大神官マーサ

 

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近づくにつれ、大神殿の壇上に立つ女性の容姿がはっきりとリュカに伝わってくる。まるで自分に見られているようなその眼差しは、サンチョが何度も言っていた通りだと思った。リュカ自身、自分を特別な能力の持ち主と感じたことはなかったが、近づく彼女を見ていれば分かる。エルヘブンでも最も能力のあると評されていた巫女には、魔物も人も惹きつける不思議な力がある。現に、自分と同じ漆黒の瞳を見ているだけで、リュカは言葉に確かめなくとも、彼女が自分の母であることが分かるのだ。
気づかない内に早足になるリュカに、ティミーとポピーは必死についてくる。息が上がればこの大神殿内に籠る強烈な香の匂いに息苦しくなるが、今のリュカにはそのようなことは問題にならない。半ば子供たちの存在すらも忘れて、父パパスが死ぬまで求めて止まなかった母を見つけた喜びに、思わず身体を震わせていた。
神殿内にはずっと信者たちの祈りの声が、やはり呪詛のように鳴り響いている。それすらも今のリュカには喜びの歌に聞こえるようだった。敵と認め、いつかこの地に赴き、教団の全ての悪事を暴き、この地に囚われる人々を救うのだと心に誓っていたリュカだが、今その誓いは脇に追いやられ、ただひたすらに母との再会に浸るべきだと心に思う。
光の教団の大神官となった母マーサ。エルヘブンでも随一の力を有していた彼女は、その力をもってして、なるべくしてこの教団の大神官となり得たのだろう。母は魔物に連れ去られたと聞いていたが、もしかしたら母は世界をまとめようとするこの光の教団の頂点に立つことで、世界を正しく導こうとしていたのかも知れないとリュカは思い始める。そんなリュカの思いを、信者の祈りの声や、自身を待ち受ける母マーサの柔らかな表情が強めていく。
いよいよ手の届くところに母が立っている。容姿は間違いなく自分と似ている。長い黒髪は真っすぐに腰にまで伸び、鮮やかな緑色の法衣を身にまとい、両手首には魔力のこもる腕輪をつけ揺らしている。頭部には金の髪飾りをつけ、そこに垂れ下がる煌めく宝石にも魔力を感じる。漆黒の瞳をまじまじと見れば、まるでその瞳に吸い込まれるように心を失いかける。
「我が名はマーサ。大教祖イブール様に代わりこの神殿を治めているものです」
ここは光の教団のために建てられた大神殿の、祭壇に当たる場所だ。そこで大神官マーサと、この場所に忍び込んだに等しいリュカが対面している。本来は姿を隠していなければならないリュカだが、二人の子供を連れて堂々とこの祭壇の上に立っているというのに、祈りを捧げ続けている信者らは誰一人としてこの異常に気づかないようだった。信者たちの表情はまるで人形そのもののようで、そこには狂気に触れたような真剣な喜びだけが存在していた。人々はもはや、自分が何のために祈っているのかも分かってはいない。ただ祈りを捧げることが目的となり、それさえしていれば自分の身は救われるのだと信じ切っている。そしてそんな彼らの思考を止めているのは、神殿内に充満している妙な匂いを放つ香の効果だ。
「リュカですね」
母に名を呼ばれたことに、リュカの心の中には喜びが更にじわりと広がる。いつか母に名を呼んでもらいたいと思っていた。会ったこともない母だが、これ以上なく尊敬する父が命懸けで探し、愛していたに違いない女性だ。ようやく見つけたという喜びだけが、リュカを支配し始める。
「すでに気づいているでしょうが私はあなたの母親です」
リュカも喉元まで母を母と呼ぶ声が出かかっていたが、あまりにも急激に感情が高ぶり、声が出ない。呼吸が乱れるのは、母に会えた喜びによるものだと自身は理解している。混乱するようなリュカの様子を見ながら、彼女は相変わらず母としての柔らかな笑みを浮かべ、リュカに手を伸ばした。その手がリュカの頬に触れると、思わぬ母の手の冷たさに思わず身を震わせた。
「リュカ……。ずいぶんたくましく成長しましたね……。母はどんなにあなたに会いたかったことでしょうか……」
言葉を詰まらせながらもそう話す母に釣られ、リュカもまた喉の奥に言葉を詰まらせ、やはり声が出ない。神殿内に充満する香の匂いに鼻が慣れ、今となってはリュカも母と同じように、この場で普通に呼吸をしていた。息苦しくもない。ただあまりに唐突な感動の再会だからか、頭がぼんやりとするだけだ。
母の手が離れると、リュカは途端に心の寂しさが募った。自分はもう立派な大人だというのに、急に頼りない小さな子供に戻ったような気分だった。折角こうして会えたというのに何故手を離してしまうのかと、子供らしく癇癪を起しそうになる。
「思えばあなたの父パパスは本当につまらない男でした」
その一言に、淀んでいたリュカの意識が瞬時、鮮明さを取り戻したようだった。母の声音がいかにも冷酷で、そこに亡き父への愛情は感じられない。今までリュカの信じていた世界が脆く崩れてしまいそうだった。父はつまらない男などでは決してない。リュカは強く勇ましかった父を今もこれからもずっと誇りに思い続ける自信がある。
しかしリュカは幼い頃に父と死に別れ、父がどのような人物だったのかなどは、大人になってから人伝に聞いた程度にしか知らないのが事実だ。その話は主にサンチョやオジロンから聞いている。二人とも、リュカと同じように父パパスを敬い、決して父を貶めるような言葉などは吐かない。
母しか知らない父の姿があるのかもしれない。エルヘブンの村では父は母を連れ去った人間だと嫌われている。リュカが信じる父パパスは実は、母の言葉の通りにつまらないと思わせる部分があったのだろうか。リュカの自信が揺らぐ。漆黒の瞳が不安定に揺れる。
「そういえばこんなこともありました。その話を聞きたいですか?」
相変わらず母の声音は凍るようで、まるで温度を感じない。父を憎んですらいたのだろうかと思うほど、彼女の表情からも温かみが消えていた。漆黒の瞳の中に、怪しげな光が揺れている。その光がリュカの首肯を誘うが、彼は辛うじて首を横に振った。
父を信じる心はもはや自身の一部となっているのだ。今更この大事な一部を失うわけには行かない。これを失ってしまえば、もはや今の自分は自分ではなくなる、そう言っても過言ではないほどに命の一欠けらのような大事なものなのだ。
リュカの反応を見て、母の瞳に揺らいでいた怪しげな光は鳴りを潜めた。しかしその光が完全に消えることはない。彼女は息子の複雑な胸中を理解するように目を閉じて頷き、再び開いた目には母としての慈愛の要素を戻していた。
「そうですね。あんな男のことなど話しても仕方ないこと」
そう言いながら彼女が見る先には、一体の石像が祭壇に灯される明かりに照らされ、ゆらゆらと影を作っている。リュカの視界にも彼女が映る。
石の呪いに未だ閉じ込められたままの妻ビアンカ。こんな場所で一人、十年近い時を過ごしていたのかと思うと、それだけで胸を突きあげるような悲しみに襲われそうになる。しかし母との再会を果たしたリュカは今、悲しみを転換させたような喜びが胸の中にじわりと広がるのを感じ始めている。
もしかしたら光の教団は、ここでこうして石像と化したビアンカを安全に置いていてくれたのではないだろうか。この石像に人の命が宿っていると分かり、その命を守るために最も安全かも知れないこの場所に大事に置いていてくれたのかも知れない。エルヘブンの巫女としても最も能力の高かった母ならば、それくらいのことをやってのけても不思議ではない。
