと言うように、魔物らはこの場所に見切りをつけたのだとリュカは感じていた。人間の世界に乱れを生じさせるためだけに存在したセントベレス山の大神殿を、リュカは虚しい思いで見つめていた。
立体構造になっている地下神殿を、リュカたちは極力近道を選び戻った。ガンドフの目を頼りに、ベホズンの弾力ある巨体の助力を得て、通路のない所にも道を作り進んだ。戦いの疲れを今は忘れていた。早く、彼女の元に戻らねばならない。その思いだけがリュカたちを包んでいた。
造り込まれた地下神殿を抜けると、そこには巨大な火台が並ぶ岩盤剥き出しの洞窟のような景色があった。リュカはこの場所でかつて、奴隷として生きていた。その景色を目にするだけで、人々の声にもならない声を耳にし、巨大な滑車が回り続ける耳障りな音が響くのが聞こえるような気がする。鞭が振るわれるような気配を勝手に感じて、無意識にも身体が強張る。
しかし沈みに沈みそうなリュカの心身を照らすかのように、巨大な火台の明かりが燃え上がる。イブールの討伐を思い、地下神殿に向かう際には不気味に感じていた火台の炎が、今はどこか柔らかな雰囲気を帯びているように感じた。じっと見つめる炎が、まるでリュカに応えるように炎の筋を上へ上へと伸び上がらせる。
その時、炎のじりじりと燃える音に混じり、声が聞こえた。
“リュカ……”
リュカたちの両側に並ぶ巨大な火台の炎が、ひと際高く、同時に上がった。炎の燃える音が耳を覆うように響き、炎の音の中に、再び人の声を聞く。
“リュカ……”
その声に反応するのはリュカだけではない。同じく足を止め、ティミーも辺りを見渡している。ポピーもリュカのマントを掴みながら、様子を窺っている。ガンドフは遥か遠くまで見渡せるその一つ目で、洞窟のようなこの岩盤剝き出しの隅々まで確かめるように目を向ける。ベホズンは皆を護るように前に立ち、注意深く様子をその身に感じている。スラりんも不思議そうにベホズンの王冠の上で目を瞬いている。
“私の名はマーサ”
つい数刻前に、この大神殿の主と言わんばかりにその身を晒した大神官ラマダが、母の名を騙っていた。リュカの記憶にない母の姿に化け、しかしその変身は恐らく完璧なものだった。リュカは偽物の母に心を取られかけた。しかし寸でのところで、子供たちの声に「目の前の母は偽物だ」と言うことに気付かされた。
そのラマダを倒した今、まだ母の名を騙る者がいるのだろうか、とは思わなかった。
今耳に聞こえるこの声は初めに、リュカの名を呼んだ。生まれて間もなく離れ離れになった我が子に語りかける母が、その子供に語りかける時、先ずは我が子の名を口にするのだろう。恐らく、父と母でつけた名前を、抑えきれない想いと共に必死に呼ぶのだ。
“リュカ……”
火台の炎がその声に呼応するように燃え上がる。イブールの言っていた通り、母のその身は今も魔界にあることは疑いようもない。しかし今、確実にリュカのいる世界と母のいる世界が繋がっていると感じる。
“私の声が聞こえますか?”
まるで幼い子供に語りかけるような優しい口調で、母マーサはリュカに語りかける。彼女の中では今もまだ、リュカは赤ん坊の頃のままなのだ。まだ母の腕の中でゆらゆらと心地よく揺られているような、小さな小さな赤ん坊のリュカの姿を、マーサは思い描いている。
「……聞こえるよ、母さん」
応えるリュカの声は、既に二人の子供たちがいる父としての、すっかり声変りを終えた低いものだ。一日一日を何気なく、必死に、足踏みしながらも生きてきたら、あっという間に三十年近くもの月日が経っていた。一人の人間が生まれ、成長し、大人になり、そして自らも親となる人生を送るほどの月日が経ってしまっていた。
「ああ! 私の……この母の声が聞こえるのですねっ!」
低いリュカの声など何の問題もないと言わんばかりに、母マーサは感嘆の声を上げた。燃え上がる火台の炎の中に母の姿が見えるのではないかと、リュカは思わず巨大な火台の上に絶えず燃え続ける炎を間近に見上げた。都合よく母の姿がそこに映るわけではない。しかしリュカはまるでそこに母がいるかのように、揺らめく炎を見つめる。