母が妻を守ってくれていた。そう考えればリュカの心は異様なほどに落ち着いた。全てに納得が行くようで、やはり母は噂に違わぬ素晴らしい人なのだと思うことができた。
リュカの表情は明るい。しかしその目は確実に母の姿を捉えているわけではない。また、石像の姿の妻の様子もはっきりと見えてはいない。彼の焦点はぼやけており、全ての景色が先ほどに比べて霞がかっていた。
母の方へと一歩踏み出そうとした。しかし一歩出たところで、二歩目は出ない。何やら後ろから身体を引っ張られている。その力に抵抗したいような気もするが、抵抗してはいけないような気もする。
「ところで……この母と共にあなたも大教祖イブール様にお仕えすると約束してくれますね?」
イブール。その名を自分は憎んでいた、ような気がする。かつて自分と友がこの地に連れ去られ、奴隷に貶められ、この神殿建造に携わる中で、人々を鞭打つ看守らは口々にその名を口にしていた記憶がうっすらと残っている。しかし他でもない、自分の母がその名に敬称をつけて呼んでいるほどの方だ。今までの自分の思いが間違えていたのかもしれない。実はイブールは世界を救おうとしているような崇高な人物なのかもしれないと、リュカの思いは光の教団の中に囚われようとしている。
リュカの口から声が出かかる。大教祖イブールに仕えることで母が喜んでくれるのなら、亡き父のためにも、自分はそうすることが正しいのだろうと口を開きかけた。
目の覚めるような、鋭い子供の声が、後ろから襲いかかって来た。
「お父さんっ!」
「聞こえないのっ!?」
強くマントを後ろに引かれた。先ほどから妙に身体が重いと思っていたのは、後ろで双子の子供たちが強くマントを引っ張り続けていたからだった。リュカの身体がよろめき、後ろに引かれるがままに子供たちと一緒に床に倒れた。尻餅をついたリュカを、祭壇奥に立つ美しい石像がじっと見つめている。その表情はまるで、頼りないリュカを叱るビアンカそのものに見えた。
ぼやけていた視界が晴れる。感覚を失っていた鼻が正常に戻ると、途端に鼻を突く香の匂いに顔をしかめた。体中を蝕みかけていた香の効果を追い出すように、リュカは咳をしながらマントの襟を引き上げて鼻と口を覆った。そして自分の顔を覗き込むティミーとポピーの不安に満ちた顔を見返す。
その場にゆっくりと立ち上がると、もう一度確かめるように母の表情を正面から見遣る。リュカの両隣には、彼女の孫となる双子の子供たちがいる。生まれて間もなく生き別れとなった息子であるリュカに気づいて、孫であるティミーとポピーに気付かない道理もないではないかと、リュカは今も山奥の村で暮らしているダンカンを思い出す。グランバニアのオジロンやサンチョにしてもそうだ。
子供にばかり構い、孫に構わないような祖母がいるだろうか。孫は目に入れても痛くないのだという様子が、ビアンカの父ダンカンには感じられた。オジロンもサンチョも、ティミーとポピーが何をしようとも全てが可愛いに収まってしまうのだと、彼らの顔に表れてしまう。それに対し、目の前の母は一度も、孫であるティミーとポピーに目を向けることもないのだ。
「……約束、できません」
今まで声も出せなかったリュカだが、薄弱としていた意思は戻り、声の出し方を思い出したようにそう応えた。長年出会えなかった母との再会で、全てが母のためにと傾きかけたリュカの世界は、一転して元に戻った。
「僕の大事なものを守らなくてはならないんです」
リュカの大事なもの、それは子供たちであり、今は親代わりであるサンチョでありオジロンであり、従兄のドリスもグランバニアの国を守る魔物の仲間たちやジェイミーを筆頭とする兵士たちも、国を支えてくれる多くの人々も、他国に生きる友人たちも、山奥の村に暮らす義父も、誰もかれも皆がリュカの大事なものなのだ。そして今、ようやく見つけた妻ビアンカもまた、救い出し、守らなくてはならない。
「僕の大事なものを傷つけようとする人があれば、僕は戦わなくちゃならないんです」
光の教団が今の今まで石の呪いを受けたビアンカを守ろうとしていたなどと何故思えたのか。リュカはこの神殿内に充満する人の魂を抜き取ろうとする香の匂いに敗れそうになったことを理解した。母との再会に自身の意思が薄弱としたところに、教団の力はすかさず入り込もうとした。
この光の教団の根元にはあの憎き悪魔ゲマの存在があるのだ。幼い頃、自分とヘンリーをこの場に連れ去ったのは誰だったか。それを思い出せば、リュカにとってこの光の教団を信じる理由は微塵も見当たらない。
リュカの漆黒の瞳には再び明白な意思が戻った。その様子を見て、母はいかにも悲し気な、寂しげな表情で、両目にうっすらと涙さえ溜めて、リュカに切なく問いかける。
「ではどうしてもイブール様に逆らうと……。この母と戦うことになっても良いと言うのですか?」
父は死に際に、リュカに母のことを話した。サンタローズの村の洞窟奥深くには、父が残した手紙と、魔界に連れ去られた母を救い出すために手に入れた天空の剣が置かれていた。それだけで、父がどれほど母を強く求めていたのかを知った。自分の知らない父は恐らく、息子を不安にさせないために母への愛情を必死に内に秘めていたような、誰よりも優しさ溢れる人だった。決して目の前の母が冷酷につまらないと言い捨てるような人ではなかった。
「……仕方がありません」
母と戦うなど、想像だにしていなかった。しかし母の光の教団への信仰心は、息子リュカを思う心よりも強いのだというその言葉は、リュカの心をいくらか冷静にさせた。リュカには、母と戦うという意思ではなく、母をこの邪悪に染まる光の教団の魔の手から救い出したいという思いが芽生えた。貴方は決して多くの人々を苦しめるようなこの光の教団の神殿を治めるような人ではないと、リュカは母を正しく導かねばならないと、強く母の瞳を貫かんばかりに見つめる。
リュカの視線を受け、同じような母の漆黒の瞳が不安に揺れる。しかしその不安を思わせる目には、ゆらりと一つ、怪しげな光が浮かんでいる。
「どうしてもそんなことを……。まさかこの母を母とも思わぬと言うのですか?」
悲壮な表情で迫ってくる母の姿に、リュカの中の自信が瞬時揺らぐが、やはり彼の命の一欠けらとなる父パパスへの思いは揺らがない。母を母とも思わぬのかと問いかける母に、リュカは父を侮辱するような母を素直に母と思うことはできないと、明確に自身の意思を確かめた。
「はい」
母も大事だ。しかし父も同じく大事だ。どちらか一方を、などという選択はできない。それを、父はつまらない男だったと蔑み、その上そのような父の過去の話を息子に聞かせようとする母など、母とは認められないのだと、リュカは母の非道とも思える言動を糺そうとすら思った。
再び母の瞳に怪しげな光が浮かぶ。その光をただ純粋に、母とは思わぬ人として見たならば、リュカは唐突にマントの内側から父の剣を抜いて構えた。横で子供たちが息を飲むのが分かった。子供たちはまだ気づいていない。しかしリュカは気づき、もう片方の手にはドラゴンの杖を取る。
何故今まで気づかなかったのか。目の前の笑みを浮かべる者が母であるわけがないではないか。この大神殿の最たるまやかしは、目の前の母の姿をした何者かなのだ。