「リュカ。大きくなったお前の姿をこの母はどんなにみたいことでしょう!」
心の底から吐き出すように言葉を紡ぐ母の声は、明らかに震えていた。涙声だった。その言葉に、母が絶えずリュカの事を想っていたことが感じられた。できれば魔界という世界を飛び出して、今すぐにでも我が子に会いたいと、マーサの言葉の強さにそう思わされた。
「しかしそれは願ってはいけないこと」
抑えようもない母としての願望を封じ込めるように、マーサは言葉を続ける。リュカは声こそ届けど、母の温もりが一切感じられないこの状況に、思わず左手薬指に嵌めた命のリングを右手で包み込む。
「リュカ……。魔界に来てはなりません。たとえ伝説の勇者でも魔界にいる大魔王にはとても敵わないでしょう」
リュカの母マーサは、エルヘブンを代表する巫女だった。エルヘブンの村でも唯一、魔界の扉を開くことのできる能力を持つ巫女だった。その特殊な力故に、彼女は魔界に連れ去られた。
今も彼女は、その身一つで人間の住む地上界と魔物らが棲む魔界とを隔てる扉を開かせることなく、地上にいる人間たちを守り続けている。彼女の思いはただ一つ、愛する我が子のいる世界に恐ろしい魔物たちを向かわせてはならない、それだけだ。その思い一つだけで、マーサは命尽きるまで魔界の扉を封印する強い意志を持ち続けることができる。
「リュカ。お前にはすでに可愛い奥さんと子供たちがいると聞きました」
マーサの声はどこまでも柔らかい。子供であるリュカを慈しむ心が声に滲んでいる。子供が無事に暮らしているのならそれで良いと、それ以上のことは何も望まないのだという思いが隠せない。家族と共に幸せに暮らしているリュカの姿を想像すれば、マーサの声は自然と穏やかなものになる。
「この母のことなど忘れて、家族仲良く暮らすのです」
この時、初めてリュカは母に対する反抗心を抱いた。忘れることなどできるものかと、亡き父の想いを既に胸の内に収めているリュカは母に言い返そうと口を開きかける。しかしリュカのその想いすら許すことはできないのだと、マーサは言葉を続ける。
「母はこの命に代えてもミルドラースをそちらの世界に行かせません」
記憶の端にも残っていない母の姿を想像するだけのリュカに比べ、母マーサの子を想う心はそれを遥かに凌駕しているのだと、まるでリュカの頭を押さえつけるように彼女はきっぱりとそう口にした。
火台の炎が小さく揺れる。炎が収縮していく。炎の明かりに照らされている景色が暗くなり、そのせいで火台の炎の明るさが際立った。
「さあ、もうおゆきなさい」
母の声も、炎の収縮に合わせるように小さくなった。魔界と地上を繋ぐ声の通路が、閉じられようとしているのだろう。リュカは左手薬指に嵌める命のリングを手で包み込みながら、母との時間を引き延ばしたいという思いで祈る。
「母さん! 僕はきっと……」
「すぐそこにかわいい人が待っているはず」
「あなたのことを……」
「さようなら」
リュカの希望を聞くことはできないのだと、マーサは別れの言葉を口にした。もう二度と会うことは叶わなくとも、それで構わないとマーサは覚悟を決める想いで声を震わせそう告げた。
“リュカ……”
思わず最後に漏れた母のその声に、全ての彼女の思いが詰まっているようだった。母はただ、我が子の名を口にするだけで、その想いが溢れてしまうものなのかも知れない。その事をリュカは今、初めて知った。
火台の炎が静かに燃え続けている。しかしそれはただこの地下神殿に灯されている火であり、そこには既に母の温もりはない。そしてこの地下神殿の主であったイブールが姿を消したことにより、この火台の炎もやがては消えてしまうのだろう。人間にも魔物にも見放されたこの地には一体何が遺されると言うのか。ゲマの死神の鎌によってこの世からもあの世からも姿を消したイブールのように、リュカたちがこの場所で過ごした時間もまた、消えていくかのように思えた。