「くくく……。くはくはくは……。わっはっはっはっはっ!」
途中から人間の女性に化けていることなど忘れたかのように、地の底から湧き上がるような低い声が上がった。神殿内に続く信者たちの呪詛のような祈りの声と混じり、目の前の母の姿をした何者かの笑い声はリュカたちの脳を揺さぶってくる。その全てが呪いの言葉のようで、まともに聞いていては精神を侵されると、リュカは子供たちに「耳を塞げ!」と怒鳴った。
「よくぞ見破ったな!」
母が息子であるリュカを、冷酷な笑みを浮かべて見つめている。その瞳は既に、自分と同じような漆黒の色を失い、魔物本来の鮮やかな緑色を取り戻しつつある。笑う口には牙が覗き、腰にまで伸びる真っ直ぐな黒髪は、熱を発するかのように赤く染まり始めた。緑色の法衣は徐々に身体に馴染むようにしながら、不気味な赤に変色しつつある。
「そうとも! お前の母などすでにこの世界にはおらぬわ!」
母の姿をしていたその者は、リュカたちの目の前でみるみる巨大化していく。神殿内に立ち込める香の匂いがひと際強まる。人々の魂を抜き取るような香の匂いを放っていたのは、目の前にいる母に化けていた魔物の仕業だった。
リュカは自分たちが逃れるためにも、神殿内で人形のようになってしまった人々を救うためにも、呪文の構えを取る。剣と杖を手にしながら放つバギクロスの呪文に、神殿内に激しい嵐が巻き起こる。かき混ぜられる内部の空気を、リュカはそのまま神殿の外へと放つように発動した呪文を操った。目には見えない一部の壁が破れ、そこから神殿内部の空気が放出されたのが分かった。
その状況を、広い祭壇の上で魔物と化した者が面白そうに口を歪めて見ていた。変身を遂げた化け物は、まるで神殿の高い天井に届くほどの巨人だった。母に化けていた時の面影など微塵もない。リュカの身体を軽く包んでしまいそうなほどに大きな真っ赤な手には、その巨大さに見合う棍棒が握られている。身にまとっていた緑色の法衣はそのままの色を保ちながら、巨人の半身を覆うような布切れと化している。
「オレ様はイブール様にお仕えする神官ラマダ! ここにいる人間どものようにお前たちの魂も抜き取ってくれるわっ!」
顔の中央に大きな一つ目、頭頂部には鋭く尖った角を生やし、大きな口には人間を一息に何人も放り込めそうなほどだ。人語を解し、神官を名乗るラマダという魔物だが、その身体は血塗られたかのように目に痛いほどの赤さに染まっている。凡そ人々を正しき道に導く神官などではなく、人々を絶望の淵に立たせることに喜びを見い出すような悪魔に違いない。
ラマダが棍棒を振り上げる。大巨人であるが故に動きが遅いというわけではない。予想よりも遥かに速い敵の攻撃に、リュカはティミーとポピーを突き飛ばして逃がすのが関の山だった。己は背中に激しい一撃を食らい、中に鎧を着こんでいなければ一撃で動けなくなっていたかも知れないほどだと感じた。
しかしその実、リュカもティミーもポピーも、寸前にスラりんの防御呪文スクルトの効果を得ていた。リュカのマントの内側に潜んでいたスラりんは、敵の姿がみるみる巨大化していく様に、既に戦う意思をその小さな身体に溜めていた。あれほどの大巨人に立ち向かう力などないが、自分はこの小さな身体を生かして敵の攻撃を躱し、仲間たちを助けることができると、スラりんはいち早く臨戦態勢に入っていたのだ。
「お父さん!」
倒れたリュカにティミーが駆け寄る。勇者の唱えるベホマの呪文はやはり威力があると、リュカはあっという間に痛みから逃れた自身の背中に思う。
「ねえ、お父さん、あれは……魔物なの?」
ポピーが床に立つ両足を震わせながらも、手には既にマグマの杖を構えている。しかし先ほどまでリュカが母と、自身が祖母と思っていた女性が、見るも悍ましい大巨人に姿を変えてしまったことに、まだ意識が現実に追いついていない。
「おばあちゃん、じゃないの?」
ポピーもリュカと同じように、祖母であるマーサがエルヘブンを代表する巫女だったことを知っている。彼女が魔界にも通じる力を持っていたために魔物に連れ去られてしまったということも当然知っている。それほど偉大とも言える人物が、たとえこうして魔物の姿に化けたとしても、それもまた一つの祖母の能力なのだろうかと思う部分もあるのだろう。
実際、リュカもそう思うのだ。もしかしたら既に母は魔物の手に落ち、神官ラマダを名乗るこの大巨人の化け物になり果ててしまったのではないかと、そのような現実があっても、今の今まで母に会ったこともないリュカには否定できる強い心も持てない。
「ポピーのバカ! あんなの、おばあちゃんのわけないだろ!」
ティミーの本気の叱咤がポピーだけではなく、リュカの心をも抉る。ティミーの祖母を祖母と信じる心には迷いがない。これまでにサンチョやオジロンに聞いてきた話の中に、ティミーの信じる祖母がいる。彼らが一度でも、祖母マーサの事を悪く言ったことがあるだろうか。仕える主の妻として、頼れる兄の妻として、マーサの事を悪く言うこともできない立場もあるだろうが、彼らは本心からパパスだけではなくマーサの帰りをも待ち続けていた。今もまだ、マーサが生きていることを信じ、いつかはグランバニアに戻ってくるのだと信じている。それはマーサを初めから知っている魔物の仲間たちも同様だ。ゴレムスにスラぼう、キングスにサーラにミニモン、誰もがマーサの帰りを待っている。マーサが魔界の力に屈することなどないと、彼女の強さを信じている。
「こんなデッカイ化け物、ただの魔物だよ!」
ティミーが両手に天空の剣を握りしめている。隠していたマントの内側には、まだ身に着けて間もない天空の鎧が輝きを隠せないと言わんばかりに、光を辺りに零している。
「そうだ、ティミーの言う通りだ」
リュカの心が挫けそうな時、ティミーは彼自身が持つ光を放って父リュカを照らしてくれる。それは勇者という特別な存在というだけのものではない。ティミーがリュカの愛する子供であるが故に、子供が放つ光に親はいつでも救われるのだ。
「光の教団の神官を名乗る者なんて、つまらないヤツに違いない」
母の姿に化け、父をつまらないと詰るような者こそがつまらない奴なのだと、リュカは目の前の大巨人に吐き捨てる。リュカのその言葉に、ラマダはいかにも面白そうに一つ目を歪めて笑う。
「つまらんのはどちらかな。人間と言う生き物こそ、真につまらぬものと思うがな」
地響きを起こすような声でそう言うラマダは、空いている手を神殿内で祈りを捧げ続ける信者の方へと伸ばした。素早く何人かの信者をその手にまるでおもちゃのように掴むと、リュカたちの前に無造作に置いた。床に投げ出されたというのに、祭壇の上に連れられた信者たちは甚く感激したように身を震わせ、今は大巨人と姿を変えているラマダに涙を流しながら何度も礼を言っている。
「こいつらは一体、何に礼を言っているのだろうな。これから死ぬというのに」
そう言ってラマダは棍棒を振り上げる。振り下ろす先には、神官様ありがとうございますと、新たな祈りの言葉のように何度もそう呟く信者である人間たち。スラりんとティミーが同時にスクルトの呪文で人々を棍棒の攻撃から守ろうとするが、その守りは巨大な棍棒の攻撃力の前にあまりにも弱い。