リュカのマントを掴んで離さなかったポピーが、その手を小さく震わせていた。焦点の定まらない目には堪え切れない涙が溢れている。
「おばあちゃんの声、すごく優しかった……」
ポピーもリュカと同様に、この広い洞穴の中に響く祖母の声に底の見えない優しさを感じていた。大神殿でラマダが扮していた母とは異なる、ただ愛しい子に向ける一途な慈愛をその声に聞いていた。
「うっうっ…うえ~ん……」
堪え切れずに泣き声を上げるポピーを、リュカはその場に膝をついて抱きしめた。まだ小さな背中を手で擦り、彼女の落ち着かない心を宥める。
「お父さん…もっとおばあちゃんと話したい……」
「うん、そうだね」
「色んなこと話したいよお……」
「父さんも、そう思うよ。色んなことを、教えて欲しいなって」
母自身のこと、母が育ったエルヘブンへの想い、母だけが知る父のこと、母と魔物の仲間たちとの出会い、グランバニアでの暮らし、そしてリュカを産んでどんなことを思ったのか。聞きたいことを考えればキリがない。孫であるティミーとポピーを見れば、絶対に祖母として当然のように可愛がってくれるのだろう。
「伝説の勇者でも勝てない大魔王だなんて……そんな……そんなのウソだ!」
ティミーは一人、祖母マーサの予言めいた言葉に悔し気にそう吐き捨てた。ティミーは勇者として、その背に負う宿命として、この世を脅かす大魔王を倒すべく生まれてきたものだと信じている。しかしティミーの一心な思いを打ち砕くような祖母の言葉に、ティミーは地団駄を踏むように足を踏み鳴らしている。
「ねえ、お父さん! 今の声は本当のおばあちゃんの声だよね!?」
ティミーの言葉には、本心からリュカに確かめたいという意図はない。答えは分かり切っている。今の今まで響いていた優し気な祖母の声に、偽物と疑う余地は残されていなかった。
「ボクはきっと、おばあちゃんを……」
「うん、そうだね。父さんもそう思ってるよ」
マーサはリュカに最後の別れと思い、声を聞かせたのかもしれない。しかしリュカにとっては、これが最初なのだ。生まれて間もなく離れ離れになった母の姿も知らなければ、当然その声も知らなかった。仲間のミニモンが時折マーサの声真似をして皆を和ませたりしんみりさせたりすることはあっても、今に生きる母の声を聞いたのは初めてなのだ。
ようやくリュカは母と初めて言葉を交わした。これはただの初めであり、母との時間はこれから続いて行くものにしなければならない。
それを今、ティミーとポピーにも味わわせてやりたいと、リュカは先に続く道を見据えた。この坂を上り、階段を上った先に、母が言葉にしていた「かわいい人」が待っているはずだ。二人の子供たちに、母であるビアンカの生きた声を聞かせてやりたい。赤ん坊の頃に離れ離れになってしまった子供たちが、母に存分に抱きしめてもらえたらと、リュカはティミーとポピーの背中をそっと押す。
「君たちのお母さんが待ってる。さあ、行こう」
子供たちの事を一番に考えながらも、リュカの両手もまた震えていた。早くビアンカを救い出し、母と子との時間をここから進ませてやりたい。そしてずっと凍り付いていた自身の心の一部がようやく溶けるのだと、リュカは既に胸の中にじわりと感じたことのない温かみを感じていた。
生まれたばかりの双子を腕に抱き、幸せそうに微笑んでいたビアンカ。彼女が腕に抱いていた赤子は間もなく十歳になろうとしている。まさかあの頃の赤ん坊がこれほど成長しているなど、想像もできないだろう。
しかしこの子たちは八年もの間離れ離れだった父である自分に、父親として当然のように近づいて来てくれた。ビアンカもまた、子供たちの遠慮のない子供としての態度や言動に目を白黒させるかも知れない。そうであって欲しいと思いながら、リュカは自然と口元に笑みを浮かばせ、子供たちと仲間たちと、地上の大神殿で待つ妻の元へと急いだ。