大神殿内の景色が一瞬消えてしまうような、途轍もない光がリュカたちの間に起こった。ラマダの一つ目が、自分とは異なるもう一つの一つ目に出遭った。その一つ目が発した眩しい光に、大巨人の大きな一つ目がたまらずきつく閉じた。
「ッキッキー!」
先ほどリュカがバギクロスの呪文で見えない壁を破った箇所に、メッキーが羽をばたつかせて飛んでいた。その隣には同じように、蝙蝠のような羽を動かして宙に留まるミニモンがいる。
「なんだー? デカイ化け物だなー」
ラマダの視界を束の間潰したのは、今ラマダの巨体を伝って跳ねるように降りて来るガンドフだ。彼が放った眩しい光の効果で、ラマダは振り上げていた棍棒を信者らに振り下ろすことなく、今もまだ宙に浮かせたままだ。
「メッキメッキ!」
「ちょっと待ってろよー。今みんなを連れて来るからなー」
そう言うと、メッキーとミニモンは揃って神殿の外に待つ魔物の仲間の下へと戻って行った。人間たちが多く入るこの神殿に下手に魔物の彼らが入れば、流石に即座に問題とされかねないと待機していた彼らだが、神殿内から放たれた激しい波動に見えたリュカの放ったバギクロスの呪文に、状況は一変したのだと悟った。それからは最も目の利くガンドフを連れ、メッキーとミニモンは開けられた穴から中の様子を窺っていたのだった。
再びラマダの攻撃が始まろうとしている。手に持つ棍棒を振り上げると、今もまだ我武者羅に祈り続ける信者らを一息に潰そうとする。ガンドフが信者たちに体当たりをするようにして、敵の攻撃から避難させるが、棍棒は二人の人間を上から殴りつけてしまった。無防備な二人の人間はその場で即座に昏倒し、動かなくなってしまった。
「関係のない人たちを巻き込むな! お前の相手は僕たちだ!」
二人の信者の手当てをするティミーとガンドフを横目に、リュカは空を見上げるような状態で大巨人ラマダを睨み上げる。何か小さな者が下の方で騒いでいると、ラマダは大きな一つ目をぎょろりとリュカに向ける。
「関係ない? 違うだろう。ここに集まる人間たちは皆、我らが光の教団の信者たちだ」
「彼らは本心でこの場所にいるわけじゃない」
「いやいや、得体の知れない世界の恐怖から逃れようと、自らこの場に足を運んだものも大勢いる」
「恐怖を煽ったのはお前たちの仕業だろう」
「しかしその恐怖に負けたのはここに集まるか弱き人間どもだ」
「人間は誰もが、一人一人強いわけじゃないんだ……それを利用するなど、許されないことだ」
「人の弱みにつけ込み利用するのは、人間の十八番かと思っていたがなぁ」
巨大な棍棒を手にする大巨人でありながらも、言葉で負けることもない。そして恐らく、この魔物が本心で思っていることなのだろう。それ故に、リュカは思わず言葉に詰まる。現実に人の弱みにつけ入ろうとする輩は、世界を探せば多くいるに違いない。大巨人ラマダの言葉は全てが間違っているわけではない。
リュカが迷いを感じた時、彼の脳裏には再び母の姿が映し出される。目の前に立つのは完全に魔物と化したラマダという大巨人だというのに、リュカの目にだけはその大巨人が母マーサの姿に成り代わる。ラマダ自身がその変化の魔力を利用している。瞬時固まるリュカの表情に、ラマダは確実にリュカに魔力が及んでいることを知る。
しかしリュカの迷いを晴らすかのような爆発が、神殿の奥に起こった。明らかに呪文の力による爆発だと分かった。大神殿を包み込む見えない膜を外から破るが如く、ピエールがイオラの呪文を放ったのだ。
次々と姿を現す魔物の仲間たちを見れば、リュカは再び自身を取り戻すことができた。脳裏に映っていた母マーサの面影は消える。プックルがリュカの窮地を救うべく駆けて来る。その後ろをピエール、ベホズンと続き、後ろからメッキーとミニモンが飛んで追いついてきた。
教団の信者らが今もまだ祈りを捧げ続ける異様な状況の中で、彼らが正面に見る祭壇の上には魔物が新たに姿を現している。ラマダという大巨人を前に、人間の親子と魔物の仲間たちが揃って対峙する光景に、ラマダは半ば感心するようにその者たちを見下ろす。
「なるほど……本当に話に聞いていた通りなのだな」
人間でありながらも魔物を仲間にする特別な能力を、リュカがマーサから引き継いでいることをラマダは言っていた。それだけでラマダと言う光の教団の神官の立場の者が現実でマーサとも繋がりを持っているのだと分かる。目の前の巨人は確かに、リュカの母マーサのことを知っている。
「魔物を誑かし仲間に引き入れ、その数を増やし、その内に貴様はこの世界を掌握しようと……そう考えているのだろう?」
束の間、リュカはラマダが何を言っているのか理解できなかった。まさか自分の事をそう言葉に表しているものとも思えなかった。
「我々がこうして人間を仲間にするのと同じく、貴様は魔物を仲間に引き入れているわけだ。やっていることは同じだな」
大巨人であり光の教団の神官でもあるラマダから見れば、リュカと言う人物は素直にそう映っていた。ただ、目指す世界が人間が中心となるか魔物が中心となるかの違いだけで、信念は同じではないかと言わんばかりのラマダの言動に、リュカは喉元に何かがつっかえたように応戦するべき言葉が出ない。
「同じなものかっ! 馬鹿者!」
ピエールの鋭い声が大神殿の祭壇に響いた。
「貴様らの根底にあるのはただの優越であり支配欲に過ぎない。しかしリュカ殿の根底にあるものは、皆への愛情に尽きる。同じところなど微塵もない!」
リュカの迷いなど初めからないかのように言い切るピエールに、プックルが同調するように大きく吠えた。幼い頃は一緒に駆け回って遊び、十年の月日を経て再会した後には戦友として共に歩んできた。リュカは一度も、プックルを支配しようなどとは思わなかった。ただ共に支え合える人間と魔物であればそれで良かった。プックルにとってリュカは友であり兄弟であり、親子のようでもあった。
「おばあちゃんに化けて人をだますようなお前なんかと、お父さんを一緒にするな!」
「お父さんはたとえ厳しくっても叱ることがあっても、そんなの、優しいからなんだもん!」
大巨人相手に果敢に武器を構えるティミーとポピーは、リュカとビアンカの誇らしい子供たちだ。彼ら二人は生まれた時から離れ離れだった父と母の話を、グランバニアの人々、主にサンチョやオジロン、それにドリスや魔物の仲間たちから聞いて育った。そして八年の月日を経て父と再会してからは、父リュカと共に行動する中で、今まで聞いてきた父の話に嘘偽りなど一つもなかったのだと確信した。リュカが父パパスを誇りに思うように、ティミーとポピーもまた父リュカを誇りに思っている。
『この子が、リュカよ』
母マーサの声が頭上から届く。リュカたちの上には大きなフォークを手にしたミニモンが宙に浮いている。
『絶対、いい子になるわ』
ミニモンの記憶にはかつてのマーサとの会話が残っている。声真似を得意とするミニモンが発するかつてのマーサの声にすら、リュカへの愛情が溢れている。ラマダが化けていた偽りのマーサでは、同じような愛情を表現することなど不可能だ。
「マーサ様がそう言ってたんだ」
ミニモンが手にしていた武器をぐっと握りしめる。小さな身体全体に、強い魔力を帯びていく。
「リュカは……いいヤツに決まってるんだ! バッカヤロー!」
ミニモンの全身を包むような強大な魔力が、フォークの先から飛び出していく。巨大な火球メラゾーマの呪文が、ラマダの一つ目目がけて飛んでいく。しかしラマダは巨大な棍棒を振り上げると、メラゾーマの巨大な火球を割るように棍棒を振り下ろし、かき消してしまった。