大神殿の中には上空の冷たい風が入り込み、すっかり神殿内の香の匂いは取り払われていた。幾本も並べられた立派な石柱の間からは清々しい青空が覗き、薄く白い雲がゆったりと空を移動している。
竜神は神殿内に残されていた人々を一人残らず運び出して行った。竜神が向かうのはその住処である天空城。グランバニア城が丸ごと収まってもまだ余裕のあるほどに巨大な天空城であれば、この大神殿に生きていた人々全てを一時避難させることに問題はないと、初めからそのように計画し、物資もいくらか天空城に運び込んでいる。しかし竜神と天空人が住まう天空城に、永続的に人間が住まうことはできない。いずれは避難させた人々を、地上の何処かへ住まわせなければならないのだ。
「静かですね」
大神殿内で熱狂していた人々が去ってから、今のこの場所は既に過去の遺物と化したのではないかと思えるほどに、時からも忘れ去られたような雰囲気が漂っていた。ピエールの呟きが響くほどに、大神殿の中には何も残されていなかった。
「リュカたち、そろそろ戻って来るかなー」
身体を休めている内に僅かに回復した魔力を試すように、ミニモンがまるで手品のように指先に火を灯し、お手玉の如く両手で投げて遊んでいる。未だ石の呪いから解放されないビアンカを守るためにこの場に残ったミニモンだが、大神殿から人々が姿を消し、それ以後何事もなく過ぎ去る時間に暇を持て余していた。拍子抜けするほどに何も起きない事態を素直に喜べないのが、ミニモンの中に永遠に残る子供心のようなものだ。
一方で、大神殿の中に通り抜ける風の音だけを耳にしているプックルは、本来の戦い好きの本能など何処へやら、今はビアンカの足元にぴたりとついて離れない。彼女を脅かす何者かが現れれば、即座に牙を剥く意思を持ってそうしているのだが、静かなこの場にあってはただビアンカの足元にじゃれついている大猫としか見えない。
「ッキッキー」
大神殿の外から戻って来たメッキーが、仲間たちに外の状況を知らせる。人々が集められていたこの大神殿の他にも、神殿の外には幾つかの建物がある。その建物からも人の気配は一切なく、また魔物の気配もないようだとメッキーはその目に見てきた。大神殿には人間だけではなく、人間に化けていた魔物も紛れ込んでいたようだが、生き物と言う生き物全ての気配が感じられないとメッキーは口にしていた。
「魔物まで姿を消したというのは、どういうことなんでしょうね」
「キー?」
「竜神が? いや、それはないんじゃないでしょうか。そんな器用なことができるなら、早いところやっておいてくれればいいんです」
竜神に対して良い感情を持っていないのはリュカだけではない。ピエールもまた、竜神に対する感情に複雑なものを持っている。それは偏に、竜神の定めた運命に巻き込まれているリュカやその子供たちに対する情から生じているものだ。
「リュカたちが下で、やっつけたんじゃないのかー?」
ミニモンが遊ぶ小さな火の玉が、大神殿の天井高くに上がった。天井間際で火の玉は弾け、まるで小さな花火が上がったように見えた。グランバニアの新年祭の時にミニモンが人々を驚かせ楽しませるためにする余興でも、同じ技を使う。火の呪文をこうした用途に使うのを、ミニモンは人間たちと暮らすようになって初めて知った。
「……なるほど。そうかも知れません。もしそうだとしたら……」
ピエールはプックルが寄り添う一体の美しい石像を見つめる。その姿はおよそ十年前に魔物の群れに攫われた時のままだ。夜着に身を包み髪を下ろし、彼女の見つめる先には、同じく石の呪いを受けたリュカがいたはずだった。救いのない石の呪いを受けながらも、恐らく彼女はリュカを信じ、彼がこの状況を打開してくれることを信じていたに違いない。そして彼女自身もまた、魔物の力にねじ伏せられるわけには行かないと強固な意志を持っていたのだとピエールは思っている。
彼女が真っ先に心配していたのは、生まれて間もない双子の子供たちだ。それが人間の母親と言うものなのだろう。わが身よりも何よりも、子供たちの安全が守られるならばそれで良いと、彼女はその意志だけで子供たちを咄嗟に隠し、自身は魔物に囚われてしまったのだとピエールは後に話を聞いた。
もしリュカたちが神殿の地下で待つイブールを倒したとすれば、彼女を縛り付ける石の呪いは解かれるはずだ。ただでさえ石の呪いを受けているビアンカに、イブールは更なる呪いをかけたのだという。呪いの術者そのものを滅ぼしてしまえば、彼女にかけられた忌まわしき呪いは全て解かれる、そう信じてリュカたちは行き、ピエールたちは彼女を護り待っている。
ミニモンが放つ小さな花火が、まるでビアンカの周りに咲く花のように火花を散らせた。プックルが火の粉を浴び、思わずミニモンに対して牙を剥いた。赤い尾で火の粉を払い、再びビアンカの足元に丸くなり、目を閉じようとした、その時だった。
プックルの赤いたてがみが一気に逆立った。跳ねるようにその場に立ち上がり、彼女の像の上を見上げる。ミニモンも同じ場所に目を凝らす。メッキーも宙に羽ばたきながら、宙の一点を見つめる。ピエールは、ビアンカの頭上に現れた不吉にも見える黒い点を目にすると、すぐさま剣を抜いた。
闇の空間が広がる。音もなく、宙にぽっかりと黒い口が開き、その中から姿を現した者に、プックルは考えるまでもなく飛びかかった。