「小賢しい小悪魔が……一丁前に強大な呪文を使いおって……」
ミニモンの怒りの巨大火球が、ラマダの戦意に火をつけた。リュカたちを完全に敵とみなし、その巨躯で大神殿祭壇を覆うように背を丸め、リュカたちを逃すまいと囲う。
しかしリュカとしては返ってその方が好都合だった。下手に母マーサの幻影をちらつかせられるよりも、明確に敵と認められた方が迷いはなくなる。永遠に終わらないのではないかと思われるような信者らの祈りの響きの中で、リュカもまた光の教団の神官ラマダ打倒に剣と杖を構える。
「本来ならば貴様を仲間に加え、これから神殿完成の儀式を執り行う予定だった」
リュカもそれを見越して、今日のこの日に大神殿への潜入を試みたのだ。光の教団の行う祝いの儀式になど一つも興味はないが、人々が一堂に会するこの場所を抑えることができれば、囚われた人たちを余さず救うことができると望みを持って竜神に乗って来た。
「一人一人、この者たちを天国へ導いてやろうと思っていたが……そんな悠長なことはできなくなったかな」
そう言うとラマダはその巨躯に、まるで力を溜めるかのように魔力を帯び始めた。てっきり手にしている巨大棍棒で殴りつけて来るものだと思っていたリュカたちは、想像を遥かに超えるラマダの魔力の強さに思わず息を詰める。
「手始めに、目の前の者たちを、送ってやることにしよう」
そう言うや否や、ラマダの血塗られたような真っ赤な全身から、強大な魔力が放出された。辺りが眩しい閃光に覆われたかと思ったら、次の瞬間にはベギラゴンの炎に多くの信者たちが倒れた光景がそこにあった。苦しそうに呻き声を上げながらも、まだ祈りや礼の言葉を口にする信者たちを目にして、ポピーは悲鳴を上げ、ティミーは恐怖と怒りに身体を震わせた。
「信じる心と言うものは強いな。ベギラゴンで一息に天国へ旅立てないとは」
ラマダは再び呪文の構えを取り、魔力を巨大な身体に溜める。その巨体が向いている方向は、倒れている信者たちがいる場所だ。神官が立つ祭壇に最も近く、今もまだ信者たちの目に映るのは神官マーサの姿なのだろう、彼らは口々にマーサの名を呼び、その名に救いを求めている。
光の教団に利用される母マーサの幻影を断ち切るかのように、リュカは叫ぶ。
「逃げるな! すがるな!」
自分自身に叫ぶのと同時に、マーサに救いを求める信者たちにも叫んだ。しかし彼らにリュカの言葉は届かない。再びラマダが放つ呪文が迫る。リュカは背後に激しい熱を感じ、素早く振り返った。目の前にベギラゴンの炎が大きな帯となってリュカや信者らに伸びていく。
リュカは抵抗するように、即座に両手からバギクロスの呪文を放った。敵の放つ呪文を押し戻せれば良いと、リュカは強烈な真空の渦を生み出してベギラゴンの炎を取り込もうとする。しかし敵の魔力は強大だった。かえって風の力で威力を増したベギラゴンの炎がリュカもろとも信者たちに襲い掛かる。
ちょうどリュカとラマダの横に位置していたピエールが、イオラの爆風で呪文の向かう方向を逸らした。瀕死の信者らがいる場所を逸れ、火炎と風の呪文の塊は別の信者たちに襲い掛かった。神殿内に人々の悲鳴が上がり、しかしそれはひと時のもので、すぐにそれは彼らが続ける祈りの声の中に吸収されてしまった。攻撃呪文を浴びても、魂を抜かれ人形のようになっている信者たちにとっては、痛みよりも苦しみよりも、教団への信仰心が勝っているのだ。
「傷み苦しむ人間を増やすなど、なかなか面白い事をする。まずは目の前にいる者たちを天国へ葬ってやろうと思っていたのに……何とも無慈悲なことだ」
敵の攻撃を待っていたのでは、ここにいる人々の中に犠牲者を増やすだけだと、リュカは大巨人ラマダの足先に剣を向け、攻撃に移る。相手は巨大な神殿の天井に頭がつきそうなほどの巨人で、まともに戦えるような相手ではない。数か月前にサラボナで、古代より封じられていたブオーンと言う巨大な魔物と対峙したことがあったが、そのブオーンに比べればいくらか身体は小さいが、人語も操り呪文も使うことができ、巨大な身体ながらも動きは遅くない。ブオーンよりも手強い相手だと思いながらも、リュカは敵を足元から崩してやるのだと父の剣で敵の足に斬り込む。
やはり動きが速い。ラマダから見れば豆粒のようなリュカの動きを正確に捉え、攻撃を受けそうな足をさっと避けた。しかしラマダの敵はリュカだけではない。
すぐに別の角度から、プックルが飛び込んでくる。ラマダの真っ赤な足を鋭く引っ掻く。ラマダにとっては些細な傷だが、その真っ赤な身には青黒い血が滲んでいる。
一瞬でも油断をすれば、ラマダは無感情な目つきでリュカたちを見下ろし、鬱陶しいと言わんばかりに蹴りつけてくる。プックルが短い悲鳴を上げて神殿の奥に飛ばされるのとほぼ同時に、リュカは反対側である信者らが集まる壇上へと飛ばされた。そこには先ほどのベギラゴンの炎に倒れた人々がいるはずだった。
しかしリュカが飛び込んだ場所では、ラマダの攻撃呪文を受けたはずの人々が既に傷を癒して、変わらず祈りを捧げていた。見れば人々の間にもみくちゃにされるようにして、ベホズンの姿が見られた。強力な回復呪文ベホマズンを使って、あっという間に信者たちの傷を癒してくれたようだった。
ラマダは自身の敵となる群れの中でも、頭となるリュカに狙いをつけていた。リュカを倒してしまえば、彼を親とする子らも、彼を慕い傍につく魔物らも、それこそここにいる信者たちのように生きる気力を削がれ、簡単に魂を抜き取ることも可能だろうと当たりをつけている。故にラマダの振るう巨大な棍棒は、傍にいる信者である人間たちなど構うはずもなく、容赦なくリュカに振るわれる。
たとえリュカが棍棒の攻撃を自力で避けたとしても、そこに共にあった人々は哀れラマダの武器の下敷きだ。自分が避けることで人々が死に瀕することを分かっていて、リュカは潔くその場から逃げることができない。己の身に守護呪文スカラをかけ、敵の棍棒の攻撃に耐えようと、竜神の力に頼るべくドラゴンの杖を前に構える。
リュカの前に素早く入り込んできたのは、ガンドフだ。振り下ろされた棍棒をその両手に受けるや、その勢いに潰されかけたが、リュカを守るため、リュカが守ろうとしていた人々を守るために、元来の怪力で敵の棍棒を余所へと払った。獣のような雄たけびを上げ、何が何でもリュカを死守するのだと、ガンドフの一つ目がラマダの一つ目を貫く。
眩い光が大神殿内に溢れる。その光に神々しさを感じたか、教団の信者たちは一斉に歓声を上げる。その歓声の中、ラマダは激しい光に束の間視界を閉ざされ、光を逃れていたピエールが巨人の足首に斬りつけ、宙を飛んでいたミニモンが敵の首に三叉の武器を深々と差し込んだ。しかしやはりそれでも、大巨人ラマダにとってはどちらもかすり傷程度なのだ。
視界を再び取り戻したラマダが目にしたのは、二度目のベギラゴンの火炎に倒れた信者たちが皆、再び身を起こして祈りの言葉を口にしている姿だった。あっさりと復活を遂げた信者たちの頭上を飛び回っているキメラを、ラマダは冷酷な目で見つめる。
「人々の痛みに苦しむ祈りの声こそ、真に救いを求める声だというのに。これでは何ともつまらないではないか」