プックルもピエールも、その者を嫌と言うほど知っていた。死神の鎌がプックルの首を捕らえる。その鎌を、ピエールの剣が弾く。すぐさまピエールの身体を、鎌が薙ごうと振り上げられる。プックルが死神の鎌の長い柄を強く蹴りつけ、鎌は宙に吹き飛ばされた。
「ほっほっほっほっ、とんだご挨拶ですね」
宙に飛んだ死神の鎌を手に取ると、ゲマは癖のある笑い声を上げて、自分に迷わず飛びかかって来た二体を見下ろした。空中高くに留まられれば、プックルとピエールの攻撃の手は届かない。しかし仲間たちの凄まじい敵意を感じたミニモンとメッキーが、空中から飛び込み攻撃を仕掛けようとする。
「私は貴方達に、良いお話をしに来たのですよ」
ゲマは冷酷な笑みを浮かべながら、大きく息を吸いこんだかと思えば、それをメッキーとミニモンに向かって吐き出した。ゲマに向かっていた二人は、空間が歪み揺れるようなゲマの焼けつく息に当たり、呼吸ができなくなった。全身に痺れるような痛みが走り、宙に留まってはいられなくなり、床に落ちてしまった。床に落ちても尚、メッキーもミニモンも身体を動かすこともできずに、ただ苦し気に床の上で呻くばかりだ。
「間もなく、リュカたちが戻ってくるでしょう」
憎きゲマの口から語られるリュカの帰還など、プックルもピエールも正面から信じることはできない。ただこの憎い敵をどうしたら倒せるのだろうかと、そればかりが頭を占める。
「束の間の幸せを、存分に味わっておきなさい」
ゲマはそう言いながら、死神の鎌をプックルたちに向けるでもなく、ただ鎌を肩に担ぎ、その刃を収めているも同然の格好を取る。この場で攻撃する意図はないのだと、悠々とした態度で高みから言葉を落としている。
「貴方達の慕う主は、結局はこの世界から消えるのです」
「貴様の戯言など、聞くに堪えられぬ」
「戯言かどうか、後に分かることでしょう」
ゲマは余裕の笑みを崩さない。その笑みには歪んだ愉悦だけが浮かんでいる。それはゲマの本性に関わるもので、この者には人間たちが普通に楽しみ喜ぶという感情を理解する頭脳も精神もないのだ。
「……魔界で、待っていますよ」
その言葉は、誘いの言葉のようだった。そして同時に、呪いの言葉のようだった。まるで何もかもを見透かすような、全ては予言通りなのだと言わんばかりの余裕ある態度で、ゲマはリュカの仲間たちを見下ろし告げた。神の予言があるのだとしたら、悪の予言と言うものが存在していてもおかしくはないと思ってしまうのは、目の前にするゲマの強大な力をひしひしと感じるからだ。
ピエールは手の震えを抑え、手にしている剣を敵に投げつけようとした。しかしその手は上がらなかった。ゲマの全身から発する目に見えぬ力に、身体ごと押さえつけられているかのようだった。プックルもまた、ピエールの横で牙を剥き出しにして、低い唸り声を上げ続けている。彼もまた、身体が動かぬ事態に陥っていた。
ゲマの姿は、再び宙に現れた闇の空間の中に吸い込まれるように消えた。直後には、何事もなかったかのように大神殿の景色が、ピエールたちの前に広がっていた。皆揃って、悪い夢でも見たのかと思うような、現実味のない状況に思えた。しかしゲマの残した言葉は、ピエールたちの頭にしっかりと刻み込まれている。
「魔界……」
魔物として生まれたピエールにとっても、魔界と言う世界は話に聞いたことのあるだけのもので、その場所が一体どのような場所なのかを知らない。人間たちの住まうこの地上の世界において生きる魔物らは恐らく、魔物たちが封じ込められていると言われる魔界のことを知らずに過ごしている。
考えてみれば不思議なものだと思う。しかし不思議なことではないとも思える。魔物の中にはピエールやマーリンのように、人間の言葉を話す者たちも多数存在する。人間たちに魔界の存在やその世界の様相などが知れ渡ることを極力避けるために、地上に棲む魔物らからは魔界の記憶一切を取り去っているとも考えられた。地上に生きる人間たちを減らすことだけに専念すればよいのだと、ピエールたち地上界に棲む魔物らには余計な記憶を取り去っているか、若しくはそもそもこの地上界で生まれたために魔界の記憶など初めからないか、どちらかに分類されるのかも知れない。
「ビアンカを助けたら、今度はマーサ様を助けるんだぞー」
ピエールの言葉に反応するようにミニモンがそう言えば、それは当然の流れだと思えた。元はと言えば、リュカが旅を始めたのは母であるマーサを救う旅をしていた父パパスの遺志を継いだことからだった。その旅は幼いリュカが何も知らない内から始まっていた。
当然の流れなのだ。予定調和と呼ぶにふさわしい。それを、ゲマは誘いの言葉に込めていた。そう考えれば、果たしてその言葉に乗るのが正しいことなのか、ピエールには分からなかった。
落ち着きを取り戻したプックルが再びビアンカの像の足元で丸くなろうとした時、彼は立ち上がったまま、耳を澄ませた。足音が聞こえる。疲労のために遅くはあるが、それでも確かに近づいてくる足音がプックルの耳に聞こえ、両耳が集中してその音を拾っている。
「がうがうっ!」
リュカの名を呼びながらも、彼はあくまでも護るビアンカの傍を離れない。早く来いと言わんばかりに何度も呼び続けるプックルの声に呼応するように、地下に続く大きな階段から黒い頭が覗いた。常に身に着けている濃紫色のターバンを外したリュカが、子供たちと仲間たちと姿を現せば、そこにはもうゲマの残した不穏は消え去っていた。