そう言うとラマダは、まるで巨人の身体全体を膨らませるかのような勢いで、大きく息を吸いこんだ。近くにいるピエールが、ミニモンが、敵の巨体が一瞬にして熱を溜め込んだのを知った。ミニモンがラマダの後頭部にメラゾーマの火球をぶつけて焦がすが、ラマダの体内に溜まる熱はまだ維持されたままだ。
「ティミー王子! この場にいる者たちを守るのです!」
ピエールが叫び伝える。ラマダの口が大きく空く。口の中には渦巻く炎が見えた。敵に慈悲はない。この場にいる自分以外の誰が傷つこうが死のうが、神官ラマダにとってはどうでも良いことだ。
「お兄ちゃん!」
「ポピー! 力を貸して!」
双子は手を繋ぎ、本心から人々を救うべく、祈りにも似た思いで呪文を唱える。大神殿内はあまりにも広すぎる。ティミー一人の力ではここにいる人々全員を守りの覆いであるフバーハの中に包むことができない。
ポピーはそれを補う。遠隔呪文を使い、大神殿内の豆粒のように見える人々にも兄の守りが届くようにと、集中して遠くにいる人々にも呪文を行きわたらせる。
ティミーの唱えたフバーハの呪文が、柔らかな光の布となって大神殿中に伸びていく。その上から、ラマダが吐き散らした激しい炎が襲い掛かる。神殿内に、人々の阿鼻叫喚が響き渡る。フバーハの呪文はあくまでも敵の放つ炎や吹雪の勢いを半減させるだけに留まるものだ。体力のある若者ならばまだしも、女性に子供、老人などはすぐに傷を回復させなくてはみるみる体力を奪われてしまう。
「メッキー! ベホズン! お前たちはみんなの怪我の手当てを!」
リュカの号令に、すぐさまメッキーとベホズンが近くにいる人々から回復呪文を施すことに専念する。大神殿に集められている人々の数は夥しい。千人を悠に越えている。メッキーのベホマラーにベホズンのベホマズンをもってしても、この人数の人々の回復には時間がかかる。
「ティミーとポピーもみんなの怪我の手当てに当たるんだ」
この大神殿への潜入に際し、二人は父リュカの言うことを必ず聞くという約束をしている。しかし父のその指示に、ポピーは思わず眉を顰める。
「お父さん、私、回復呪文が使えないのよ」
「お前たちが力を合わせれば、ここにいる人々の多くを救うことができる。今、それを見せてくれたじゃないか」
神殿内にはまだ人々の傷み苦しむ声があちこちから響いている。その声を聞いているだけで、リュカたちまで心を蝕まれてしまいそうだった。魂を抜かれ、人形のようになってしまった人々が絶えず唱える祈りの言葉にも頭がおかしくなりそうだが、痛みに苦しむ声と言うのはそれを上回る精神混乱の作用がある。
「頼んだぞ」
父との約束を破るわけにはいかないと、ティミーはポピーと顔を見合わせると、再び手を繋いで大神殿内部全体を見渡す。メッキーもベホズンも、自ら負った怪我のことなど後回しにして、人々を救うために懸命に回復呪文を唱え続けている。魔力が底をつくのも時間の問題だろう。
リュカがすぐに大神官ラマダと対峙する後ろで、ティミーとポピーはラマダの炎に傷を負った人々を、祭壇の上から遥か遠くまで見渡す。ベホズンがその大きな身体から回復の泉を溢れさせるようにベホマズンの魔力を放出し、周りの人々の傷を癒している。メッキーが宙を飛びながら、羽の羽ばたきに乗せるように回復呪文ベホマラーを何度も唱えている。ティミーは魔物の仲間たちに習うように、そして己が身に着けている呪文の応用のごとく、人々を救う勇者として回復呪文を唱える。
兄の手から伝わる回復呪文の波動を感じ、ポピーは集中してより多くの、より遠くの人々にまで呪文の効果が行きわたるよう、遠隔呪文を唱える。双子の身体から魔力が解き放たれ、それは一つになる。二人の前に帯状となって遥か遠くに見える信者たちにまで、まるで草原を行く一陣の風のように、ティミーの唱えた回復呪文ベホマラーが駆け抜けていった。
しかしその時、二人は突如何者かに抱きかかえられた。その直後、二人が立っていた場所には、ラマダの振るう巨大な棍棒が祭壇の床にめり込んでいた。ティミーとポピーを逃したのはガンドフだ。一息に多くの信者たちの怪我を癒す二人の子供に目をつけ、ラマダは容赦なく二人を潰そうと棍棒を叩きつけてきたのだ。
激しく床を割った棍棒を振り上げ、ラマダは先に二人の子供たちを仕留めてしまおうと、武器を振るってくる。ガンドフが二人を抱えたまま神殿内を駆ける。棍棒は祭壇に飾られていた禍々しい燭台を一つ二つ、吹っ飛ばした。この大神殿を治めるという神官ラマダだが、多くの人々が死ぬ思いをして造り上げたこの大神殿が壊れて行くことには、何一つ思うところもない。
このラマダが諸悪の根源と言うわけではないのはリュカにも分かっている。しかしこの場に囚われている人々のこれまでの苦労を思えば、今目の前にしている悪の大神官とも言えるこの大巨人を生かしておくことはできないと、激しい怒りや恨みが心の中に沸々と込み上げる。
ラマダの巨体が魔力に膨れ上がる。巨人の足元近くにいるピエールが、途端に感じた激しい冷気にすぐさま「ミニモン! 炎だ!」と、それだけを叫んだ。仲間の言葉にミニモンは宙を飛びながらすぐに反応した。
ラマダの巨体から放出されたマヒャドの呪文に、大神殿内部全体が凍てつく寒さに覆われる。しかしマヒャドの呪文で生み出されるはずの巨大な氷柱を、ミニモンがメラゾーマの火球に包み押さえ込む。その炎にリュカがバギクロスを放ち、炎の威力を倍増させた。マヒャドの呪文の威力は半減され、飛び散る氷柱をプックルもピエールも冷静に跳ねのける。
「最後には死ぬというのに、無駄な足掻きだ」
ラマダの魔力は底なしかと思うほどに、大巨人はすぐさま攻撃に移る。人々を救い導く神官とは名ばかり、ただ好き勝手に暴れるのが好きなのだと言わんばかりに、今度はベギラゴンの呪文を放つ。祭壇広くを焼き尽くすような激しい炎の威力に、リュカたちは辛うじて祭壇の端に寄り、極力熱から遠ざかる。それでも肌をじりじりと焼かれる痛みに襲われるが、炎の海の景色の向こうに見える一体の石像を目にすれば、その痛みなど耐えてやるのだと強く思える。
祭壇に残る炎の合間を掻い潜り、プックルが突進していった。まるで大の大人に子猫が近づくような光景だが、その鋭い牙がラマダの足首に深く食い込むと、大巨人の身体が大きく揺れた。痛みに顔をしかめるラマダは、自身が足に痛みを感じていることが信じられないというように一つ目を大きく見開く。
プックルに噛まれた場所から、青黒い血が夥しく流れている。本来、ラマダにとってはかすり傷ほどのものだが、足首から流れる血がみるみる祭壇の床を汚している光景に、ラマダ自身が驚きに目を見張っている。
「プックル! ピエール! 行くぞ!」
リュカも祭壇に残る炎の合間を抜けるようにして、ラマダに猛進する。リュカのマントの内側に潜むのはスラりん。ひらりとリュカのマントが捲れた時に、スラりんの目にはラマダの赤黒い巨体が映る。その瞬間瞬間を狙い、スラりんは何度も重ねるように、補助呪文ルカナンを唱えていた。今のラマダの巨体はただ人並外れて大きいと言うだけで、その実熟し過ぎた果物の如く脆い。
リュカがラマダの足首に斬りつける。同じところをピエールが追い打ちをかける。ラマダは人々を痛めつけることには慣れていても、自身が傷を負うことなどないと言うように、慣れぬ痛みに思わず膝をつく。祭壇の床が巨体が肩膝をついて狭まる。上半身が近い。プックルが飛び上がり、ラマダの脇腹に噛みつく。痛みに声を漏らすラマダは、呪文を唱える余裕も、激しい炎を吐く準備もままならない。