初めに感じたのは、光だった。それまでの世界はまるで暗闇。目を開けているのかどうかも分からない、目を閉じていたとしてもこれほどの暗闇が覗けるものだろうかと思えるほどの真っ暗な中に、私はいた。
どれほど長い間、この閉ざされた世界にいたのかも分からない。もう、自分は自分でなくなったような気もするし、ほんの少ししか時は経っていないような気もする。時間って一体何だっけ。時の流れって、そもそも存在していたのかな。お腹も空かないし、眠くもならないし、身体が疲れることもない。とても心地よい場所で、ずっとこの場所にいても構わないけど、そう思う度に、どこかで泣き声が聞こえるような気がした。
とてもか弱い泣き声なのに、その声は私を強く呼んでいるようで、何も見えない暗闇をじっと見つめた。何かが見えるわけでもないけど、そうせずにはいられなかった。本能のようなものなんだろう。泣き声に惹かれる本能って、一体何なのかしらと思うけど、その声が聞こえると出来もしないのに私も泣きそうになった。
そんなことがどれほど繰り返されて来たのか分からない。だけどそれが起こる度に、私の心はおかしくなりそうだった。耳の中にまで響くような泣き声は、ずっと変わらなく、弱々しくも激しいものだった。そして、その声は二つ聞こえる。私には二つの声の違いが分かるのよ。どうしてなのかしらね。
その声は聞こえる時と聞こえない時がある。今はその声は聞こえない。この暗闇の中にあっては、もうその二つの声しか耳にしたことがなかった。実際には、聞こえる、と言うよりは直接自分の中に響いているような感じ。多分、本当には聞こえていないんだと思う。ただ、私がその声を忘れられずにいるだけなんだろうな。
今まで真っ暗な中にいたから、少しでもそこに明るいものが現れれば、思わず目を瞑りたくなってしまう。だけど今の私はただ、ここに存在しているだけだから、目を瞑るなんてことはできない。あまり強い光に晒されたくない。漆黒に塗られたような暗闇の中、とても心地が良いのよ。辛いことや苦しいこと全てを包み込んで隠してくれるから。
そんな貴方の漆黒の瞳に、私はいつでも救われてきたんだから。
じわじわと強さを増してくる光の力に、私は目が潰れてしまうのではないかと思う。でも感じるのが目だけではないことに気付いた。
顔に何かが触れた。冷たい空気を感じる。頬に触れたのは、自分の髪だ。いつもは動きやすいようにと三つ編みを結わいて肩から流していたはずだけど、ばさばさと風に揺れる髪は眠りに就く時のように解かれている。
“いつもは”って何?と、自分の感覚に可笑しくなる。いつも私は私であって、私ではなかったじゃない。私って、一体何なのよ。あなた、誰なの? 頭がおかしくなりそう。
心地よい暗闇が、私の周りから消え去って行く。眩しい光のある世界に晒されているのに、この世界はとても寒い。光を感じているのに寒いって、何だかおかしいじゃない。今の私の目の前には、真っ暗な世界ではなく、真っ白に変わっていく世界が広がる。今度は世界が白過ぎて、何も見えない。寒くて白い世界でこれからは過ごすようになるのかしらと思うと、それならば寒さも感じない暗い世界で良かったのにと、元の世界に戻りたくなってしまう。
光の力は容赦なく、もう二度と、永遠に眠れるような暗闇に戻れないのだと分かった。急激に白い世界が色味を帯びていく。濃い霧が徐々に晴れるように、目の前に、世界本来が持つ様々な色が現れる。
空の青に雲の白、覚えている。空は自分が生まれた時からあった。生まれる遥か前からあった。きっと、自分は生まれた時から空が好きで、空に憧れていた。その空が、ここはとても近い、そんな気がする。
「ここはどこかしら……?」
声が出た自分に驚く。自分の声って、案外低い。声を出すと、喉が震えるのが分かる。寒さに震えるのではなくて、音を出すために震えている。これまでは暗闇の中、頭の中に響くような記憶の音だけが響いていた。だけど今は、自分が発した声が、空気を震わせて外に出たのがよく分かる。
肩が寒く、腕も寒く、腰も足も冷気に晒された。風にはためく自身の身に着ける服は、水色の夜着だ。あの蒸し暑い国ではこれくらい薄手の夜着がちょうど良いが、この冷たい風が吹く場所ではあまりにも心許ない服装だ。
「私ったら今まで何を……?」
まだ視界に映る世界は虚ろなものだ。遠くに見える空と雲よりももっと近く、自分の周りにはとても広い空間が広がっているのが分かった。空と雲は、大きな柱の隙間に見えている。幾本もの柱に囲まれるこの場所は、まるでどこかの立派なお城かと見紛うほどの建物だ。この景色を、見たことがあった。思い出したくもない記憶が脳裏に蘇りそうになったところで、視界には更に新たな景色が映り込む。