「小賢しいヤツらめ! 貴様ら、一斉に叩き潰してくれる!」
ラマダが巨大な棍棒を振り上げる。脇腹に走る痛みに一つ目を歪める。些細な傷だというのに痛みに動きが鈍くなるラマダに、リュカはそれにさえも怒りを表情に滲ませた。この大神殿を作るために、世界を光の教団に染めようとする過程で、一体どれだけの人々を苦しめ犠牲にしてきたのだと、父の剣を持つ手に力が入る。
棍棒が上から降ってくる。動きは鈍くなっている。リュカは振り下ろされた棍棒に飛び乗り、柄を伝い、隆々とした巨人の腕に移る。ラマダの大きな一つ目を間近に見る。自分を見る敵の一つ目は、仲間のガンドフのような優しさ溢れるものとは全く別物だ。
腕に乗るリュカに、ラマダは激しい炎を吐きつける。しかしその対象はリュカであり、自分の腕でもある。リュカが素早くその場から逃げれば、炎は迷いなくラマダの腕を焼いた。痛みに悲鳴を上げたのは、自分で焼いてしまった腕の痛みか、下でしつこいほどに足を切りつけて来るスライムナイトか、ラマダ自身よく分かっていない。いずれにせよ、両足を嫌と言うほど痛めつけられたラマダは、もはや立ち上がることもできない。
逆の腕を駆けのぼるプックルがいる。リュカと同じく、目指すは敵の頭部だ。頭部の半分ほどを占める大きな目を大きく傷つけ、敵の視界を閉ざしてしまう。互いに言葉を交わさなくとも、目的は同じだと分かっている。
先に首にたどり着いたプックルが、ラマダの首筋を激しく前足で引っ掻いた。ラマダは鬱陶しい猫を捕まえようと手を上げようとするが、その手は既にリュカに激しく斬りつけられている。神官を名乗るラマダだが、回復呪文においては一つも心得がない。傷を癒してくれる仲間もいない。傷を負えば、ひたすら痛みに耐えるしかない。しかしそんなものは、ここで働かされていた人々が皆経験してきたことだと、リュカがラマダに同情することはない。
ラマダの肩口で、リュカはプックルの背に飛び乗った。プックルがリュカを背に乗せたまま、ラマダの頭部を駆けのぼる。ラマダの脆くなった皮膚にプックルが爪を食い込ませれば、それだけでラマダは思わず動きを止める。
「プックル!」
リュカのその号令だけで、プックルはラマダの頭部の天辺から、一気に顔面を滑り下りるように駆け下って行った。リュカは父の剣を握りしめ、敵の巨大な一つ目を縦一文字に斬りつけた。ラマダが叫び声を上げながら、両手で顔面を覆う。視界を完全に塞いだと、リュカもプックルも敵のもがく様相にそう確信した。
しかしラマダは直前、視界の端に映ったものを、その者が持つ意味をふと思い出していた。
己が崇める教祖イブールは、この大神殿の完成前に、祭壇の奥に一つの人間の石像を置いていた。この石像がここにある限り、人間が人間によって救われる世界は訪れない。この石像は我らが光の教団がこれからも永く存続するために必要な象徴なのだと、イブールは自信に満ちた表情で語っていた。
今まさに、この大神殿の主である自身が、ちっぽけな人間や、人間の味方をする訳の分からない魔物どもに倒されようとしている。この光の教団の存続のために、大神官である自身もこの石像と共に在り続けなければならないというのに、自身だけが滅ぼされようとしている。
それならばと、ラマダは血で霞む視界に映る、小さな人間の女の石像の場所を確かめる。自分だけが倒されるなど、大神官の誇りにかけて許されないことだと、身勝手な理屈で小さな石像を恨めしく見つめる。
「……死なば、もろとも」
武器の棍棒を手放した手を神殿の奥に向かって伸ばす。その先に、敵となるリュカたちの姿はない。未だラマダの肩に乗るリュカは、ラマダが壊そうとしているものを知り、声も出せないままその腕を切りつける。が、ラマダの伸ばす腕は止まらない。
その時、祭壇の上に、激しい冷気が広く生じた。ラマダが唱える呪文ではない。
教団の信者たちは凡そ、怪我を手当てされていた。大神殿内には人々の祈りの声が変わらず呪詛の如く鳴り響いている。まるで人形だ。しかし人々は確実に命を生きている。
ポピーが祭壇の上に立っていた。彼女の小さな両手から、激しい冷気が生まれていた。マヒャドの生み出す氷に、ラマダの腕が床と一体化するように氷漬けになっていた。
「お父さん! みんなはもう、きっと大丈夫よ!」
「ボクたちも一緒に戦うよ!」
そう言うと、ティミーはポピーの横から駆け出し、天空の剣を煌めかせながらラマダの腕に斬りかかった。氷漬けにされた腕の痛覚が鈍くなったのか、ラマダは僅かに表情をしかめただけだが、上腕部がティミーの攻撃により深く斬り込まれていた。もう敵は腕を上げることも叶わないだろう。
リュカは思わず石像の呪いに閉じ込められているビアンカを見つめた。かつて彼女が二人の子供たちを隠して救ったように、今は子供たちが母ビアンカを勇ましく救ったそのことに、果たして彼女は気づいているのだろうか。思わず目に滲む涙を、リュカは強く腕で拭った。
「プックル、首だ!」
「がうっ!」
敵の肩口に留まっていたリュカは、プックルに跨ったまま敵の首に向かう。自身の肩の上を駆ける小さな人間と獣を、腕を上げることもままならないラマダはどうすることもできない。ただ悔し気に息を吐くだけだ。口の中に溜まる激しい炎も、自身を焼いてしまい兼ねないと、リュカとプックルに向け放つことができない。
リュカがラマダの首を斬りつければ、ラマダは大神殿を破壊してしまうほどの叫び声を轟かせ、まるで大きな壁が倒れ込んでくるかのように広い祭壇の上に倒れ込んだ。この状況にあって尚、神殿内に響く信者の祈りの声は止まらない。しかしこの状況となれば、彼らの祈りの声は、倒れた大神官ラマダに向かっての呪詛のようにも聞こえるようだった。
まだ息はあるが、満身創痍の状態で、仲間に回復してもらうかしなければこのまま命は消えていくだろう。倒されたラマダ自身も現実を悟るかのように、ほとんど見えなくなっている目をリュカに向け、悔し気にその目を歪めている。
「こ、このオレ様が敗れるとは……」
大神官を名乗るこの者が一体どのような経緯でこの地位についたのかなど、リュカたちは何一つ知らない。たとえこの光の教団の教えを信じるここにもいる人間の信者と同じ思いがあったとしても、既にその思いごと許されないほどの罪を重ねてきたに違いない。
「し、しかしたとえお前たちでもイブール様には敵うまい……」
ラマダの言う大教祖の名に、リュカの表情に思わず影が差す。このラマダと言う者はただ、光の教団を作り出したイブールに利用されていただけ、というところなのだろう。しかし自らもこの組織に染まり、その内に自らも悪事を愉しむようになっていたのでは、その罪はただ重くなるだけだ。
「大教祖イブール様、万歳!」
最期にラマダの巨大な一つ目に現れたのは、救いのない信心と狂気だった。信じるものを信じながら、しかし信じているものが本当は何なのか分からないまま、ラマダの命は散った。その命を思えば哀れにも思えるが、敵対する限りは倒さなければならない相手でもあった。
守りたいものを守るためなのだと、リュカはティミーとポピーと仲間の魔物たちと、そして祭壇奥に立つ石の呪いに閉じ込められる妻の姿を目にしながら、そう自身に言い聞かせていた。