色鮮やかな者たちが、自分の前に並び立っていた。紫に藍に水色に緑に黄色に赤に、まるで空に架かる虹のようだと思わず詰めていた息を緩く吐き出した。自分の口から洩れた息が、嘘のように温かい。
「あら! あなたたちは!」
当然のように覚えていた。皆、仲間だった者たちだ。共に戦ったこともある。
見た目が怖いだけで実は甘えん坊なプックル、いつでも冷静沈着だけど人一倍熱い心を持つピエール、気遣い屋さんで不安な時はいつも傍に寄り添ってくれるスラりん、結構勢いだけで行動しがちなメッキーとは気が合ったりもするし、ミニモンは誰の声真似も上手だからそれに笑ったり泣いたりしてしまう。キングスに似た大きな子がいるけど、新しく仲間になった子かしら。とても優しそう。魔物の仲間たちがこれほど色鮮やかな世界にいたことに、今初めて気づかされた。
ようやく最も近くにいた者へ、焦点が合う。ついさっき、自分が戻りたいと思っていた漆黒の世界を、その瞳に持つ人。暗闇なんて、本当ならとても怖い場所のはずなのに、私は今まで閉ざされていた暗闇を怖いとは思わなかった。それは全て、彼の中にあったからだ。自分を包んでいる漆黒の暗闇は、自分を護る彼自身なのだと、私はそう信じていた。
「リュカ……」
そう口にした途端、私は初めて自分に熱を感じた。目の奥が熱い。全身は相変わらず冷たい風に晒され、震えるほど寒いのに、目の奥が熱くなり、次いで顔、首と熱くなる。そこまでしてもまだ、私はこの世界に生きている実感が沸かない。自分の感じているこの感覚に自信が持てない。ただ一人で、暑さ寒さを感じても、それは自分が生きている証拠にはならない気がする。
「……ビアンカ」
彼が自分の名を呟き、抱きしめてくれたところで、ようやく自分はこの世界に生き続けていることを実感した。これまでの暗闇の世界がどれほど心地よくとも、そこに私の生命はなかった。一人きりで、何かを思っても感じても、自分は何物にも触れず触れられず、そこにただ存在していただけだった。それを生きているかどうかと言えば、死んではいないが生きてもいない、何者でもないような状態だったのだろう。
冷たい風から守ってくれるように、彼が強く抱きしめてくれた。それだけで身も心も温かい。自分が生きているのを感じるだけではまだ不安で、抱きしめる彼の鼓動が耳に聞こえ、彼の涙に震える息がこめかみの近くに降れば、それが自分がこの世界に生きている証になった。
少し離れ、間近に見上げる。やはり記憶の通り、彼の瞳はどこまでも漆黒だった。今まで自分はこの世界の中にいたのだと、感謝の念を込めてどこか勇ましさを増した彼の両頬を両手に包めば、彼もまた自分の両頬を包み返してきた。ごつごつと硬い親指が頬を一撫でしたら、そのまま今度は唇に熱を移された。必死とも思えるような口付けを交わした後に、私はようやく涙を一つ零した。
足を一つ前に出そうとしたところで、私は果たして自分がどうやって歩いていたのかを忘れていると気づいた。完全に身体の感覚が蘇り、自由を取り戻したというのに、その途端に身体の自由が奪われたようなものだった。しかしもう、一人ではなく、自分を支えてくれる人がいる。
「ビアンカ、僕につかまって」
そう言うなりリュカは妻ビアンカを横抱きに抱き上げた。ビアンカはリュカの首に腕を巻くように回し、彼もしっかりと彼女の身体を抱き込んだ。今まで眠りの中にいたようなものだというのに、彼の腕の中に納まった安心感からか、思わず彼に全身を委ねて眠りそうになってしまう。
「ティミー、ポピー。大丈夫かい?」
リュカの優しい声が、すぐ傍に降りていく。ビアンカは視線を下へと彷徨わせた。
男の子と女の子。とても似た顔つき。二人ともまるで夢を見ているような表情で、リュカが抱き上げる自分を見つめている。目を潤ませ、同時に鼻をすするその表情を見て、ビアンカは暗闇の中に響いていた泣き声を思い出す。
元気な泣き声でお腹が空いたと報せる男の子の赤ちゃん。少し控えめながらも、全く同じ時に同じようにお腹が空いたと泣く女の子の赤ちゃん。双子の赤ん坊を両腕に同時に抱く感覚が蘇る。とても小さくて弱々しい命なのに、生きたいと思い報せる力は何者よりも強かった。
今涙目になって鼻をすすっている二人は、記憶の中に留まっていた赤ん坊の泣き声など発しない。しかしビアンカはどうしても、男の子と女の子が見せる泣き顔を見ながら、恐らくこれからも永遠に自身の中に残り続けるであろうあの時の赤ん坊の泣き声が耳に聞こえてしまう。
それもそのはず。何しろ、ティミーとポピーの涙を堪える顔は、赤ん坊のティミーとポピーが泣き出す時の顔と、どこも変わりはないのだ。