Comment

  1. ケアル より:

    bibi様。

    いつも執筆ありがとうございます。
    ラマダって5メートルぐらいあるかもですね。マンションの3階ぐらいの高さですよ、いやあすごいな!
    ゲームではあまり苦労しないで倒せるラマダ。bibiワールドでは少し苦戦しましたね。
    たしかに数千人の信者を守りながらだと大変ですな。
    実際序盤でラマダと戦っていたのは10名中5名(スラりんは隠れながら)
    ガンドフは防衛に回り後の4名は信者の回復。
    いやあガンドフ今回すんごく活躍したのではないでしょうか?
    ガンドフがティミー・ポピーを助けなければ棍棒の下敷きになっていた可能性あるんですよね。

    ミニモン、とうとうメラゾーマ使えるんですね。見方側のメラゾーマの描写したのbibi様初めてですよね。
    bibiワールドでのミニモンの立ち位置って実はけっこう重要だったりしますか?
    ゲームでミニデーモンは声まねで作戦変えますよね。それをbibi様は小説内でミニモンを喋らせ泣き虫ミニモンに。ミニモンの声まねは執筆のやくにたっていると思います。
    ミニモン後は、イオナズン、楽しみです!

    ポピーの遠隔呪文、すごい技に進化していますね。手を繋いだらポピー以外の呪文まで遠隔できちゃうんですか⁉
    ていうことは、リュカのバギクロス、ティミーのライデイン、マーリンのベギラゴンとかを広範囲で攻撃できるということに。
    ポピーは勇者ではないことにコンプレックス。でも勇者の妹だからこそ遠隔呪文が使えるようになったのかもしれないですよね。ポピーbibiワールドで大魔法使い(笑み)
    後は、ドラゴラムとイオナズン、楽しみです!

    bibi様、一つお詫びしないといけないことあります。
    以前のコメントにストロスの杖をビアンカに使って欲しいとコメントしましたが、すみませんリメイクのドラクエ5は、ゲーム内でストロスの杖はリュカに使用したら壊れて手元からなくなるんですよね…勘違いしていましたよ失礼しました。

    次回は、ビアンカ石像そして信者たちとの会話とイブールまでの道のりでしょうか?
    個人的にジージョとの会話をbibiワールドでどのように広げてくれるか楽しみです。
    次話の更新待っています。

    • bibi より:

      ケアル 様

      コメントをどうもありがとうございます。
      ラマダ、大きいですね。見た目がギガンテスやアトラスなので、かなりの巨人かなと想像して書きました。ラマダはマーサに化けていたので、変身の術も使おうかと思ったんですが、長くなりそうだったのでカットしました。もし変身ができていたら、もっと苦戦していたと思います。(一つの想像では、再びマーサに化けてリュカの心をかき乱そうかと思っていました)

      あの場所は他にも多くの人がいて、しかもその人たちはみんな魂を抜かれているような状況なので、無防備な人々を守りながら戦わねばならんとかなり前から思っていました。グランバニアみたいに人々を避難させることができればいいんでしょうけど、魂を抜かれ、リュカの言うことなど聞かない人たちなので避難させることもできず。

      ガンドフは何が何でも双子を守ると誓いを立てているも同然なので、死ぬ気で守りに行きます。双子の言うことを聞いてこの場に連れて来た責任を感じているので。ミニモンは声真似とマーサとの繋がりで、かなり重要なキャラですね。特に今回は。

      ポピーは伊達に勇者の妹ではありません。彼女は彼女で、しっかり別の能力を身に着けてもらいます。もしかしたら勇者以上なんじゃない?みたいな。遠隔呪文、私の勝手な設定ですが(汗)、彼女にはこれからも大活躍して欲しいと思っています。

      ストロスの杖・・・そうでしたっけ(汗) マズイ、書き直さなくては・・・教えて下さってありがとうございます。

      次回のお話もなるべく早めに書きあげられるよう、頑張ります^^

  2. ケアル より:

    bibi様。

    DSでゲームしているんでしたよね?実際ゲームで道具袋確認してみてくれますか?
    自分の記憶でなぜストロスの杖があると思っていたのかグーグルで調べてみました。自分はPS2の方しか知らないのですがDSも同じだと思います。以下にURLを貼り付けますね。ネタバレなのでbibi様並びにbibiファンの皆様、興味がなければスルーしてくださいな。

    ドラゴンクエスト大辞典より、ストロスの杖

    https://wikiwiki.jp/dqdic3rd/%E3%80%90%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%AD%E3%82%B9%E3%81%AE%E3%81%A4%E3%81%88%E3%80%91

    調べたら思い出しましたよ!
    だから自分はリメイクにストロスの杖あるんだと記憶していたみたいです。
    混乱させるようなこと言ってすみません(汗)

    bibi様、ゲームで実際パパスの話を聞きたいですか?→はい。とした時、マーサに化けていたラマダは何を語るんですか?気になります!
    それとbibiワールドでラマダに呪いを掛けられるシナリオは考えていましたか?

    • bibi より:

      ケアル 様

      ストロスの杖、ないですね・・・ふふふ、ちょっと次のお話を書き直してまいります~(焦)

      パパスの話を聞きたいですかに「はい」と答えると、そのまま次の質問としてイブールに仕えるか?と聞かれるようですね。それで、そこでも血迷って「はい」と答えると、呪われちゃうと。そのパターンも考えたんですけどね、面白そうだなって。そのパターンだと、リュカは完全に敵側に操られ、私の完全なる私的設定ではリュカが味方と戦うパターンになってました。でも止めときました。あまり遊んじゃマズイ場面だなと(汗) それにそんなことやっちゃうと、ラマダがラスボスくらいの存在になりかねないので、バランスとしてもいかんことになると立ち止まりました(笑)

      台詞の選択肢が多いとそれだけお話のパターンが広がって、ある意味苦労します。

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