Comment

  1. やゆよ より:

    bibiさま

    執筆ありがとうございました。やっと会えたこと、とても嬉しく思います、泣きました。救うのが遅くなり、子供が大きくなってることをリュカは気にしてるような素振りも見せてましたが、ビアンカからしたら、変わりはないという、対比が優しくて素敵でした。ここまでほんとに長かったので、家族でしっかりと団欒してほしい、リュカともラブラブして欲しいと強く願う、一ファンです笑
    ほんとよかったっす!泣

    • bibi より:

      やゆよ 様

      コメントをどうもありがとうございます。
      ようやく再会できました。ここまで読んで下さってありがとうございます。・・・まだ終わってないか(笑)
      これからはしばし団らんの時を過ごして欲しいのと同時に、やはりお話も進めて参りたいと思います。
      ようやく家族揃ってのお話が書けます。リュカともラブラブ過ごせます。過ごさせます! ポピーにおませな一言も言ってもらえそうです(笑)

  2. ケアル より:

    bibi様。

    リメイクPS2とDSで追加されたゲマイベント。
    そのイベントにさらに追加したbibiワールドのイベントにニヤニヤしましたよ。
    わざわざプックルたちにケンカ売りに来るんですか!…にくったらしいですねぇ(苦笑)
    しかも、次に会った時は、やけつく息を使うことをわざわざ思い知らすかのようにメッキーとミニモンを痺れさせてあげるなんて…嫌みなヤツですねえ(汗)
    bibi様、ゲマとの最終決戦は、けっこうてごずるかもしれません。
    なんせ本気ゲマですからね、万全の体制で撃破してくださいね。
    そして、bibiワールドでのゲマ最終決戦、どのように描写してくださるか楽しみです!
    ボブルの塔以上の描写になるのではないかと今からわくわくです!

    ゲームでは、たしか…ゲマがイブールを惨殺した後にとつぜんに命のリングが現れるんでしたでしょうか?
    命のリングはイブールが持っている設定だったようなきがしますがどうだったでしょうか?
    なるほど、魔界からマーサが瞬間移動で送った描写になりましたか、その方がしっくり来ますね(笑み)
    マーサの「さようなら」
    ゲームにはない台詞に考えさせられる悲しい描写…感情輸入します。

    リュカ石像の時は目や耳が見える聞こえる設定でしたが、ビアンカはほんっとに真っ暗な世界のみだったんですね。
    そっかビアンカ寝間着姿だったんですね思い出しましたよ。
    たしか…キメイラに襲われた時、ティミーとポピーにおっぱい揚げていて…侍女に色々と話しをきいていたんでしたよね。

    ビアンカ、やっとですね…やっと復活(涙)
    bibiワールドで何年ぐらいたったでしょうか…後で更新日時見てみようかな。
    bibi様、ここまでほんっとにお疲れ様でした!ありがとうございました。

    次回はビアンカがティミー・ポピーを見て驚き、10年の月日がたったことに驚き、ティミー・ポピーが今以上の号泣の大号泣ですか?
    そして、仲間モンスターの反応は?とくにプックルの反応はいかに?
    次話が楽しみです!

    • bibi より:

      ケアル 様

      コメントをどうもありがとうございます。
      ゲマの存在感をあまりに大きくしてしまうと、ラスボスの存在感が・・・と思いながらも、やはりコイツはこうでないといけないと思ったので、とことん存在感を出してもらいました。ボブルの塔以上になるのは間違いないですね。と言っておくと、自分を追い込みそうですね(汗) いや、でもそうなると思います。今から楽しみにしていてください(自棄)

      命のリングについてはどうしたものかと考えた結果、このような話になりました。魔界からマーサが送る・・・ように見えて実は・・・と言う感じです。マーサはリュカに魔界に来るなと言っているので、魔界への鍵となるリングを渡したくはなかったはずで、そうなるとこれを渡したかったのは・・・という。分かりづらいですね(汗)
      マーサの「さようなら」は実際にゲームで言うようなんですよね。彼女は本心で、リュカにそう言ったのだと思っています。

      そうなんです、ビアンカは完全に閉ざされた世界にいた設定としました。と言うのも、リュカと共に石の呪いを受けた上に、彼女はイブールに更に強い呪いをかけられているので、その時点で完全に暗闇と化してしまったという状況です。むしろ、それが救いとなっています。何せあの大神殿の惨状を目にしないで済みましたから。それももしかしたら、イブールの思いやりだったりして。

      ようやくビアンカと再会って、私のサイトでもかなりの月日が経ってしまいましたね(汗) ゲームをさくさく進めればそれほど時間が経たないんですけどね。でもゲーム上でもリュカとビアンカの救出時期に二年間あるようなので、その間に色々と盛り込ませていただきました。
      次回は少し振り返りの話を入れつつ、助けた彼女をみんなで優しく囲んでお話出来ればなと思います。また更新に時間がかかりそうですが、なるべく早く書き上げられればと思います。

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